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5年生 冬休み明け

新設! 親切! 研究室!!

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 物置が静かに、せり上がっていく。
 ご存知、地下室への扉が現れた。

「俺、今までこんなのを見落としてたのか?!」

 大ちゃんは唖然あぜんとしている。
 そりゃそうだ。僕にしてみれば、どこに気付かない要素があるのか、本当にわからない。

「えへへ、良かったね! 大ちゃん頑張ったもんね!」

 栗っちも一緒だ。いつものようにニコニコと嬉しそうにしている。
 大ちゃんは、自作の〝すごメガネ|(仮)〟でブルーの存在を認識出来るようになった。
 今まで見えなかった、青く透き通る僕の右手もちゃんと見えているようだ。

「よーし! 入るぞ!」

 深呼吸してドアを開ける大ちゃん。
 ちなみに大ちゃん宅の自室と地下室は既にブルーが繋いだらしいのだが、大ちゃんはイレギュラーな方法で外出をすると、セキュリティの関係で問題が発生する恐れがあった。

「ウチは、玄関と裏口以外から出たりすると、各方面に〝誘拐〟として通報されるんだよなー」

 ……大問題だ。
 そして何より、大ちゃんが〝物置き下の入り口〟から入る事にこだわったのだ。
 今まで扉が見えなかったのが、よほど悔しかったんだろうな。

「うお! 想像以上に広いなー!」

 階段を降りて、妙に立派な扉を開けると、僕の部屋と栗っちの部屋の隣に、もう一つ、大ちゃんの部屋が出来上がっていた。

『ダイサク、お望みの部屋だ。僭越せんえつながら、キミの自宅の部屋と繋いである。私の思いつく限りの物は用意したが、要望があれば可能な限り追加するので言って欲しい』

「ブルー、有難う! 嬉しすぎるぜー!!」

『喜んでもらえて私も嬉しい。遠慮は要らない。キミは〝星の守護〟を手に入れたのだから』

 〝星の守護〟
 ……僕の協力者である証。
 防御力が2倍になるだけじゃなくて、こういう特典もあるんだな。

『不公平になるといけないので、カズヤの自宅にも繋いでおいた』

「わあ! ありがとう、ブルーさん!!」

『ダイサクの部屋は一階にあるので直接繋ぐことが出来たが、カズヤの自宅の部屋は二階だ。とりあえず、一階の目立たない所に入り口を作ったので、後で確認して欲しい』

「ブルー、僕もイチイチ外に出なくちゃならないから、どこかに繋いでくれよ」

『そう来ると思って、既に繋いであるよ。ただ、お湯が張ってあると、出入りが難しいので注意して欲しい』

「湯船に繋いじゃった?! 登場がマジ○ガーみたいになるだろう?!」

『あはは、冗談だタツヤ。キミは相変わらず面白いな』

 危うくパイ○ダーオンされる所だった。ちなみに栗っち宅は応接間の隅に、ウチは階段横の物置の中に、それぞれ入り口が作られたようだ。

『扉も、そこから出入りしようとするキミ達も、普通の人間には認識できない。気付かれる事はないだろう。ただダイサクの、そのメガネだけは注意が必要だ』

 そうか。それを使えば、一般人でもここに来れちゃうのか。

「それマズイなー。〝虹彩認証〟でも付けるか」

 あっさり解決しそうだ。さすが大ちゃん。

「それじゃ、部屋を見せてもらうぜー!」

 大ちゃんがドアを開ける。
 ちなみに各部屋のドアは部屋の主だけが開けられるように〝不思議ロック〟が掛かっている。

「わあ……ヤバいな! 最高じゃんか!!」

 大ちゃんの部屋は僕や栗っちの部屋と同じ大きさだが、電気、水道、ガス完備で、壁際の戸棚には様々な金属や液体等が並んでいた。
 奥の壁には3つドアがある。

『放射性物質と毒劇物は左のドアの小部屋だ。変身してから持ち出して欲しい』

「解ってくれてるな、ブルー! 自宅ではあんまり使えなかったから有り難いぜ!」

 おいおいおい……それって小学生がイジって良い物じゃないだろう。っていうか〝あんまり〟ってことは、普段から使ってるのか?!

『そして、右のドアがキミの自宅に続いている』

「おお! 超便利だ! 早くセキュリティをイジって、自由に出入り出来るようにしなきゃだなー!」

『真ん中のドアは、トイレとシャワールームだ。タツヤとカズヤの部屋にも用意した。衣類は脱衣部屋のカゴに入れれば、シャワー中に洗って乾かすので気軽に使うといい』

 訓練後のシャワーは有り難いな。ナイスだぞブルー。

『あと、タツヤ。不公平にならないように、キミの部屋にも放射性物質と毒劇物を』

「やめて下さい」

 部屋の説明が終わったので、練習場にも案内する。

「広いなー! もしかして、ここって武器のテストとかも出来るのか?」

『もちろん。ただし、出入り口と天井にある光源への攻撃は、可能な限り避けて欲しい』

 部屋の奥に、射撃訓練用のターゲットが5つ、床下からせり上がって来た。

『ダイサク、試してみるかい?』

「おお! スゲー本格的だな! ちょっと待ってくれ」

 大ちゃんはベルトを装備した。
 リュックサックを背負い、コードを繋ぐ。

「変身!」

 ベルトの赤い部分を押し込むと、まばゆい光が辺りを包む。

「ダイ・サーク、参上!」

「やったー! ダイ・サークさん、やっちゃって下さい!」

「任せろ、カズヤ少年!」

 ダイ・サークが左肩のプロテクターを右手で掴んで少しスライドさせる。
 3段階にカタカタと伸びたプロテクターは、前方に回転してガチャリと固定され、古風なデザインのミサイルらしきものが装填そうてんされた。

「ダイ・サーク・ミサイル装填完了。ターゲット、ロックオン!」

 〝全部言っちゃうスタイル〟は健在だ。
 ダイ・サークから、ピピピピピというロックオンの音が、聞こえてきた。

「発射!」

 発射されたミサイルは、想像よりゆっくりと進む。発射台を離れ、少し沈んだかと思うと、ここで一気に恐ろしい加速を付けて飛翔し、一番左のターゲットを打ち抜いた。

「やったー! ダイ・サークさん、すごいよ!」

 拍手して大喜びの栗っち。

「ハーッハッハ! まだだ。よく見ているといい!」

 ターゲットを撃ち抜いたミサイルが、ピタリと空中で静止したかと思うと、そこからバラ撒かれた無数の光が、残った4つのターゲットも含め、5つのターゲットを一瞬で蜂の巣にした。そして巻き起こる大爆発。

「5つともロックオンしておいた。逃げられはしない」

 まあ、止まってるまとだから逃げないんだけど。
 ……というか、小学生の作る兵器じゃないぞ、コレ。

「ダイ・サーク・ミサイルは、半径50メートル以内の512の目標を同時に攻撃できるのだ!」

 〝できるのだ!〟じゃねーよ! 怖いよ、この子!

「カッコイイ! すっごく強いね! ダイ・サークさん!」

 栗っちは憧れの眼差しで見惚みとれている。

「ちなみに、ターゲットしていない物は、絶対に被害を受けないので安心だ」

 いや、それは無いだろ?
 爆発で、けっこう広範囲に燃え上がってますけど……

『ダイ・サーク、素晴らしい攻撃力だね』

「ブルー、ありがとう。私はもっと強くなる。期待してくれたまえ!」

 まあいいか。また一人、心強い仲間が増えたという事で。

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