上 下
176 / 356
中央の島

160. 2人乗り

しおりを挟む
 しとしと…しとしとと今日は朝から雨が降っていた。島にある市場はそんな天気も慣れているのか雨避けを設置し商売を続けている。そんな雨が降る中俺、ルー、ネコルーに乗ったジエルは歩いていた。ちなみにヨルさんとは朝のうちにすでに分かれている。狭い室内にネコルーを連れて行きちょっと微妙な顔をされるというアクシデント付きで。もちろんわざとではないことには気がついているのか何も言われなかった。

 それで今俺たちが市場を歩いているというのは、船の時間の確認と予約のために反対側にある港へと向かっている途中。何かめぼしいものがあったらお土産に買って帰るんだそうだ。ジエルがえらくネコルーを気に入ってずっと背中に乗っているのは気にしてはいけない。

「天気が悪いのであまりよさそうなものはないですね~」

 ルーの言う通りさっきから市場は食べ物以外は見かけない。やっぱり濡れてしまうと売り物としてよくはないってことなんだろうね。その点野菜や果物はどうせ洗ってから食べるものも多いから多少雨に濡れたところで誰も気にしない。魚は元から海の生き物だしね。

「じゃあさっさと船の予約へ行こうか」
「はい」

 市場を見て歩くのをやめさっさと船着き場へと向かうことにした。

 船着き場につくとすぐそばにある小屋へと向かいそこで船の出発予定を確認する。今日みたいに天気が不安定だと船が出せるかどうかわからないのでいつも出発時間が同じとは限らないそうだ。

「あっ どうやら今日は午後から船が出ないみたいですね。午前の最終出発は、今港に止まっている船みたいです。どうしますか?」
「そうだな…」

 このまま次の船を待った場合天気がさらに悪くなったらいつ出発できるかわからなくなるってことだよな…だけど今無理して途中で天気が崩れたらどうなるんだろう?

「ルー船の移動はどのくらいかかるんだ?」
「半日くらいだと思うけど…」

 冗談じゃない。天気の悪い中半日も船の上とか。絶対かなり揺れる…つまり船酔いがひどくなるってことだ。

「じゃあまた明日にしようか。とくに急いではいないだろう?」
「まあそうですね…急いで見つけてこいとは言われていないかな」

 となればここにいる意味はない。小屋を出て人通りの少ないところから箱庭へ移動だ。すぐに家の鍵を開け中へと入ろうとしたところでネコルーが急に走り出す。

「あっ どこにいくのー?」
「多分湖の所かな。いつもそこにいるし…あーあージエル乗せたまま行っちゃったよ」

 遠目で見た感じジエルは怖がっている感じではなかったから大丈夫だと思うが、このままだとルーのほうが心配してしまうな。それにもしそのまま川とかに飛び込んだら…うん、追いかけようか。そうだっ

「ルー 自転車の後ろに乗ってみる?」

 どうせならと自転車を取り出した。もう一台あればよかったんだけどないんでね。複製で増やしてもいいが、どうせなら2人乗りとかやってみたい。

「のる…? これは乗り物なんですか??」
「そうだよ。まあお試しと思って乗ってみて」

 後ろの荷台をポンポンと叩きルーに座るように勧めた。

「えーとこうですか?」
「うん、それであとは落ちないようにどこかつかまって」

 ルーが荷台の隅を掴んだのを確認すると俺もサドルにまたがりペダルをこぎ始めた。

「わ…わっ」

 ふらふらと走り出しだんだんと速度が出てくるといつの間にかルーは荷台ではなく俺の腰にしがみついていた。そうなんだよね~ 初めてだと案外バランスをとるのが難しんだ。でもこれでルーは多少自転車に座る時のバランスを覚えるだろう。本人が乗りたいというのならルーの分の自転車も用意するか。

 箱庭の中は外と違ってとてもいい天気だった。俺が設定しなければ雨が降ることはない。そんな中を風を受けながらルーと自転車の2人乗り。ちょっと楽しいかもしれない。湖につくまでの長いような短いような時間を堪能しよう。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
私が過去に投稿していたファンタジーの短編集です 再投稿に当たり、加筆修正しています 最新の短編を一番前に置く形にしています。(2024.11より) 収録作品 ①俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ ②自分勝手な弟が『ざまぁ』スキルを手に入れた!? ヤバイざまぁされる!?と思っていたら、どうも様子がおかしい ③ハブられ勇者の付き人やってます 別の場所に旅立った屑王子の体が、いつの間にか魔王に乗っ取られているんだが、どう言うことなんだ? ④誰でも最強になれるゲームの世界に転移したんだが、色々あって転移した先が修羅の世界になるかもしれない など

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...