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君のこと
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君が夢に出てきた。
もう、会えなくなってからどれだけたったかなんて忘れるぐらいなのに。
駅のターミナルとどこかの教会と大学が渾然とした施設にいた。仕事関係である部屋にいかなければならないはずなのに、方向感覚がつかめず地図の通りには行けない。
なぜか、入り口で、その仕事の仲間と床に突っ伏している。言い訳のように、床を雑巾がけする私。礼拝堂の入り口に背を向けるカタチで、近頃隣にいる奴と、だれだっから別の。向かい合って後退するカタチで動く私と、隣には実際の職場の気になる女の子と。
その女の子が後退すると、君がいた。
そういえば君達は同郷だ。
ピアノがおかれていて、椅子を避ける女の子と、椅子をどかして、ペダルの隙間までをふこうとする私。ふと、目が合う。ピアノの下に本来はない空間があって、君がいた。いくらスマートとはいえ長身の君が?蛸壺のタコのように、奥へ吸い込まれるように体を入れ込んでいる。
「きれいにしてよね」
あぁ、そうだね。
「べんぞうさんはね」
夢の中で、なぜか君は漫画に出てくる万年浪人生を自称する。夢の中の君は、しばらくそのキャラクターのファッションをしていたことになっている。服装のことを、その名前で呼んでるのだが、現実ではそのキャラクターは学ラン姿だ。そのズレは夢だから仕方ない。
「フェんぞうさんにして、ちょっと東京にいくから」
その後の幾つかの声が、出したそばから隣の女性の声でかききえる。そこにいなかったはずの、私の幼馴染み女性が、私の耳元で騒ぐのだ。夢の中の私は、君と会話は成立しているが、繋がったそばからひとつまえに何をいったか自信が持てない…
「そうかフェンディをまとうのか」
何回か繰り返して、どうやら学ランからフェンディの服に切り替えるそうだ。が、
「フェンディ?あんたフェといえばフェンディしか知らないの?たったフェンディを着ただけで、この人がこの人の願う姿になるとおもうの?フェラガモのスーツよ!」
正直、フェラガモのスーツの「格」も特徴もしらない。ただ、この幼馴染み女性は、夢の中の記憶では、比喩としてフェラガモのスーツという言い回しを使うのだ。それは本人にとっては肯定的な意味なのだけど、否定的な意味にとられそうなのでかなりオブラートにつつむと「卒業して、ちゃんとする」のような感じか。
と、よくわからないことを、口角から泡をとばすような顔で、幼馴染み女性が騒ぐ。私はまだ床をふいているし、君は奥へすいこまれていった。床にしろい粉やホコリがちらばっていて、静電気のせいかふいてもふいても漠然ときたないのだ。
「どこの何をきても君はかっこいいけれど、ドレスコードのある、ふさわしさを服装で表現しなくてはならないところへ行ってしまうのか」
と、私はひとりごとをいう。君はいってしまったはずだけど、幼馴染みのノイズの間の会話をおもいだす。チラッとかおをだす用事といってたはずだ。だから、ふだんと違うスケジュールで、私も会えたのだ。
ふと、友人の結婚式として出ていったらドッキリで、おたふくのような女性を紹介される君の姿が見えた。さもマトモな進路、さもマトモな会社、さもマトモな人生、さもマトモな女性…身内には見えないまわりの人を踏み台にして、踏み台にされた元友達(と思ってたらただの奴隷だった者達)は精神を患っているような。そんなマトモな女と、マトモに白い家と2台の車と子供、休みの日にはバイク。
あぁ、そんなのはやめてくれ、君には似合わない。やめてくれ、そんなつまらない幻想のメスにおさまった君はみたくない。
君に似合うのは、素敵なのに独身で、わけありかとおもいきやそうでもない、本当に結婚どころか交際自体に興味のないような、いまの様子がとても美しいんだ。
繁殖は必要かもしれないが、君の美しさは繁殖行為が似合わないタイプだ。
だから、どうか、君は人間を超越して、一人で子供を孕んで欲しい。
君が生まれもった君と、君が世界から受け取った感覚の、間に生まれる子供だ。それはもはやクローンではない。
あぁ、一度は君をすみずみまで観察してみたい。
そんなことを思いながら、君は見当たらないのに、礼拝堂の入り口を掃除している夢だった。
そのあと、色々なことがあった。
激しい雪が降り、避難も間に合わず気を失ったあとに晴れた空をみた。晴れているが、外は雪が積もっていた。
地下道をホースと水で作られた仕掛けで繋いで、先に進む場面があった。まるでゲームのようだ。先まで見えているのに、仕掛けを解きながらでないと後で困ることをなぜか知っている。
ゲームをやる人間と、ゲームプレイを録画したものをみる人間の気配を感じた。
自分の主観で動いてるつもりだが、誰か世界の外にゲームプレイヤーがいる。録画を観てる不特定多数のなかに君の気配がした。君はどこかでゲームをしり、私と同行者が出演しているプレイを探しあてて、閲覧している。
なぜかそれを感じた。
フェがつく謎の世界は、そういう、この世界の外と、繋がった別の場所?
前を見ていないといけないと頭でわかっていたのに、後ろ斜め上を見上げる。
彼らをみることはでき…
そこで目が覚めた。
もう、会えなくなってからどれだけたったかなんて忘れるぐらいなのに。
駅のターミナルとどこかの教会と大学が渾然とした施設にいた。仕事関係である部屋にいかなければならないはずなのに、方向感覚がつかめず地図の通りには行けない。
なぜか、入り口で、その仕事の仲間と床に突っ伏している。言い訳のように、床を雑巾がけする私。礼拝堂の入り口に背を向けるカタチで、近頃隣にいる奴と、だれだっから別の。向かい合って後退するカタチで動く私と、隣には実際の職場の気になる女の子と。
その女の子が後退すると、君がいた。
そういえば君達は同郷だ。
ピアノがおかれていて、椅子を避ける女の子と、椅子をどかして、ペダルの隙間までをふこうとする私。ふと、目が合う。ピアノの下に本来はない空間があって、君がいた。いくらスマートとはいえ長身の君が?蛸壺のタコのように、奥へ吸い込まれるように体を入れ込んでいる。
「きれいにしてよね」
あぁ、そうだね。
「べんぞうさんはね」
夢の中で、なぜか君は漫画に出てくる万年浪人生を自称する。夢の中の君は、しばらくそのキャラクターのファッションをしていたことになっている。服装のことを、その名前で呼んでるのだが、現実ではそのキャラクターは学ラン姿だ。そのズレは夢だから仕方ない。
「フェんぞうさんにして、ちょっと東京にいくから」
その後の幾つかの声が、出したそばから隣の女性の声でかききえる。そこにいなかったはずの、私の幼馴染み女性が、私の耳元で騒ぐのだ。夢の中の私は、君と会話は成立しているが、繋がったそばからひとつまえに何をいったか自信が持てない…
「そうかフェンディをまとうのか」
何回か繰り返して、どうやら学ランからフェンディの服に切り替えるそうだ。が、
「フェンディ?あんたフェといえばフェンディしか知らないの?たったフェンディを着ただけで、この人がこの人の願う姿になるとおもうの?フェラガモのスーツよ!」
正直、フェラガモのスーツの「格」も特徴もしらない。ただ、この幼馴染み女性は、夢の中の記憶では、比喩としてフェラガモのスーツという言い回しを使うのだ。それは本人にとっては肯定的な意味なのだけど、否定的な意味にとられそうなのでかなりオブラートにつつむと「卒業して、ちゃんとする」のような感じか。
と、よくわからないことを、口角から泡をとばすような顔で、幼馴染み女性が騒ぐ。私はまだ床をふいているし、君は奥へすいこまれていった。床にしろい粉やホコリがちらばっていて、静電気のせいかふいてもふいても漠然ときたないのだ。
「どこの何をきても君はかっこいいけれど、ドレスコードのある、ふさわしさを服装で表現しなくてはならないところへ行ってしまうのか」
と、私はひとりごとをいう。君はいってしまったはずだけど、幼馴染みのノイズの間の会話をおもいだす。チラッとかおをだす用事といってたはずだ。だから、ふだんと違うスケジュールで、私も会えたのだ。
ふと、友人の結婚式として出ていったらドッキリで、おたふくのような女性を紹介される君の姿が見えた。さもマトモな進路、さもマトモな会社、さもマトモな人生、さもマトモな女性…身内には見えないまわりの人を踏み台にして、踏み台にされた元友達(と思ってたらただの奴隷だった者達)は精神を患っているような。そんなマトモな女と、マトモに白い家と2台の車と子供、休みの日にはバイク。
あぁ、そんなのはやめてくれ、君には似合わない。やめてくれ、そんなつまらない幻想のメスにおさまった君はみたくない。
君に似合うのは、素敵なのに独身で、わけありかとおもいきやそうでもない、本当に結婚どころか交際自体に興味のないような、いまの様子がとても美しいんだ。
繁殖は必要かもしれないが、君の美しさは繁殖行為が似合わないタイプだ。
だから、どうか、君は人間を超越して、一人で子供を孕んで欲しい。
君が生まれもった君と、君が世界から受け取った感覚の、間に生まれる子供だ。それはもはやクローンではない。
あぁ、一度は君をすみずみまで観察してみたい。
そんなことを思いながら、君は見当たらないのに、礼拝堂の入り口を掃除している夢だった。
そのあと、色々なことがあった。
激しい雪が降り、避難も間に合わず気を失ったあとに晴れた空をみた。晴れているが、外は雪が積もっていた。
地下道をホースと水で作られた仕掛けで繋いで、先に進む場面があった。まるでゲームのようだ。先まで見えているのに、仕掛けを解きながらでないと後で困ることをなぜか知っている。
ゲームをやる人間と、ゲームプレイを録画したものをみる人間の気配を感じた。
自分の主観で動いてるつもりだが、誰か世界の外にゲームプレイヤーがいる。録画を観てる不特定多数のなかに君の気配がした。君はどこかでゲームをしり、私と同行者が出演しているプレイを探しあてて、閲覧している。
なぜかそれを感じた。
フェがつく謎の世界は、そういう、この世界の外と、繋がった別の場所?
前を見ていないといけないと頭でわかっていたのに、後ろ斜め上を見上げる。
彼らをみることはでき…
そこで目が覚めた。
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