16 / 29
16
しおりを挟む
そんなこんなで次の日も同じように午前中は依頼を受け、午後からは冒険者ギルドの酒場での仕事を手伝い時間が過ぎていく。今日は3人が泊まりで出かけていた仕事から帰ってくる日。朝から家へと戻りまずが家中クリーンをかけて綺麗にしていく。いなかったのは2日間だけだけど、やっぱりこれだけ簡単に掃除が出来るんだから何度やったっていいくらい。さて、掃除を終わらせたら今日は冒険者ギルドではなくまずは市場へ。やっぱり市場というのは朝のうちに行った方が新鮮で安いものも多いので、数日分まとめて買っておく。まだまだ食材は収納にあるけれどやっぱりお得に買っておきたい。それに自分だけじゃなく他にも食べる人がいるのだから量は必要だ。
『さしずめ坊主が親鳥であいつらは雛ってところだな』
俺が楽しそうに買い物をしていると肩に乗っていたクロがそんなことを言った。その言葉に野菜に手を伸ばしていた手がピタリと止まる。
「親鳥…」
『そうだろう? 寝床を整え餌を用意する。まあ金は出してくれているがそんなもんだろう?』
クロの言いたいこともわからないでもないけど、どちらかというと俺は住み込みの家政婦ってところだと思ってる。それもどうなんだと思わなくもないが、あの人たちはほっておくと掃除はしないし食事もほぼ外食。体に悪いし、お金もかかりすぎるんだ。
『お、なんだ無視か~?』
「邪魔しないでよね~ 安いものはすぐ売れちゃうんだから」
『そうかい』
俺はクロの会話を適当にあしらい買い物を続けた。
買い物が終わってから俺は冒険者ギルドへ。朝よりも人がいなくなり依頼も減っているが俺が受ける分くらいはあるだろうと依頼書を眺めた。
『なあなあたまにはこれとかどうだ?』
クロが指というか羽で示したのは調査依頼。北の森にゴブリンが増えているらしく、巣が出来てないかを調べるものだった。
「仕事の内容としてはそれほど危険はないけど…留守中に一人で外へ出るのはな~」
『すっかりなまっちまったもんだ。もとから森に住んでたっていうのによ』
森に住んでいたころはゴブリンどころかオークだって狩ったことはある。俺個人としては出来るレベルの仕事はやりたい。だけど俺は5歳だからあまり周囲の大人に心配をかけるわけにはいかないんだ。
「しかたないじゃん」
『わかってるって』
「…まあいいや。今日はこれにしようかな」
俺は一枚の依頼書をはがしカウンターへと向かった。
ギルドでの仕事を終え家に帰ってくるとまずは自分の昼ご飯を食べた。その後今日買ってきた食材と残っている食材を確認し、夕食に向けて調理を開始する。仕事に出ている間は仕事の内容にもよるが大した食事はとれていないはず…温かいものとがっつりと肉もいいだろうか。あーそれとパンケーキはちゃんと用意しないとロザリが怒るな。本当ならもっとちゃんとしたパンを焼きたいのだけど、流石に知識が足りなすぎるんだ。なんだっけ天然酵母? 一度ちらりと本で見たことはあるが結局一度も自分で作ってみなかった。イーストを使った方のパンなら何度か作ったことはあるけど、まだこの世界で見たことがない。なのでパンもどきになってしまう。
「おっと手を動かさないとな」
酒場と違ってここでは俺が全部やらなければいけないので時間がかかるんだ。やっぱり5歳というのがね。身長も腕の長さも足りないし、手だって小さい。少しばかり工夫をしないと調理がやりにくいのだ。これらも魔法が使えれば楽になるのかなーとも思わないでもないが…
一通り作業を終えると俺は自室に戻りベッドに横になった。ちょっと張り切りすぎて作りすぎたかもしれん。まあ残っても収納にしまっておけばもつのでいいだろう。
『なんだ寝るのか?』
「ちょっと疲れたから休憩だよ~」
少しだけ今日の依頼が大変だったんだよね~ 受けた依頼は畑の水やりの手伝い。水球を使って水を撒くだけだからといったら、畑の範囲が思ったよりも広くて移動を繰り返すのが結構つらかった。ある程度細かく水を散らすのに神経を使ったのでそれもさらに拍車をかける。魔力の消費はさほどでもないが精神的にきたね。やっぱりまだまだ俺は5歳なんだと思いやられる。
『お? 帰って来たんじゃないか??』
ぼんやりと外を眺めていたクロがそんなことをいった。気配察知を使って俺も確認した。家の前に3人いるな…
「よっと、ありがとうクロ」
『雛に餌をやらんとな~』
「クロがあげるわけじゃないのに…」
文句を言いながら2人で玄関へと向かう。家のノッカーが叩かれた。
「おかえりなさい」
扉を開け3人を迎え入れる。
「帰ったぞシオン~」
「シオン寂しかったでしょう?」
「ただいま」
それぞれがそれぞれの挨拶をして家の中へと入ってきた。たった2日だったけど少しだけ懐かしく感じる。
「クリーン、クリーン、クリーン…」
「お前なぁ~…」
「え、いやだって汚れてるでしょう?」
「そうなんだけどっ そうじゃなくて!」
「シオンお土産があるんだけど?」
トールさんが鞄を叩いている。お土産…なんだろう?
「ありがとう。だけどまずは食事ですかね?」
3人にもみくちゃにされながら俺たちは家の中へと入っていった。
『さしずめ坊主が親鳥であいつらは雛ってところだな』
俺が楽しそうに買い物をしていると肩に乗っていたクロがそんなことを言った。その言葉に野菜に手を伸ばしていた手がピタリと止まる。
「親鳥…」
『そうだろう? 寝床を整え餌を用意する。まあ金は出してくれているがそんなもんだろう?』
クロの言いたいこともわからないでもないけど、どちらかというと俺は住み込みの家政婦ってところだと思ってる。それもどうなんだと思わなくもないが、あの人たちはほっておくと掃除はしないし食事もほぼ外食。体に悪いし、お金もかかりすぎるんだ。
『お、なんだ無視か~?』
「邪魔しないでよね~ 安いものはすぐ売れちゃうんだから」
『そうかい』
俺はクロの会話を適当にあしらい買い物を続けた。
買い物が終わってから俺は冒険者ギルドへ。朝よりも人がいなくなり依頼も減っているが俺が受ける分くらいはあるだろうと依頼書を眺めた。
『なあなあたまにはこれとかどうだ?』
クロが指というか羽で示したのは調査依頼。北の森にゴブリンが増えているらしく、巣が出来てないかを調べるものだった。
「仕事の内容としてはそれほど危険はないけど…留守中に一人で外へ出るのはな~」
『すっかりなまっちまったもんだ。もとから森に住んでたっていうのによ』
森に住んでいたころはゴブリンどころかオークだって狩ったことはある。俺個人としては出来るレベルの仕事はやりたい。だけど俺は5歳だからあまり周囲の大人に心配をかけるわけにはいかないんだ。
「しかたないじゃん」
『わかってるって』
「…まあいいや。今日はこれにしようかな」
俺は一枚の依頼書をはがしカウンターへと向かった。
ギルドでの仕事を終え家に帰ってくるとまずは自分の昼ご飯を食べた。その後今日買ってきた食材と残っている食材を確認し、夕食に向けて調理を開始する。仕事に出ている間は仕事の内容にもよるが大した食事はとれていないはず…温かいものとがっつりと肉もいいだろうか。あーそれとパンケーキはちゃんと用意しないとロザリが怒るな。本当ならもっとちゃんとしたパンを焼きたいのだけど、流石に知識が足りなすぎるんだ。なんだっけ天然酵母? 一度ちらりと本で見たことはあるが結局一度も自分で作ってみなかった。イーストを使った方のパンなら何度か作ったことはあるけど、まだこの世界で見たことがない。なのでパンもどきになってしまう。
「おっと手を動かさないとな」
酒場と違ってここでは俺が全部やらなければいけないので時間がかかるんだ。やっぱり5歳というのがね。身長も腕の長さも足りないし、手だって小さい。少しばかり工夫をしないと調理がやりにくいのだ。これらも魔法が使えれば楽になるのかなーとも思わないでもないが…
一通り作業を終えると俺は自室に戻りベッドに横になった。ちょっと張り切りすぎて作りすぎたかもしれん。まあ残っても収納にしまっておけばもつのでいいだろう。
『なんだ寝るのか?』
「ちょっと疲れたから休憩だよ~」
少しだけ今日の依頼が大変だったんだよね~ 受けた依頼は畑の水やりの手伝い。水球を使って水を撒くだけだからといったら、畑の範囲が思ったよりも広くて移動を繰り返すのが結構つらかった。ある程度細かく水を散らすのに神経を使ったのでそれもさらに拍車をかける。魔力の消費はさほどでもないが精神的にきたね。やっぱりまだまだ俺は5歳なんだと思いやられる。
『お? 帰って来たんじゃないか??』
ぼんやりと外を眺めていたクロがそんなことをいった。気配察知を使って俺も確認した。家の前に3人いるな…
「よっと、ありがとうクロ」
『雛に餌をやらんとな~』
「クロがあげるわけじゃないのに…」
文句を言いながら2人で玄関へと向かう。家のノッカーが叩かれた。
「おかえりなさい」
扉を開け3人を迎え入れる。
「帰ったぞシオン~」
「シオン寂しかったでしょう?」
「ただいま」
それぞれがそれぞれの挨拶をして家の中へと入ってきた。たった2日だったけど少しだけ懐かしく感じる。
「クリーン、クリーン、クリーン…」
「お前なぁ~…」
「え、いやだって汚れてるでしょう?」
「そうなんだけどっ そうじゃなくて!」
「シオンお土産があるんだけど?」
トールさんが鞄を叩いている。お土産…なんだろう?
「ありがとう。だけどまずは食事ですかね?」
3人にもみくちゃにされながら俺たちは家の中へと入っていった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる