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ファイエット学園編
37.魔導師と兄の唯一
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分かりやすい。少年に勉強を教えて貰った感想がそれであった。ガーランドのレベルに合わせて、分かりやすい言葉で少年は丁寧に何度も教えてくれた。
バカにするでもなく。呆れる訳でもなく。ガーランドが理解するまで少年は勉強に付き合ってくれたのだ。
「何でも、出来るのですね」
だから、だろう。ガーランドが思わずそんな言葉を自嘲気味に言ってしまったのは。自分は何と惨めなのだろうか。ガーランドは悔しくて奥歯を噛み締める。
「昔、」
「……?」
「あの子に勉強を教えて欲しいと言われた。今日の君のようにね」
急に何の話なのだろうか。ガーランドは意図が読めなくて、目を瞬く。ひとまず分かったことは、少年が言う“あの子”はあの少女であるのだろうということだけだった。
「僕は懇切丁寧に教えたつもりだった。けど、あの子は何とも形容しがたい表情を浮かべて『更に謎が深まった』と言ったんだよ」
「……へ?」
「お礼も言われたし、何故か謝罪もされた。そして、『違う人に教えて貰おうかな』と困った顔をしたんだ。言葉通りにその日から僕に何かを教えて欲しいとは言わなくなってね」
つまり、少女は少年の教え方では理解が出来なかったという話だろうか。こんなにも分かりやすいのに? どうしてなのだろうかとガーランドは頭を悩ませる。
「僕はそれが不満だった。だから、本で調べたよ。でも、よく分からなくてね。次に、手当たり次第に色んな人に聞いて回ったんだ」
「それで、どうなったのですか?」
少年は、自信に満ちた笑みを浮かべる。ベンチに広げてあるガーランドの教科書を人差し指でトントンと叩いた。
「君が分かりやすいと思ったのなら、その成果が出ているということだよ」
ガーランドはそこで理解する。少年は、最初から教えるのが上手であった訳ではないらしい。どうしても少女に頼られたくて、どう教えれば分かりやすいのかということを周りに教えて貰ったと、そういう事のようだ。
「“あの子”はどうなりましたか?」
「勿論、分からないことは僕に聞いてくるよ。そのためにやったんだ。当たり前だろ?」
ガーランドは瞳に喜色を滲ませた少年に、急に親近感のようなものを抱いた。この少年にも、出来ないことはあるらしい。ただ、その出来ないことを出来ないままにしなかったというだけの話だ。たった一人の少女のためだけに。
冷たいだけの人だと思っていた。人間離れしていて、近寄りがたい人だと感じた。しかし、実際の少年は酷く人間らしかった。少女に頼られて喜ぶ普通の少年だった。
「僕は誰かに頼ることも頼られることも煩わしいだけで無意味なことだと思っていたけど、悪くはないと学んだ。学ぶということは興味深い」
きっと少年は、誰かに頼らずとも生きてこれたのだろう。やはりこの人は凄いのだ。しかし、それによって何かは確実に欠落している。人間にとって、大切な何かが。
それを与えてくれるのが、あの少女なのだろうか。少女のために色んな人に聞いて回ったことで、色んな人との関わりが産まれた? だから、この邸宅の人々はこの少年を見守っているのだろうか。必死に頑張る姿を知っているから。
「分からないことは悪ではない。教えを請うこともね」
「そうでしょうか……」
「精々、頑張ることだ。僕に勝ちたいのであればね」
「そっ!? そのようなことは」
「思っていない? それはどうだろうね?」
少年は全てを見透かしたようにゆるりと笑む。態とらしく首を傾げた少年に、ガーランドは顔を真っ赤にさせた。急激に恥ずかしくなったのだ。全てバレている。ガーランドの驕りも嫉妬も嘲笑も自嘲も。最初から全部。
「あ、う、その」
「君の口から“弟”なんて言葉が出るとは思っていなかったな」
「ち、違うのです。俺は、ただ」
「目は口ほどに物を言う。これは本当のことなんだ。知っていた?」
何の言い訳も思い付かずに、はくはくと魚のように口を開け閉めするガーランドを少年は心底楽しそうに見てくる。何とも意地の悪いことだ。
「それで? これは誰の影響だろう」
「……知っているのでは?」
「さぁ? どうだったかな」
白々しくそんな事を言ってくる少年に、ガーランドはムゥと口をへの字に曲げる。結局は反抗心が勝って、ガーランドは今に見てろよと思ったのだった。
ガーランドはとても頑張った。少年にぎゃふんと言わせるのだと猛勉強したのだ。
しかし、困ったことに家庭教師よりも少年の方が頼りになってしまう。ガーランドは何だかんだと少年に勉強を見て貰っていた。
微妙な距離感が縮まらないまま数ヶ月が経った。その間に気付けばガーランドは、少年よりも少女と仲良くなってしまっていた。
その日の授業は、苦手な魔法史だった。この教師は、特にガーランドに辛く当たるのだ。いつも通りに教師は、ガーランドを小馬鹿にして嗤った。
瞬間、扉がドガッ! と蹴り開けられる。勢いが凄まじすぎて、両開きの扉の片方。蹴られた方が外れかかっていた。
涼しい顔で少年が入ってくる。ガーランドも教師も突然の乱入者にポカーンと口を開けた。
「自分の無能ぶりを彼のせいにするなんてね。恥という言葉を知らないと見える」
「なっ!?」
教師が怒りでカッと顔を赤くする。プライドばかりが高いのだろう。教師はワナワナと震えながら、少年を無礼にも指差した。
「魔力をなくして無価値になったのは誰でしたかな!? こんな遠縁の者に後継を奪われたくせに!!」
何と醜いのだろうか。ガーランドの眉間にぐっと皺が寄る。少年の事を何も知らないらしい。この人が、どれだけ凄いと思っているのだ。
気付けばガーランドは「この人を侮辱するな!!」と叫んでいた。それに、教師は更に目を吊り上げる。
少年はというと、不思議そうにパチパチと目を瞬いていた。次いで、何かを考えるように手を顎に添える。
「どうやら、言葉遣いから教育する必要があるようですな」
教師が教鞭を手に取る。それに、ガーランドはびくっと肩を跳ねさせた。ニタリと教師は下劣な笑みを浮かべると、教鞭を振りかぶった。教鞭はガーランドではなく、目の前に立っていた少年へと振り下ろされる。
少年はそれを軽い動作で避けた。そのまま教師の腕を掴むと扉の方へ投げ飛ばす。教師は残っていたもう片方の扉を巻き込んで廊下まで吹っ飛んでいった。
メイドの悲鳴が聞こえる。ガーランドは呆気に取られて、目を丸めることしか出来なかった。
「後継に興味はないんだ。だから、魔力も別にいらない」
あぁ、だからか。ガーランドは色んな事に納得がいった。後継に興味がないのだから、ガーランドと張り合う理由など少年にはなかったのだ。ガーランドが自慢にしていたことは、少年には何の価値もなかったらしい。
「でも、心配しなくていい。僕は売られた喧嘩は買う主義だ。全てね」
好戦的にうっそりと笑んだ少年に、ガーランドはぶるりと震える。それとこれとは別の話であるようだった。
「ど、どうして、ここに……」
「あぁ、あの子が君を気に入ったようだから。それに、君の現状を知って“それは家庭教師の意味があるのかな?”と渋い顔をしていたから様子を見に来てみただけだよ」
「そう、ですか」
全てはあの少女のためらしい。分かっていた事だ。そうである筈なのに、何処かで残念がっている自分もいた。
「ルノー!?」
慌てて部屋へと駆け込んできたのは、フルーレスト公爵夫人だった。あたふたとしながら、少年の頭や顔に手で触れる。
「怪我はない? あぁ、なんて事なの。大丈夫?」
「母上」
「痛いところは?」
「母上、落ち着いて。僕は大丈夫」
少年にそう言われて、夫人は安堵の息を吐く。次いで、ガーランドに視線を遣った。
「ガーランドは? 大丈夫だった?」
「はい、俺も問題ありません」
「そうなのね。それは良かった」
心底、安心したように夫人は微笑む。それに、ガーランドは居心地悪そうに視線を逸らした。それは、本心だろうか。本当に、自分の心配もしたのだろうか、と。
「これは、何の騒ぎなのかしら」
「あの家庭教師が悪いので」
「あら、そうなの? ガーランドに何か悪いことをしていたのね」
「うん」
夫人は全面的に少年を信じているようだ。現場だけ見れば、どう考えても加害者は少年であるのだが……。少年がそう言うのならば、悪いのは家庭教師の方らしい。まぁ、実際にその通りなので間違ってはいない。
「それで、貴方はどうしてここにいるの?」
「僕? 僕は……」
少年は思案するように黙る。あの少女が言ったからなのだろう。何を悩む必要があるのだ。さっき自分でそう言ったじゃないか。
「そうだな。“弟”が、心配だったから」
まさかの答えに、ガーランドは固まる。しかし、夫人はそれはそれは嬉しそうに「まぁ! まぁまぁまぁ~~!!!」と歓喜した。
「そうなのね! 弟が、弟が心配!」
「母上もでしょう?」
「勿論よ。困ったことがあったら何でも言って欲しいわ。頼っていいのよ、ガーランド」
ガーランドはそれに、嬉しいやら恥ずかしいやら。よく分からないまま頷く。頼っていいのか。助けてくれるのか。本当に?
「は、はい。あの、は、ははうえ……」
初めて呼んだ。ガーランドは怒られたらどうしようかと顔を上げられなかった。
「今日は……。ご馳走にしましょう」
「……はい?」
「大丈夫よ。お父様は今日忙しくて帰ってきませんからね。パーティーよ。パーティーしましょうね」
夫人はルンルンで「そうと決まれば準備しなければね」と部屋を出ていってしまった。取り残されたガーランドは、これまた呆気に取られて目を丸める。
夫人と入れ代わるように、よく少年と一緒にいる使用人が部屋へと入ってきた。少年を探しにきたのだろうか。
「ねぇ、」
「はい。なんでございましょうか」
「母上はどうしてあんなに嬉しそうなの?」
「わたくしには……。シルヴィ様に伺ってみてはいかがでしょうか?」
「そう……。そうするよ。シルヴィなら分かるかもしれない」
真剣な顔で頷く少年を使用人は穏やかな顔で見つめている。やはり少年は、何かが足りていないのだろう。そんな人間離れしている少年は、少女がいると人間らしくなるらしい。
使用人の様子からして、昔は気にも止めなかったのかもしれない。心の機微を少年が理解したいのは、少女のためなのだろうなとガーランドは思った。
「あの、」
「なに?」
「申し訳ありませんでした。お手数をおかけして……」
大して興味もない自分のために、あんな嘘まで夫人に吐いてくれるとは思っていなかった。面倒に巻き込んでしまったのだとガーランドは謝罪したのだ。
しかし、少年は不思議そうに首を傾げる。怪訝そうにしながらも「うん」とだけ言った。
間違えた。そう感じた。ガーランドは緊張して唾を呑む。
「あ、ありがとうございました! 兄上!」
半ば叫ぶようにそれだけ言った。そんなガーランドに、少年はきょとんと目を瞬く。しかし次の瞬間には、満足そうに微笑んでいた。
「構わないよ。僕は君の兄だからね」
それは、驚くほどの穏やかさを孕んだ声音だった。
******
舞踏会のきらびやかな会場で、その二人は酷く目立っていた。だから、ガーランドは直ぐに見つけることが出来たのだ。
早々とテラスにでも出るつもりなのだろう。デザートが沢山乗った皿を持っている。我慢が出来なかったのか何なのか。シルヴィがフォークでルノーにケーキを食べさせている所だった。
シルヴィが首を傾げると、ルノーは口をモグモグとさせながら満足そうに頷いた。どうやら口に合ったらしい。
「兄上。シルヴィ嬢」
声を掛けると二人共に、顔をガーランドの方へと向けてくれる。ガーランドだと気付くと、シルヴィは顔を明るくさせた。
「ごきげんよう、ガーランド様」
「素晴らしいダンスでした」
「ルノーくんのお陰です」
シルヴィが照れたようにはにかむ。確かにルノーのリードが上手いのはあるのだろう。しかし、それを差し引いてもシルヴィのダンスは素晴らしかったとガーランドは思ったのだが。
まぁ、あまり言い過ぎてもシルヴィは困るだけだと知っているので、ガーランドはそれ以上は言わないことにした。
「ガーランド」
「はい」
「まさかとは思うけど……。シルヴィをダンスに誘うつもりなの?」
「え?」
果てしなく嫌そうな顔をしているルノーに、ガーランドは慌てて首を横に振る。いや、それもそれでシルヴィに失礼なのでは? とガーランドは困ってシルヴィへと視線を遣った。
特に気にした様子はなさそうだった。寧ろ、シルヴィはルノーに呆れたような視線を向けている。
「ガーランド様なら良いって言った」
「……どうしても踊るの?」
完璧に不貞腐れている。ムスッと眉根を寄せるルノーに、シルヴィは態とらしく首を傾げた。「どうしましょう?」なんて言いながら。
こんな事をルノーに言って、許されるのはシルヴィくらいだろう。出会った時から変わらない。ルノーに勝てる唯一の人。
しかし、自分とならば踊っても良いと許可したのか。兄上が? ガーランドはそこに触れても良いのだろうかとソワソワした。それは、信頼されているということなのか。
「シルヴィ嬢と踊れるのは、とても光栄です。しかし、テラスに行かれるのでしょう?」
ならば、信頼に答えなければ。ガーランドの言葉に、シルヴィは素直に頷く。ルノーは一変して喜色を顔に滲ませた。
「二階にはバルコニーもありますよ」
「そうなのですね。デザートを食べたら行ってみる?」
「バルコニーで食べたいなら机と椅子を移動させてあげるよ」
「勝手にやったら怒られるよ……」
「そうかな」
ルノーが指を鳴らすと、シルヴィが持っていた皿が宙に浮く。勿論、ルノーが持っていた皿もだ。どこからともなく、ジュースが入ったグラスもそれに加わった。
それに、シルヴィは「わぁ……!」と感動したように声を漏らす。黄緑色の瞳が煌めくのに、ルノーはうっとりと目を細めた。
何故これで伝わらないのか分からない。どこからどう見ても、ルノーがシルヴィに好意を寄せているのは明白なのに。ルノーも想いを伝えないのはどうしてなのやら。
ルノーの魔法にシルヴィが気を取られている隙に、ルノーはガーランドに耳打ちをした。「邪魔者が近付かないように上手く出来るね?」、と。
「勿論です。僕にお任せください」
「イベントとやらにも巻き込まれたくはない」
「はい。ディディエと上手くやりますので」
「そう」
ルノーに頼られて嬉しいなんて、あの頃の自分が知ったら大層驚くことだろう。この兄にはお前では勝てはしない。
でも、諦めてはいけないのだ。この兄に認めて貰うには、ぎゃふんと言わせるくらいの実力は必要なのだから。まぁ、いまだに足元にも及ばないのだが……。
「行こうか、シルヴィ」
「うん、分かった」
今も昔も兄は大変なのだ。全ては、たった一人の少女のためだけに。
「ガーランド様」
「え? はい」
「私も光栄ですわ。きっと、踊りましょうね?」
ふわっと笑んだシルヴィに、ガーランドは困ったように眉尻を下げた。昔の自分に言ってやりたい。その少女にも勝てはしないので、今すぐ謝れと。まぁ……。謝った所で何の話か分からないという顔で首を傾げられるだけなのだが。
しかも、“その通りだなと思ったので。それに、一人になりたい時もありますよね”なんて、全く気にしていなかった事が判明して驚くことになる。彼女はそういう人なのだ。
「はい、是非。楽しみにしております」
思わずガーランドはそう返してしまった。それにルノーが「へぇ?」と低い声を出したものだから、ガーランドはびくっと肩を跳ねさせることになったのだった。
バカにするでもなく。呆れる訳でもなく。ガーランドが理解するまで少年は勉強に付き合ってくれたのだ。
「何でも、出来るのですね」
だから、だろう。ガーランドが思わずそんな言葉を自嘲気味に言ってしまったのは。自分は何と惨めなのだろうか。ガーランドは悔しくて奥歯を噛み締める。
「昔、」
「……?」
「あの子に勉強を教えて欲しいと言われた。今日の君のようにね」
急に何の話なのだろうか。ガーランドは意図が読めなくて、目を瞬く。ひとまず分かったことは、少年が言う“あの子”はあの少女であるのだろうということだけだった。
「僕は懇切丁寧に教えたつもりだった。けど、あの子は何とも形容しがたい表情を浮かべて『更に謎が深まった』と言ったんだよ」
「……へ?」
「お礼も言われたし、何故か謝罪もされた。そして、『違う人に教えて貰おうかな』と困った顔をしたんだ。言葉通りにその日から僕に何かを教えて欲しいとは言わなくなってね」
つまり、少女は少年の教え方では理解が出来なかったという話だろうか。こんなにも分かりやすいのに? どうしてなのだろうかとガーランドは頭を悩ませる。
「僕はそれが不満だった。だから、本で調べたよ。でも、よく分からなくてね。次に、手当たり次第に色んな人に聞いて回ったんだ」
「それで、どうなったのですか?」
少年は、自信に満ちた笑みを浮かべる。ベンチに広げてあるガーランドの教科書を人差し指でトントンと叩いた。
「君が分かりやすいと思ったのなら、その成果が出ているということだよ」
ガーランドはそこで理解する。少年は、最初から教えるのが上手であった訳ではないらしい。どうしても少女に頼られたくて、どう教えれば分かりやすいのかということを周りに教えて貰ったと、そういう事のようだ。
「“あの子”はどうなりましたか?」
「勿論、分からないことは僕に聞いてくるよ。そのためにやったんだ。当たり前だろ?」
ガーランドは瞳に喜色を滲ませた少年に、急に親近感のようなものを抱いた。この少年にも、出来ないことはあるらしい。ただ、その出来ないことを出来ないままにしなかったというだけの話だ。たった一人の少女のためだけに。
冷たいだけの人だと思っていた。人間離れしていて、近寄りがたい人だと感じた。しかし、実際の少年は酷く人間らしかった。少女に頼られて喜ぶ普通の少年だった。
「僕は誰かに頼ることも頼られることも煩わしいだけで無意味なことだと思っていたけど、悪くはないと学んだ。学ぶということは興味深い」
きっと少年は、誰かに頼らずとも生きてこれたのだろう。やはりこの人は凄いのだ。しかし、それによって何かは確実に欠落している。人間にとって、大切な何かが。
それを与えてくれるのが、あの少女なのだろうか。少女のために色んな人に聞いて回ったことで、色んな人との関わりが産まれた? だから、この邸宅の人々はこの少年を見守っているのだろうか。必死に頑張る姿を知っているから。
「分からないことは悪ではない。教えを請うこともね」
「そうでしょうか……」
「精々、頑張ることだ。僕に勝ちたいのであればね」
「そっ!? そのようなことは」
「思っていない? それはどうだろうね?」
少年は全てを見透かしたようにゆるりと笑む。態とらしく首を傾げた少年に、ガーランドは顔を真っ赤にさせた。急激に恥ずかしくなったのだ。全てバレている。ガーランドの驕りも嫉妬も嘲笑も自嘲も。最初から全部。
「あ、う、その」
「君の口から“弟”なんて言葉が出るとは思っていなかったな」
「ち、違うのです。俺は、ただ」
「目は口ほどに物を言う。これは本当のことなんだ。知っていた?」
何の言い訳も思い付かずに、はくはくと魚のように口を開け閉めするガーランドを少年は心底楽しそうに見てくる。何とも意地の悪いことだ。
「それで? これは誰の影響だろう」
「……知っているのでは?」
「さぁ? どうだったかな」
白々しくそんな事を言ってくる少年に、ガーランドはムゥと口をへの字に曲げる。結局は反抗心が勝って、ガーランドは今に見てろよと思ったのだった。
ガーランドはとても頑張った。少年にぎゃふんと言わせるのだと猛勉強したのだ。
しかし、困ったことに家庭教師よりも少年の方が頼りになってしまう。ガーランドは何だかんだと少年に勉強を見て貰っていた。
微妙な距離感が縮まらないまま数ヶ月が経った。その間に気付けばガーランドは、少年よりも少女と仲良くなってしまっていた。
その日の授業は、苦手な魔法史だった。この教師は、特にガーランドに辛く当たるのだ。いつも通りに教師は、ガーランドを小馬鹿にして嗤った。
瞬間、扉がドガッ! と蹴り開けられる。勢いが凄まじすぎて、両開きの扉の片方。蹴られた方が外れかかっていた。
涼しい顔で少年が入ってくる。ガーランドも教師も突然の乱入者にポカーンと口を開けた。
「自分の無能ぶりを彼のせいにするなんてね。恥という言葉を知らないと見える」
「なっ!?」
教師が怒りでカッと顔を赤くする。プライドばかりが高いのだろう。教師はワナワナと震えながら、少年を無礼にも指差した。
「魔力をなくして無価値になったのは誰でしたかな!? こんな遠縁の者に後継を奪われたくせに!!」
何と醜いのだろうか。ガーランドの眉間にぐっと皺が寄る。少年の事を何も知らないらしい。この人が、どれだけ凄いと思っているのだ。
気付けばガーランドは「この人を侮辱するな!!」と叫んでいた。それに、教師は更に目を吊り上げる。
少年はというと、不思議そうにパチパチと目を瞬いていた。次いで、何かを考えるように手を顎に添える。
「どうやら、言葉遣いから教育する必要があるようですな」
教師が教鞭を手に取る。それに、ガーランドはびくっと肩を跳ねさせた。ニタリと教師は下劣な笑みを浮かべると、教鞭を振りかぶった。教鞭はガーランドではなく、目の前に立っていた少年へと振り下ろされる。
少年はそれを軽い動作で避けた。そのまま教師の腕を掴むと扉の方へ投げ飛ばす。教師は残っていたもう片方の扉を巻き込んで廊下まで吹っ飛んでいった。
メイドの悲鳴が聞こえる。ガーランドは呆気に取られて、目を丸めることしか出来なかった。
「後継に興味はないんだ。だから、魔力も別にいらない」
あぁ、だからか。ガーランドは色んな事に納得がいった。後継に興味がないのだから、ガーランドと張り合う理由など少年にはなかったのだ。ガーランドが自慢にしていたことは、少年には何の価値もなかったらしい。
「でも、心配しなくていい。僕は売られた喧嘩は買う主義だ。全てね」
好戦的にうっそりと笑んだ少年に、ガーランドはぶるりと震える。それとこれとは別の話であるようだった。
「ど、どうして、ここに……」
「あぁ、あの子が君を気に入ったようだから。それに、君の現状を知って“それは家庭教師の意味があるのかな?”と渋い顔をしていたから様子を見に来てみただけだよ」
「そう、ですか」
全てはあの少女のためらしい。分かっていた事だ。そうである筈なのに、何処かで残念がっている自分もいた。
「ルノー!?」
慌てて部屋へと駆け込んできたのは、フルーレスト公爵夫人だった。あたふたとしながら、少年の頭や顔に手で触れる。
「怪我はない? あぁ、なんて事なの。大丈夫?」
「母上」
「痛いところは?」
「母上、落ち着いて。僕は大丈夫」
少年にそう言われて、夫人は安堵の息を吐く。次いで、ガーランドに視線を遣った。
「ガーランドは? 大丈夫だった?」
「はい、俺も問題ありません」
「そうなのね。それは良かった」
心底、安心したように夫人は微笑む。それに、ガーランドは居心地悪そうに視線を逸らした。それは、本心だろうか。本当に、自分の心配もしたのだろうか、と。
「これは、何の騒ぎなのかしら」
「あの家庭教師が悪いので」
「あら、そうなの? ガーランドに何か悪いことをしていたのね」
「うん」
夫人は全面的に少年を信じているようだ。現場だけ見れば、どう考えても加害者は少年であるのだが……。少年がそう言うのならば、悪いのは家庭教師の方らしい。まぁ、実際にその通りなので間違ってはいない。
「それで、貴方はどうしてここにいるの?」
「僕? 僕は……」
少年は思案するように黙る。あの少女が言ったからなのだろう。何を悩む必要があるのだ。さっき自分でそう言ったじゃないか。
「そうだな。“弟”が、心配だったから」
まさかの答えに、ガーランドは固まる。しかし、夫人はそれはそれは嬉しそうに「まぁ! まぁまぁまぁ~~!!!」と歓喜した。
「そうなのね! 弟が、弟が心配!」
「母上もでしょう?」
「勿論よ。困ったことがあったら何でも言って欲しいわ。頼っていいのよ、ガーランド」
ガーランドはそれに、嬉しいやら恥ずかしいやら。よく分からないまま頷く。頼っていいのか。助けてくれるのか。本当に?
「は、はい。あの、は、ははうえ……」
初めて呼んだ。ガーランドは怒られたらどうしようかと顔を上げられなかった。
「今日は……。ご馳走にしましょう」
「……はい?」
「大丈夫よ。お父様は今日忙しくて帰ってきませんからね。パーティーよ。パーティーしましょうね」
夫人はルンルンで「そうと決まれば準備しなければね」と部屋を出ていってしまった。取り残されたガーランドは、これまた呆気に取られて目を丸める。
夫人と入れ代わるように、よく少年と一緒にいる使用人が部屋へと入ってきた。少年を探しにきたのだろうか。
「ねぇ、」
「はい。なんでございましょうか」
「母上はどうしてあんなに嬉しそうなの?」
「わたくしには……。シルヴィ様に伺ってみてはいかがでしょうか?」
「そう……。そうするよ。シルヴィなら分かるかもしれない」
真剣な顔で頷く少年を使用人は穏やかな顔で見つめている。やはり少年は、何かが足りていないのだろう。そんな人間離れしている少年は、少女がいると人間らしくなるらしい。
使用人の様子からして、昔は気にも止めなかったのかもしれない。心の機微を少年が理解したいのは、少女のためなのだろうなとガーランドは思った。
「あの、」
「なに?」
「申し訳ありませんでした。お手数をおかけして……」
大して興味もない自分のために、あんな嘘まで夫人に吐いてくれるとは思っていなかった。面倒に巻き込んでしまったのだとガーランドは謝罪したのだ。
しかし、少年は不思議そうに首を傾げる。怪訝そうにしながらも「うん」とだけ言った。
間違えた。そう感じた。ガーランドは緊張して唾を呑む。
「あ、ありがとうございました! 兄上!」
半ば叫ぶようにそれだけ言った。そんなガーランドに、少年はきょとんと目を瞬く。しかし次の瞬間には、満足そうに微笑んでいた。
「構わないよ。僕は君の兄だからね」
それは、驚くほどの穏やかさを孕んだ声音だった。
******
舞踏会のきらびやかな会場で、その二人は酷く目立っていた。だから、ガーランドは直ぐに見つけることが出来たのだ。
早々とテラスにでも出るつもりなのだろう。デザートが沢山乗った皿を持っている。我慢が出来なかったのか何なのか。シルヴィがフォークでルノーにケーキを食べさせている所だった。
シルヴィが首を傾げると、ルノーは口をモグモグとさせながら満足そうに頷いた。どうやら口に合ったらしい。
「兄上。シルヴィ嬢」
声を掛けると二人共に、顔をガーランドの方へと向けてくれる。ガーランドだと気付くと、シルヴィは顔を明るくさせた。
「ごきげんよう、ガーランド様」
「素晴らしいダンスでした」
「ルノーくんのお陰です」
シルヴィが照れたようにはにかむ。確かにルノーのリードが上手いのはあるのだろう。しかし、それを差し引いてもシルヴィのダンスは素晴らしかったとガーランドは思ったのだが。
まぁ、あまり言い過ぎてもシルヴィは困るだけだと知っているので、ガーランドはそれ以上は言わないことにした。
「ガーランド」
「はい」
「まさかとは思うけど……。シルヴィをダンスに誘うつもりなの?」
「え?」
果てしなく嫌そうな顔をしているルノーに、ガーランドは慌てて首を横に振る。いや、それもそれでシルヴィに失礼なのでは? とガーランドは困ってシルヴィへと視線を遣った。
特に気にした様子はなさそうだった。寧ろ、シルヴィはルノーに呆れたような視線を向けている。
「ガーランド様なら良いって言った」
「……どうしても踊るの?」
完璧に不貞腐れている。ムスッと眉根を寄せるルノーに、シルヴィは態とらしく首を傾げた。「どうしましょう?」なんて言いながら。
こんな事をルノーに言って、許されるのはシルヴィくらいだろう。出会った時から変わらない。ルノーに勝てる唯一の人。
しかし、自分とならば踊っても良いと許可したのか。兄上が? ガーランドはそこに触れても良いのだろうかとソワソワした。それは、信頼されているということなのか。
「シルヴィ嬢と踊れるのは、とても光栄です。しかし、テラスに行かれるのでしょう?」
ならば、信頼に答えなければ。ガーランドの言葉に、シルヴィは素直に頷く。ルノーは一変して喜色を顔に滲ませた。
「二階にはバルコニーもありますよ」
「そうなのですね。デザートを食べたら行ってみる?」
「バルコニーで食べたいなら机と椅子を移動させてあげるよ」
「勝手にやったら怒られるよ……」
「そうかな」
ルノーが指を鳴らすと、シルヴィが持っていた皿が宙に浮く。勿論、ルノーが持っていた皿もだ。どこからともなく、ジュースが入ったグラスもそれに加わった。
それに、シルヴィは「わぁ……!」と感動したように声を漏らす。黄緑色の瞳が煌めくのに、ルノーはうっとりと目を細めた。
何故これで伝わらないのか分からない。どこからどう見ても、ルノーがシルヴィに好意を寄せているのは明白なのに。ルノーも想いを伝えないのはどうしてなのやら。
ルノーの魔法にシルヴィが気を取られている隙に、ルノーはガーランドに耳打ちをした。「邪魔者が近付かないように上手く出来るね?」、と。
「勿論です。僕にお任せください」
「イベントとやらにも巻き込まれたくはない」
「はい。ディディエと上手くやりますので」
「そう」
ルノーに頼られて嬉しいなんて、あの頃の自分が知ったら大層驚くことだろう。この兄にはお前では勝てはしない。
でも、諦めてはいけないのだ。この兄に認めて貰うには、ぎゃふんと言わせるくらいの実力は必要なのだから。まぁ、いまだに足元にも及ばないのだが……。
「行こうか、シルヴィ」
「うん、分かった」
今も昔も兄は大変なのだ。全ては、たった一人の少女のためだけに。
「ガーランド様」
「え? はい」
「私も光栄ですわ。きっと、踊りましょうね?」
ふわっと笑んだシルヴィに、ガーランドは困ったように眉尻を下げた。昔の自分に言ってやりたい。その少女にも勝てはしないので、今すぐ謝れと。まぁ……。謝った所で何の話か分からないという顔で首を傾げられるだけなのだが。
しかも、“その通りだなと思ったので。それに、一人になりたい時もありますよね”なんて、全く気にしていなかった事が判明して驚くことになる。彼女はそういう人なのだ。
「はい、是非。楽しみにしております」
思わずガーランドはそう返してしまった。それにルノーが「へぇ?」と低い声を出したものだから、ガーランドはびくっと肩を跳ねさせることになったのだった。
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