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5年生 冬休み

からあげとそーせーじ

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 我が家のリビングに、大ちゃんがいる。
 朝からいった〝ウサギのエサやり〟。
 ……結局、ヒーロー活動になったけどね。
 その帰りに、ちょうど玄関前に母さんが居た。

「え、大作くん、おうちの人、誰も居ないの? ご飯とかはどうするの?」

 という感じになり、一緒にお昼を食べる事になったのだ。
 あ、栗っちの千里眼によると、町田鏡華まちだきょうか大波友里おおなみゆうり橋月日奈美はしづきひなみの三人は、無事に保護されて、背の低いおじさんも、逮捕されたようだから安心してほしい。

「いやー、悪いな、たっちゃん。俺、家に帰ればカップ麺とか、あったんだけど」

「まあ、栄養とか、かたよっちゃうから」

 ちなみに父さんは、明日が正月休み最終日なので、同僚と日帰りスキーだそうだ。元気だな。

「あれ? おばあちゃんは?」

「ああ。おばあちゃんもね、老人会の寄り合いでお弁当が出るんですって」

 おばあちゃんは近くの公民館で新春カラオケ大会だって。元気だな。

「しかし、冬休みももうすぐ終わりか。早いなー」

「僕はね、ちょっと楽しみなんだ。学校」

「あー、たっちゃんは〝久し振り〟だもんなー」

 よく覚えているな、さすが大ちゃん。
 ……そう、久しぶりにみんなと会えるのがうれしい。まるで同窓会に行くみたいな気分だ。

「でも授業、2回目だろ? つまんないぜー、きっと」

「はは。大ちゃんは絶対に忘れないからなぁ。僕はね、多分ほとんど忘れてると思うよ」

 リビングで大ちゃんと話していると、妹が入ってきた。

「あ、大ちゃん、あけましておめでとう!」

「よー! おめでとう!」

 ん? ……あれ? 妙に違和感が。

「るり、なんか背、伸びてないか?」

 明らかに伸びた。というか、ちょっと待て! 何で身長が同じくらいあるんだ?

「あと、お前〝大ちゃん〟じゃなくて〝大作さん〟って呼んでなかったっけ……?」

 妹が僕の同級生を呼ぶ時は、ユーリ以外全員、〝名前+さん〟だったような……?

「え? 何言ってるの? 私、ずっとこの呼び方じゃん」

「たっちゃん、俺、同級生から〝大作さん〟なんて呼ばれたら、ちょっと照れちゃうぜ?」

 え? え? なに言ってるんだ、大ちゃんまで。

『タツヤ、随行者ずいこうしゃの左手だ』

「え? それって栗っちの能力じゃ……」

『カズヤのは、随行者ずいこうしゃの右手だよ』

「あ、うん。そうか、そうだったな……え?」

「前にも言ったが、随行者ずいこうしゃの左手は、救世主と同じ時を生きる能力だ。だから、年齢も同じになるし、周囲の全ての不整合が修正される。普通の人間では、この変化に気付くことは出来ないだろうね」

「さすが救世主と永遠の愛を誓った者だけのことはあるな。スゴい能力だ」

『そうだタツヤ。救世主には理不尽なほどに奇跡的な力が用意されている』

「ふーん……で、それと妹と、何の関係があるんだ?」

『本気で言っているのかタツヤ?!』

 まったく! ブルーらしくないな。急に関係のない話を始めるとは。
 まあ、なんだ。
 るりの件に関しては、なんか不思議現象だな。
 カマキリ男とか悪魔とか猫耳娘とかが出てくるんだから、それ位はあるある。

『タツヤ。なんで妹とカズヤの事に関してはそうなるんだ?』

「ん? 栗っちは今回の事には関係ないだろう?」

『……私にとっては、一番の不思議現象だ、タツヤ』

 なにかブルーが言っているが、それもきっと気のせいだな。

「ああ、るり、九条君のご両親、急用で遠くに行かれてるんですって。だから、お戻りになるまで、ウチで食べてもらうわね」

 台所の奥で、戸棚から食器を出しながら、母さんが言った。

「へー、そうなんだ……大ちゃん、もしかして遠くって、ドイツ?」

「当たり。さすが双子だけあって、たっちゃん並みにヒラメキが良いよな!」

 ん? 双子? 誰と誰が? あ、そっか、不思議現象で僕と妹は双子設定か。あるある。これ位の事では驚かないぞ。

「大ちゃんさ、ドイツ以外も色々と詳しいでしょ? ハネムーンはやっぱりヨーロッパにしようって話してるんだ。またその内、色々と教えてよね!」

「ははは、栗っちも気が早いな~! いくら婚約したって言っても、まだまだ先の話じゃんか」

 何故だろう。すごく引っかかる会話な気がするが……まあ、それも不思議現象のせいだろうな。うん。気のせいだ。

「お待たせ。こんな物しかなくてごめんね。九条君が来るってわかってれば、もっと何か用意したんだけど」

「いえいえ、俺、からあげ大好きです。いただきます!」

 そんなわけで、数日間、大ちゃんはウチでご飯を食べることになった。

「どうせなら、ここで寝泊まりすればいいのに」

「いや、もしかしたら親父達から連絡が来るかもしれないからなー」

 大ちゃんの両親は、きっと自宅が一番安全だと思っている。よそで寝泊まりすれば、余計な心配をするだろう。
 セキュリティを最大にしたという事は、ドイツに行ったのも、例のダーク・ソサイエティ絡みなのかもしれない。

『タツヤのそばが一番安全なんだけどね』

「そうだな。でも、大ちゃんちのセキュリティも凄いんだぜ?」

 どんな罠が飛び出すのか、ちょっと興味がある。

「〝お前は大丈夫だと思うが、なるべく外には出るな〟とか、言われてるしなー」

「そうだったんだ。じゃ、家で居たほうが良いね。何かあったら、例の欠片かけらで呼んで! すぐに行くから」

「おおー、頼もしいぜ! ありがとなー!」

 と、言って、大ちゃんは帰って行った。さて、見つかる前に、大ちゃんに交換してもらった300ユーロを地下室に置いてこなきゃ。

「ああ、そうだ、昼から栗っちが来るかもしれないな」

『〝精神感応〟の練習だな。カズヤは真面目だね』

 地下室に入ってしばらくすると、やはり栗っちも現れた。

「たっちゃん、また練習付き合ってくれる?」

「おう! もちろん!」

 この日の晩ごはんは、栗っちも加わってさらに賑やかだった。
 母さんに希望を聞かれたので、牛麻神社うしまじんじゃで食べ損ねた、お好み焼きをリクエスト。とうもろこしも食べたかったけど、そちらはさすがに却下されてしまった。ちょっと残念。

「はい、和也さん、あーん! おいしい?」

「えへへ。とってもおいしいよ!」

 そういえば、母さんやおばあちゃんの前だというのに、妹と栗っちが妙にベタベタしているようだが……まあ、気のせいだろうな。

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