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王都へのお使い
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アーヤの魔法で見張りをする必要がなくなった3人は焚火を囲むように各自寝袋や毛布にくるまり横になっていた。ニャマに至ってはすでに眠っているらしく先ほどから何か寝言を言っているくらいだ。
「もう食べられにゃいにゃ~ だけど譲るのもいやじゃにゃぁ~…」
幸せそうに寝言を言っているニャマを横目で見ながらアークは体を起こした。魔法があるから大丈夫だとは言われたがアークは心配でならなかったのだ。一度自分の身で確認しないとやはり信用出来ない性分なのでどうしようもないといったところだろうか…
数刻ほど過ぎたころ近くで草を踏みしめるような音がアークの耳に届いた。アークはちらりとアーヤとニャマを見て寝ていることを確認する。2人が出した音ではないということだ。アークは腰に付けている剣に手を添えると音のした方角をじっと睨みつけた。
「1…2…2匹か」
別にアークの目がいいわけではない。アークは耳がとてもよく聞こえるので音から方向と向かってくる相手の数がわかるだけだ。まだ相手が何なのかもわかっていない。音がだんだんと近づいてきてアークの目にも見えるくらいの距離へ到達する。猫獣人なだけあり暗闇でも目が効くので夜でも昼間と同じように見えるのだ。
どうやら相手はゴブリンだったようだ。小柄な鬼ってやつだ。ゴブリン達はアーク達の方へとまっすぐ向かてきているのだがどうやら鼻をひくつかせ辺りを窺っている。すぐ目の前にまで来ても目が合うどころか首を傾げるばかりでそこから先へは向かってこない。
「ぐぎゃっ」
ゴブリン達は一声上げると進路を変えどこかへと行ってしまった。アーヤの使った魔法薬はちゃんと効果が発揮されていると証明された瞬間だった。アークはほっと胸をなでおろすと剣から手を離した。そしてアークも数回それを確認すると毛布にくるまり眠りにつくのだった───
「朝だにゃー 起きるにゃー お腹すいたにゃー ご飯にするにゃーっ」
真っ先に寝付いていたニャマが真っ先に起き上がり朝だと騒ぎだした。確かに周りは大体見えるようになりかなり明るくなったがまだ日が昇ってから間もないくらいの時間だ。その声に毎回起こされるアークは慣れたものであくびをしつつも体を起こした。そんなうるさい中アーヤはまだ起きていない。それに気が付いたアークはニャマの口にそっと手を当てた。
「おはよう。ご飯用意するから静かに。アーヤがまだ寝てるよ」
「はーい。あっ ご飯て…もしかしなくてもあれにゃ?」
「はぁ…それしかないでしょう」
「いやにゃっ アーヤを起こして何か違うものをもらうにゃっ」
首をぶんぶんと振りニャマは必死にアークに意見する。昨日アーヤからもらった串焼きがよほど忘れられなかったのだろう。目に涙をためながら騒ぐニャマをなだめるアークだが、こんなに騒いでもアーヤが起きないので不思議に思いアーヤのほうをじっと見つめた。
寝ているアーヤの耳には耳栓がされており初めからゆっくり眠るつもりだったのが窺える。それを見たアークはつい出来心で耳栓を片方外してみた。
「だからニャマはアーヤのご飯をたべるのにゃああああああああっ!!」
タイミングがいいのか悪いのか丁度ニャマが叫んだ。流石にうるさかったらしくアーヤが慌てて飛び起きてしまった。
「な…何? どうかしたの??」
「アーヤ起きたにゃっ」
「あ、おはようニャマ…アーク。すごい声だったけど何かあったの??」
まだ少し目の覚め切っていないアーヤはニャマを撫でつつ現状をアークに訊ねた。すると先ほどのことをアーヤは聞かされ涙目のニャマを見ながらクスリと笑った。
「ごめんねニャマ。私もそれほどいいものは持っていないんだよ。昨日のはちょうど宿場町で少し買ったものだったの」
「そうにゃの…?」
誰が見てもわかるくらいしゅんと耳を折り曲げたニャマがかわいらしく、アーヤは更に頭を撫で続けた。
「そうね…後はやっぱり干し肉とかパンくらいだよ私も」
アーヤが鞄から取り出した干し肉とパンをニャマに見せるとニャマだけではなくアークも目を見開いた。鞄から取り出された干し肉は見知ったものだったのだがパンが違ったのだ。アーヤが取り出した途端ふんわりと出来立てパンの香りが周辺に漂う。
「ごくり…パン、柔らかそうにゃ…」
「こ、こらニャマ!!」
パンにニャマの視線が釘付けになる。そんなニャマをアークが止めているが視線はやはりパンに向いていた。それに気が付いたアーヤは昨日と同じく2人にパンを差し出した。
「女神様にゃ…」
「もう、ほんとごめんなさいっ 王都までしっかり送り届けるので…ニャマお礼はっ?」
「もががうお (ありがとう)!」
「あははっ どういたしまして?」
こんな森の中でも楽しい気分になれると思っていなかったアーヤは昨日のことなど忘れてしまったのかすっかり笑顔になっていた。
食事を済ませると王都へ向かうべく出発をする。ここから王都までは後3日はかかるだろう。徒歩で行くにしても列車で2日半の所を5日ほどでたどり着けるのには理由がある。列車で王都へ向かう通りはこの森を大きく迂回していて距離がかなりあるのだ。森の中に列車を通す話も最初作られるときに出ていたそうなのだが、時折現れる魔物や魔獣達に襲われてしまっては意味がない。それなので列車は地面より高いところを通って襲われにくくしているのだった。
「ここから次の宿場町まで半刻もかからないけどどうしますか?」
「そうね…宿は勿体ないから泊まらないけど、軽く休憩と食べ物を補充しようかな」
「食べ物にゃっ」
食べ物に即反応したニャマを見たアーヤはおかしくて仕方がなかった。笑いを抑えるのがつらかったくらいだ。アークはため息をつきニャマの頭をポンポンと叩く。
「??」
なんで叩かれているのかわかっていないニャマは首を傾げながら2人を見上げた。顔をそらしフルフルと震えるアーヤと困った顔のアークを見ながら少しだけ不安になり自分がしっかりしなければと思うのだった。
「もう食べられにゃいにゃ~ だけど譲るのもいやじゃにゃぁ~…」
幸せそうに寝言を言っているニャマを横目で見ながらアークは体を起こした。魔法があるから大丈夫だとは言われたがアークは心配でならなかったのだ。一度自分の身で確認しないとやはり信用出来ない性分なのでどうしようもないといったところだろうか…
数刻ほど過ぎたころ近くで草を踏みしめるような音がアークの耳に届いた。アークはちらりとアーヤとニャマを見て寝ていることを確認する。2人が出した音ではないということだ。アークは腰に付けている剣に手を添えると音のした方角をじっと睨みつけた。
「1…2…2匹か」
別にアークの目がいいわけではない。アークは耳がとてもよく聞こえるので音から方向と向かってくる相手の数がわかるだけだ。まだ相手が何なのかもわかっていない。音がだんだんと近づいてきてアークの目にも見えるくらいの距離へ到達する。猫獣人なだけあり暗闇でも目が効くので夜でも昼間と同じように見えるのだ。
どうやら相手はゴブリンだったようだ。小柄な鬼ってやつだ。ゴブリン達はアーク達の方へとまっすぐ向かてきているのだがどうやら鼻をひくつかせ辺りを窺っている。すぐ目の前にまで来ても目が合うどころか首を傾げるばかりでそこから先へは向かってこない。
「ぐぎゃっ」
ゴブリン達は一声上げると進路を変えどこかへと行ってしまった。アーヤの使った魔法薬はちゃんと効果が発揮されていると証明された瞬間だった。アークはほっと胸をなでおろすと剣から手を離した。そしてアークも数回それを確認すると毛布にくるまり眠りにつくのだった───
「朝だにゃー 起きるにゃー お腹すいたにゃー ご飯にするにゃーっ」
真っ先に寝付いていたニャマが真っ先に起き上がり朝だと騒ぎだした。確かに周りは大体見えるようになりかなり明るくなったがまだ日が昇ってから間もないくらいの時間だ。その声に毎回起こされるアークは慣れたものであくびをしつつも体を起こした。そんなうるさい中アーヤはまだ起きていない。それに気が付いたアークはニャマの口にそっと手を当てた。
「おはよう。ご飯用意するから静かに。アーヤがまだ寝てるよ」
「はーい。あっ ご飯て…もしかしなくてもあれにゃ?」
「はぁ…それしかないでしょう」
「いやにゃっ アーヤを起こして何か違うものをもらうにゃっ」
首をぶんぶんと振りニャマは必死にアークに意見する。昨日アーヤからもらった串焼きがよほど忘れられなかったのだろう。目に涙をためながら騒ぐニャマをなだめるアークだが、こんなに騒いでもアーヤが起きないので不思議に思いアーヤのほうをじっと見つめた。
寝ているアーヤの耳には耳栓がされており初めからゆっくり眠るつもりだったのが窺える。それを見たアークはつい出来心で耳栓を片方外してみた。
「だからニャマはアーヤのご飯をたべるのにゃああああああああっ!!」
タイミングがいいのか悪いのか丁度ニャマが叫んだ。流石にうるさかったらしくアーヤが慌てて飛び起きてしまった。
「な…何? どうかしたの??」
「アーヤ起きたにゃっ」
「あ、おはようニャマ…アーク。すごい声だったけど何かあったの??」
まだ少し目の覚め切っていないアーヤはニャマを撫でつつ現状をアークに訊ねた。すると先ほどのことをアーヤは聞かされ涙目のニャマを見ながらクスリと笑った。
「ごめんねニャマ。私もそれほどいいものは持っていないんだよ。昨日のはちょうど宿場町で少し買ったものだったの」
「そうにゃの…?」
誰が見てもわかるくらいしゅんと耳を折り曲げたニャマがかわいらしく、アーヤは更に頭を撫で続けた。
「そうね…後はやっぱり干し肉とかパンくらいだよ私も」
アーヤが鞄から取り出した干し肉とパンをニャマに見せるとニャマだけではなくアークも目を見開いた。鞄から取り出された干し肉は見知ったものだったのだがパンが違ったのだ。アーヤが取り出した途端ふんわりと出来立てパンの香りが周辺に漂う。
「ごくり…パン、柔らかそうにゃ…」
「こ、こらニャマ!!」
パンにニャマの視線が釘付けになる。そんなニャマをアークが止めているが視線はやはりパンに向いていた。それに気が付いたアーヤは昨日と同じく2人にパンを差し出した。
「女神様にゃ…」
「もう、ほんとごめんなさいっ 王都までしっかり送り届けるので…ニャマお礼はっ?」
「もががうお (ありがとう)!」
「あははっ どういたしまして?」
こんな森の中でも楽しい気分になれると思っていなかったアーヤは昨日のことなど忘れてしまったのかすっかり笑顔になっていた。
食事を済ませると王都へ向かうべく出発をする。ここから王都までは後3日はかかるだろう。徒歩で行くにしても列車で2日半の所を5日ほどでたどり着けるのには理由がある。列車で王都へ向かう通りはこの森を大きく迂回していて距離がかなりあるのだ。森の中に列車を通す話も最初作られるときに出ていたそうなのだが、時折現れる魔物や魔獣達に襲われてしまっては意味がない。それなので列車は地面より高いところを通って襲われにくくしているのだった。
「ここから次の宿場町まで半刻もかからないけどどうしますか?」
「そうね…宿は勿体ないから泊まらないけど、軽く休憩と食べ物を補充しようかな」
「食べ物にゃっ」
食べ物に即反応したニャマを見たアーヤはおかしくて仕方がなかった。笑いを抑えるのがつらかったくらいだ。アークはため息をつきニャマの頭をポンポンと叩く。
「??」
なんで叩かれているのかわかっていないニャマは首を傾げながら2人を見上げた。顔をそらしフルフルと震えるアーヤと困った顔のアークを見ながら少しだけ不安になり自分がしっかりしなければと思うのだった。
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