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ファイエット学園編
01.モブ令嬢は一年生
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色んな意味で緊張する。シルヴィは入学式特有の緊張感にソワソワと辺りを見回した。
体育館だろうか。日本の学校とそう変わらない会場の風景に、シルヴィは舞台設定こんな感じだった? と記憶を探る。入学式はふわふわっと文字だけだった気もしてきた。
ただ、パイプ椅子ではなく上等な椅子が並べられている所が伝統ある学校感を醸し出している。気がする。雰囲気は大事だ。
シルヴィの席は丁度真ん中くらいだろう。詳しく言うならば、魔法科の後ろ。普通科の一番前、だ。
学園には貴族も平民も通うため、この国の身分制度は適応されないことになっている。平等にということらしい。とは言っても、卒業してしまえばその限りではないため、身分が上の者に失礼をしようなどという命知らずはまぁ、いないのだが。
そのため、席順も貴族が前の方を用意されている。そして、普通科よりも魔法科優先。平等とは? シルヴィは思わずそう考えたが、世の中そんなものだなと流した。
シルヴィは前の席に座る魔法科の生徒に視線を遣る。真っ白な制服は、ゲームで見たそのままであった。
魔法科の一番後ろの席に座っているということは、目の前の彼は平民なのだろうか。不意に、シルヴィの前に座っていたその生徒が顔をこちらに向けた。目が合って、シルヴィは目を瞬く。鼻で笑われた。
おっと? シルヴィは呆れて溜息を吐きそうになった。貴族社会だけではないのか。どうやら、魔力なしと馬鹿にされたらしい。まぁ、気にしないけれど。
いや、待て。シルヴィは急に不安になった。まさか、ルノー相手にこんな危険な真似をする生徒はいないだろうな、と。売られた喧嘩は全て買うのがルノーである。こんなことされたら拳、又は足が出るぞ。あの幼馴染みは。
『只今より、ファイエット学園の入学式を始めます。では、学園長のご挨拶から』
どうやら、入学式が始まる時刻になったらしい。ざわざわとしていた会場が静まり返った。
シルヴィはルノーのことはひとまず置いておこうと、学園長の挨拶に集中することにした。
入学式は滞りなく進み、新入生挨拶ではガーランドが代表で壇上に上がった。魔力が高く身分も相応しいからだろう。在校生の祝辞は生徒会長であるフレデリクが務めるようだ。
ゲームが始まるのだなぁ。と、シルヴィは感じた。この会場には、ほぼ全ての攻略対象者が集まっている。いや、全寮制なのだから敷地内には全員だ。そして、何よりヒロインがいる筈だ。全然、見つけられないが。
たぶん、この会場の何処かにいる。シルヴィは早々と諦めた。その内、見かける機会もあるだろうと。なにせ、ヒロインなのだから。嫌でも目立つ筈だ。
とは言っても、シルヴィは普通科だ。自身が着る真っ黒な制服に目をやって、ゲーム内でも黒い制服が出てきたなぁ。とぼんやりとした記憶を思い浮かべた。誰のルートで見たのだろうか。モブが着ていた可能性が大だが。
「んー……」
攻略対象者達はみんな魔法科の筈なのに。何故か引っ掛かって、シルヴィは眉根を寄せた。
真っ黒な制服に、腕章のリボンが揺れている。それは、シルヴィと同じ学年を示す赤色だった。誰なのだろうか。
学年が分かるように、腕章のリボンの色は三年間同じ色で決められている。つまり、シルヴィの腕章はずっと赤色で変わらない。
ルノーの学年は黄色の筈だ。その上は、攻略対象者がいないためよく知らないが、ファンサイトか何かで緑色だと見た記憶がある。やり込んでいるファンはレベルが違うのだ。
シルヴィが深く考え込もうとした瞬間、入学式の終わりを告げる声が聞こえて、ハッと背筋を伸ばした。
この後は、各々教室で学園の説明を受けて、今日の所は終わりのようだ。本格的な授業は明後日から。明日は在校生の始業式なんだとか。
シルヴィは魔法科の生徒が退場するのをバレない程度に眺めた。何やら視線を感じてそちらに顔を向ける。ディディエと目が合った。その隣にはガーランドもいる。
ディディエが軽く手を振ってきたので、シルヴィは淑女の微笑みを返しておいた。やめて欲しい。目立ちたくないので。と、シルヴィは思ったが、周りの女子生徒達が「私に手を振って下さったの?」「私よ!」とざわざわし出したので、大丈夫そうだなとなった。
ディディエは人気のようだ。確か、ゲームでもそうだったはず。ディディエは軽い性格であるが、心には闇を持っているキャラだった。
幼い頃から意地悪な姉や厳しい母親の顔色を窺いながら育ったために、常に人の機嫌を取るようになるのだ。また、父親は仕事で忙しく、構って貰えなかったため寂しい思いをする。
そのため1人を嫌い、常に誰かと共に行動をしていた。女性の苛立った声が苦手で、正反対の優しく穏やかなヒロインに惹かれるのだ。
あくまでも、ゲームではの話であるが。今のディディエは姉のジャスミーヌと仲が良いし、ジャスミーヌがあれこれとしたらしく、家族仲も良いと聞いた。
元々の性格なのか、姉のフォローのためなのか、空気の読める良い子ではある。ディディエがいれば、安心だとシルヴィも思ってしまう程に。全ての人のフォローの子だ。
「あ……」
視界の中で、キラッと何かが光った気がしてシルヴィはそこに焦点を当てる。当てて、思わず声を出してしまった。
ヒロインがそこにはいた。綺麗な白金色をしたロングストレートの髪が、キラキラと揺れている。そうだった。ヒロインも白金の髪色を持っていた。
可愛らしいリボンの付いたカチューシャをしている。そして、可愛らしいくりくりとしたタレ目気味の薄桃色の瞳。更に、可愛らしい唇に頬に。全てが可愛らしい造りをしていた。流石はヒロインだ。
ゲームは、放課後からスタートする。順番に攻略対象者と出会っていく出会いイベントが起こるのだ。そこから、攻略したいキャラの好感度を重点的に上げながらストーリーを楽しんでいくと。
「…………」
よし。今日の放課後は直ぐに寮に帰ろう。シルヴィはそう決めた。変に巻き込まれて出会いイベントがめちゃくちゃになったら大変だ。ヒロインが。
ジャスミーヌはどうするのだろうか。そもそもジャスミーヌはフレデリクと結ばれたいのか謎な所がある。相容れないとバチバチしていることの方が多い。
まぁ、ゲームと違って仲が悪い訳ではなさそうであるが。ゲームの中でフレデリクはジャスミーヌを嫌っている。ジャスミーヌの一方的な片想いだ。よくある展開。婚約者との仲は冷めている。政治的な繋がりだ、である。
最終的に秋の舞踏会で婚約破棄イベントがある。何故か、どのルートでも。まぁ、フレデリクにしてみれば、厄介払いが出来て万々歳だったのだろう。国母に相応しくない、と。
しかし、今の2人はそんな事にはならなさそうだ。ヒロインがどのルートを突き進むかによるのかもしれない。フレデリクルートならば、結ばれるためには婚約破棄は必須だろう。
『普通科の生徒は順番に退場してください』
やっと普通科の番になったようだ。シルヴィは椅子から立ち上がる。
まぁ、ひとまず自分の友達作りから頑張ろう! と、シルヴィは気合いを入れた。教室でぼっちは嫌すぎる。
シルヴィはこれでも、ルノーと違って社交界で浮いている訳ではない。ただ、ルノーが離れないので、ルノーと一緒にいることがほとんどなだけだ。……ある意味浮いてはいるかもしれない。
シルヴィは友達が出来ますようにと祈りながら、会場から出て教室に向かって歩きだしたのだった。
体育館だろうか。日本の学校とそう変わらない会場の風景に、シルヴィは舞台設定こんな感じだった? と記憶を探る。入学式はふわふわっと文字だけだった気もしてきた。
ただ、パイプ椅子ではなく上等な椅子が並べられている所が伝統ある学校感を醸し出している。気がする。雰囲気は大事だ。
シルヴィの席は丁度真ん中くらいだろう。詳しく言うならば、魔法科の後ろ。普通科の一番前、だ。
学園には貴族も平民も通うため、この国の身分制度は適応されないことになっている。平等にということらしい。とは言っても、卒業してしまえばその限りではないため、身分が上の者に失礼をしようなどという命知らずはまぁ、いないのだが。
そのため、席順も貴族が前の方を用意されている。そして、普通科よりも魔法科優先。平等とは? シルヴィは思わずそう考えたが、世の中そんなものだなと流した。
シルヴィは前の席に座る魔法科の生徒に視線を遣る。真っ白な制服は、ゲームで見たそのままであった。
魔法科の一番後ろの席に座っているということは、目の前の彼は平民なのだろうか。不意に、シルヴィの前に座っていたその生徒が顔をこちらに向けた。目が合って、シルヴィは目を瞬く。鼻で笑われた。
おっと? シルヴィは呆れて溜息を吐きそうになった。貴族社会だけではないのか。どうやら、魔力なしと馬鹿にされたらしい。まぁ、気にしないけれど。
いや、待て。シルヴィは急に不安になった。まさか、ルノー相手にこんな危険な真似をする生徒はいないだろうな、と。売られた喧嘩は全て買うのがルノーである。こんなことされたら拳、又は足が出るぞ。あの幼馴染みは。
『只今より、ファイエット学園の入学式を始めます。では、学園長のご挨拶から』
どうやら、入学式が始まる時刻になったらしい。ざわざわとしていた会場が静まり返った。
シルヴィはルノーのことはひとまず置いておこうと、学園長の挨拶に集中することにした。
入学式は滞りなく進み、新入生挨拶ではガーランドが代表で壇上に上がった。魔力が高く身分も相応しいからだろう。在校生の祝辞は生徒会長であるフレデリクが務めるようだ。
ゲームが始まるのだなぁ。と、シルヴィは感じた。この会場には、ほぼ全ての攻略対象者が集まっている。いや、全寮制なのだから敷地内には全員だ。そして、何よりヒロインがいる筈だ。全然、見つけられないが。
たぶん、この会場の何処かにいる。シルヴィは早々と諦めた。その内、見かける機会もあるだろうと。なにせ、ヒロインなのだから。嫌でも目立つ筈だ。
とは言っても、シルヴィは普通科だ。自身が着る真っ黒な制服に目をやって、ゲーム内でも黒い制服が出てきたなぁ。とぼんやりとした記憶を思い浮かべた。誰のルートで見たのだろうか。モブが着ていた可能性が大だが。
「んー……」
攻略対象者達はみんな魔法科の筈なのに。何故か引っ掛かって、シルヴィは眉根を寄せた。
真っ黒な制服に、腕章のリボンが揺れている。それは、シルヴィと同じ学年を示す赤色だった。誰なのだろうか。
学年が分かるように、腕章のリボンの色は三年間同じ色で決められている。つまり、シルヴィの腕章はずっと赤色で変わらない。
ルノーの学年は黄色の筈だ。その上は、攻略対象者がいないためよく知らないが、ファンサイトか何かで緑色だと見た記憶がある。やり込んでいるファンはレベルが違うのだ。
シルヴィが深く考え込もうとした瞬間、入学式の終わりを告げる声が聞こえて、ハッと背筋を伸ばした。
この後は、各々教室で学園の説明を受けて、今日の所は終わりのようだ。本格的な授業は明後日から。明日は在校生の始業式なんだとか。
シルヴィは魔法科の生徒が退場するのをバレない程度に眺めた。何やら視線を感じてそちらに顔を向ける。ディディエと目が合った。その隣にはガーランドもいる。
ディディエが軽く手を振ってきたので、シルヴィは淑女の微笑みを返しておいた。やめて欲しい。目立ちたくないので。と、シルヴィは思ったが、周りの女子生徒達が「私に手を振って下さったの?」「私よ!」とざわざわし出したので、大丈夫そうだなとなった。
ディディエは人気のようだ。確か、ゲームでもそうだったはず。ディディエは軽い性格であるが、心には闇を持っているキャラだった。
幼い頃から意地悪な姉や厳しい母親の顔色を窺いながら育ったために、常に人の機嫌を取るようになるのだ。また、父親は仕事で忙しく、構って貰えなかったため寂しい思いをする。
そのため1人を嫌い、常に誰かと共に行動をしていた。女性の苛立った声が苦手で、正反対の優しく穏やかなヒロインに惹かれるのだ。
あくまでも、ゲームではの話であるが。今のディディエは姉のジャスミーヌと仲が良いし、ジャスミーヌがあれこれとしたらしく、家族仲も良いと聞いた。
元々の性格なのか、姉のフォローのためなのか、空気の読める良い子ではある。ディディエがいれば、安心だとシルヴィも思ってしまう程に。全ての人のフォローの子だ。
「あ……」
視界の中で、キラッと何かが光った気がしてシルヴィはそこに焦点を当てる。当てて、思わず声を出してしまった。
ヒロインがそこにはいた。綺麗な白金色をしたロングストレートの髪が、キラキラと揺れている。そうだった。ヒロインも白金の髪色を持っていた。
可愛らしいリボンの付いたカチューシャをしている。そして、可愛らしいくりくりとしたタレ目気味の薄桃色の瞳。更に、可愛らしい唇に頬に。全てが可愛らしい造りをしていた。流石はヒロインだ。
ゲームは、放課後からスタートする。順番に攻略対象者と出会っていく出会いイベントが起こるのだ。そこから、攻略したいキャラの好感度を重点的に上げながらストーリーを楽しんでいくと。
「…………」
よし。今日の放課後は直ぐに寮に帰ろう。シルヴィはそう決めた。変に巻き込まれて出会いイベントがめちゃくちゃになったら大変だ。ヒロインが。
ジャスミーヌはどうするのだろうか。そもそもジャスミーヌはフレデリクと結ばれたいのか謎な所がある。相容れないとバチバチしていることの方が多い。
まぁ、ゲームと違って仲が悪い訳ではなさそうであるが。ゲームの中でフレデリクはジャスミーヌを嫌っている。ジャスミーヌの一方的な片想いだ。よくある展開。婚約者との仲は冷めている。政治的な繋がりだ、である。
最終的に秋の舞踏会で婚約破棄イベントがある。何故か、どのルートでも。まぁ、フレデリクにしてみれば、厄介払いが出来て万々歳だったのだろう。国母に相応しくない、と。
しかし、今の2人はそんな事にはならなさそうだ。ヒロインがどのルートを突き進むかによるのかもしれない。フレデリクルートならば、結ばれるためには婚約破棄は必須だろう。
『普通科の生徒は順番に退場してください』
やっと普通科の番になったようだ。シルヴィは椅子から立ち上がる。
まぁ、ひとまず自分の友達作りから頑張ろう! と、シルヴィは気合いを入れた。教室でぼっちは嫌すぎる。
シルヴィはこれでも、ルノーと違って社交界で浮いている訳ではない。ただ、ルノーが離れないので、ルノーと一緒にいることがほとんどなだけだ。……ある意味浮いてはいるかもしれない。
シルヴィは友達が出来ますようにと祈りながら、会場から出て教室に向かって歩きだしたのだった。
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