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回想の階層(2016.08.xx)

どうぞ、オカマい、なく。

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   仕事がえりの朝、といって通じるのか分からないが、ボクは夜勤明けのバス停にいた。家の方向へ向かうバスは始発をまつしかない。家の手前のバス通りを通るバスは、7時までこない。それよりもっと手前の交差点までくるバスなら、6時半にくる。けど、その交差点から家まで歩いて小一時間かかるもんだから、その日はなんとなく7時までバスをまった。直通で帰りたい。

    失敗だった。

    乗って思い出したのだ。7時のバスと言えば、もう世間のほとんどが動いている時間で途中から込み合う。とくに、あの交差点から込み合うのだ。そうすると、降りるのが本当につらくて、ゲームでいうなら降車で1機死ぬ感じだ。それで、これまでも何度か、交差点のバス停で降りてしまった。そこから小一時間だから、帰宅時間はもちろん遅い。早く布団に転がり込みたいところに、時間はもちろんストレスがボクへ転がり込んでくる。これはたまらない。待っていた時間の長さ、太陽の角度、なにより待っていた時間が無駄になったという気持ち、あぁ嫌だイヤだ…
    女々しいかもしれないが、ボクは女だから仕方がないのだ。いや、この感情に男も女も関係ないのだそもそも。

    グラグラと縦揺れ横揺れ忙しいバスの中で、どのバス停までが穏やかに乗っていられるかの観察を始める。問題はやはり時間帯だ。6時半のバスは、比較的あいている。とても早い層と、混み始める朝との、境目なのかもしれない。こんな時間を、いうなれば…


「時間帯的オカマ」

   半端な時間にほかにいない時間の長さで勤務している、特殊なパートの友人の異名を思い出した。彼女は長身恵体整った顔立ちを冗談のような化粧に包んだ、教科書通りのオネエ族だ。パートといえば家庭のある女性がほとんどだが、彼女も奥様方と同じように何かしらの多忙につきそのようになっている。
  すっぽり夜勤のボクも、夜勤を担当するのが基本的に男性であることから同じように言われている。というより、あの言葉は介護や育児で男性ながらにパートタイムで働く方々にたいし、心ないスタッフがいい始めたのだ。だからボクや彼女がふざけ半分に自分達もそうだと言い始めた。今では、意外なシフトの人物のことぐらいに薄まった。嫌味の意味をなさなくなれば、そのうち、使われなくなるのだ。

    嫌みの意味をなさなくすれば、その言葉を使ってからかうことに楽しみを感じなくなる。ナイフを錆び付かせるのだ。放り出させてしまうために。それで思い出したのが、彼女の話だ。二枚目であることで人を巻き込むトラブルがたえなかったと聞くが、女になってからは本人への風当たりこそ強くなっても彼女を巡って人が揉めるだの事件が起きることはほとんどなくなったという。その話を聞く以前からではあるが、彼女が女であるのは本当に女だからなのかと思うときがある。自分や環境を守るために性別を変えるなんて、昔からあるじゃないか。どちらでもいいのだけれど。バスの外を彼女の軽自動車が通過し、今日も夜勤明けの帰路は終わりに近づく。
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