上 下
308 / 356
いいことと悪いこと

292. 作業開始

しおりを挟む
 いいことも悪いこともおきるときにはいっぺんにやってくるものだと誰かが言っていたのを思い出した。

 箱庭にある自分の部屋で横になっているノノさんに視線を向けつつそのわきに座っている響子に声をかける。

「ノノさんの状態は?」
「…大丈夫安定したよ。ただちょっと血を流しすぎちゃったみたいで体力が回復しきるにはまだ時間がかかりそう」

 その言葉に軽く息を吐き出し俺は体の力を抜いた。本当に勘弁してほしい…目の前で知り合いが死ぬとか体験したいとも思わない。もちろん目の前じゃなければいいわけでもないんだが。

「ねえりょーちゃんこれ見て」

 響子がノノさんの手を取りそこを示す。ノノさんの左手首には見たことがある腕輪がはまっていた。なるほど、どおりで会話と行動が少し変だと思った。これは俺の腕にもはめられた腕輪だ。

「ジルベスターさん…」

 俺はその名を口にしながら腕輪に触れインベントリにしまった。

「りょーちゃん大丈夫?」

 どうやら俺はよほど変な顔をしていたみたいで響子に心配されてしまった。

「大丈夫…とは言い切れないが、これ以上同じような犠牲者が出ないといいのだけど」
「えーとそうじゃなくて、もう朝になっちゃうけど寝なくてよかったのかな~と。ノノさんのことは私が見てるから寝てきてもいいよ?」
「あーじゃあちょっと寝てくる」

 すっかり忘れていた。今日は朝からカルガードが土を混ぜるために作業員を連れてくるんだったね。俺がいないとその作業員が箱庭にはいれないし、そもそもまだ土も外に出していないし住む場所も用意していない。それなのにこんなに疲れたままじゃ対応が仕切れない。少しでも寝て体調をととのえないとな。

「…ってよく考えたらノノさんにベッドを譲ったから俺どこで寝ればいいんだよ」

 仕方なく箱庭の外に出てエルフの里で借りている部屋のベッドで寝ることにした。まあ体は横になれたが結局眠れないままカルガードが来たと連絡が入り箱庭へと戻ることに。

「なんか…やけに疲れてるみたいだな? あれか、やっぱ土を集めて運んでくるのは大変なんだな」
「まあそんなとこだな。で、作業員はどこに集めてあるんだ?」
「ああ、一応今は店の方に来てもらってある」
「わかったじゃあそっちに迎えに行くわ」

 カルガードに先に扉で戻ってもらって俺はテレポートで店の前までやってきた。あまり人目に触れない方がいいので、デール商会の一室に集まってもらい箱庭の扉を開く。ちなみにこの作業員たちには箱庭のことは教えていない。他の人も連れて移動が出来る扉で作業が出来る場所へと移動するということになっている。

「んじゃ説明するぞー」

 箱庭へ入り家と作業をするための場所まで連れてきた。まあ連れてきた時に家を設置したので軽く驚かれた。先に出しておかなかったのは失敗だったね。だけど作業員の人数は聞いていたけれど性別は聞いていなかったんだから仕方がない。それによって必要な家の数が変わるんだし。設置した家は3軒。男性が9人で女性が6人だった。もう一人女性が多いようなら4軒設置したほうがよかっただろう。カルガードが説明をしている間に俺は橋を渡り土山をいくつも取り出していった。その近くには土の復活剤の必要量を複製して置いていく。混ぜ終わったものはわかるようにしてもらっておき、後で俺が回収すればいいだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

もち
ファンタジー
 なんと、なんと、世にも珍しい事に、トラックにはねられて死んでしまった男子高校生『閃(セン)』。気付いたら、びっくり仰天、驚くべき事に、異世界なるものへと転生していて、 だから、冒険者になって、ゴブリンを倒して、オーガを倒して、ドラゴンを倒して、なんやかんやでレベル300くらいの時、寿命を迎えて死んだ。  で、目を覚ましたら、記憶と能力を継いだまま、魔物に転生していた。サクっと魔王になって世界を統治して、なんやかんやしていたら、レベル700くらいの時、寿命を迎えて死んだ。  で、目を覚ましたら……というのを100回くりかえした主人公の話。 「もういい! 異世界転生、もう飽きた! 何なんだよ、この、死んでも死んでも転生し続ける、精神的にも肉体的にもハンパなくキツい拷問! えっぐい地獄なんですけど!」  これは、なんやかんやでレベル(存在値)が十兆を超えて、神よりも遥かに強くなった摩訶不思議アドベンチャーな主人公が、 「もういい! もう終わりたい! 終わってくれ! 俺、すでにカンストしてんだよ! 俺、本気出したら、最強神より強いんだぞ! これ以上、やる事ねぇんだよ! もう、マジで、飽きてんの! だから、終わってくれ!」  などと喚きながら、その百回目に転生した、  『それまでの99回とは、ちょいと様子が違う異世界』で、  『神様として、日本人を召喚してチートを与えて』みたり、  『さらに輪をかけて強くなって』しまったり――などと、色々、楽しそうな事をはじめる物語です。  『世界が進化(アップデート)しました』 「え? できる事が増えるの? まさかの上限解放? ちょっと、それなら話が違うんですけど」  ――みたいな事もあるお話です。 しょうせつかになろうで、毎日2話のペースで投稿をしています。 2019年1月時点で、120日以上、毎日2話投稿していますw 投稿ペースだけなら、自信があります! ちなみに、全1000話以上をめざしています!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

処理中です...