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6年生 1学期 4月
戦士の墓へ
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私、大波友里。
大ちゃんと私は今日、学校をサボって、岩手県に来ているんだよー。
ここ、東御前町には、大昔、地球を救うために戦った〝戦士〟の子孫〝蘇毬一族〟が住んでいるんだって。
『おー、たっちゃん。何かあったのか? ……え? なるほど、証拠かー!』
で、大ちゃんが私の〝学校をサボって〟にツッコまなかったから、オカシイとお気付きかなー?
実は、たっちゃんから大ちゃんに、通信が来てるんだよ。何かあったのかな?
『そうだな……それじゃ、これでどうだ?』
今日は始業式だったんだけど、明日以降は〝蘇毬さん〟の都合が悪いという事で、ねーちゃんに任せて来たんだ。
まあ、授業もないし、細かい事は、ねーちゃんに任せとけば大丈夫。
大ちゃんの方は、いつものように〝大ちゃんロボ〟が代わりに登校してるし。
『ははは! よかったぜー! 先生たちに、よろしくなー!』
何やら、リモコンでポチポチと操作したあと、大ちゃんは嬉しそうに笑った。
良かったよー。何かトラブルだったみたいだけど、解決したんだ。
……あれ? そういえば、グループで会話できるのに、私には聞こえないように話すって、何だかヒドくない?
「ん? どうしたんだユーリ?」
「やー! なんで私だけ除け者なのん? もしかして、浮気?! ちょ、大ちゃん! 通話履歴見せてみれ! 早く!」
「落ち着けユーリ。ブルー経由の会話に履歴なんか残るわけないだろー?」
あ、そっか。
「っていうか、たっちゃんとの会話に、お前が参加すると話が長くなるんだ。今のは、ちょっと急ぎの用事だったしな」
なるほど、納得。
ユーリちゃんのトークは面白いから、ついついみんな、長話しになっちゃうんだよー!
「……何で、ちょっと嬉しそうなんだよユーリ」
「やー! 何でもなーい!」
東御前町は、山間にあって、さっきから、ずーっと緩やかな傾斜が続いている。
タクシーとかバスがあれば良かったんだけど、最寄りの無人駅を降りると、そこには、お店すら無かったんだよー。
「それにしても、遠いなー」
「やっぱり、飛んで来れば良かったんじゃない?」
「いやいや。香川での一件もあるし、しばらく〝飛行ユニット〟は封印だぜ?」
ちぇ。つまんない。
変身して飛んで来れば、2人っきりで旅行が出来たのに。
「師匠! やはり〝飛行〟は、ジェットエンジンでは無く、回転翼式の方が制御し易いのではないでしょうか!」
「あー、確かに安定しそうだけど、露出部分の強度がなー」
「あああっ! さすがは師匠! 一生ついて行きます!」
そう。もうお気付きだよね?
……まったく! なんで美土里さんまで来てるんだよー?
「って言うか、大ちゃんに一生ついて行くのは私にゃ! 今すぐ帰れにゃあ!」
「おいおい、耳が出てるぞユーリ」
「にゃー……だって、美土里さんが……」
「仕方ないだろー。これから行くのは、美土里さんの実家なんだから」
そう。私たちが向かう先は、美土里さんの故郷。
岩手県東御前町には、600年前に、名誉の戦死を遂げた〝戦士〟の子孫たちが暮らしている。
『先祖の眠る墓の中から、一族の誇りである〝ガジェット〟を取り出すなら、最後の戦士〝ユーリ〟に、直接、足を運んでほしい』
それが、戦士たちの子孫で作る〝戦友会〟の総意。
地球を守るために勇敢に戦って死んでいった戦士たちの〝尊厳〟を守る事になるのだろう。
「ウォルナミスの血族は、仕来りやら風習やら、無駄なこだわりが多くて、色々と厄介だからね。今回は、私がついて行く方がいいと思ったんだよ」
「ありがたいぜー。ユーリはともかく、俺は絶対に怪しまれるからなー!」
大波神社〝総本部〟で、大ちゃんの〝お披露目〟に立ち会った人たちは、もう誰も怪しんだりしないんだ。
けど、全国各地のウォルナミス人たちは、普通の人間である大ちゃんを、簡単に認めてはくれないかも知れない。
確かに、美土里さんが同行してくれれば、鬼に金棒なんだけど。
「そんな! 師匠のお役に立てるなら、たとえ火の中水の中! ……ふふん!」
……いや、だからって、ほら、あんな憎ったらしい顔で〝最後の戦士〟にアッカンベーして良いのん?!
「師匠師匠! お荷物をお持ちしましょうか?」
美土里さんが、大ちゃんのリュックを奪って肩に掛ける。
そして、勝ち誇ったように、私に向けて最高の笑みをぶつけて来やがるんだよー。
「あ、そうだ! 師匠! いっそ〝おんぶ〟とか〝肩車〟なんて手もありますよ!」
「おいおい、そういうのはヤメてくれ。前にヒドい目に遭ったんだ」
ええっ?! ちょっと待ったー!
「聞き捨てならにゃいっ! 誰にゃ? 大ちゃんをヒドい目に遭わせたのは!」
「お前だろユーリ! 〝お姫様抱っこ〟で死にそうになったのは、たぶん世界で俺が最初だと思うぜー?」
あわわわ! 私だった!
「お姫様抱っこだってえええ?! 戦士ユーリ! うらやま……じゃない! 破廉恥極まりないぞ!」
美土里さんが、よだれをダラダラと垂らしながら喚いている。
……やー、破廉恥極まりないな。
「美土里さんは、ただの道案内にゃ! 5メートルほど先を歩いてほしいにゃあ!」
「んー? 何やら雑音が聞こえるな?」
にゃああーもおおおー! 憎ったらしい顔だにゃあ!
「さあ師匠。目的地はすぐそこですよ!」
美土里さんは、あからさまにプイっと、私から視線を外して、大ちゃんの腕を引く。
「はぁぁあ! また師匠の〝修理〟を見られるなんて、幸せすぎます! 勉強させて頂きます!」
……大ちゃんは、〝暴走〟して、動かなくなったガジェットを修理できる。
「ガジェットが無事だといいですね!」
「あー、そうだなー!」
一度〝暴走〟したガジェットは、普通に分解しようとすると〝セキュリティ〟が発動して、修復不可能なレベルまで破壊されてしまうらしいんだよー。
……ん? 待てよ?
「もしかして美土里さん、子どもの頃とかに、ご先祖様のお墓を掘り起こして、分解とかしてにゃい?」
「ばっ! バカなことを! 私がそんな事をするはず無いだろう?!」
お! 動揺してる!
「あやしーにゃあ。大破したレプリカ・ガジェットを〝レア物〟とか〝お宝〟とか言っちゃう位だし、マジ有り得るんじゃにゃい?」
「ふざけるな、戦士ユーリ! いくらお前でも、言っていい事と悪い事があるぞ!」
あれ? 美土里さん、本気で怒っちゃった?
「ユーリ。さすがに今のは、お前が悪いなー。美土里さんは、こう見えても〝技術者〟としての分別とプライドは持ってるんだぜー?」
「にゃー……ごめんにゃさい……」
怒られちったよー。
「それに、今回の件は、長老からの直々のご命令だからね。文句は言わせないよ? ……分かったら、さっさと耳を仕舞いな」
「ぐう……み、美土里さんこそ、耳を出しっ放しのクセに!」
「お前の目は節穴か? 私が発明した、この〝ウォルナミス・カチューシャ〟をつけていれば、なんの問題もない!」
そう言って、美土里さんは自慢げに胸を張る。
〝ウォルナミス・カチューシャ〟って?
「ふふん! これがあれば、ウォルナミス人が耳を出したままでも大丈夫。装備するだけで〝ネコ耳のアクセサリー〟を付けているかのように見えるという、スグレモノだ」
確かに、よく見ると、赤いカチューシャにネコ耳が付いているように見える。
す、スゴい発明だよー!
「どうだ戦士ユーリ! 耳を出しっぱなしにするために開発した、この〝ウォルナミス・カチューシャ〟は! これでもまだ文句があるのか?」
「く、くうう……! わ、私の負けにゃ……!」
「待て待て! 勝ち負け以前に、なんで美土里さんは、貴重な時間と研究施設を使って〝アクセサリー〟を開発してるんだ?」
……ハッ?! そういえばそうだ。
「ちょっと、美土里さん?!」
美土里さんは、ギクリとした表情で目を逸らす。
「つ、次の角を左です、師匠っ!」
「にゃー! 誤魔化そうとしても無駄にゃよ!」
「おいおいー! 二人とも、耳を隠せよなー?」
大ちゃんと私は今日、学校をサボって、岩手県に来ているんだよー。
ここ、東御前町には、大昔、地球を救うために戦った〝戦士〟の子孫〝蘇毬一族〟が住んでいるんだって。
『おー、たっちゃん。何かあったのか? ……え? なるほど、証拠かー!』
で、大ちゃんが私の〝学校をサボって〟にツッコまなかったから、オカシイとお気付きかなー?
実は、たっちゃんから大ちゃんに、通信が来てるんだよ。何かあったのかな?
『そうだな……それじゃ、これでどうだ?』
今日は始業式だったんだけど、明日以降は〝蘇毬さん〟の都合が悪いという事で、ねーちゃんに任せて来たんだ。
まあ、授業もないし、細かい事は、ねーちゃんに任せとけば大丈夫。
大ちゃんの方は、いつものように〝大ちゃんロボ〟が代わりに登校してるし。
『ははは! よかったぜー! 先生たちに、よろしくなー!』
何やら、リモコンでポチポチと操作したあと、大ちゃんは嬉しそうに笑った。
良かったよー。何かトラブルだったみたいだけど、解決したんだ。
……あれ? そういえば、グループで会話できるのに、私には聞こえないように話すって、何だかヒドくない?
「ん? どうしたんだユーリ?」
「やー! なんで私だけ除け者なのん? もしかして、浮気?! ちょ、大ちゃん! 通話履歴見せてみれ! 早く!」
「落ち着けユーリ。ブルー経由の会話に履歴なんか残るわけないだろー?」
あ、そっか。
「っていうか、たっちゃんとの会話に、お前が参加すると話が長くなるんだ。今のは、ちょっと急ぎの用事だったしな」
なるほど、納得。
ユーリちゃんのトークは面白いから、ついついみんな、長話しになっちゃうんだよー!
「……何で、ちょっと嬉しそうなんだよユーリ」
「やー! 何でもなーい!」
東御前町は、山間にあって、さっきから、ずーっと緩やかな傾斜が続いている。
タクシーとかバスがあれば良かったんだけど、最寄りの無人駅を降りると、そこには、お店すら無かったんだよー。
「それにしても、遠いなー」
「やっぱり、飛んで来れば良かったんじゃない?」
「いやいや。香川での一件もあるし、しばらく〝飛行ユニット〟は封印だぜ?」
ちぇ。つまんない。
変身して飛んで来れば、2人っきりで旅行が出来たのに。
「師匠! やはり〝飛行〟は、ジェットエンジンでは無く、回転翼式の方が制御し易いのではないでしょうか!」
「あー、確かに安定しそうだけど、露出部分の強度がなー」
「あああっ! さすがは師匠! 一生ついて行きます!」
そう。もうお気付きだよね?
……まったく! なんで美土里さんまで来てるんだよー?
「って言うか、大ちゃんに一生ついて行くのは私にゃ! 今すぐ帰れにゃあ!」
「おいおい、耳が出てるぞユーリ」
「にゃー……だって、美土里さんが……」
「仕方ないだろー。これから行くのは、美土里さんの実家なんだから」
そう。私たちが向かう先は、美土里さんの故郷。
岩手県東御前町には、600年前に、名誉の戦死を遂げた〝戦士〟の子孫たちが暮らしている。
『先祖の眠る墓の中から、一族の誇りである〝ガジェット〟を取り出すなら、最後の戦士〝ユーリ〟に、直接、足を運んでほしい』
それが、戦士たちの子孫で作る〝戦友会〟の総意。
地球を守るために勇敢に戦って死んでいった戦士たちの〝尊厳〟を守る事になるのだろう。
「ウォルナミスの血族は、仕来りやら風習やら、無駄なこだわりが多くて、色々と厄介だからね。今回は、私がついて行く方がいいと思ったんだよ」
「ありがたいぜー。ユーリはともかく、俺は絶対に怪しまれるからなー!」
大波神社〝総本部〟で、大ちゃんの〝お披露目〟に立ち会った人たちは、もう誰も怪しんだりしないんだ。
けど、全国各地のウォルナミス人たちは、普通の人間である大ちゃんを、簡単に認めてはくれないかも知れない。
確かに、美土里さんが同行してくれれば、鬼に金棒なんだけど。
「そんな! 師匠のお役に立てるなら、たとえ火の中水の中! ……ふふん!」
……いや、だからって、ほら、あんな憎ったらしい顔で〝最後の戦士〟にアッカンベーして良いのん?!
「師匠師匠! お荷物をお持ちしましょうか?」
美土里さんが、大ちゃんのリュックを奪って肩に掛ける。
そして、勝ち誇ったように、私に向けて最高の笑みをぶつけて来やがるんだよー。
「あ、そうだ! 師匠! いっそ〝おんぶ〟とか〝肩車〟なんて手もありますよ!」
「おいおい、そういうのはヤメてくれ。前にヒドい目に遭ったんだ」
ええっ?! ちょっと待ったー!
「聞き捨てならにゃいっ! 誰にゃ? 大ちゃんをヒドい目に遭わせたのは!」
「お前だろユーリ! 〝お姫様抱っこ〟で死にそうになったのは、たぶん世界で俺が最初だと思うぜー?」
あわわわ! 私だった!
「お姫様抱っこだってえええ?! 戦士ユーリ! うらやま……じゃない! 破廉恥極まりないぞ!」
美土里さんが、よだれをダラダラと垂らしながら喚いている。
……やー、破廉恥極まりないな。
「美土里さんは、ただの道案内にゃ! 5メートルほど先を歩いてほしいにゃあ!」
「んー? 何やら雑音が聞こえるな?」
にゃああーもおおおー! 憎ったらしい顔だにゃあ!
「さあ師匠。目的地はすぐそこですよ!」
美土里さんは、あからさまにプイっと、私から視線を外して、大ちゃんの腕を引く。
「はぁぁあ! また師匠の〝修理〟を見られるなんて、幸せすぎます! 勉強させて頂きます!」
……大ちゃんは、〝暴走〟して、動かなくなったガジェットを修理できる。
「ガジェットが無事だといいですね!」
「あー、そうだなー!」
一度〝暴走〟したガジェットは、普通に分解しようとすると〝セキュリティ〟が発動して、修復不可能なレベルまで破壊されてしまうらしいんだよー。
……ん? 待てよ?
「もしかして美土里さん、子どもの頃とかに、ご先祖様のお墓を掘り起こして、分解とかしてにゃい?」
「ばっ! バカなことを! 私がそんな事をするはず無いだろう?!」
お! 動揺してる!
「あやしーにゃあ。大破したレプリカ・ガジェットを〝レア物〟とか〝お宝〟とか言っちゃう位だし、マジ有り得るんじゃにゃい?」
「ふざけるな、戦士ユーリ! いくらお前でも、言っていい事と悪い事があるぞ!」
あれ? 美土里さん、本気で怒っちゃった?
「ユーリ。さすがに今のは、お前が悪いなー。美土里さんは、こう見えても〝技術者〟としての分別とプライドは持ってるんだぜー?」
「にゃー……ごめんにゃさい……」
怒られちったよー。
「それに、今回の件は、長老からの直々のご命令だからね。文句は言わせないよ? ……分かったら、さっさと耳を仕舞いな」
「ぐう……み、美土里さんこそ、耳を出しっ放しのクセに!」
「お前の目は節穴か? 私が発明した、この〝ウォルナミス・カチューシャ〟をつけていれば、なんの問題もない!」
そう言って、美土里さんは自慢げに胸を張る。
〝ウォルナミス・カチューシャ〟って?
「ふふん! これがあれば、ウォルナミス人が耳を出したままでも大丈夫。装備するだけで〝ネコ耳のアクセサリー〟を付けているかのように見えるという、スグレモノだ」
確かに、よく見ると、赤いカチューシャにネコ耳が付いているように見える。
す、スゴい発明だよー!
「どうだ戦士ユーリ! 耳を出しっぱなしにするために開発した、この〝ウォルナミス・カチューシャ〟は! これでもまだ文句があるのか?」
「く、くうう……! わ、私の負けにゃ……!」
「待て待て! 勝ち負け以前に、なんで美土里さんは、貴重な時間と研究施設を使って〝アクセサリー〟を開発してるんだ?」
……ハッ?! そういえばそうだ。
「ちょっと、美土里さん?!」
美土里さんは、ギクリとした表情で目を逸らす。
「つ、次の角を左です、師匠っ!」
「にゃー! 誤魔化そうとしても無駄にゃよ!」
「おいおいー! 二人とも、耳を隠せよなー?」
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