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5年生 冬休み
おねえさんといっしょ
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「じゃあ、気をつけて。夕方6時に、まりも屋の前で!」
そう言うと、たっちゃんは電車を降りていった。俺はこのまま電車に揺られ、北へ向かう。
まだ正月休みだから、座席はガラ空きだ。
よし、邪魔にもならないだろうし、ちょっとだけベルト用の制御基板、イジっておくかなー。
……あ、分かるかな? 俺は九条大作だぜ?
今回は俺のエピソードを聞いてくれよな!
「切符を拝見します」
おっと、車内検札だ。俺は切符をポケットから取り出して、車掌さんが来るのを待っていた。
「あ……あら? えっと、あれ?」
俺の手前の席に座っていたメガネのお姉さんが、焦った感じで、バッグを引っ掻き回したり、ポケット探ったりしている。
あーあー、自転車の鍵とかハンカチとか、ポロポロ落としてるし。
「お客様?」
「あ……ちょっと待って下さい! あれ? おかしいな……」
とうとう靴を脱いで、ひっくり返したりを始めた。おいおい、そんなトコに入れるワケないだろー?
……仕方ない。
「えーっと。ちょっといいかな?」
「え?」
急に俺が話しかけたから、車掌さんもお姉さんも驚いている。
「本に挟まってるぜー?」
俺は、お姉さんのバッグを指さした。
「お姉さん、ふた駅前まで文庫本を読んでたと思うんだけど、栞の代わりに切符を挟んだはずだ。220ページと221ページの間だったなー」
あわててバッグから本を取り出すお姉さん。切符を発見して大喜びだ。いやいや、早く車掌さんに切符を見せてあげてくれよ。
>>>
「ふう、助かっちゃった。私は、笹垣留美。……えーっと」
「俺は九条大作。大ちゃんって呼んでくれよなー!」
「ありがとう、大ちゃん! ……でもなんで、私が本に切符挟んだ事、知ってたの?」
「いや、たまたま目に入っただけなんだ。俺、チラッとでも見たり聞いたりした事は、忘れないんだよ」
瞬間記憶能力。俺の頭には、生まれてから今までに見聞きした全ての情報が、鮮明に記録されている。もちろん、好きなときに好きな情報を取り出す事ができるんだ。
「え~? うっそだ~!」
「んー、まあ信じられないよな。えーっと笹垣さん、笹垣さんはどれかな? 乗ってきた駅からだと、0463-○2-4○2○だなー?」
「……ちょっと! なんでウチの電話番号を知ってるの?!」
「だから一度見たら忘れないんだって」
今まで見掛けた電話帳は〝全部〟読んだ。ペラペラとやれば頭に入るから一瞬だ。覚えておけば、たまーに役に立つしな。
「でもでも、笹垣ってウチ以外にも結構いるわよ?」
「お姉さんの乗ってきた駅の周辺の笹垣さんは、たった3件。その内、一戸建てが1件、マンションが1件、時計屋が1件なんだ」
「だからその内のどれが私の家か、どうやってわかるの?」
「お姉さんのメガネって〝ZENIZ〟じゃん」
激安で有名なメガネの全国チェーン店ZENIZ。
去年、親父が老眼鏡を買いかえる時に一緒について行ったんだよ、だから、全モデル覚えてる。
「もし実家が〝笹垣時計店〟なら、よそでメガネは買わないだろ」
笹垣時計店は、メガネ、貴金属も扱っている。俺が見た電話帳に広告を出していたから間違いない。
「あと、お姉さんが電車に乗り込んできた時、自転車の鍵を握り締めていたから、駅まで自転車だったのかとおもってな。だとするとマンションもない。だってそこ〝駅から徒歩1分〟がウリのマンションだからなー」
駅に来るのに、わざわざ自転車を用意したり駐輪場で鍵をかけるなら、歩いたほうが早い距離だ。
「という事で、正解は〝一戸建ての笹垣さん〟という事になる。ハズレる要素は〝電話帳に載せていない〟パターンだけだなー」
「すっ!」
す?
「すっごおおおおおおおい!!」
「あー、あんま電車の中で騒いじゃダメだろー?」
>>>
今日の買い物は、変身ベルトの心臓部……エネルギー制御用の基盤を組むための部品だ。
秋葉原の、裏路地とか、雑居ビルの看板も無いような店で売ってる物がほとんどなんだけど、子どもとか女性は、あんまりいないんだよな。毎回目立ってしまって困る。
「……だから、困るんだけどなー?」
マニアックな電子部品が所狭しと並ぶ店内に、なぜか笹垣留美さんが一緒にいる。
「えー? なんでよ?」
こっちが〝何で〟なんだけどな。
「お姉さんかい、九条くん?」
ほらな、何か変な目立ち方してるし。
「違うんだ店長。知らないお姉さんなんだけど……ついて来るんだよ」
事案だぞ。性別が逆なら、即・通報だぜ?
「それより、この前買った抵抗とコンデンサー、まだあるかなー?」
「お、アレ良かっただろ! 特にコンデンサーの耐熱性は、ちょっと凄いよな」
店内の怪しいパーツを興味津々と言った感じで見回す笹垣さん。
って、あーあー! この季節に素手で電子部品を触っちゃ駄目だろー!?
「お姉さん? 静電気が怖いからさ、触らないほうが良いぜー?」
「え? ああ。パチってなったら痛いもんね!」
いや、お姉さんの指の痛みは心配してないんだけどなー?
……お! みっけ! このロットのSCSIボードは、なかなかレアだよな。使うのはICだけなんだけど。
「店長、ちょっと場所借りても良いかなー?」
「おお、好きに使ってくれ。あ、これ抵抗とコンデンサー。あと、こんなのも要るんじゃないか?」
「さすが店長! やっぱ金メッキのコネクターじゃなきゃなー!」
というやり取りの後、店の奥にある作業場で試しに制御基板を組んでみる事にした。
「……っていうか、なんでついて来るんだ?」
一段と狭い作業場に、ギュッと入って来る笹垣さん。作業机に腰掛けた俺の後ろに立って、見下ろしている。
おいおい、胸を頭に乗せないでくれよ、重いから。
「えー? 駄目なのー?」
「いや、別に駄目じゃないんだけどさ、見てても分かんないと思うぜー?」
「見てるだけでいいのよ。分からなくてもいいから! さあ、続けて続けて?」
……まあいいか。
えっと、ココとココとココとココとココとココとココとココをハンダ付けっと。
「早っ!? 大ちゃん、今の何?! 今のどうやったの?!」
「いやいやいや、見てるだけじゃないのかよー? 俺の作業は口で説明できないから。静かに見ててくれよなー?」
「はぁい……」
なんで残念そうなんだよ。あと胸が重い。なに食ったらそんなになるんだ?
……さて、気を取り直して。
ココとココをバイパスして、ココとココを圧着。
こっちのパーツを外してこっちに流用、これをあーしてこーして、それでこうなって……
「ふわ~あ」
もう飽きたのかよ!
……まあ、もうほぼ終わったけどな。
最後に店長オススメのコネクターを付けて、出来上がりっと!
「出来たぜー!」
「うわあ! すごーい!」
何がすごいのか分かってないだろー?
とにかく、ベルトにセットしてみよう。
俺は複雑なシャッター構造のバックル部分を開き、いま仕上がったばかりの制御基板を組み込む。よし、後は……
「お姉さん、立ってるついでに、その棚の黒いバッグ、取ってくれないかな」
「えっと、これ?」
「それはどう見ても赤いよなー?」
棚の上から取り出したのは、店長のノートPC。いつも借りてるヤツだ。電源を入れてベルトのエネルギー供給用のコネクターを、家から持ってきた、特製のパラレルケーブルで繋ぐ。さて、と。エネルギー制御用のプログラムは大体イメージ出来てるし、一瞬だな。
「すごいすごい! 指先が見えない! ピアニストみたい!!」
マシン語を直打ちだ。面倒臭いから。
っていうか、指先が見えないピアニストって、どんな曲を弾いてるんだ?
>>>
「ありがとう店長、完成したよ。予備にいくつかもらって行きたいんだけど、まだある?」
あー、首が凝った。いや、作業じゃなくて胸を乗せられっぱなしでな?
「おー、そういうと思って、3つずつ用意してある。足りるか?」
さすが店長は分かってくれている。
「あと、これだろ? ICだけなら使えるはずだ」
おお! SCSIボードが3つ! よくこんなに残ってたなー!
いや、だからお姉さん、素手で触っちゃ駄目なんだって! 貴重なんだぞ、コレ!
「ありがとう、店長! また来るよ!」
「お邪魔しました! また来ます!」
俺のセリフに合わせて、常連っぽく挨拶する笹垣さん。いや、あんたはもう来ないだろー?
代金を支払い、店を後にする。やっぱ結構な出費だな。
「さあ、次いこー!」
「まだついて来るのかよ!?」
>>>
結局、笹垣さんは最後の店までくっついて来た。
今、この店の端末から俺の部屋のPCに繋いで、転送システムの設定を終えた所だ。
よしっと。これで変身出来るぞ。やっぱ天才だな、俺!
それにしても……
「お姉さんさー?」
「んー? なぁに?」
首を傾げる笹垣さん。
「家、帰ったほうが良いと思うぜー?」
ギクッとした表情。やっぱりなー。
「ちょっと気になったんで、ケーサツのデータベースを見たら、捜索願いにお姉さんの名前があったからさー?」
本当は、やっちゃダメなヤツだぜ。良い子は真似するなよ?
「捜索願い……?」
家出……だろう。
切符の金額は券売機で買える最高額だったのに、中途半端な駅で降りるし、ずーっと俺について来るし。
そうじゃないかとは思ってたんだよなー。
「ちょっとね、両親と喧嘩しちゃって……〝死んでやる!〟って言って出てきちゃった」
「そりゃ、出すよな、捜索願い。超心配してるぜ、きっと」
「…………」
「色々あると思うけどさ、ゆっくり話し合ってみるのも、アリじゃないかな?」
「うん。ありがとう、大ちゃん!」
会話の直後、俺の背後に車が停まる。お、だいたい計算通りだな。
「留美!!」
「ああ、留美! 良かった!!」
スラッとした男性と、涙ぐむ女性。笹垣さんのご両親だ。
「えっ? お父さん、お母さん?! なんでここが……」
「俺が……ああ、まあちょっと言えない方法で逆引きして、親父さんのメール宛てに連絡しといたんだ……一応、あっちも、な」
パトカーも到着する。もし、家庭内暴力とかで家出したなら必要だと思ったんだが、大丈夫そうで良かった。誤報という事で帰ってもらうかな。
>>>
「それでは、我々はこれで。捜索願いは取り下げておきます。良かったですね」
「はい、はい! 有難うございました!」
にこやかに挨拶を交わし合い、去っていくパトカー。どさくさに紛れて、その場を離れた俺を探してか、キョロキョロしている笹垣さん。悪いけど、俺はこのまま帰るぜ?
「まあ、ベルトも完成したし、色々と面白かったし、結果オーライだな」
パーツの一杯詰まったリュックを背に、俺は帰宅の途についたんだ。
そう言うと、たっちゃんは電車を降りていった。俺はこのまま電車に揺られ、北へ向かう。
まだ正月休みだから、座席はガラ空きだ。
よし、邪魔にもならないだろうし、ちょっとだけベルト用の制御基板、イジっておくかなー。
……あ、分かるかな? 俺は九条大作だぜ?
今回は俺のエピソードを聞いてくれよな!
「切符を拝見します」
おっと、車内検札だ。俺は切符をポケットから取り出して、車掌さんが来るのを待っていた。
「あ……あら? えっと、あれ?」
俺の手前の席に座っていたメガネのお姉さんが、焦った感じで、バッグを引っ掻き回したり、ポケット探ったりしている。
あーあー、自転車の鍵とかハンカチとか、ポロポロ落としてるし。
「お客様?」
「あ……ちょっと待って下さい! あれ? おかしいな……」
とうとう靴を脱いで、ひっくり返したりを始めた。おいおい、そんなトコに入れるワケないだろー?
……仕方ない。
「えーっと。ちょっといいかな?」
「え?」
急に俺が話しかけたから、車掌さんもお姉さんも驚いている。
「本に挟まってるぜー?」
俺は、お姉さんのバッグを指さした。
「お姉さん、ふた駅前まで文庫本を読んでたと思うんだけど、栞の代わりに切符を挟んだはずだ。220ページと221ページの間だったなー」
あわててバッグから本を取り出すお姉さん。切符を発見して大喜びだ。いやいや、早く車掌さんに切符を見せてあげてくれよ。
>>>
「ふう、助かっちゃった。私は、笹垣留美。……えーっと」
「俺は九条大作。大ちゃんって呼んでくれよなー!」
「ありがとう、大ちゃん! ……でもなんで、私が本に切符挟んだ事、知ってたの?」
「いや、たまたま目に入っただけなんだ。俺、チラッとでも見たり聞いたりした事は、忘れないんだよ」
瞬間記憶能力。俺の頭には、生まれてから今までに見聞きした全ての情報が、鮮明に記録されている。もちろん、好きなときに好きな情報を取り出す事ができるんだ。
「え~? うっそだ~!」
「んー、まあ信じられないよな。えーっと笹垣さん、笹垣さんはどれかな? 乗ってきた駅からだと、0463-○2-4○2○だなー?」
「……ちょっと! なんでウチの電話番号を知ってるの?!」
「だから一度見たら忘れないんだって」
今まで見掛けた電話帳は〝全部〟読んだ。ペラペラとやれば頭に入るから一瞬だ。覚えておけば、たまーに役に立つしな。
「でもでも、笹垣ってウチ以外にも結構いるわよ?」
「お姉さんの乗ってきた駅の周辺の笹垣さんは、たった3件。その内、一戸建てが1件、マンションが1件、時計屋が1件なんだ」
「だからその内のどれが私の家か、どうやってわかるの?」
「お姉さんのメガネって〝ZENIZ〟じゃん」
激安で有名なメガネの全国チェーン店ZENIZ。
去年、親父が老眼鏡を買いかえる時に一緒について行ったんだよ、だから、全モデル覚えてる。
「もし実家が〝笹垣時計店〟なら、よそでメガネは買わないだろ」
笹垣時計店は、メガネ、貴金属も扱っている。俺が見た電話帳に広告を出していたから間違いない。
「あと、お姉さんが電車に乗り込んできた時、自転車の鍵を握り締めていたから、駅まで自転車だったのかとおもってな。だとするとマンションもない。だってそこ〝駅から徒歩1分〟がウリのマンションだからなー」
駅に来るのに、わざわざ自転車を用意したり駐輪場で鍵をかけるなら、歩いたほうが早い距離だ。
「という事で、正解は〝一戸建ての笹垣さん〟という事になる。ハズレる要素は〝電話帳に載せていない〟パターンだけだなー」
「すっ!」
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「すっごおおおおおおおい!!」
「あー、あんま電車の中で騒いじゃダメだろー?」
>>>
今日の買い物は、変身ベルトの心臓部……エネルギー制御用の基盤を組むための部品だ。
秋葉原の、裏路地とか、雑居ビルの看板も無いような店で売ってる物がほとんどなんだけど、子どもとか女性は、あんまりいないんだよな。毎回目立ってしまって困る。
「……だから、困るんだけどなー?」
マニアックな電子部品が所狭しと並ぶ店内に、なぜか笹垣留美さんが一緒にいる。
「えー? なんでよ?」
こっちが〝何で〟なんだけどな。
「お姉さんかい、九条くん?」
ほらな、何か変な目立ち方してるし。
「違うんだ店長。知らないお姉さんなんだけど……ついて来るんだよ」
事案だぞ。性別が逆なら、即・通報だぜ?
「それより、この前買った抵抗とコンデンサー、まだあるかなー?」
「お、アレ良かっただろ! 特にコンデンサーの耐熱性は、ちょっと凄いよな」
店内の怪しいパーツを興味津々と言った感じで見回す笹垣さん。
って、あーあー! この季節に素手で電子部品を触っちゃ駄目だろー!?
「お姉さん? 静電気が怖いからさ、触らないほうが良いぜー?」
「え? ああ。パチってなったら痛いもんね!」
いや、お姉さんの指の痛みは心配してないんだけどなー?
……お! みっけ! このロットのSCSIボードは、なかなかレアだよな。使うのはICだけなんだけど。
「店長、ちょっと場所借りても良いかなー?」
「おお、好きに使ってくれ。あ、これ抵抗とコンデンサー。あと、こんなのも要るんじゃないか?」
「さすが店長! やっぱ金メッキのコネクターじゃなきゃなー!」
というやり取りの後、店の奥にある作業場で試しに制御基板を組んでみる事にした。
「……っていうか、なんでついて来るんだ?」
一段と狭い作業場に、ギュッと入って来る笹垣さん。作業机に腰掛けた俺の後ろに立って、見下ろしている。
おいおい、胸を頭に乗せないでくれよ、重いから。
「えー? 駄目なのー?」
「いや、別に駄目じゃないんだけどさ、見てても分かんないと思うぜー?」
「見てるだけでいいのよ。分からなくてもいいから! さあ、続けて続けて?」
……まあいいか。
えっと、ココとココとココとココとココとココとココとココをハンダ付けっと。
「早っ!? 大ちゃん、今の何?! 今のどうやったの?!」
「いやいやいや、見てるだけじゃないのかよー? 俺の作業は口で説明できないから。静かに見ててくれよなー?」
「はぁい……」
なんで残念そうなんだよ。あと胸が重い。なに食ったらそんなになるんだ?
……さて、気を取り直して。
ココとココをバイパスして、ココとココを圧着。
こっちのパーツを外してこっちに流用、これをあーしてこーして、それでこうなって……
「ふわ~あ」
もう飽きたのかよ!
……まあ、もうほぼ終わったけどな。
最後に店長オススメのコネクターを付けて、出来上がりっと!
「出来たぜー!」
「うわあ! すごーい!」
何がすごいのか分かってないだろー?
とにかく、ベルトにセットしてみよう。
俺は複雑なシャッター構造のバックル部分を開き、いま仕上がったばかりの制御基板を組み込む。よし、後は……
「お姉さん、立ってるついでに、その棚の黒いバッグ、取ってくれないかな」
「えっと、これ?」
「それはどう見ても赤いよなー?」
棚の上から取り出したのは、店長のノートPC。いつも借りてるヤツだ。電源を入れてベルトのエネルギー供給用のコネクターを、家から持ってきた、特製のパラレルケーブルで繋ぐ。さて、と。エネルギー制御用のプログラムは大体イメージ出来てるし、一瞬だな。
「すごいすごい! 指先が見えない! ピアニストみたい!!」
マシン語を直打ちだ。面倒臭いから。
っていうか、指先が見えないピアニストって、どんな曲を弾いてるんだ?
>>>
「ありがとう店長、完成したよ。予備にいくつかもらって行きたいんだけど、まだある?」
あー、首が凝った。いや、作業じゃなくて胸を乗せられっぱなしでな?
「おー、そういうと思って、3つずつ用意してある。足りるか?」
さすが店長は分かってくれている。
「あと、これだろ? ICだけなら使えるはずだ」
おお! SCSIボードが3つ! よくこんなに残ってたなー!
いや、だからお姉さん、素手で触っちゃ駄目なんだって! 貴重なんだぞ、コレ!
「ありがとう、店長! また来るよ!」
「お邪魔しました! また来ます!」
俺のセリフに合わせて、常連っぽく挨拶する笹垣さん。いや、あんたはもう来ないだろー?
代金を支払い、店を後にする。やっぱ結構な出費だな。
「さあ、次いこー!」
「まだついて来るのかよ!?」
>>>
結局、笹垣さんは最後の店までくっついて来た。
今、この店の端末から俺の部屋のPCに繋いで、転送システムの設定を終えた所だ。
よしっと。これで変身出来るぞ。やっぱ天才だな、俺!
それにしても……
「お姉さんさー?」
「んー? なぁに?」
首を傾げる笹垣さん。
「家、帰ったほうが良いと思うぜー?」
ギクッとした表情。やっぱりなー。
「ちょっと気になったんで、ケーサツのデータベースを見たら、捜索願いにお姉さんの名前があったからさー?」
本当は、やっちゃダメなヤツだぜ。良い子は真似するなよ?
「捜索願い……?」
家出……だろう。
切符の金額は券売機で買える最高額だったのに、中途半端な駅で降りるし、ずーっと俺について来るし。
そうじゃないかとは思ってたんだよなー。
「ちょっとね、両親と喧嘩しちゃって……〝死んでやる!〟って言って出てきちゃった」
「そりゃ、出すよな、捜索願い。超心配してるぜ、きっと」
「…………」
「色々あると思うけどさ、ゆっくり話し合ってみるのも、アリじゃないかな?」
「うん。ありがとう、大ちゃん!」
会話の直後、俺の背後に車が停まる。お、だいたい計算通りだな。
「留美!!」
「ああ、留美! 良かった!!」
スラッとした男性と、涙ぐむ女性。笹垣さんのご両親だ。
「えっ? お父さん、お母さん?! なんでここが……」
「俺が……ああ、まあちょっと言えない方法で逆引きして、親父さんのメール宛てに連絡しといたんだ……一応、あっちも、な」
パトカーも到着する。もし、家庭内暴力とかで家出したなら必要だと思ったんだが、大丈夫そうで良かった。誤報という事で帰ってもらうかな。
>>>
「それでは、我々はこれで。捜索願いは取り下げておきます。良かったですね」
「はい、はい! 有難うございました!」
にこやかに挨拶を交わし合い、去っていくパトカー。どさくさに紛れて、その場を離れた俺を探してか、キョロキョロしている笹垣さん。悪いけど、俺はこのまま帰るぜ?
「まあ、ベルトも完成したし、色々と面白かったし、結果オーライだな」
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