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5年生 3学期 2月
分岐点前日 オランダ 2
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シャワーの音が聞こえてくる。
昼食後、ターゲットの少女〝マリルー・ハウトヴァスト〟が学校から帰宅するまでの間に、ブルーが用意してくれた地下室で身だしなみを整えることにした。
「ごめんなさい、達也さん。先にお風呂頂いてもいい?」
地下室に入った途端、彩歌はシャワールームに飛び込んだ。
やっぱりアメルスフォールトに着いたらすぐ、ここに来るべきだったか。悪い事をしたな。
さて、今オランダは午後1時40分。日本ではもうすぐ夜10時だ。僕は彩歌と、こちらでオランダの町を散策しつつ、日本では宿題を片付け、夕食を食べてから風呂に入った。今、寝付いたフリを始めた所だ。
日中は、算数の時間、大ちゃん人形が先生の出す問題を、片っ端から人知を超えた方法で解きまくり、先生を唖然とさせるといった微笑ましい出来事以外は特に何も無く〝予約〟の前日だというのに、ユーリも完全に平常運転だった。
「おまたせしました。達也さん、どうぞ」
彩歌がシャワールームから出て来た……え! ちょ?! ま??!
「……? 達也さん、どうかした?」
ネグリジェ姿だ。透けている。凄く透けている。
いや待て、どういう事だ? 僕たちこれから〝分岐〟の下調べだろう?!
「早くシャワー浴びて来て? 待ってるから」
待ってる?! な……何を?! ヤバいぞ! 何かヤバい!
と、と、と、とにかくシャワーを浴びよう。
別に意味はない。一連の彩歌の行動と言動と服装に意味はない!
「じゃ……じゃあ、シャワー、あ、あ、浴びてくるね」
言い知れぬドキドキを抑えつつ、シャワールームに入る。
何か大変な事が起きようとしている。
まさか……まさかそんな……?
「きゃあああああ?!」
暫くして彩歌の悲鳴が聞こえて来た。
「彩歌さん、どうかした?!」
「たたた、達也さん! 違うの、こ、これ、間違えて!」
>>>
シャワーを終えて外に出ると、カーディガンにスカート姿の彩歌が、真っ赤な顔で座っていた。どうやらいつもの癖で、魔法で寝姿に着替えてしまったらしい。
「ごめんなさい。私、まさか自分があんな格好してるなんて思わなくて……」
「もう。脅かさないでよ彩歌さん。僕はまたてっきり……」
「……てっきり?」
「あ、い、いや、なんでもない」
『タツヤ、キミは本当に面白いし、アレだな』
「アレってなんだよ! アレじゃ無くても誰だってああなるだろう?!」
ワケが解らなくなって来たので、そろそろ出発しよう。
時刻は午後2時30分。まだ少し早いかもしれないが、マリルーの家の前で張り込みだ。
牛乳とアンパンを買って来れば良かったな。
>>>
午後3時34分。1人の少女が、僕たちの前に現れた。
『タツヤ、彼女がMarilou Hautvastだ』
見た目は同い年か、少し年下。少し暗い色の金髪で、ツインテールを三つ編みにしている。某有名ネズミ柄のリュックサックを背負っているが、どのネズミかはご想像にお任せする。
「かわいい子だな」
と言った途端、彩歌が無表情でこちらを見た。あれ? まだ見てる。
「まあ、彩歌さんほどではないけど」
彩歌は無言でマリルーの方に視線を戻した。こわいこわいこわいこわい。
マリルーは自宅の鍵を開けると中へ入って行き、暫くすると、リュックを置いて出てきた。扉を閉めて、鍵をかける。
「達也さん、彼女、出掛けるみたいね」
「ちょっとだけ、ついて行ってみようか?」
と言った途端、彩歌が無表情でこちらを見た。あれ? まだ見てる。
「いや。星を救うと言う意味でさ」
彩歌は無言でマリルーの方に視線を戻した。超こわい超こわい超こわい超こわい。
「そうね。行きましょう!」
僕たちは、こっそり、マリルーの後をついて行く。なんか、ストーカーチックだな。
教会の隣を通り、ファン・スピルベルゲン通りを抜けて……あれあれ?
向かった先は、先程のレストランや郵便局の近くのショッピングモールだ。その中の雑貨屋さんで、彼女は可愛らしいデザインの便箋と封筒を買った。
『タツヤ、アレだな!』
いや、だから僕はアレじゃないし!
『そうじゃなくて。アレが今回の手紙だ』
なんだよ紛らわしいな。
いや、それより、アレが地球の寿命に関わる手紙……の素か!
マリルーはレジでお金を支払い、便箋と封筒の入った袋を提げて、ニコニコと嬉しそうに帰っていった。
『タツヤ、アヤカ、これで手紙のデザインはわかった』
薄暗い青に、鮮やかな水色のラインが入った封筒だ。便箋のデザインは……今回のミッションに、中身は関係ないだろう。
「よし、マリルーの顔も覚えたし、今日はこんな所かな?」
『そうだね。後は、明日の分岐まで待とうか。2人ともお疲れ様』
「ねえ、じゃあ、ちょっとだけ、お買い物してもいい?」
彩歌は雑貨屋に興味があるようだ。じっと店内を見ている。女子はこういうカワイイ系の小物が好きだよなー。
『アヤカ……』
「……はい」
『もちろん構わない。但し、明日の分岐の邪魔になるほど沢山は買わないようにね』
やさしいなブルー先生!
「やったー! 有難うブルー!」
彩歌は嬉しそうに、アレコレと品物を見始める。こうなると長いんだよな、女の子って。
ブルーが自動翻訳してくれるみたいだし、彩歌一人でも買い物は出来るだろう。
邪魔しちゃ可哀想だ。僕は隣のカフェでコーヒーでも飲んでるかな。
昼食後、ターゲットの少女〝マリルー・ハウトヴァスト〟が学校から帰宅するまでの間に、ブルーが用意してくれた地下室で身だしなみを整えることにした。
「ごめんなさい、達也さん。先にお風呂頂いてもいい?」
地下室に入った途端、彩歌はシャワールームに飛び込んだ。
やっぱりアメルスフォールトに着いたらすぐ、ここに来るべきだったか。悪い事をしたな。
さて、今オランダは午後1時40分。日本ではもうすぐ夜10時だ。僕は彩歌と、こちらでオランダの町を散策しつつ、日本では宿題を片付け、夕食を食べてから風呂に入った。今、寝付いたフリを始めた所だ。
日中は、算数の時間、大ちゃん人形が先生の出す問題を、片っ端から人知を超えた方法で解きまくり、先生を唖然とさせるといった微笑ましい出来事以外は特に何も無く〝予約〟の前日だというのに、ユーリも完全に平常運転だった。
「おまたせしました。達也さん、どうぞ」
彩歌がシャワールームから出て来た……え! ちょ?! ま??!
「……? 達也さん、どうかした?」
ネグリジェ姿だ。透けている。凄く透けている。
いや待て、どういう事だ? 僕たちこれから〝分岐〟の下調べだろう?!
「早くシャワー浴びて来て? 待ってるから」
待ってる?! な……何を?! ヤバいぞ! 何かヤバい!
と、と、と、とにかくシャワーを浴びよう。
別に意味はない。一連の彩歌の行動と言動と服装に意味はない!
「じゃ……じゃあ、シャワー、あ、あ、浴びてくるね」
言い知れぬドキドキを抑えつつ、シャワールームに入る。
何か大変な事が起きようとしている。
まさか……まさかそんな……?
「きゃあああああ?!」
暫くして彩歌の悲鳴が聞こえて来た。
「彩歌さん、どうかした?!」
「たたた、達也さん! 違うの、こ、これ、間違えて!」
>>>
シャワーを終えて外に出ると、カーディガンにスカート姿の彩歌が、真っ赤な顔で座っていた。どうやらいつもの癖で、魔法で寝姿に着替えてしまったらしい。
「ごめんなさい。私、まさか自分があんな格好してるなんて思わなくて……」
「もう。脅かさないでよ彩歌さん。僕はまたてっきり……」
「……てっきり?」
「あ、い、いや、なんでもない」
『タツヤ、キミは本当に面白いし、アレだな』
「アレってなんだよ! アレじゃ無くても誰だってああなるだろう?!」
ワケが解らなくなって来たので、そろそろ出発しよう。
時刻は午後2時30分。まだ少し早いかもしれないが、マリルーの家の前で張り込みだ。
牛乳とアンパンを買って来れば良かったな。
>>>
午後3時34分。1人の少女が、僕たちの前に現れた。
『タツヤ、彼女がMarilou Hautvastだ』
見た目は同い年か、少し年下。少し暗い色の金髪で、ツインテールを三つ編みにしている。某有名ネズミ柄のリュックサックを背負っているが、どのネズミかはご想像にお任せする。
「かわいい子だな」
と言った途端、彩歌が無表情でこちらを見た。あれ? まだ見てる。
「まあ、彩歌さんほどではないけど」
彩歌は無言でマリルーの方に視線を戻した。こわいこわいこわいこわい。
マリルーは自宅の鍵を開けると中へ入って行き、暫くすると、リュックを置いて出てきた。扉を閉めて、鍵をかける。
「達也さん、彼女、出掛けるみたいね」
「ちょっとだけ、ついて行ってみようか?」
と言った途端、彩歌が無表情でこちらを見た。あれ? まだ見てる。
「いや。星を救うと言う意味でさ」
彩歌は無言でマリルーの方に視線を戻した。超こわい超こわい超こわい超こわい。
「そうね。行きましょう!」
僕たちは、こっそり、マリルーの後をついて行く。なんか、ストーカーチックだな。
教会の隣を通り、ファン・スピルベルゲン通りを抜けて……あれあれ?
向かった先は、先程のレストランや郵便局の近くのショッピングモールだ。その中の雑貨屋さんで、彼女は可愛らしいデザインの便箋と封筒を買った。
『タツヤ、アレだな!』
いや、だから僕はアレじゃないし!
『そうじゃなくて。アレが今回の手紙だ』
なんだよ紛らわしいな。
いや、それより、アレが地球の寿命に関わる手紙……の素か!
マリルーはレジでお金を支払い、便箋と封筒の入った袋を提げて、ニコニコと嬉しそうに帰っていった。
『タツヤ、アヤカ、これで手紙のデザインはわかった』
薄暗い青に、鮮やかな水色のラインが入った封筒だ。便箋のデザインは……今回のミッションに、中身は関係ないだろう。
「よし、マリルーの顔も覚えたし、今日はこんな所かな?」
『そうだね。後は、明日の分岐まで待とうか。2人ともお疲れ様』
「ねえ、じゃあ、ちょっとだけ、お買い物してもいい?」
彩歌は雑貨屋に興味があるようだ。じっと店内を見ている。女子はこういうカワイイ系の小物が好きだよなー。
『アヤカ……』
「……はい」
『もちろん構わない。但し、明日の分岐の邪魔になるほど沢山は買わないようにね』
やさしいなブルー先生!
「やったー! 有難うブルー!」
彩歌は嬉しそうに、アレコレと品物を見始める。こうなると長いんだよな、女の子って。
ブルーが自動翻訳してくれるみたいだし、彩歌一人でも買い物は出来るだろう。
邪魔しちゃ可哀想だ。僕は隣のカフェでコーヒーでも飲んでるかな。
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