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メテオ、ロデオ、スターゲイザー。

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「いやー、罠だよね、絶対に引っ掛かる自信があるよ」

  夢の中で定期的にでてくる私の言葉だった。どんなプログラムをされているのか、なぜ私は何度もその言葉をはくのか、現実世界でそんなにこだわっている覚えはないのだけれど。

  夢の中では、どういうことか食べそびれる。それは「美味しそうなのに、目前で食べ物を逃す=欲望、魅力的なものが手に入らない、欲求不満」といわれがちではあるのだった。それは起きているときに食事が好きな人間か、そうでないかで違うと思うのだが、食に魅力を感じない人間が同じ夢を見ても同じようにいわれてしまうのだろうか。いわれるんだろうな、憧れの現れだとかなんだとか。

  夢の中の私はよく言うのである。

「だから生きてるうちに黄泉にいかないか、行っても食べないように、とにかく食べないようにだな」

そのような概念がどの夢でも生きているわけではない。当たり前だ。けれど、その言葉がない普段の夢の中で、私はいつも食事を逃すのだった。

「なるほど欲求不満なのか。毎日楽しいけどな」

  いや、気付けよと。

  それを黄泉戸契ヨモツヘグイという。

  神々もその理を越えることはできなかった。かつては黄泉の国と行き来することはできたのだ、ただし黄泉の国のものを食さなければ。口にすることはすなわち契り、もとの世界に帰ってくることはできない。

  一言で言えば別世界。
  夢が夢でなく、繋がった異世界に近い違和感。
  目覚めて、はっきりした意識と体があるにも関わらず、自分のデータを流し込んで纏わなければならない。もうひとつの世界の自分の管理者が優位になった状態。本来の死とは恐らく違う、生きた死の世界がそばにある感覚。

  そうか、だから私は夢の世界の食べ物を自動的に逃し、その欲求不満で現実世界では空腹でもないのに食を求めるのだ。
  
  もう一軒、と彼女がせがんでのファミリーレストランで、私は目を擦りながら考えていた。隣の席では、私と年齢の近そうな人間が話している。



Q
夜遅く食事をとることが習慣的にありますか?

A
はい
(遅番で半夜行性生活)

指導
遅い時間に食事をとるのをやめましょう。

デブに突き刺さるアドバイス。
イタミイリマス。

文字通り夕方の夕飯で終わらせると、次の食事で悶絶しましてな。
なので、仕事終わりにテキトーに胃に物入れてました。
やっぱり肥るんですよね。
健康診断の結果「痩せろデブ」えぇ知ってます(笑)
腹囲は、かつての何割ましか、どうか夢といってくれ、いいや己が食に逃げた現実よ。

はー。
しばらくは夜間の食事を抜いて、
そしたら朝食もつらいから抜いて、
夕方の一食のあとに吐き気だらけで仕事?
健康以前だ、話にならん。

  そして今日も食らうのだ。

  等ということを、隣の席の人間が言っている。
  罪のない欲望に忠実なことは良いことだと私は思う、対価として健康や見目麗しさの可能性を捨て、自らの心を保つために暴食することは、人間の美しい弱さだと私は思うのだ。少なくとも他人の体について言うならば。

  人の夢を視すぎた影響で、何かが起きていた。
  
  こちらの世界だけでよく聞く情報というものもある。あちらの人間にはない概念だ。眠っているときに観る夢は忘れていくものであって、それを記録すると脳が要領オーバーをおこすとかなんとか。削除すべきデータを全て保存することが良いわけがない、また人間の「夢のある言葉」を借りるなら「区別がつかなくなる」のだという。夢日記という文化はそれでも人を惹き付ける。誰もが自分が取捨選択せずに全身で浴びたデータが造り出す、意識ある自分では創造できないもうひとつの世界の物語を、体験するだけでは飽きたらず読み返すために記すのだろうか。いや、わからない。

  夢日記、集められるそれを観て、診て、私はどこに行くのだろうか。君が目蓋を閉じないままみた夢は、どちらの世界にあるのだろうか。

「こら!また寝てるの?私をみて」
「起きてるってば、ひどいなぁ」

 話を聞いてないのではない、聞いているのに聞いていないと断定されるストレスが、考え事に逃げさせるのだ。これは私の人間らしさと言えよう。そしてまた私は鮮やかな夢の中に閉じ込められて、食べ物を逃すのだ。向こうで暮らす数日間のために、鞄に詰め込むように今のうちに食べたくもない食事をしよう。

  なぜだろうかなどとは言わない、私は君に会いたくて、もし会えたならせっかくの現実を夢と勘違いしそうなのだ。

【魔女はカボチャの馬車に乗らない②メテオ、ロデオ、スターゲイザー】
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