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ミッカ目、がんばってください。
兎は笑った「楽園へいく舟を、編もうよ」
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さぁ、元田中。もとい、今出川タイムだ。余ってしまった机が廊下に出されているので、教室はなんとなく広くなってしまった。おかげで、ソコラノ高校にはなかったはずの「先生の机」が、小学校のように教室の前の隅に置かれている。教壇とは別のものだ。そこに、見覚えのある男子生徒がいた。
「というわけでー」
自称今出川は、教壇から彼の方を手のひらで指し示した。
「こちら静馬君。顔で誰の家族か一目瞭然、他校生だけど、普通に学校いける状態じゃないって長期欠席の連絡いれてこっちにサポート役として合流してくれてます」
そりゃぁ、もちろんまだ忌引きの範囲だが、双子が不思議な事件で虐殺されて平気なわけがない。忌引きがあけたさきでも、ホイホイ通えるわけもない。神経がきしめんならいざしらず。
「たまにこっそりきてたから、始めましてじゃないけど、一応はじめまして。今出川さんの助手と思ってください。よろしくお願いいたします」
一卵性双生児が必ずしも瓜二つでない理由として、性格からくるしぐさや表情の差がある。なりすますときは合わせているが、もともと「攻撃的な陰気」と「穏やかな陽気」の対極的な双子だったので、造りはおなじ顔でも静馬がモノマネをとけばしっかり別人なのだ。しかも、本人としてここにいるからには、本人の趣味のピッチリ横分けヘアに、昭和レトロな黒淵の伊達眼鏡。もはや怪しい名探偵が増えた感じしかしない。
「助手かー。じゃあ、板書おねがいしようかな」
と、自称今出川が言い終わるまえに、静馬は手元でなにやらカタカタと。よくみるとキーボードをつけたタブレットが平置きされていて、教室の据え置きのプロジェクターに信号を飛ばしていた。黒板にふっと明るい四角がうかびあがり、彼の画面が直接投影されていることがわかった。
「いまの状況をまとめよう、というまえに今日のこれからの動きを。あとから話すけど、昨日も暴走した生徒がいて、失格になったからね。情報不足は死にかねない、おどしではなくて」
「僕ら兄弟がやらかしたわけですが」
眼鏡をくいっと中指で持ち上げて、静馬がぼそっと呟いた。
「今日の場所と時間をまとめるよ。出席番号順によぶから、教えてください。静馬くん名簿は渡したっけ?」
「Excelで作ってきました」
表計算ソフトExcelで、名簿表をつくったということは?表としての役割だけでなく、条件で絞りこみがしやすい。生徒が「攻略本」とよんでいる「法則性」をみつけだそうとしているのだろう。静馬は自慢するわけでもなく、自然な様子で答えた。
画面にうつる、名簿。縦軸をあらわすために上部に横方向にアルファベットがふられていて、横軸をあらわすために縦方向に数字がふられている。アルファベットが飛んでいるので、今日以前の部分は折り畳まれていて見えないのだと分かる。
「はい、私はまた『マウス公園』場所が前回とは反対側の駐車場との境目の花壇です。時間がなぜか夜9時とか遅いんですけど」
「私は『マリンストリート』渡船上の時刻表前、夕方5時」
「私もおなじです、時刻表5時」
「私は時刻表だけど、7時。シチュエーションが怖いんですけど」
「『マウス公園』花壇7時」
「俺も!」
という具合に、名前をよばれるまでもなくセルフで始める生徒達。教頭と謎の中年女性のストレスからの今出川タイムで、気持ちがおかしな盛り上がり方をしているのだ。静馬は何度か潜入したことがあるとはいえ、顔と名前が完全一致はしておらず、名簿の中身がテストでよくやるミスのようにズレてないかヒヤヒヤしていた。
「ありがとう、『マウス公園』『マリンストリート』『マッチ博物館』か」
「今出川さん、時間のばらつきが気になりませんか?3人しかないグループがある」
静馬はハッとして高橋のほうを向いた。
「マはじまりばかりなのも気になるし、なにか意味があるのかな?」
静馬が高橋が意見を出すことを期待しているのは明らかだった。それがわからない高橋ではない。
「全員公園に同時刻が、カレー屋さんとモールの駐車場にわかれた。時間は距離を考慮したかんじで、場所の割り振りは、カレー組みが『車で乗り入れないと、持ち込みがキツイお題』ばかりだったかな」
高橋は関連して何か思い出したような顔をしたが、言葉をのんでから説明を続けた。
「モールのほうは、工事中で直接乗り入れられない場所だったんでしょ。だからそういうことだとおもう。場所のふりわけは、お題ていうか回答にあわせてあるってことだね」
それをきいて、自称今出川が、ぽんと手をたたいた。
「そう、それそれ。場所が増えかねないからら、人員どうしようって今朝会議しててさ。本当にイチニサンて毎日場所ふえてるわ」
「帰りはスクールバスがでます。各ご家庭に送るそうですが、僕としては寮をおすすめします。マスコミとかに嗅ぎ付けられてたら、家だと邪魔されてタイムアウトになりかねない。なんなら、それを撮るために妨害してくる奴が現れそうか気がして」
とは、静馬。葬儀屋の従業員のSNS投稿から「変死体」の情報をつかんだヤジウマが、すでに静馬の家に何人かきたのだ。この事件に関しては警察があかしてないこともあり、静馬は適当にあしらった。
『ブサイクが、死体になっても格別にブサイクすぎて、従業員のひとが話を盛ったんですよ。デマにするにも不謹慎』
『情報オモラシ葬儀社って、ヤバイですよね。大炎上でセルフ火葬って見出しかなー。そっちのほうがネタとしてキケンで強いですよね』
葬儀社従業員の投稿は、本当に個人情報をもらしたり、葬儀会場のイタズラなどでるわでるわで、今回の事件は簡単にかすんで今のところ隠れている。が、油断はならない、まだはじまったばかりだ。知られるだけで死にかねないのだから、注意が必要だ。
「これをこうして」
表に段が増え、会場ごと時間ごとに色分けされて各合計の人数が表示される。
「高橋くんのさっきの話、会場のわりふりの件を考えると、数人だけ夜にされてるのも模範解答が夜ならではのものなのかもしれない。お題は聞けないけど、協力が必要なひとは教えてください」
それをきいて、深山が「ハイ」と手をあげた。
「何て言ってかりれば良いか難しいことがありますよね。どこかのお店の看板とか、曖昧な理由ではかしてもらえるわけがないモノ。どういえばいいか、考えておきたいです」
「そこは、高校の授業の一貫としての借り物競争でといえば」
「俺、昨日それ言ったら『詳しく聞かせたまえ、ワシを納得させられなかったら何を提出しても課題クリアとは言えない。善意に甘えることではなく、交渉術を求めた準だろぅ』て延々説教されて、タイムアウトを覚悟したよね」
「わかるー」
「言い感じの必殺フレーズがほしい」
「どらーえもーん」
深山が発言すると、すぐ生徒達がザワザワしてしまう。
「警察からの依頼状なんてだしても、ますます嘘クサイからね、やらないよ。でも、代わりに警察が借りてくることはできるかもね」
寮にはバラエティ番組の「テーブルにおいてあるもので、面白いことをやってください」ぐらい、お題に使うために小道具が色々用意されている。外部にかりるまでもない。そういう意味でも、みな寮にいけばいいのにと、記録者は余白に書いてみた。
「というわけでー」
自称今出川は、教壇から彼の方を手のひらで指し示した。
「こちら静馬君。顔で誰の家族か一目瞭然、他校生だけど、普通に学校いける状態じゃないって長期欠席の連絡いれてこっちにサポート役として合流してくれてます」
そりゃぁ、もちろんまだ忌引きの範囲だが、双子が不思議な事件で虐殺されて平気なわけがない。忌引きがあけたさきでも、ホイホイ通えるわけもない。神経がきしめんならいざしらず。
「たまにこっそりきてたから、始めましてじゃないけど、一応はじめまして。今出川さんの助手と思ってください。よろしくお願いいたします」
一卵性双生児が必ずしも瓜二つでない理由として、性格からくるしぐさや表情の差がある。なりすますときは合わせているが、もともと「攻撃的な陰気」と「穏やかな陽気」の対極的な双子だったので、造りはおなじ顔でも静馬がモノマネをとけばしっかり別人なのだ。しかも、本人としてここにいるからには、本人の趣味のピッチリ横分けヘアに、昭和レトロな黒淵の伊達眼鏡。もはや怪しい名探偵が増えた感じしかしない。
「助手かー。じゃあ、板書おねがいしようかな」
と、自称今出川が言い終わるまえに、静馬は手元でなにやらカタカタと。よくみるとキーボードをつけたタブレットが平置きされていて、教室の据え置きのプロジェクターに信号を飛ばしていた。黒板にふっと明るい四角がうかびあがり、彼の画面が直接投影されていることがわかった。
「いまの状況をまとめよう、というまえに今日のこれからの動きを。あとから話すけど、昨日も暴走した生徒がいて、失格になったからね。情報不足は死にかねない、おどしではなくて」
「僕ら兄弟がやらかしたわけですが」
眼鏡をくいっと中指で持ち上げて、静馬がぼそっと呟いた。
「今日の場所と時間をまとめるよ。出席番号順によぶから、教えてください。静馬くん名簿は渡したっけ?」
「Excelで作ってきました」
表計算ソフトExcelで、名簿表をつくったということは?表としての役割だけでなく、条件で絞りこみがしやすい。生徒が「攻略本」とよんでいる「法則性」をみつけだそうとしているのだろう。静馬は自慢するわけでもなく、自然な様子で答えた。
画面にうつる、名簿。縦軸をあらわすために上部に横方向にアルファベットがふられていて、横軸をあらわすために縦方向に数字がふられている。アルファベットが飛んでいるので、今日以前の部分は折り畳まれていて見えないのだと分かる。
「はい、私はまた『マウス公園』場所が前回とは反対側の駐車場との境目の花壇です。時間がなぜか夜9時とか遅いんですけど」
「私は『マリンストリート』渡船上の時刻表前、夕方5時」
「私もおなじです、時刻表5時」
「私は時刻表だけど、7時。シチュエーションが怖いんですけど」
「『マウス公園』花壇7時」
「俺も!」
という具合に、名前をよばれるまでもなくセルフで始める生徒達。教頭と謎の中年女性のストレスからの今出川タイムで、気持ちがおかしな盛り上がり方をしているのだ。静馬は何度か潜入したことがあるとはいえ、顔と名前が完全一致はしておらず、名簿の中身がテストでよくやるミスのようにズレてないかヒヤヒヤしていた。
「ありがとう、『マウス公園』『マリンストリート』『マッチ博物館』か」
「今出川さん、時間のばらつきが気になりませんか?3人しかないグループがある」
静馬はハッとして高橋のほうを向いた。
「マはじまりばかりなのも気になるし、なにか意味があるのかな?」
静馬が高橋が意見を出すことを期待しているのは明らかだった。それがわからない高橋ではない。
「全員公園に同時刻が、カレー屋さんとモールの駐車場にわかれた。時間は距離を考慮したかんじで、場所の割り振りは、カレー組みが『車で乗り入れないと、持ち込みがキツイお題』ばかりだったかな」
高橋は関連して何か思い出したような顔をしたが、言葉をのんでから説明を続けた。
「モールのほうは、工事中で直接乗り入れられない場所だったんでしょ。だからそういうことだとおもう。場所のふりわけは、お題ていうか回答にあわせてあるってことだね」
それをきいて、自称今出川が、ぽんと手をたたいた。
「そう、それそれ。場所が増えかねないからら、人員どうしようって今朝会議しててさ。本当にイチニサンて毎日場所ふえてるわ」
「帰りはスクールバスがでます。各ご家庭に送るそうですが、僕としては寮をおすすめします。マスコミとかに嗅ぎ付けられてたら、家だと邪魔されてタイムアウトになりかねない。なんなら、それを撮るために妨害してくる奴が現れそうか気がして」
とは、静馬。葬儀屋の従業員のSNS投稿から「変死体」の情報をつかんだヤジウマが、すでに静馬の家に何人かきたのだ。この事件に関しては警察があかしてないこともあり、静馬は適当にあしらった。
『ブサイクが、死体になっても格別にブサイクすぎて、従業員のひとが話を盛ったんですよ。デマにするにも不謹慎』
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葬儀社従業員の投稿は、本当に個人情報をもらしたり、葬儀会場のイタズラなどでるわでるわで、今回の事件は簡単にかすんで今のところ隠れている。が、油断はならない、まだはじまったばかりだ。知られるだけで死にかねないのだから、注意が必要だ。
「これをこうして」
表に段が増え、会場ごと時間ごとに色分けされて各合計の人数が表示される。
「高橋くんのさっきの話、会場のわりふりの件を考えると、数人だけ夜にされてるのも模範解答が夜ならではのものなのかもしれない。お題は聞けないけど、協力が必要なひとは教えてください」
それをきいて、深山が「ハイ」と手をあげた。
「何て言ってかりれば良いか難しいことがありますよね。どこかのお店の看板とか、曖昧な理由ではかしてもらえるわけがないモノ。どういえばいいか、考えておきたいです」
「そこは、高校の授業の一貫としての借り物競争でといえば」
「俺、昨日それ言ったら『詳しく聞かせたまえ、ワシを納得させられなかったら何を提出しても課題クリアとは言えない。善意に甘えることではなく、交渉術を求めた準だろぅ』て延々説教されて、タイムアウトを覚悟したよね」
「わかるー」
「言い感じの必殺フレーズがほしい」
「どらーえもーん」
深山が発言すると、すぐ生徒達がザワザワしてしまう。
「警察からの依頼状なんてだしても、ますます嘘クサイからね、やらないよ。でも、代わりに警察が借りてくることはできるかもね」
寮にはバラエティ番組の「テーブルにおいてあるもので、面白いことをやってください」ぐらい、お題に使うために小道具が色々用意されている。外部にかりるまでもない。そういう意味でも、みな寮にいけばいいのにと、記録者は余白に書いてみた。
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