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ダンジョン生活は思ったよりも退屈だけど…

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 …どうしようちょっと飽きてきてしまった。食料、衣料、寝具、風呂と手に入れた私はダンジョンの自分の部屋に引きこもっていた。最初のころはお風呂も嬉しくて使っていたのだが、何度か繰り返すうちにたまっていく空の桶がうっとおしくなってきたんだよね…しかも服を洗うのにも使ってたんだけど、そしたらスキルを覚えてほとんど必要なくなってしまったの。

「クリーン」

 …ね? このスキルですべて解決。服も体の汚れもすべて綺麗に。ついでに部屋も綺麗にしちゃう。こうなってくるとお風呂なんてどうしてもお湯につかりたいときくらいしかいらない。

「はぁ…」

 ベッドに寝転びステータスをチェック。たまにダンジョンの中を散歩してオーブを稼いだりかわいいガーディアンをなでたりして、ちょっとレベルがあがった。



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名前 アイリ   年齢 12
レベル 6       職業 1891ダンジョンマスター

HP 1650  MP 1550
STR 200  VIT 175
AGI  190  INT 165
DEX 180  LUK 165

スキル
コピーlv1
[   串焼き    ]
[   ポメ     ]
[   ハクコン   ]
気配探知
穴掘り
クリーン

魔法
アイテムBOX
[木の枝 ミニコア 運動靴 ポメ ウル ハクコン 串焼き お湯の入った大きな桶 ベッド ワンピース チュニック ズボン 下着2 丸太3 枝12 黒虫のオーブ52 タローのオーブ34 モリオのオーブ11 大きな桶6]
隠密lv1
身体強化lv1


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 コピーのスキルはやっぱり便利だった。枠は3個しかないけど全部埋まっていると上から順番に消えていく。今の状態だと次お風呂をコピーすると串焼きが消えるってことだ。レベルがあるみたいだから枠がそのうち増えるんだろうね。さらに便利になっちゃう。

 で、何が飽きてきたかというとダンジョンの方だ。どうせ他に使うことがない私の魔力だからダンジョンコアに渡してダンジョンの成長などに使っていた。現在地下5階…決して深い階層ではないが、そもそも入り口をわかりにくくしてあるうえに、私の部屋である扉もほぼ誰も入れない状態…というか私を突破することは誰も出来ないということなんだけど。扉に制限が掛けてあって、私より20レベル下の人しか入れない仕様。つまり私のレベルが21になってやっと1レベルの人が入れる状態。まあ…人数の制限はかけていないから1レベルの人が10人とかはいれるけど、1レベルの人が10人いたって…ねえ? まったく戦闘経験がない人達なんですよ。まあ私も戦闘経験があるわけじゃないけれどもっ それに部屋に到達するまでにレベルが上がらないってこともないわけで…当分誰も来れないってわけです。誰も来れない…素晴らしいことなんだけど、流石にまったく人に会わないというのがここまで退屈になるとは思っていなかったのよ。やることもないし…だからっ

 私はチラリと部屋の隅の立てかけてある枝に掛けてある服を見た。サーニャから貸してもらった服…これをいい加減返しに行きたいと。流石にもう乾いたしね! それに別の食べ物も欲しいっ 同じものを繰り返して食べているのもちょっと限界がある。

 コアに頼んで地下1階に飛ばしてもらった。ちゃんと外に出るときは隠密を使用し、様子を眺めてからだ。大丈夫誰もいないね。おっと肉眼だけじゃなくて気配察知も使わなければ。うん、問題なし。少し離れたところに人がいるみたいだけど…こっちは見えていないと思う。

 さてさて…町についたら何を買おうかな~ 今は野菜の水分しかないからちゃんとした飲み水を確保したいかも。途中やっぱりまだ倒れたままになっている気が目に入る。私がなぎ倒したやつだ。結局誰も回収しないってことはいらないってことでいいんだよね? まああれから少しだけ私がいただいちゃいましたが。何かに使えるかもしれないからね。まあ道具がないんで折ったりすることは出来るけど、それ以上何も出来ないのが問題ね。

 久々の町に無事に到着した。相変わらず町の傍には人がちらほらと歩いている。そーっと他の人にまぎれながら出来るだけ音を立てないように街の中へと入った。さて、まずはサーニャの家に向かうことからだ。たしか冒険者ギルドはこっちだったかな? まずは冒険者ギルドの位置を確認。そこからサーニャの家までの道を…道…を? しまった! 私サーニャにしがみつて目を閉じて歩いていたから場所知らないじゃないっ うーん…たしか多少ふらふらと歩いていたと思うけど、大きく曲がってはいなかたよね。ん…それだけじゃないかった。冒険者ギルドから見てどっちの方にサーニャの家があるのかもわからないや…どうしよう。

「み・つ・け・た・ぞ!」
「ひゃっ」

 突然体がふわりと浮いた。あれ…この感覚知っているような…ちらりと視線を上に向けるとちょっと怒った顔をしたソロンがいた。え、何? 私なんか怒られることしたっけ? あ…すごい視線が集まって、怖い! 体を縮め震えるのを押せようとする。

「お、おい? どうした??」

 失敗した! スキルがあるからって余裕ぶっこいてちゃだめじゃんっ こいつみたいに普通に気がつく人がいるってこの前知ったばかりだったよ。それなのにすっかり忘れているなんて…っ やだやだやだ!

「はな…してっ」
「なんだ~? 別になんもしねぇーぞ? この間突然いなくなったからどうしたのかと思って…」
「もうー何の騒ぎなのよ!」
「ニーナ丁度よかった何とかしてくれっ」
「はあ~? 何だか知らないけどすごい注目集めてるわよ? とりあえず中へいらっしゃい」
「助かる」

 もういや! なんなの?? 久々に町にきたらこの仕打ち。私は一人はさみしいと思ったけど、かかわりたいわけじゃないの! お願いだからほうっておいてっ と叫びたいけれど視線は痛いし、怖くてただ震えていることしか出来なく…気がついたら見たことのある部屋の中に連れてこられていた。

「とりあえずお茶を用意するから、話まとめておいてね?」
「わるいな」

 ソファーの端っこに座り。私は視線を逸らす。くそう…出会い頭に気絶するわ、今回は混乱してしまって騒ぎになってしまった…私のことなんて放置しておけばいいのになんなのこの人は。

「えーとアイリだったっけか? この間は大人しく抱えられてたのになんで今回は暴れたんだ?」

 私はぷいっとさらに体ごと視線を逸らす。

「…はぁ、だめか」

 どさりと音と振動が伝わってきてビクリとした。多分ソロンがソファーに持たれたんだ。ちらりと見ると天井を眺めているみたいだ。用事を何もすませていないけれどさっさと逃げてしまったほうがいいだろうか…

「話は出来たかしら?」

 少しすると受付のおねーさんのニーナさんがお茶を持って戻って来た。

「ダメだな」
「そう…じゃあソロンの状況教えて」
「んー? いやさ見覚えのあるやつがいるなーと思ってよ、こう…ひょいっと小脇に抱えた」
「…普通に声かけなさいよ。年頃になってくる女の子がそもそもそんなこと喜ぶはずがないでしょう?」
「そうか? この間はおとなしかったぞ?」

 2人が会話をしているのをぼーっと聞いている。こちらに話を振ってこないのなら平和なものだ。視線もこっちを向くこともない。

「はいどうぞ。お茶でも飲んで落ち着きましょうか」
「…っ」

 と思ってたら話しかけられた。でも…お茶はちょっと嬉しいかも。ちらちらとお姉さんの顔を窺う。ニコリと笑い頷いている。ティーカップのなかには赤みがかった黄色いお茶…紅茶かな? そーっと手を伸ばしカップを両手に包み込んだ。温かい…そういえば温かいものといえば串焼きしか食べていなかったな…ゆらゆらと変化する景色を映しこむお茶の表面を眺めながらそんなことを考えていた。そこに映っているのは黒髪を肩でそろえたちょっと幼い顔の私。お風呂に入った時も思ったけど本当に12歳なんだ。

「アイリちゃんはここですか!」

 ぼんやりとしていたら大きな音を立てて扉が開いた。すごく驚いてお茶をこぼしそうになってさらに慌てる。そんな私から急いでお姉さんがカップを取り上げる。

「もうちょっと静かに入って来てね」
「えっ だってアイリちゃんが大変だって聞いたから、私急いできたの!」

 あ…サーニャだっ 私は立ち上がりサーニャに抱き着いた。それをしっかりと支えてくれる小さな体。あーやっぱり大人より子供のほうが落ち着くな~

「おっと…どうしたの? あっ もしかしてこのおじさんがアイリをいじめたの!?」
「は? いやいやまてまてっ なんでそうなる!」

 サーニャが私を後ろにかばいソロンを睨みつける。

「大人だからってやっていいことと悪いことくらいわかるでしょっ」
「それがねサーニャちゃん…まだ詳しいこと聞いてないからわからないのよ」
「そうなんですか? …じゃあ私がアイリちゃんから話を聞きます」
「ん-そうね、お願いしようかしら」
「じゃあ2人は部屋から出てくださいね?」

 サーニャ強いな~ 大人2人をさっさと部屋から追い出してしまった。

「ふぅ…それでアイリちゃんどうしたのかな?」

 にこにこ笑顔でサーニャがほほ笑んだ…んだけど、若干怒り気味? 笑顔が逆に怖く見える。

「あ…」

 私はゆっくりと話を始めた。町に住んでいなくて久しぶりに来たこと、サーニャに服を返しに来たこと、食料を買いに来たこと、そしたらいきなりソロンに小脇に抱えられて混乱してしまったこと…ソロンとの関係。まあほぼありのままだ。ただ私の感情面については詳しく説明はできない。

「ふぅ~ん。ちょっとアイラちゃんが驚きすぎな気もするけど、普通そんなよくわからない人に抱えられたら驚くわね。ちょっとソロンって人に注意しておこう」

 そういうとサーニャは立ち上がり部屋の扉を開け外を覗き込んだ。どうやら2人を招き入れるみたいだ。

「…というわけです。気軽に女の子を抱えるのは私もだめだと思います」
「よーく理解したわ。やっぱりソロンが悪いわね」
「くぅ…もうちょっと慎重にする」
「にしても…あなた町に住んでいないの? どこから来ているのかしら。確か一番近い村でも2日はかかるはず…」

 そ…そうなんだ? これはダンジョンに住んでいるなんて言わない方がいいわよね。

「そういえばアイリちゃん初めて会った時外で倒れてたもんね?」
「…あまりよくない話ね。どういうことかしら」
「わか…り…ませ…」

 言えるわけがない。別の世界からやって来て年もごまかしてますなんて。

「どこで寝泊まりしてる?」
「………」

 もちろんそれも言えないこと。

「もうこれだから大人は! アイリちゃん怖がってるでしょう? そんなにポンポン質問しないの! 私だって気がついているのにどうして気がつかないのかなっ アイリちゃん前住んでいたとこで色々あったんだよっ ずっとびくびくしているのに質問攻めなんて!」
「ご、ごめんなさいっ それでも知っておかないといけないことはあるのよ?」
「もういいです! いこうアイリちゃん。買い物にきたんでしょ?」
「…っ」

 やばいどうしよう…サーニャが気がついてくれて嬉しい。私だって本当は大人なのに泣いちゃいそう。手を引いてくれたサーニャにしがみつき私たちは部屋を後にした。
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