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ホワイトデー

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あなたは本当にそういう先輩。

「あ、ちょうどよかった」

と、ロッカーに走って、戻ってくる。

少年のような人。

力強くて明るくて、弱く見せる強さのある、でも頼ってねと真剣にみつめてくれる指導者。


「はい、ほわいとでー」

きらきらの箱。

「え?」

なにもてもちがなくて、偶然もっていたチロルチョコを渡した、程度なのに。

「いいから、じゃぁね」

年下指導者の笑い皴は、やけに渋みのあってセクシーで、のどに何かがこくんと飲み込まれる。

無意識に声が高くなるのはぶりっことか作りごとではなくて、もっとべつの、反応なのだと思う。

「世間ではそういう日なの?」

と、私からまともなチョコを受け取った同僚は、考え込む。

いいんだよ、先日、好きな番組のグッズをくれたもの。

そのときに、チョコのお礼としてって言ったのは自分じゃないか、私がチョコを平素のお礼でお返しは不要だといったから。

この話はそれまでだけど。

あぁ、顔が緩んでしまう。

服を着たまま、性欲を忘れてときめくほうが気持ちよくなってしまった、理由は忘れたけれど。

そのほうが、そのほうが「あわよくば」は魔法の言葉、優しい世界。

でも先輩、信じています、私はあなたの守備範囲外のはずなの、なのに貴方はたまに反応しているから、そんな自分に動揺してほしいのですよ。戸惑って、私のことを考えて、私のことで迷って、ためらった距離で優しくしてください。

そんな思いがなくても、あなたはいつも優しい。

これはひとつの物語、ときめき、あるいは信仰心。
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