200 / 301
ホワイトデー
しおりを挟む
あなたは本当にそういう先輩。
「あ、ちょうどよかった」
と、ロッカーに走って、戻ってくる。
少年のような人。
力強くて明るくて、弱く見せる強さのある、でも頼ってねと真剣にみつめてくれる指導者。
「はい、ほわいとでー」
きらきらの箱。
「え?」
なにもてもちがなくて、偶然もっていたチロルチョコを渡した、程度なのに。
「いいから、じゃぁね」
年下指導者の笑い皴は、やけに渋みのあってセクシーで、のどに何かがこくんと飲み込まれる。
無意識に声が高くなるのはぶりっことか作りごとではなくて、もっとべつの、反応なのだと思う。
「世間ではそういう日なの?」
と、私からまともなチョコを受け取った同僚は、考え込む。
いいんだよ、先日、好きな番組のグッズをくれたもの。
そのときに、チョコのお礼としてって言ったのは自分じゃないか、私がチョコを平素のお礼でお返しは不要だといったから。
この話はそれまでだけど。
あぁ、顔が緩んでしまう。
服を着たまま、性欲を忘れてときめくほうが気持ちよくなってしまった、理由は忘れたけれど。
そのほうが、そのほうが「あわよくば」は魔法の言葉、優しい世界。
でも先輩、信じています、私はあなたの守備範囲外のはずなの、なのに貴方はたまに反応しているから、そんな自分に動揺してほしいのですよ。戸惑って、私のことを考えて、私のことで迷って、ためらった距離で優しくしてください。
そんな思いがなくても、あなたはいつも優しい。
これはひとつの物語、ときめき、あるいは信仰心。
「あ、ちょうどよかった」
と、ロッカーに走って、戻ってくる。
少年のような人。
力強くて明るくて、弱く見せる強さのある、でも頼ってねと真剣にみつめてくれる指導者。
「はい、ほわいとでー」
きらきらの箱。
「え?」
なにもてもちがなくて、偶然もっていたチロルチョコを渡した、程度なのに。
「いいから、じゃぁね」
年下指導者の笑い皴は、やけに渋みのあってセクシーで、のどに何かがこくんと飲み込まれる。
無意識に声が高くなるのはぶりっことか作りごとではなくて、もっとべつの、反応なのだと思う。
「世間ではそういう日なの?」
と、私からまともなチョコを受け取った同僚は、考え込む。
いいんだよ、先日、好きな番組のグッズをくれたもの。
そのときに、チョコのお礼としてって言ったのは自分じゃないか、私がチョコを平素のお礼でお返しは不要だといったから。
この話はそれまでだけど。
あぁ、顔が緩んでしまう。
服を着たまま、性欲を忘れてときめくほうが気持ちよくなってしまった、理由は忘れたけれど。
そのほうが、そのほうが「あわよくば」は魔法の言葉、優しい世界。
でも先輩、信じています、私はあなたの守備範囲外のはずなの、なのに貴方はたまに反応しているから、そんな自分に動揺してほしいのですよ。戸惑って、私のことを考えて、私のことで迷って、ためらった距離で優しくしてください。
そんな思いがなくても、あなたはいつも優しい。
これはひとつの物語、ときめき、あるいは信仰心。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】恋の終焉~愛しさあまって憎さ1000倍~
つくも茄子
恋愛
五大侯爵家、ミネルヴァ・リゼ・ウォーカー侯爵令嬢は第二王子の婚約者候補。それと同時に、義兄とも婚約者候補の仲という複雑な環境に身を置いていた。
それも第二王子が恋に狂い「伯爵令嬢(恋人)を妻(正妃)に迎えたい」と言い出したせいで。
第二王子が恋を諦めるのが早いか。それとも臣籍降下するのが早いか。とにかく、選ばれた王子の婚約者候補の令嬢達にすれば迷惑極まりないものだった。
ミネルヴァは初恋の相手である義兄と結婚する事を夢見ていたというに、突然の王家からの横やりに怒り心頭。それでも臣下としてグッと堪えた。
そんな中での義兄の裏切り。
愛する女性がいる?
その相手と結婚したい?
何を仰っているのでしょうか?
混乱するミネルヴァを置き去りに義兄はどんどん話を続ける。
「お義兄様、あなたは婿入りのための養子縁組ですよ」と言いたいのをグッと堪えたミネルヴァであった。義兄を許す?許さない?答えは一つ。
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜
あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』
という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。
それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。
そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。
まず、夫が会いに来ない。
次に、使用人が仕事をしてくれない。
なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。
でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……?
そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。
すると、まさかの大激怒!?
あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。
────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。
と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……?
善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。
────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください!
◆本編完結◆
◆小説家になろう様でも、公開中◆
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる