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エルフの里

208. 昔話

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 ルリアーナさんはそれ以上俺の言葉には返事を返さず話を続けた。

「勇者様のことについてですが…彼は私の夫であり、この2人の父親になります」
「…は? いや、え? たけはまだ俺と同じ16歳ですよ?? 子供…いや、ほぼ同じ年の??」

 どういうことだ? というか俺を混乱させたいのかこの人は。もっと順を追って話して欲しい。これじゃ混乱するだけで全然内容が理解できない。

「今からほぼ80年ほど前でしょうかこの地に初めて勇者様が現れたのは…」

 それは驚くべき話だった…


 80年ほど前にここエルフの里に突如現れた勇者が作り出したストーリー… 
 
 勇者はちょっとした手違いでこの世界に紛れ込んだ迷い人だった。最初は勇者という職業すら持たないただの若者。スーツ姿で現れ右も左もわからず森の中でさまよいエルフの里にたどり着く。これは神の計らい。目の届くところに置き観察するため。だけどエルフたちはよそ者をとても嫌がった。今ほど森の出入りが強化されておらずこのようにたまに人がやってくる状態も気に入らないくらいに。このままだと勇者はいずれ殺されてしまうだろうと思った神が自分の身を守るためにと勇者という職業を与えた。

「それがたけだと?」
「はい。勇者様はめきめきと力をつけエルフたちと仲良くなろうと努力しその勇者様のお力でこのエルフの里が出来上がりました」

 話はまだ続くようだ。


 そんな勇者の存在を妬んだのが人族と獣人族。そんなすごい力を持った人物を独り占めするなんて許せない、と。戦争になったそうだ。だけどもちろん勇者がいるエルフの里が落とせるはずもなく、戦争は終わった。圧倒的な強さを手に入れたエルフたちはたいそうよろこび、それが自分たちのものだと勘違いし始めた。そんなころルリアーナと勇者が恋仲になる。神の言葉を伝えることが出来るルリアーナは勇者に言った。神は戦争を望んでいないと。


「神が作り出した子供たちが喧嘩をするのはそりゃー嫌だろうさ」
「はい…」

 まあそう言っても俺がいた世界でも戦争は完全になくなっていないんだが。神の声が聞ける人がいたところで大衆の中からの小さな声。きっとこの世界より響かない。もしかしたら俺がいた世界でも戦争を反対している中に神の声を聞ける人がいるのかもしれない。


 勇者は話し合いをすることを提案する。代表を出し合い3種族は会話をした。結果人族も獣人族も勇者を求めた。別の勇者でもいい、どうやったら手に入る、と。ルリアーナは神に聞いてみると話した。だかそれは無駄に終わる。神にすらそんな手段は知らないというからだ。手違いで送られてしまった勇者を送る手段などあるわけがないのだ。もちろんこのままでは再び戦争が起こることも間違いない。そこで勇者とルリアーナは知恵を絞りあい一つの魔法を作り上げた。


「それってもしかして勇者召喚…」
「はい、ですがこれには欠陥があったんです」

 召喚魔法は完璧に出来たと思われた。そのころにはルリアーナのお腹に新しい命が宿っており、実験は勇者一人で行われることになった。最終チェックだ。すでに魔方陣は専用の用紙に書かれ5枚用意されていた。その1枚を手に取り一人部屋の中央へ。それを離れたところから見守る人々。もちろん人族と獣人族も見ていた。魔方陣が書かれている用紙に勇者が魔力を込めると燃え上がり足元に魔方陣が浮かび上がった。その魔法が起動すると目の前にいた勇者が一度姿を消し、魔方陣の中央に現れた。膝をつき頭を抱えている勇者を見て誰もが成功したと思った。人族と獣人族は召喚用紙を2枚ずつ手に取りすぐにその場を去っていった。早く自分達でも試したいからであろう。ただルリアーナだけは心配そうに勇者の傍へと駆け寄った。
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