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第二章 幽霊少女ミリィ

第二十五話 クルーラの町でバカンスを

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お待たせしました!
今回のお話から、第二章の開始となります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 また、夜明けが来た。
 東の空から昇る眩しい光。夜空を青空へと変貌させる、神々しい光。真っ暗な闇と化した海を、青く輝かせる神秘の光。
 今となってはすっかり見飽きてしまった光景を、今日もその目に焼き付ける。
 理屈では綺麗だということは分かる。しかし心の底から感激したことは、恐らく一度もないだろう。
 むしろ――ため息が出てくる。
 いつになったら、ここから解放されるのか。苦しみを感じない苦しみを、一体いつまで味わえば良いというのだろうか。
 神様が見ているのならば、是非とも問いかけたい。
 私は何か、悪いことをしましたか、と。
 こうして長い時間を過ごす羽目になった理由に、一応心当たりはある。しかしそれは決して悪いことではないと、今でも強く思えてならない。
 ――願うことは、そんなに悪いことなのだろうか?
 眠りを忘れてしまった頭でそう考える。しかし答えは出てこない。何故なら誰もその問いに答えてくれないからだ。
 こうして考えている間にも、光は町を明るく照らしていく。
 そしてやがて、人々が姿を見せる。今日も最高の一日が始まるんだと、実に気持ち良さそうな笑顔を浮かべ、堂々と胸を張って歩き出す。
 ――忌々しい。
 そんな言葉を強い気持ちを込めてぶつける素振りを見せても、何の効果も現れることはない。
 そして真逆の人々の姿も見られた。
 今日も仕事だ。行きたくない。永遠の休みが訪れてくれればいいのに――そんなことをぼやきながら、猫背の状態でトボトボと歩く姿。
 ――永遠なんてただの呪いだよ。
 その後ろ姿にバシッと言ってやりたかったが、言ったところで効果がないのは分かっている。全くもどかしくて仕方がない。
 だから念を送る。それこそ何の効果もないと分かっていながらも。
 理不尽だと何度思ったことだろうか。ここまで呪われているというのに、呪いをかけることができないなんて。

 まるで、神様がそれを許さないと言っているような、そんな気さえしていた。


 ◇ ◇ ◇


「いやっほぉーーっ♪」

 あちこちからそんな声が聞こえてくる。むしろ聞こえてこないほうがおかしいとすら思えてくる光景でもあった。
 季節は夏。綺麗な海岸と海が広がるリゾート地としても有名な町、クルーラ。
 浜辺には当然の如く、水着姿の人々が溢れかえっていた。
 はしゃぎ倒す小さな子供に手を焼く親たち。ビーチバレーで得点を奪取しようと躍起になる者たち。サーフィンで良い波に乗ろうとして、成功する者の隣で失敗して海に呑みこまれてしまう者。
 そして――

「おい、見ろよ! あの子スッゲー良くねぇ!?」

 ある男の声を皮切りに、周囲の男たちがこぞって注目し出していた。

「ヤベェな、あのプルンと揺れる果実……さぞかし甘くて美味いんだろうな」
「そして白い肌に黒髪ロング。可愛いを通り越して美しいぜ!」
「あの引き締まり具合、結構鍛えてると見える」
「何気に短剣装備してるな。冒険者か?」
「今のところ周りには誰もいないようだが……まさか一人で来てるのか?」

 男たちはまさに釘付け状態であった。
 そのスタイル抜群の白いビキニ姿は、まさにチラつかせているエサそのもの。それにまんまと目を奪われ、狙うかどうしようか迷わせる姿を、冷めた目つきで女たちが見ていることに、果たして男たちは気づいているのだろうか。
 ちなみに、女性の中にも恍惚な表情でそのビキニ姿に見惚れる者も存在しているのだが、誰もそこにツッコミを入れる者はいなかった。

「よっし! この俺様が、あの子に声をかけて振り向かせてやるぜ!」

 小麦色に焼けた金髪の男が、鼻息を荒くしながら歩き出す。一歩ずつ砂浜を踏み固めるように歩き、女性に声をかけるべく、軽く片手を挙げたその時だった。

「あ、いたっ♪」

 女性は嬉しそうな声を出しながら走り出した。そして――

「ミナヅキー、お待たせーっ♪」
「おぅ、来たかアヤメ」

 ビーチパラソルの下でのんびり座っていたミナヅキの元に、アヤメが恥ずかしげもなく胸を揺らしながら駆け寄る。
 そして彼の前に立ち止まり、堂々とポーズを取った。

「ふふーん、どう? アヤメさんの華麗なるお姿は?」

 両手をあげて首の後ろで組み、アヤメは水着姿を惜しみなく披露する。それに対してミナヅキは、特に恥ずかしそうにすることもなく立ち上がった。

「おう、似合ってるぞ」

 そしてアヤメの頭の上にポンと手を置いた。

「もぉーっ、子ども扱いしないでよね!」

 身じろぎして文句を言いつつも、決して怒ったり嫌がっている様子はない。むしろどこか嬉しそうであり、それを証明するかの如く、アヤメはミナヅキにすり寄っていた。
 当然ながら、二人して周囲のことなど全く気にしてなどいない。
 故に口をあんぐりと開けてショックを受けている男たちのことにも、全くと言って良いほど気づいていなかった。

「……なんだよ、やっぱり男連れだったのか」

 金髪の男は露骨に肩を落としながら、トボトボと去っていく。それを皮切りに、他の男たちも散り始めていた。
 流石に彼女の意中の男を押し退けてまで、ナンパを成功させる気はない。
 殆どの男がそう思っていたのだが――

「気に入らねぇな」

 残念ながら、全員の男がそうとは限らないのだった。

「何でよりにもよって、あんなモヤシっぽい男が……鍛えてる俺のほうが、あの黒髪美人にふさわしいだろうがよ!」

 大柄で分厚い筋肉を身に纏う男が、怒りの形相でミナヅキたちを――正確にはミナヅキ一人を睨む。
 嫌な予感が漂い始めた。しかしそれを周囲は止めようとしない。間違いなく声をかけた瞬間、自分が痛い目を見てしまう。そんな恐怖を感じているからだ。
 男はのっしのっしと歩き出し、ミナヅキたちの元へ向かう。

「よぉ、黒髪の姉ちゃん。そんな男なんざ放っておいて、俺と遊ばねぇか?」

 ほんのわずかに、周囲の空気がピリッとなった。アイツ本当に声かけたと、そんな驚きが広がっていく中、声をかけられたアヤメは――

「――はぁ? いきなり何言ってるんですか? さっさと消えてくれません?」

 幸せそうな表情がスッと消え、冷たく射貫くような視線で男を睨みつける。声も冷え切っており、目の前にいるミナヅキをも引きつらせていた。

(マジでどこからそんな声が出せるんだ?)

 ミナヅキは心の底から疑問に思った。
 ハッキリ言って、アヤメのほうが怖かった。大柄なナンパ男の存在が、既にかき消されつつあるほどに。
 一方の男は、そんなアヤメの様子に気づいていないのか、刈り込まれた短髪にも限らず、髪の毛をかき分ける仕草をしながら酔いしれるように笑う。

「キミのような美人は、鍛えている俺にこそふさわしい。そんなモヤシのような男の傍にいても不幸になるだけ――どばぁっ!?」

 男は最後まで言い切る前に吹き飛ばされた。アヤメが魔法を放ったのだ。
 彼女の手には、しっかりと次の魔力玉が生成されている。その目は完全に据わっており、どんな感情を抱いているかは、もはや考えるまでもない。

「いい加減にしなさい。私の旦那をバカにするヤツは、絶対に許さないわよ!」

 その瞬間、周囲に更なるどよめきが走る。

「彼氏じゃなくて旦那だったのか!」
「流石に予想してなかったな」
「こりゃあ声かけなくて正解だったかも」

 ――そんな呟きが聞こえてきた。
 しかし肝心の吹き飛ばされた男は、起き上がりながらもフッと笑みを浮かべ、そして豪快に笑い出した。

「わっはっはっ! こりゃ面白くなってきたぜ! 強い女をねじ伏せるのも、ナンパの醍醐味ってもんだよなぁ!」

 笑い声が海岸に響き渡る。声を出しているのはその男だけだった。ミナヅキもアヤメも、そして周囲のギャラリーも、皆揃って絶句している。
 ――コイツ正気か?
 その気持ちが男を除いて一致していた。

「さぁ、かかってきな嬢ちゃん! 俺の分厚い肉体で受けて止めてやろう!」

 両手を広げながら高らかに言い放つ男を、アヤメはどこまでも冷めきった目で見据えながら、スッと短剣を抜く。
 そして――彼女は動いた。

「――はっ!?」

 男が気づいたときには、既にアヤメは背後に抜けていた。
 砂浜と言う足場の悪さなど気にも留めずに、凄まじい速さで切り込む。男はその技術を実感することすらなかった。
 何故ならば――

「ちっさ……」

 誰かがそう呟いた。周囲の視線が男の下部に集まっている。男はそれに気づき、恐る恐る視線を下に向けてみた。
 履いていた水着がただの布切れと化して、砂浜に散らばっていた。
 まさに生まれたままの姿。くっきりと履いていたことを示す日焼け跡が、なんとも言えない雰囲気を醸し出している。
 男はあんぐりと口を開けながら硬直し、そして叫んだ。

「いやあぁぁーーーん、見ないでえぇーーっ!!」

 両手で隠しながらどこぞへと走り去るその姿は、とても軽やかだった。そしてそれを笑う者も、貶す者もいない。
 ただ、ひたすら無言だった。何が起こったのかすら考えられず、ただ無言を貫くことしかできなかった。

「――ふぅ」

 そんな中、アヤメ一人だけが短剣を鞘に収めつつ、一仕事終えたと言わんばかりに息を吐き出した。
 そしてミナヅキのほうを向いて、気持ち良さそうな笑みを浮かべる。

「さて、邪魔者もいなくなったみたいだし、私たちも遊びましょ♪」
「あ、あぁ……」

 どこか有無を言わさないような雰囲気を感じながら、ミナヅキは頷く。
 その時――

「あのぉ、ちょっといいですか?」

 不意に女性の声が聞こえてきた。二人が振り向いたそこには、赤いビキニ姿でパーカーを身に纏った、サフラン色のショートボブの女性が立っていた。

「失礼ですけど、アヤメさんっておっしゃってましたよね? もしかして、フレッド王都から来られた方では?」
「え、えぇ、まぁ……」
「やっぱり!」

 その女性は感激したかのように声を上げ、そしてアヤメの手を握った。

「私、ずっとあなたにお会いしたかったんです!」

 女性から突然そう言われ、アヤメはどう返して良いのか分からず、ただ狼狽えることしかできなかった。


 ◇ ◇ ◇


「ほんっとーにウチのメンバーがスミマセンでした!」

 腰からほぼ九十度に折りながら、体ごと頭を下げる青年。彼はアヤメに声をかけた女性が所属する、冒険者パーティのリーダーことティーダである。
 このまま放っておくと、土下座しかねない。そう思ったミナヅキは、とりあえず落ち着かせようと試みることにした。

「いや、俺たちはもう気にしてませんから、なぁ?」
「そうそう。ちょっと驚いただけで、なんともありませんし」

 アヤメもやや表情を引きつらせながら言う。そこに騒ぎ立てた張本人が、笑みを輝かせながらウットリとする。

「流石はアヤメさん。心がお広いですね」
「テメェはもうちっと反省しろ!」
「あいたっ!?」

 見事な拳骨を喰らい、涙目になりながらティーダを見上げる。

「酷いよティーダ。このマヤちゃんの頭が凹んだら、どうするつもりだい?」
「お前の頭はそんなヤワじゃねぇだろ」
「ぶーぶー!」

 しれっと返されたマヤは、頬を膨らませながら抗議する。当然の如くティーダは聞く耳を持とうとしない。
 そこに魔導師の青年ハンジが、こんがりと焼けた肉と野菜がたくさん刺さった串焼きを持ってきた。

「ミナヅキさん、アヤメさん。焼き上がりましたので、どうぞお食べください」
「あ、どうも」
「いただきまーす♪」

 ミナヅキとアヤメが、串焼きを受け取り頬張った。香ばしい肉と野菜の味が口いっぱいに広がり、一気に満足感を与えてくれる。

「うまっ!」
「ホントたまんないわね、コレ」
「でしょう? やっぱり海と言えば、バーベキューですよね♪」

 二人の反応に、ハンジは満足そうに笑う。そこにティーダとマヤも加わり、賑やかな雑談が始まるのだった。

「まさかフレッド王都を救った夫婦に会えるとは、思わなかったな」

 ティーダが肉にかぶりつきながら切り出す。

「マヤが声をかけてるのを見た時は、何があったのかと驚いちまったが……」
「だってアヤメさん本人に会えたんだよ? この前フレッド王都で起こった魔物襲撃事件。そこで大活躍した、期待の新人魔法剣士ってね!」
「あはは……そう言われると恥ずかしいわね」

 鼻息を荒くしながら語るマヤに、アヤメは苦笑する。場の盛り上げついでに言われることはあっても、ここまで面と向かって真剣な様子で言われるのは初めてだったため、どうにも戸惑わずにはいられない。

「ミナヅキさんの調合技術も凄いですよね。さっきの酔い冷まし、かなり効き目が強かったみたいですよ」

 ハンジが荷物を置いているビーチパラソルのほうに視線を向ける。そこには女性が一人横になって休んでいた。
 ティーダのパーティメンバーの一人であるニコレットである。
 優秀な短剣使いではあるのだが、凄まじい酒好きという欠点があるのだった。

「ニコレットのヤツ、ちょっと目を離した隙に泥酔しやがるんだもんな」

 ティーダが深いため息をつく。

「マジでどうするかと思ってた矢先に、ミナヅキが薬を調合してくれて、本当に助かったぜ。この借りは必ず返させてもらうからな」
「そんな気にするなって。こうして美味いメシをご馳走してくれたじゃないか」

 困ったような笑顔をするミナヅキに、ティーダは真剣な表情で迫る。

「いやいや、こんなんじゃ足りねぇっての! 何か困ったことがあったら、遠慮なく言ってくれよな。俺たちもしばらくはこの町にいるからよ」
「分かった分かった。分かったから少し落ち着け」

 このままだといつまでも言ってきそうな気配がしたため、ミナヅキは強引に話を切り上げることにした。
 ここでアヤメが、今のフレーズで少し気になった部分を見つけた。

「ねぇ、しばらくはこの町に、ってことは……皆も他の町から?」
「そ、アヤメさんたちと同じくバカンスってヤツね。リゾート地を拠点とするのも良いんじゃないかって最初は思ってたんだけど、やっぱいざとなると、微妙に居心地が悪くってさ」
「そーゆーこった」

 マヤの言葉にティーダも同意するように深く頷いた。そして軽く周囲の様子を伺いつつ、声を潜めてミナヅキたちに顔を近づける。

「ここだけの話、この町のギルド……正確にはギルドマスターの評判が、お世辞にもあんま良くなくってな」
「何かにつけて、厳しく取り締まるケースが多いんです。その分、治安も良くしているので、あまり文句も出てないみたいですが」
「あぁ、どーりで……この町に来てから、荒くれの姿とか見ないと思った」

 ハンジの言葉にミナヅキは納得しながら頷いた。そこにマヤが、得意げな笑みを浮かべてくる。

「ちなみに私が聞いた話だと、この町にある幽霊屋敷とギルドマスターに、深い関係があるらしいよ?」
「幽霊屋敷? そんなのあるのか?」
「私も初めて知ったわね」

 ミナヅキとアヤメが揃って目を見開いた。二人が根っこの部分を知らなかったことを知り、マヤは調子を崩されて唖然としてしまう。
 それに対して苦笑しながら、今度はハンジが口を開いた。

「この海岸からもギリギリ見えると思いますが……あぁ、あそこですね。あの丘の上に見える屋敷です」

 ハンジが指をさした先――町外れの丘の上には、確かに青い屋根の大きな建物が存在していた。
 コップの水を飲み干しながら、ハンジが神妙な表情で語り出す。

「なんでも十年ほど前、屋敷に住んでいた貴族夫婦と幼い少女が、突然死んでしまったそうです。それ以来その家は無人なんですが……時折、幽霊の姿を見たという声が、チラホラと出てきているみたいですよ」
「心霊スポットしても有名だが、如何せんギルドマスターが目を光らせている屋敷でもあるらしくてな。面倒事を避ける意味も兼ねて、冒険者も町の連中も、あまり近づこうとはしないらしい」
「そっか……」

 続けて語るティーダの話を聞いて、ミナヅキは神妙な表情で頷く。

「じゃあ肝試しがてら行ってみるってのも、止めとくべきか」
「あぁ。それこそギルドから、直接的な依頼でも受けたりしない限りはな」
「分かった。教えてくれてありがとう」
「なぁに、良いってことよ」

 ティーダがニカッと笑いながら、追加の肉を炭火で熱せられた網に乗せていく。自然と話に区切りがついた、その時であった。

「失礼します」

 一人の人物に声をかけられ、一同は軽く驚きながら振り向く。ギルド職員の恰好をした男性なのだが、どうにも近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

「私はクルーラのギルドで職員を務めております、ゼラと申します。フレッド王都からいらしている、ミナヅキ様とアヤメ様で、間違いありませんでしょうか?」

 ゼラと名乗るその人物は、ピンポイントでミナヅキとアヤメに視線を向ける。二人は顔を見合わせ、そして戸惑いながらも頷いた。

「え、えぇ、確かに俺たちがそうですが……」
「そうでしたか。実は我が町のギルドマスターであるヴィンフリート様が、お二人にクエストの依頼をしたいとのことで、探しておりました」
「依頼、ですか」

 アヤメが反復するように問いかけると、ゼラは無言でコクリと頷く。

「休暇中のところ、誠に申し訳ございませんが、早急にギルドへ来ていただければと思います」

 ゼラがそう申し出ると、アヤメがミナヅキに問いかける。

「ねぇ、どうするの?」
「どうするって、指名されちまってるみたいだしなぁ……行くしかないだろ」

 ミナヅキは後ろ頭を掻きながら、ゼラに視線を戻す。

「分かりました。すぐに着替えて行きます」
「ありがとうございます。私は浜の出入り口のほうで待っておりますので」

 ゼラが指をさした先を確認し、ミナヅキたちは申し訳なさそうな表情でティーダたちのほうを向く。

「悪い。というワケで、俺たち行くわ。バーベキュー美味かったよ」
「ゴメンね。ごちそうさまでした」

 そして二人は、自分たちの荷物を手早くまとめ、更衣室に向かって歩き出す。その後ろ姿を見送りながら、ティーダたちは揃って軽くため息をついた。

「話した矢先にこうなるとはな」
「ホントよねぇ」
「厄介なことにならなきゃいいですが……」

 ちなみに、肉を焼いている網から、黒い煙が盛大に舞い上がっていることに気づくのは、それから数秒後のことであった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございます。
今回より月、水、金(それぞれ19:00)の更新とさせていただきます。
これからもよろしくお願いします。

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