8 / 11
冒険初心者のお仕事
しおりを挟む
おかしいな…私は自分の寝床をなんとかしたかっただけなのに、気がついたらケモミミのあるソロンっていう男の人と一緒に町の外へと出ている。しかも横わきに抱えられて…どうやらこれは迷子防止と身長差のせいで手を繋ぐことが出来ないためらしいのだけど、かなり視線を集めているので本当はやめて欲しい。突き刺さる視線が痛くて私は顔も上げられないし、足元近くに見えるのが怖くて目も開けていられないんだよね。
「ほら着いたぞ」
やっと地面に下ろしてもらえた…あー揺れないってすばらしい。ところでどこについたのかな? たしか初心者でも出来る仕事? っていうやつを受付で受けてきたはずなんだけど。疑問に思ってちらちらとソロンの方を見ると、とてもいい笑顔でこう言うのだった。
「さあ草取りをするぞ」
「………」
草取り…地面を眺めると確かにいろんな草が生えている。つまりこれを取るお仕事っていうことなのかな。
「正確には薬草採取な。でもまあ草取りには違いないだろう? それに薬草を間違わずにとるのは結構むずかしいからさ、もう全部引っこ抜けばいいってことよ。そんなかにはいくつか薬草もあるだろうしな。気を付けるところとしてはだ、薬草かもしれないから根っこまで引き抜けってくらいか」
…大雑把なんですが。でも言いたいこともわかるんだよね。たしかに草って葉っぱの形とかいろいろあるんだけど、似たようなものも多い。ほんの少しの違いを見分けないとわからないものもある。
「ああ心配すんな。ただの雑草も買い取ってもらえるぞ。家畜の餌にするみたいだからな。ただやっぱり薬草のほうが高く買い取ってもらえるってだけだ」
つまり要約すると草を取ればお金になる、ということね。さっさと済ませて私は自分の用事に戻りたい。だからしゃがみこみ草を引っこ抜き始めた。結構あっさりと綺麗に抜ける…根っこの長い草も多いね。引き抜いた草はすぐにそのままアイテムBOXにポイポイとしまいこむ。こうしておけばしおれたり枯れたりしないから薬草とかにはいいんじゃないかな? あれ…それとも乾燥させてから使うのものなのかな? そうだとするとアイテムBOXにしまうのはあまりよくないかもしれない。雑草もどっちのほうがいいんだろうか…家畜が食べるっていってたからこっちは新鮮な方がいいのかな? まあ乾燥してからでは戻せないからどっちにしても新鮮なまましまっておけばどうとでもできるよね。
「なあ…引き抜いた草はどうした? 見間違いじゃなければ引き抜いた瞬間消えてるんだが…」
「…ある」
アイテムBOXから取り出して見せる。するとソロンは眉をひそめた。
「BOX持ちかよ…おい、その魔法はやたらと周りで見せるなよ。だいたい厄介ごとに巻き込まれるからな」
…すでに関係なく厄介ごとに巻き込まれているんですけど? 私のやりたいことと違うことをやらされるのはすでに厄介ごとだと思うんだけど。
「………」
「なんだ言いたいことがあるならいっとけ」
「…別に」
じと~~っと視線を抜けてからぷいっと顔を横にそらす。人によって厄介だと思うことは本当に様々なんだと痛感した。
ひとしきり草取りをした後腰が痛くて、立ち上がって上体をそらす。結構草取ったしもういいんじゃないかな…というかお腹空いてきた。多分そろそろ昼になるんだと思う。私の体内時計があっているならだけどね。
「おっ そろそろ一度報告に戻って昼飯にするか」
よかった。昼なしって言われたら倒れるところだったよ。
「でもその前に…よっと」
「…っ」
な、何…急に足を振り上げて踏み下ろしたその動作! …あと足元にいるぶよぶよ。わ…逃げようとしているのか足の下にいるのにグネグネと動いていて気持ち悪いっ
「せっかくだから魔物を倒してみるか。武器はあるか?」
魔物…ダンジョンにいたやつとかと同じかな。見た目はそもそも顔がないからかわいいかどうかわからない。ただグネグネと動く軟体な体をしていて気持ちが悪い。まるでナメクジのような…つまり駆除対象。塩! 塩はどこっ
「ほらほらどうした冒険者ならこのくらいやれないとやってけないぞ? そんな強くないし適当に何度か殴りゃ倒せるから…」
「塩…な……ぐるっ」
「ん?」
私はアイテムBOXから木の棒を取り出しブニョブニョな物体を目掛け思いっきり振りかぶった。
「おっと」
ソロンも一緒に殴りそうだったのは気のせいだ…うん、気のせい。殴りつけるとびちゃっと弾けた体の一部がほほに飛んだ。気持ち悪い…塩がないから!
「お、おい?」
何度も何度も殴った。だって殴っても殴ってもオーブに変わらないんだよっ ただひたすらびちゃびちゃと音を出すだけで…
「もう死んでるから!」
「…? ない、よ…オーブ…」
「オーブ? ああっ それはダンジョンの魔物しか落とさないものだぞ。ってかすでにダンジョンに入ってみたことがあるのか…」
オーブはダンジョンからしか出ない? そういうものなのか…じゃあこのでろでろはどうしたらいいの?
「あーあー…こんなにぐちゃぐちゃにしちゃって」
ご、ごめんなさい? ビローンとソロンが持ち上げるがそこからさらにぽたぽたと液体が落ちている。やっぱり気持ちが悪い…
「ほら持ち帰れよ。一応討伐した証明だからな。スライム1匹でも鉄貨2-3枚はもらえるんじゃないか?」
スライム…デロデロ…いや、こんなのいらないよ! え? だって他のものと一緒にしまうんだよ? 液体がしたってるものと一緒にだなんていやだよっ まあそんな状態にしちゃったのは私だけども! 首と両手を横に振って後ずさった。
「こら、ちゃんと最後まで責任もてっ 持ち帰らないなら埋めるか燃やすかしないとだめだぞ」
そうなの? 燃やす…火をつける手段がないから出来ない…となると埋めるのが無難。うーんこの枝で地面掘れるかな? ぐりぐりと地面を枝でえぐってみる。ほれ…っ ないことは…ないけど、中々穴が深くならない。くぅ~~~スコップとかが欲しいよ。
【『穴掘り』を獲得しました】
…そうかスキルか。さて…このスキルでどこまで掘れるのかなっ
(穴掘り!!)
木の棒を持ち上げ思いっきり地面にたたきつけた。結論から言うと穴が開いた。うん…スキルはすごいね!
「おい…スライム何匹埋める穴だよ。でかすぎだっ」
何か聞こえてきた気もするけど気のせいだ。いいから早くそれを埋めてお昼ご飯を食べよう! あ…そうか町に戻るってことはまた人混みの中に行かないといけないのか…ちょっと沈んだ気持ちのままとりあえずスライムを埋めた。
町に戻って来た。まずは冒険者ギルドに向かうらしい。そして私はまた荷物になる…もうね流石にちょっとこの姿勢も慣れてきましたよ。周りから突き刺さる視線さえ気にしないようにできれば楽ちんなのです…出来てないんだけど。ほんとあんまりじろじろ見ないで欲しい。緊張してだんだんと息が荒くなるし、冷や汗もやばい。うう…お風呂入りたい。
「ニーナちょっといいか」
「あらもう新人教育終わり?」
「とりあえずな。で、ちょっと部屋貸してくれないか」
「開いているからいいわよ」
ニーナ…ああギルドの受付のお姉さんか。あ、はいまだこのまま移動するんですね。わかりました大人しくしています。
「それでどうかしたの?」
「ああ、こいつBOX持ちみたいなんだ」
「そういえば昨日もどこからともなくオーブを出していたわね。小さいものだから気にもしていなかったけど…なるほどそれでこの部屋ってわけね」
「おいおい…」
「まあそれで? 何を持ってきたのかしら。やっぱり薬草?」
…ん? ああ出せってことかな? 顔をあげてお姉さんの方を見るとじっとこっちを見ていた。
「あ、ちょっと待って。BOXってことは種別されているわよね。籠もってくるからそこに種類別に入れてもらえるかしら」
そういうとおねーさんは部屋から出ていった。ふぅーん…アイテムBOXって珍しい魔法だけどその辺の仕様とかはちゃんと知られているのね。
お姉さんの持ってきた籠に種類別に分けて薬草を入れた。やっぱり雑草が多め。買い取り額は530ギルカ。ついでにタローのオーブも買い取ってもらう。こっちは5個しかないけど1つ20ギルカで100ギルカ。うん、オーブ集めたほうがおいしい。冒険者としていろいろ教えてくれようとしてたんだろうけど…私としてはあくまでもお金を稼ぐ手段だ。登録抹消とかされない程度の働きでいいと思っている。
「じゃあ630ギルカね」
「…あい」
「ねえソロンさん…もう外に出ないのならアイリちゃんの服装何とかしてやってね? 結構泥だらけだから」
「ん? 冒険者やってればそんなもんだろう?? というか俺別に世話係じゃないんだが…」
「いいからせめて気を使ってあげなさいよ。ねえアイリちゃんお着替えはあるかな?」
「…ない」
「あーそれでそのままなのか…」
え、この人私が好きで汚い服装のままだと思ってたの? …バカじゃないの? 服がないからだよ! お風呂に入る手段がないからだよ!
「ほらね。買い物に連れてってやりなさいよ。後お風呂ね」
「わかったよ…はぁ」
やった! お風呂入れるっ 人がたくさんいなければなおよし!
冒険者ギルドを後にして私とソロンは店を見て歩いた。まあ正確には私は横わきに抱えられて、だ。私が着れそうなサイズを扱っている店を探して数件回る。3着ほど買い、適当な屋台で昼食をとる。外で食べるのは相変わらず人が多くてびくびくした。
「おーいアイザック。お湯を用意してくれ」
「もう、アイちゃんって呼びなさいっていてるでしょう? で、お湯?」
「ああこいつを綺麗にしてやるんだ」
「あらあらずいぶんと泥だらけね。わかったわ。お湯が用意出来たら部屋に持って行くから」
どうやらお風呂は宿でお湯を沸かして入るみたい。
部屋に入ってお湯が用意出来るのを待つ。さんざん抱えられたけれどやっぱりまだちょっと警戒してしまう。なので今はソロンから離れて部屋の隅で座っている。まあ部屋せまいんだけどね。
無言で待つこと数分、部屋がノックされてお湯が運ばれてきた。というかこのアイザックと呼ばれた人力持ちね…大きな木で出来たタライにお湯が張られていてそれを肩に乗せて持ってきた。お風呂ってこれなのね…部屋の中央に置かれ、アイザックって人はソロンの背中を押して部屋から出ていった。うん…流石に見られながら入るとか無理だから助かる。
さて…座ってぎりぎり私の腰辺りまでのお風呂か…ないよりはましだよね~ で、実は私は気がついてしまったのです。
「コピー」
目の前に置かれたタライをコピーする。タライがなくなる…うんこれは当然なんだよね。で、さらにコピーされたものをアイテムBOXに移動してお湯の入ったタライを増やす。再び表に出した。これで元通りな上に私の手元にはお風呂が手に入った。今日は服も買えたし、お風呂が手に入ったね。毛布がまだないけど…んー…ちょっと人が使ってたやつって言うのがあれだけど、そこは我慢しようか。ベッドに近づき…
「コピー」
そしてベッドを持ちに戻す。ちょっと大きな音がしてしまった。
「おーいなんだ今の音は!」
「だ…だめ!」
扉を押さえ入れないようにする。
「こら、女の子がお風呂に入ってるんだから開けちゃだめよっ」
そうそう。開けちゃだめよ。よし、これでベッドも手に入ったね。お風呂、着替え、ベッド…軽い食料もある。これでしばらく町に来なくてもいいだろうか…あ、サーニャに服を洗って返さないといけないよね。まあ…乾くのに時間掛かるかもだしそれまではいいでしょう。
アイテムBOXからミニコアを取り出し私はこの部屋から脱出するのだった。
「ほら着いたぞ」
やっと地面に下ろしてもらえた…あー揺れないってすばらしい。ところでどこについたのかな? たしか初心者でも出来る仕事? っていうやつを受付で受けてきたはずなんだけど。疑問に思ってちらちらとソロンの方を見ると、とてもいい笑顔でこう言うのだった。
「さあ草取りをするぞ」
「………」
草取り…地面を眺めると確かにいろんな草が生えている。つまりこれを取るお仕事っていうことなのかな。
「正確には薬草採取な。でもまあ草取りには違いないだろう? それに薬草を間違わずにとるのは結構むずかしいからさ、もう全部引っこ抜けばいいってことよ。そんなかにはいくつか薬草もあるだろうしな。気を付けるところとしてはだ、薬草かもしれないから根っこまで引き抜けってくらいか」
…大雑把なんですが。でも言いたいこともわかるんだよね。たしかに草って葉っぱの形とかいろいろあるんだけど、似たようなものも多い。ほんの少しの違いを見分けないとわからないものもある。
「ああ心配すんな。ただの雑草も買い取ってもらえるぞ。家畜の餌にするみたいだからな。ただやっぱり薬草のほうが高く買い取ってもらえるってだけだ」
つまり要約すると草を取ればお金になる、ということね。さっさと済ませて私は自分の用事に戻りたい。だからしゃがみこみ草を引っこ抜き始めた。結構あっさりと綺麗に抜ける…根っこの長い草も多いね。引き抜いた草はすぐにそのままアイテムBOXにポイポイとしまいこむ。こうしておけばしおれたり枯れたりしないから薬草とかにはいいんじゃないかな? あれ…それとも乾燥させてから使うのものなのかな? そうだとするとアイテムBOXにしまうのはあまりよくないかもしれない。雑草もどっちのほうがいいんだろうか…家畜が食べるっていってたからこっちは新鮮な方がいいのかな? まあ乾燥してからでは戻せないからどっちにしても新鮮なまましまっておけばどうとでもできるよね。
「なあ…引き抜いた草はどうした? 見間違いじゃなければ引き抜いた瞬間消えてるんだが…」
「…ある」
アイテムBOXから取り出して見せる。するとソロンは眉をひそめた。
「BOX持ちかよ…おい、その魔法はやたらと周りで見せるなよ。だいたい厄介ごとに巻き込まれるからな」
…すでに関係なく厄介ごとに巻き込まれているんですけど? 私のやりたいことと違うことをやらされるのはすでに厄介ごとだと思うんだけど。
「………」
「なんだ言いたいことがあるならいっとけ」
「…別に」
じと~~っと視線を抜けてからぷいっと顔を横にそらす。人によって厄介だと思うことは本当に様々なんだと痛感した。
ひとしきり草取りをした後腰が痛くて、立ち上がって上体をそらす。結構草取ったしもういいんじゃないかな…というかお腹空いてきた。多分そろそろ昼になるんだと思う。私の体内時計があっているならだけどね。
「おっ そろそろ一度報告に戻って昼飯にするか」
よかった。昼なしって言われたら倒れるところだったよ。
「でもその前に…よっと」
「…っ」
な、何…急に足を振り上げて踏み下ろしたその動作! …あと足元にいるぶよぶよ。わ…逃げようとしているのか足の下にいるのにグネグネと動いていて気持ち悪いっ
「せっかくだから魔物を倒してみるか。武器はあるか?」
魔物…ダンジョンにいたやつとかと同じかな。見た目はそもそも顔がないからかわいいかどうかわからない。ただグネグネと動く軟体な体をしていて気持ちが悪い。まるでナメクジのような…つまり駆除対象。塩! 塩はどこっ
「ほらほらどうした冒険者ならこのくらいやれないとやってけないぞ? そんな強くないし適当に何度か殴りゃ倒せるから…」
「塩…な……ぐるっ」
「ん?」
私はアイテムBOXから木の棒を取り出しブニョブニョな物体を目掛け思いっきり振りかぶった。
「おっと」
ソロンも一緒に殴りそうだったのは気のせいだ…うん、気のせい。殴りつけるとびちゃっと弾けた体の一部がほほに飛んだ。気持ち悪い…塩がないから!
「お、おい?」
何度も何度も殴った。だって殴っても殴ってもオーブに変わらないんだよっ ただひたすらびちゃびちゃと音を出すだけで…
「もう死んでるから!」
「…? ない、よ…オーブ…」
「オーブ? ああっ それはダンジョンの魔物しか落とさないものだぞ。ってかすでにダンジョンに入ってみたことがあるのか…」
オーブはダンジョンからしか出ない? そういうものなのか…じゃあこのでろでろはどうしたらいいの?
「あーあー…こんなにぐちゃぐちゃにしちゃって」
ご、ごめんなさい? ビローンとソロンが持ち上げるがそこからさらにぽたぽたと液体が落ちている。やっぱり気持ちが悪い…
「ほら持ち帰れよ。一応討伐した証明だからな。スライム1匹でも鉄貨2-3枚はもらえるんじゃないか?」
スライム…デロデロ…いや、こんなのいらないよ! え? だって他のものと一緒にしまうんだよ? 液体がしたってるものと一緒にだなんていやだよっ まあそんな状態にしちゃったのは私だけども! 首と両手を横に振って後ずさった。
「こら、ちゃんと最後まで責任もてっ 持ち帰らないなら埋めるか燃やすかしないとだめだぞ」
そうなの? 燃やす…火をつける手段がないから出来ない…となると埋めるのが無難。うーんこの枝で地面掘れるかな? ぐりぐりと地面を枝でえぐってみる。ほれ…っ ないことは…ないけど、中々穴が深くならない。くぅ~~~スコップとかが欲しいよ。
【『穴掘り』を獲得しました】
…そうかスキルか。さて…このスキルでどこまで掘れるのかなっ
(穴掘り!!)
木の棒を持ち上げ思いっきり地面にたたきつけた。結論から言うと穴が開いた。うん…スキルはすごいね!
「おい…スライム何匹埋める穴だよ。でかすぎだっ」
何か聞こえてきた気もするけど気のせいだ。いいから早くそれを埋めてお昼ご飯を食べよう! あ…そうか町に戻るってことはまた人混みの中に行かないといけないのか…ちょっと沈んだ気持ちのままとりあえずスライムを埋めた。
町に戻って来た。まずは冒険者ギルドに向かうらしい。そして私はまた荷物になる…もうね流石にちょっとこの姿勢も慣れてきましたよ。周りから突き刺さる視線さえ気にしないようにできれば楽ちんなのです…出来てないんだけど。ほんとあんまりじろじろ見ないで欲しい。緊張してだんだんと息が荒くなるし、冷や汗もやばい。うう…お風呂入りたい。
「ニーナちょっといいか」
「あらもう新人教育終わり?」
「とりあえずな。で、ちょっと部屋貸してくれないか」
「開いているからいいわよ」
ニーナ…ああギルドの受付のお姉さんか。あ、はいまだこのまま移動するんですね。わかりました大人しくしています。
「それでどうかしたの?」
「ああ、こいつBOX持ちみたいなんだ」
「そういえば昨日もどこからともなくオーブを出していたわね。小さいものだから気にもしていなかったけど…なるほどそれでこの部屋ってわけね」
「おいおい…」
「まあそれで? 何を持ってきたのかしら。やっぱり薬草?」
…ん? ああ出せってことかな? 顔をあげてお姉さんの方を見るとじっとこっちを見ていた。
「あ、ちょっと待って。BOXってことは種別されているわよね。籠もってくるからそこに種類別に入れてもらえるかしら」
そういうとおねーさんは部屋から出ていった。ふぅーん…アイテムBOXって珍しい魔法だけどその辺の仕様とかはちゃんと知られているのね。
お姉さんの持ってきた籠に種類別に分けて薬草を入れた。やっぱり雑草が多め。買い取り額は530ギルカ。ついでにタローのオーブも買い取ってもらう。こっちは5個しかないけど1つ20ギルカで100ギルカ。うん、オーブ集めたほうがおいしい。冒険者としていろいろ教えてくれようとしてたんだろうけど…私としてはあくまでもお金を稼ぐ手段だ。登録抹消とかされない程度の働きでいいと思っている。
「じゃあ630ギルカね」
「…あい」
「ねえソロンさん…もう外に出ないのならアイリちゃんの服装何とかしてやってね? 結構泥だらけだから」
「ん? 冒険者やってればそんなもんだろう?? というか俺別に世話係じゃないんだが…」
「いいからせめて気を使ってあげなさいよ。ねえアイリちゃんお着替えはあるかな?」
「…ない」
「あーそれでそのままなのか…」
え、この人私が好きで汚い服装のままだと思ってたの? …バカじゃないの? 服がないからだよ! お風呂に入る手段がないからだよ!
「ほらね。買い物に連れてってやりなさいよ。後お風呂ね」
「わかったよ…はぁ」
やった! お風呂入れるっ 人がたくさんいなければなおよし!
冒険者ギルドを後にして私とソロンは店を見て歩いた。まあ正確には私は横わきに抱えられて、だ。私が着れそうなサイズを扱っている店を探して数件回る。3着ほど買い、適当な屋台で昼食をとる。外で食べるのは相変わらず人が多くてびくびくした。
「おーいアイザック。お湯を用意してくれ」
「もう、アイちゃんって呼びなさいっていてるでしょう? で、お湯?」
「ああこいつを綺麗にしてやるんだ」
「あらあらずいぶんと泥だらけね。わかったわ。お湯が用意出来たら部屋に持って行くから」
どうやらお風呂は宿でお湯を沸かして入るみたい。
部屋に入ってお湯が用意出来るのを待つ。さんざん抱えられたけれどやっぱりまだちょっと警戒してしまう。なので今はソロンから離れて部屋の隅で座っている。まあ部屋せまいんだけどね。
無言で待つこと数分、部屋がノックされてお湯が運ばれてきた。というかこのアイザックと呼ばれた人力持ちね…大きな木で出来たタライにお湯が張られていてそれを肩に乗せて持ってきた。お風呂ってこれなのね…部屋の中央に置かれ、アイザックって人はソロンの背中を押して部屋から出ていった。うん…流石に見られながら入るとか無理だから助かる。
さて…座ってぎりぎり私の腰辺りまでのお風呂か…ないよりはましだよね~ で、実は私は気がついてしまったのです。
「コピー」
目の前に置かれたタライをコピーする。タライがなくなる…うんこれは当然なんだよね。で、さらにコピーされたものをアイテムBOXに移動してお湯の入ったタライを増やす。再び表に出した。これで元通りな上に私の手元にはお風呂が手に入った。今日は服も買えたし、お風呂が手に入ったね。毛布がまだないけど…んー…ちょっと人が使ってたやつって言うのがあれだけど、そこは我慢しようか。ベッドに近づき…
「コピー」
そしてベッドを持ちに戻す。ちょっと大きな音がしてしまった。
「おーいなんだ今の音は!」
「だ…だめ!」
扉を押さえ入れないようにする。
「こら、女の子がお風呂に入ってるんだから開けちゃだめよっ」
そうそう。開けちゃだめよ。よし、これでベッドも手に入ったね。お風呂、着替え、ベッド…軽い食料もある。これでしばらく町に来なくてもいいだろうか…あ、サーニャに服を洗って返さないといけないよね。まあ…乾くのに時間掛かるかもだしそれまではいいでしょう。
アイテムBOXからミニコアを取り出し私はこの部屋から脱出するのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる