異世界でかけあがれ!!

れのひと

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 そんなこんなで次の日も同じように午前中は依頼を受け、午後からは冒険者ギルドの酒場での仕事を手伝い時間が過ぎていく。今日は3人が泊まりで出かけていた仕事から帰ってくる日。朝から家へと戻りまずが家中クリーンをかけて綺麗にしていく。いなかったのは2日間だけだけど、やっぱりこれだけ簡単に掃除が出来るんだから何度やったっていいくらい。さて、掃除を終わらせたら今日は冒険者ギルドではなくまずは市場へ。やっぱり市場というのは朝のうちに行った方が新鮮で安いものも多いので、数日分まとめて買っておく。まだまだ食材は収納にあるけれどやっぱりお得に買っておきたい。それに自分だけじゃなく他にも食べる人がいるのだから量は必要だ。

『さしずめ坊主が親鳥であいつらは雛ってところだな』

 俺が楽しそうに買い物をしていると肩に乗っていたクロがそんなことを言った。その言葉に野菜に手を伸ばしていた手がピタリと止まる。

「親鳥…」
『そうだろう? 寝床を整え餌を用意する。まあ金は出してくれているがそんなもんだろう?』

 クロの言いたいこともわからないでもないけど、どちらかというと俺は住み込みの家政婦ってところだと思ってる。それもどうなんだと思わなくもないが、あの人たちはほっておくと掃除はしないし食事もほぼ外食。体に悪いし、お金もかかりすぎるんだ。

『お、なんだ無視か~?』
「邪魔しないでよね~ 安いものはすぐ売れちゃうんだから」
『そうかい』

 俺はクロの会話を適当にあしらい買い物を続けた。

 買い物が終わってから俺は冒険者ギルドへ。朝よりも人がいなくなり依頼も減っているが俺が受ける分くらいはあるだろうと依頼書を眺めた。

『なあなあたまにはこれとかどうだ?』

 クロが指というか羽で示したのは調査依頼。北の森にゴブリンが増えているらしく、巣が出来てないかを調べるものだった。

「仕事の内容としてはそれほど危険はないけど…留守中に一人で外へ出るのはな~」
『すっかりなまっちまったもんだ。もとから森に住んでたっていうのによ』

 森に住んでいたころはゴブリンどころかオークだって狩ったことはある。俺個人としては出来るレベルの仕事はやりたい。だけど俺は5歳だからあまり周囲の大人に心配をかけるわけにはいかないんだ。

「しかたないじゃん」
『わかってるって』
「…まあいいや。今日はこれにしようかな」

 俺は一枚の依頼書をはがしカウンターへと向かった。

 ギルドでの仕事を終え家に帰ってくるとまずは自分の昼ご飯を食べた。その後今日買ってきた食材と残っている食材を確認し、夕食に向けて調理を開始する。仕事に出ている間は仕事の内容にもよるが大した食事はとれていないはず…温かいものとがっつりと肉もいいだろうか。あーそれとパンケーキはちゃんと用意しないとロザリが怒るな。本当ならもっとちゃんとしたパンを焼きたいのだけど、流石に知識が足りなすぎるんだ。なんだっけ天然酵母? 一度ちらりと本で見たことはあるが結局一度も自分で作ってみなかった。イーストを使った方のパンなら何度か作ったことはあるけど、まだこの世界で見たことがない。なのでパンもどきになってしまう。

「おっと手を動かさないとな」

 酒場と違ってここでは俺が全部やらなければいけないので時間がかかるんだ。やっぱり5歳というのがね。身長も腕の長さも足りないし、手だって小さい。少しばかり工夫をしないと調理がやりにくいのだ。これらも魔法が使えれば楽になるのかなーとも思わないでもないが…

 一通り作業を終えると俺は自室に戻りベッドに横になった。ちょっと張り切りすぎて作りすぎたかもしれん。まあ残っても収納にしまっておけばもつのでいいだろう。

『なんだ寝るのか?』
「ちょっと疲れたから休憩だよ~」

 少しだけ今日の依頼が大変だったんだよね~ 受けた依頼は畑の水やりの手伝い。水球を使って水を撒くだけだからといったら、畑の範囲が思ったよりも広くて移動を繰り返すのが結構つらかった。ある程度細かく水を散らすのに神経を使ったのでそれもさらに拍車をかける。魔力の消費はさほどでもないが精神的にきたね。やっぱりまだまだ俺は5歳なんだと思いやられる。

『お? 帰って来たんじゃないか??』

 ぼんやりと外を眺めていたクロがそんなことをいった。気配察知を使って俺も確認した。家の前に3人いるな…

「よっと、ありがとうクロ」
『雛に餌をやらんとな~』
「クロがあげるわけじゃないのに…」

 文句を言いながら2人で玄関へと向かう。家のノッカーが叩かれた。

「おかえりなさい」

 扉を開け3人を迎え入れる。

「帰ったぞシオン~」
「シオン寂しかったでしょう?」
「ただいま」

 それぞれがそれぞれの挨拶をして家の中へと入ってきた。たった2日だったけど少しだけ懐かしく感じる。

「クリーン、クリーン、クリーン…」
「お前なぁ~…」
「え、いやだって汚れてるでしょう?」
「そうなんだけどっ そうじゃなくて!」
「シオンお土産があるんだけど?」

 トールさんが鞄を叩いている。お土産…なんだろう?

「ありがとう。だけどまずは食事ですかね?」

 3人にもみくちゃにされながら俺たちは家の中へと入っていった。
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