狩者競争

ゲル純水

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ミッカ目、がんばってください。

森のざわめき「そよそよ、さやや」

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  一分一秒が悲鳴をあげるほど長い緊張感を放ちながら、それでいてタイムリミットを思うとやけに時の流れが早く感じる。最初に「無断で借りられた」のは時計だったが、もう時計が意味を持つのかもわからない。実際の時刻がどうこうではなく、アプリの表示が全てだった。

「出席確認をとる」

今日も、担任と警察合同の朝の出席確認。たしか出欠しゅっけつといっていたはずなのに、担任は初日に死者が出ていることを知ってから出血しゅっけつのイメージで、使わなくなった。それまではシュッケツとシュッセキ適当に使ってたのに。

「うん、順調に減ってるな。どうすればいいんだ」

「先生、順調にというと減ることがポジティブなことみたいで、気持ちるいんでやめてください」

「あぁ、すみません今出川さん。なんというか、着実というか、まぁ、そういうことでよろしく…」

言いたいことはみなわかっているが、シュッケツにこだわるなら、ほかのところも言い方を考えろと言いたい。みな、心の中でそう指摘していた。とはいえ、大学を出てから副業禁止の教員の世界に引きこもり、他業種より鍛えられている部分もあれば、大学の卒業式で止まってる部分もある。大人としての気配りなんかを期待できない大人もいる。まぁ、それは教員に限らない話ではあるが。

「昨日の死亡確認がとれてない欠席者で、欠席の連絡が来てないのは…」

ほら、担任はこういう言い方だ。死んでしまえば、絞り込みの条件でしかない。個人ではなくなる。

「ほなこのメンバー、連絡いれて反応なかったらうちの署の者がいきます。寮の空き部屋にはいってくれたら楽なんやけどなぁ…」

自称今出川は、携帯電話をポチポチとして仲間に連絡をいれている。彼は生徒集団と一緒にいなくてはならないので、チームの別のメンバーが訪問するのだ。見た目も当たり障りのないメンバーが。自称今出川は、一見整ってるが、目付きや雰囲気がどちらかというと犯人なので、家庭訪問で恐怖を与えかねないのがなやみである。

「先生、今日の提出のあと情報共有のミーティングとかできませんか?もちろん、授業時間でできるなら、先にやってほしいですけど」

手をあげたのは高橋だった。
昨日、目の前で代理参加の双子の惨劇をみて、頭の中の情報が窮屈になっていた。目撃者として記憶しておかなくてはという緊張感もあり、はやく吐き出してスッキリしたいのだ。

「国語と数学が過去問だから、どっちかの枠を貰えませんか?終わってまた集合だと、警備がキツそ」

と、声をあげるのは女孫悟空だった。

「それいいね、どうせほぼ自宅謹慎なんだから、過去問は宿題にしてくれていいです」

「それは嫌だ」

「むりむりやだーアハハ」

「おめーら、今やっとかないと、解決したあとがしんどいぞー」

女孫悟空の深山が声を出すと、必ずこうして別の、目立たない生徒たちもつられて意思表示をはじめる。深山の才能といえる。

「うん、そこの調整は先生達でやるから、とりあえず教室待機ー」

担任は今度は自分の声の待機タイキの音に違和感をおぼえて、首をかしげた。なにか別の言葉をイメージしたのだが、それがなにかわからない。

 『ミーティングをする。』の指示が出ていなくても、担任が教室を出ると自称今出川の周りに人垣が出来る。とくに、モール班は引率が自称今出川ではなかったので、不安をぶつけたくてウズウズしていたのだった。爆発。まさに爆発である。

「ちょ、ね、きいてくださいよ御意見番ゴイケンバン

もはや、偽名にあたる今出川からタレント出川哲朗になり、その出演番組でのあだ名が彼のあだ名なのか。こんな状況でよく冗談を、と言いたいところだが、追い詰められると変な笑いがでてくるものだ。

「あー、どうでした実際。先生から報告は聞いてますが、皆さん的にどんなよ」

「ん、まじなんかおかしいです。立ち入り禁止のはずなのに普通に入れるし、でもお店の人は知らなかったみたい」
「そうそう、それなら勝手に使ってて、警備員くるんじゃね?て思うでしょ?来ないし」
「なんかやばい秘密結社とか動いてるんだってば、ヤバイって、」

誰からでもなく口々思い思いに言う生徒達。委員長が自分なりにメモをしているのを視界のすみにとらえながら、自称今出川もフンフンと適当に相槌をうちながら聞いている。

「あとあれ、万引き扱いになったら死んだんだけど、貸すって同意の有無をどうやって確認できてるんだろう?全員、監視されてるの?」
「それな、俺アニキのカップ麺かりてきたの、たぶんアニキ納得してないんだよなー‥買ってきたカーチャンの許可はもらったけど」
「お兄さん用に買っただけで、渡すまでは買ったお母さんのでしょ、だからセーフ」
「ていう屁理屈レベルのことを、どうゲームの運営が判断してるんだって話だよ」

ザワザワ。

ザワザワと、ザワザワとしている。
余談だが、カップ麺は「お湯をいれるもの」ので、ポットや湯飲みだけがお湯をいれるものではないようだ。回答はそれなりに許容範囲がある。

などということを、高橋も頭のなかでせっせとまとめている。記録者がたくさんいる。

「監視もくそも、アプリごしにみえるんだろ、普通に携帯のカメラが運営に筒抜けのになってそう」

と、誰かが言うと教室が静まりかえった。誰もがそれを正解だと思った。ネットリテラシー授業で習ったではないか、バックドアアプリだスパイアプリだと。無料だからと飛び付いたアプリが、いれるとスマホの中の情報を作者のところに無断で送るとか、カメラが乗っ取られて知らないうちにどこかに映像を常に送り続けてるだとか。とはいえ、ルールを守らないと殺されることは最初の公園で分かっている。では、意図的に隠すとどうなるのか。カメラを使うゲームではあるが、レンズにふたをすると、不正として退場になるのか。

誰か、ためしかねないクラスである。
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