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02.そんなに、ダメな子?②
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この日、アイリスに価値はなくなった。
「私は……」
アイリスはフラフラと何処へ行くでもなく、学園内をさ迷っていた。
「そんなに、ダメな子?」
気付けば、涙が溢れ出していた。
「池……」
そうだ。このまま行けば、池があった筈だ。綺麗な池だと、友達が教えてくれた。まぁ結局、今日まで見には行かずに、ひたすら勉学に励んだ訳だが。
アイリスの頭に不穏な考えが浮かぶ。どうせ、誰からも必要とされていないのだ。自分はきっと、一生愛されることなどない。
このまま生きていても……。苦しいだけ。
「お許しください。どうか、許してください。もう……許して……」
足を進めた先で、不意に誰かの歌声が耳朶に触れた。それに、アイリスは足を止める。
まさか、先客がいるとは。どこまでも運がない。神にまで見放されている。
「ぐすっ、ど、して……」
もう、いい。先客など気にする必要などない。覚悟を決めて、アイリスは再び歩き出した。
どんどんと歌声が明瞭になってくる。しかし、何かがおかしい。歌声と共に美しい楽器の合奏のようなものまで聞こえてくるのだ。いったい何人の生徒が池にいるというのか。
「《あぁ、素晴らしきかな》」
しっかりと耳に届いた歌声は、心地いいものであった。ずっと聞いていたいような。不思議な感覚に陥る。
その歌は、一度王都の広場で見た吟遊詩人が歌っていたそれによく似ていた。その時とは楽器の音色が違う。これは、ハープだろうか。
アイリスは、いつの間にか歌に聞き惚れていた。本来の目的を見失い、歌に導かれるまま歩を進める。どうやらこれは、誰かの英雄譚であるらしい。
どうせならば、最初から聞きたかった。そんな事を思ってしまう程に、その歌声には人を惹き付けるものがあった。
「あっ……」
池の畔へと出たアイリスは、驚きに目を丸める。風が。水が。木が。ハープの音に合わせるように、“歌っていた”。そう表現するしかなかったのだ。
その中心で、小型のハープを演奏しながら一人の少年が楽しげに歌声を響かせていた。柔らかそうな猫っ毛が、風に揺れている。
その髪は輝くような黄金で、瞳は桃色。間違いない。アイリスはこの少年をよく知っていた。隣国、ポプラルース王国の第二王子殿下だ。
ふと、少年の視線がこちらを向く。あっと思った時には、目が合ってしまっていた。少年の歌声が止まり、目が真ん丸に見開かれていく。
「おわ~!?」
「きゃっ!?」
少年の心底驚いたような絶叫が、池の畔に響き渡ったのだった。
「私は……」
アイリスはフラフラと何処へ行くでもなく、学園内をさ迷っていた。
「そんなに、ダメな子?」
気付けば、涙が溢れ出していた。
「池……」
そうだ。このまま行けば、池があった筈だ。綺麗な池だと、友達が教えてくれた。まぁ結局、今日まで見には行かずに、ひたすら勉学に励んだ訳だが。
アイリスの頭に不穏な考えが浮かぶ。どうせ、誰からも必要とされていないのだ。自分はきっと、一生愛されることなどない。
このまま生きていても……。苦しいだけ。
「お許しください。どうか、許してください。もう……許して……」
足を進めた先で、不意に誰かの歌声が耳朶に触れた。それに、アイリスは足を止める。
まさか、先客がいるとは。どこまでも運がない。神にまで見放されている。
「ぐすっ、ど、して……」
もう、いい。先客など気にする必要などない。覚悟を決めて、アイリスは再び歩き出した。
どんどんと歌声が明瞭になってくる。しかし、何かがおかしい。歌声と共に美しい楽器の合奏のようなものまで聞こえてくるのだ。いったい何人の生徒が池にいるというのか。
「《あぁ、素晴らしきかな》」
しっかりと耳に届いた歌声は、心地いいものであった。ずっと聞いていたいような。不思議な感覚に陥る。
その歌は、一度王都の広場で見た吟遊詩人が歌っていたそれによく似ていた。その時とは楽器の音色が違う。これは、ハープだろうか。
アイリスは、いつの間にか歌に聞き惚れていた。本来の目的を見失い、歌に導かれるまま歩を進める。どうやらこれは、誰かの英雄譚であるらしい。
どうせならば、最初から聞きたかった。そんな事を思ってしまう程に、その歌声には人を惹き付けるものがあった。
「あっ……」
池の畔へと出たアイリスは、驚きに目を丸める。風が。水が。木が。ハープの音に合わせるように、“歌っていた”。そう表現するしかなかったのだ。
その中心で、小型のハープを演奏しながら一人の少年が楽しげに歌声を響かせていた。柔らかそうな猫っ毛が、風に揺れている。
その髪は輝くような黄金で、瞳は桃色。間違いない。アイリスはこの少年をよく知っていた。隣国、ポプラルース王国の第二王子殿下だ。
ふと、少年の視線がこちらを向く。あっと思った時には、目が合ってしまっていた。少年の歌声が止まり、目が真ん丸に見開かれていく。
「おわ~!?」
「きゃっ!?」
少年の心底驚いたような絶叫が、池の畔に響き渡ったのだった。
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