上 下
156 / 356
ブンナーへ

140. ジエルの価値

しおりを挟む
 食事が終わった後少しだけ眠そうにしているジエルの口が動いた。

「ルーが留守だった時に、知らない人がいきなり来て連れてかれた」

 そういえば少しの間ルーは王都に行っていたっけ。俺もちょうど王都にいて一緒にダンジョンへ行ったんだ。なるほどそのルーが留守の間に…か。

「…」
「…」
「…?」
「終わり」

 終わりかよ! まだ続きがあるのかと思って待ってたわっ

「ジエルそれじゃあ全然わからないよ?」
「私もそれだけしかわからない」
「うーん…じゃあルーは?」

 ジエルに話を聞いても進まないことがわかったのでルーのほうに話を振ることに。

「王都から帰ってきたらジエルがいなかったの。色々調べたらどうやら奴隷として売りに連れていかれるってことがわかって…」
「臨時で護衛パーティに入った、と?」
「はいそうです。後は一緒にいたので知っていますよね?」

 話の流れは理解できたけど…

「ジエルが連れていかれたのはなんでなんだろうか?」

 ふと思いついたことを口に出した。普通理由もなく人の家に押し入ってまで奴隷にすることはないと思うんだ。例えばジエルを誘拐して誰かを脅すとか…まあこの場合だとルーや親とかか? もしくはジエル事態に何かしらの価値があってそれに気がついて連れていかれた??

「多分これ」
「…え?」

 ジエルが髪の毛をかきあげ耳を見えるように表に出す。そこにあったのは尖った耳。

「髪の色も…他の種族にはいないから」
「だからジエルは家からでていないんでしょ? なんでばれるのよ…」

 2人の会話がよくわからなくなってきたんだが、ジエルの尖った耳はやっぱりエルフとかなんだろうか? 初めて違う種族というものの遭遇に俺はちょっと驚いていた。

「あ…えーと私達はエルフなんですよ。本当は気軽にばらすことはしないんですが…リョータさんなら大丈夫だとジエルも言っているので教えました。それで私達が住んでいた家には認識を阻害する魔法がかかっていまして、家から出なければ私達がエルフであることがわからないようになっていたんです。それなのになんで…」
「髪の色…初めて会った時から今の色のままに俺は見えてたけど…その魔法って効果が切れていたってことは?」

 ん? 俺なんか変なこと言ったか?? 気のせいか2人の動きが止まっている。

「え? 切れて…」
「つまり外から丸見えねルー」

 もしかしてそんなことは考えもしなかったってことか…? 思ったよりルーはどこか抜けているのかもしれない。

「2人がエルフだってことはわかったけど。どうしてエルフだと奴隷にされるのかがわからないんだが…」
「そういえばリョータさんは勇者様たちとお友達でしたね」
「ん?」

 たけ達と友達だと何か問題が? ああそうか…この世界のことあまり知らなくても当然ですよねって言っているのか。

「エルフは…いえ、エルフだけじゃないんだけど、人間以外の他種族は基本東側の地にはこないの。なので珍しいみたいで、まるでペットにでもしようとする人がいたりするのよね」

 地図を思い出す…たしかUの字をさかさまにした形だったよな。つまりその東側が人間たちが住んでいる土地ってわけだ。じゃあそうなると西側が他種族の住む土地ってことになるが…

「じゃあなんでルーとジエルはこっちに?」

 という疑問がわいてくる。

「詳しいことは話せないけど、こっちの土地に用事があったんです」
「用事ならしかたないのか…あ、そういえば中央? の島はどうなっているんだ??」

 そうルーの話を聞いて気になった。東と西に分かれて住んでいるなら中央には誰が住んでいるのか。

「そこは商業都市ですね種族関係なく商売をする人が集まっているんですよ~」
「商業都市か…」

 種族間関係なく色んな人が色んなものが売っているんだろうか…ちょっと興味はある。おっととりあえず今はそのことより…

「それでルーとジエルはこれからどうするつもりだ?」

 そう2人の家にはもう帰ることが出来ない。あそこにエルフが住んでいたことがばれているからな。用事がどうなっているのか知らないがもう用がないならさっさと西側へ帰ったほうが安全だし。

「そうですね…その前にリョータさんのこのスキルのこと教えてもらっていいですか?」

 ああそうだったまだ教えていなかった。
 幼女に貰たことだけ省いて簡単に説明することにした。幼女のことは言っても信じてもらえないかもだからな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

ノーアビリティと宣告されたけど、実は一番大事なものを 盗める能力【盗聖】だったので無双する

名無し
ファンタジー
 16歳になったら教会で良いアビリティを貰い、幼馴染たちと一緒にダンジョンを攻略する。それが子供の頃からウォールが見ていた夢だった。  だが、彼が運命の日に教会で受け取ったのはノーアビリティという現実と不名誉。幼馴染たちにも見限られたウォールは、いっそ盗賊の弟子にでもなってやろうと盗賊の隠れ家として噂されている山奥の宿舎に向かった。  そこでウォールが出会ったのは、かつて自分と同じようにノーアビリティを宣告されたものの、後になって強力なアビリティを得た者たちだった。ウォールは彼らの助力も得て、やがて最高クラスのアビリティを手にすることになる。

処理中です...