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境界門

246. 騒がしい朝

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 朝食を食べ身支度を済ませると俺はネコルーとアスを呼び出した。

「契約召喚、ネコルー、アス」

 目の前に魔方陣が現れ光が収まると1匹のネコと小型の竜が姿を見せる。俺と獣魔契約をしている2匹の魔物だ。ネコルーは大型の猫に羽が生えたような姿をしており毛並みは真っ白。だが今はその綺麗な毛並みも水浸しでちょっとみすぼらしい…アスは小型の地竜で背中に小さな羽が生えている。以前フィレーネの西の森で暴れたことがある地竜の時間を戻された姿だ。契約状態にあるので暴れることはないはず…多分。

「今日からまたしばらく馬車引いてもらうからよろしくな~」
「ル~」
「きゅっ?」
「ああ、アスも1匹じゃ退屈だろうから一緒に行くぞ」
「きゅ!」

 まああれだしっかりと言葉とかがわかるわけじゃないが、なんとなくこんな気持ちなんだろうってわかる程度意思が通じている程度の会話なのでしかたがないんだよっ どことなく嬉しそうな感じはするから問題ない! とりあえずはこのずぶ濡れのネコルーを乾かすところからだな。こんな状態で馬車引かせていたら周りからどんな目で見られるかわかったもんじゃない。

「リョータさん」
「お?」

 ネコルーを乾かしていた俺の背後から声をかけられた。彼女の名前はルー。俺がこの世界にやって来て初めて遭遇した異世界人だ。まあ相手からしたら俺の方が異世界人なんだけどね。町へ案内してもらったりと色々お世話になっている。少し前までエルフだということは知らなかったのだが、とある護衛の仕事を受けた時に違法奴隷として捕まっていたジエルを救出することになり、その時に初めてエルフだと知った。今日は北へ移動するのに馭者をするために来てくれた。

「おやつ…」
「ジエルも一緒か。おやつは今はそこの店で販売する形だぞ?」
「…お金ない」

 そして彼女がジエル。ルーの姉でエルフの巫女だ。御神木様の声を聞くことが出来る。エルフの里の次期トップらしいが…幼い雰囲気と言動がそうは思わせてくれない。

「なんだジエルは金も持たせてもらえないのか。ほら俺が少しなら買ってやるからいくか?」
「うん」
「シズクさんあんまり甘やかさないでくださいっ」
「んだよ、おやつくらいいだろう?」

 シズクは獣人で黒猫みたいな猫耳としっぽがある。半分無理やり俺たちについてきたが実はジエルとルーの異母姉妹だった。父親が同じというやつだね。それでその父親というのが…

「見て見てりょーちゃんっ 可愛くできたでしょう~?」
「ど、どうでしょう??」
「しょう~?」

 彼女の名前は響子。一緒にやってきた2人はエルナとミイ。仕事が町で出来ず外で暮らしていた。家族は殺されエルナとミイも瀕死だったところを救出。それを回復したのが響子だ。響子は俺と同じくこの世界へ召喚された一人で、勇者パーティの聖女。勇者パーティは従属の腕輪により従わされていたらしく、その効果が効かなかった響子だけが逃げて俺と合流した。

 そして勇者がジエルとルーとシズクの父親である。

「まるでメイドみたいだね」
「うん、エプロンドレスはケーキ屋さんって感じがするからねぇ~」

 俺と同じ年の友人なんだがこれがまたややこしい。昔この世界に迷い込んだ勇者がエルフの娘との間に出来た子供がジエルとルーで、その後召喚術を完成させ召喚された勇者が獣人族の娘との間に出来た子供がシズクだ。召喚術は失敗作で勇者である俺の友人のたけのみを召喚する魔法だった。そして勇者がこの世界に迷い込んだ原因が2対の御神木様の片方がいなくなったこと…さらに人族がなにやらたくらんでいるらしい。

「おやつ…」
「あっ えーと…これからお掃除なのでお店はまだ開いてないです」
「まだなの~」
「………」

 御神木様に頼まれ俺たちは今片割れの御神木様探しと復活のために動いている。今日は手に入れた情報を元に王都からさらに北へと向かうところだ。

「聞いてくれよリョータ、父の情報がほとんど手に入らなくてさ~ どうやら北の方へ向かったらしいんだが、お前らこれからどこへ向かうつもりなんだ?」
「ジルベスターさんも北なのか。北の方へ進むつもりだよ」
「それは好都合」

 最後に彼はヨルさん。フィレーネの領主の息子で、下水掃除の仕事で出会った。ありえない出会いだよな?

「リョータさんそろそろ向かいますか?」
「ん、ああジエルは放置でいいのか?」
「どうせここと自分の部屋くらいしか移動できませんから大丈夫だと思います」

 俺とルーはネコルーとアスを連れて王都から北へと馬車を進めるのだった。
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