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三十五手目
大出世
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「大出世?」吉田が少し呆れたような顔を見せる。
お互い生ビールを飲み終えそうになったところで、大将がおかわり確認に来てくれて、生ビールのおかわりを頼む吉田。
「あの、すみません。変なことを言ってしまって。」たもるが吉田に頭を下げる。
「大出世だって思った訳を聞きたいな。」吉田が微笑んで聞いた。
「あの、今日、吉田さんが係長に物怖じせずに意見を伝えられてたじゃないですか、あれを見て、自分なんか心がチクチクしてしまって。チクチクというか、モヤモヤというか。」自分の感じたことを言葉で表現しようとすると想いや熱はそれとはズレてくるものだ。
「うんうん。」
「吉田さんと三林係長はとても相性がいいんじゃないかなって思って、だって吉田さん、係長にあんなに意見出来ていて、、、それで、なんだかんだ言っても係長は吉田さんが仕事をやってくれないと全然というか、すみません入ったばかりで、すみません本当に何も分からないのに。だから、係長と吉田さんは仲良くなってもらいたいというか。」
「んー、社会ってなんか難しいよね。」吉田がそう話し始めると大将が生ビールと注文した鳥の軟骨唐揚げを持ってきた。
「おお、ちょー君なかなか大人なこと言うじゃない、ははは!いいねいいね!はいおかわりどうぞ!」
「大人じゃないですよ。」お礼をしながら吉田が料理を受け取る。
「でもな、たまには自分の嫌なことをやってみるのも楽しいぞ!たもる君の訳の分からない対決、やってみたらどうだ!!そうだ、ここでやっていいぞ!!ははは!」
「え!た、大将、このお店で、た、対局、三林係長との対局、させていただいでいいんですか!?」いきなりの大将からの提案に驚くたもる。
「いいぞいいぞ!たもる君が三林係長を説得させられるかが勝負だな!ははは!説得できたらちょー君も係長との世紀の対局、受けるんだぞ!」晴れの日のような笑顔の大将。
「お、おいら、絶対係長を説得させます!」
「おいらて!分かった、説得できたら、俺も係長と対局する。」吉田がツッコミを入れながらたもるに約束をした。
「ここは居酒屋だからな、ちゃんとお客さんを入れて、お客さんは酒を飲みながら対局を観戦する。ちゃんと日程を決めて、チラシもまいて、本格的にやろう。」
「チ、チラシもまくのですね、すごい、緊張してきました。タ、タイトル戦みたいです!」たもる、動揺の極み。
「た、大将この場所でそんなことやったことないですよね、本当に実現したとして、大丈夫なんですか?」吉田が心配そうに大将を見上げる。
「大丈夫。たもる君とちょー君の将棋を見たくなった。そして最後は俺がたもる君を三間飛車であっという間に詰ませて差し上げよう!!!はははは!!じゃっ、説得に成功したら教えてねー!!ごゆっくりどうぞー!」そう言って大将が厨房へと戻っていった。
「たもる、本気でやるのか?」
「吉田さん、俺本気です。」
生ビールの泡が溶けて消えていた。
お互い生ビールを飲み終えそうになったところで、大将がおかわり確認に来てくれて、生ビールのおかわりを頼む吉田。
「あの、すみません。変なことを言ってしまって。」たもるが吉田に頭を下げる。
「大出世だって思った訳を聞きたいな。」吉田が微笑んで聞いた。
「あの、今日、吉田さんが係長に物怖じせずに意見を伝えられてたじゃないですか、あれを見て、自分なんか心がチクチクしてしまって。チクチクというか、モヤモヤというか。」自分の感じたことを言葉で表現しようとすると想いや熱はそれとはズレてくるものだ。
「うんうん。」
「吉田さんと三林係長はとても相性がいいんじゃないかなって思って、だって吉田さん、係長にあんなに意見出来ていて、、、それで、なんだかんだ言っても係長は吉田さんが仕事をやってくれないと全然というか、すみません入ったばかりで、すみません本当に何も分からないのに。だから、係長と吉田さんは仲良くなってもらいたいというか。」
「んー、社会ってなんか難しいよね。」吉田がそう話し始めると大将が生ビールと注文した鳥の軟骨唐揚げを持ってきた。
「おお、ちょー君なかなか大人なこと言うじゃない、ははは!いいねいいね!はいおかわりどうぞ!」
「大人じゃないですよ。」お礼をしながら吉田が料理を受け取る。
「でもな、たまには自分の嫌なことをやってみるのも楽しいぞ!たもる君の訳の分からない対決、やってみたらどうだ!!そうだ、ここでやっていいぞ!!ははは!」
「え!た、大将、このお店で、た、対局、三林係長との対局、させていただいでいいんですか!?」いきなりの大将からの提案に驚くたもる。
「いいぞいいぞ!たもる君が三林係長を説得させられるかが勝負だな!ははは!説得できたらちょー君も係長との世紀の対局、受けるんだぞ!」晴れの日のような笑顔の大将。
「お、おいら、絶対係長を説得させます!」
「おいらて!分かった、説得できたら、俺も係長と対局する。」吉田がツッコミを入れながらたもるに約束をした。
「ここは居酒屋だからな、ちゃんとお客さんを入れて、お客さんは酒を飲みながら対局を観戦する。ちゃんと日程を決めて、チラシもまいて、本格的にやろう。」
「チ、チラシもまくのですね、すごい、緊張してきました。タ、タイトル戦みたいです!」たもる、動揺の極み。
「た、大将この場所でそんなことやったことないですよね、本当に実現したとして、大丈夫なんですか?」吉田が心配そうに大将を見上げる。
「大丈夫。たもる君とちょー君の将棋を見たくなった。そして最後は俺がたもる君を三間飛車であっという間に詰ませて差し上げよう!!!はははは!!じゃっ、説得に成功したら教えてねー!!ごゆっくりどうぞー!」そう言って大将が厨房へと戻っていった。
「たもる、本気でやるのか?」
「吉田さん、俺本気です。」
生ビールの泡が溶けて消えていた。
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