2 / 3
第2話 友人
しおりを挟む
二人が屋内に入ると、丁度挨拶が始ろうかというタイミングだった。
ステージ上に設置された机とマイクの前で、中年の男性が声を発する。
「今日は入学おめでとう。これから君達には、魔法という強大な力の使い方を学んでもらい、夏に開催される七大魔法祭に参加してもらう」
一城は聞いた事もない単語に首を傾げる。
すると、横合いから雫がフォローしてくれた。
「七大魔法祭って言うのは、魔法学園同士が力を競い合う、年に一回のお祭りの事よ」
「へぇ~。そんな催しがあるんだね」
「知らなかったの? 子供でも知ってる常識だと思ってたんだけど」
「僕はちょっと田舎育ちだから……」
「それ、どんな田舎よ」
二人でこそこそ話していると、なぜか殺気を含んだ視線が肌を刺す気がした。
一城は辺りを慎重に観察する。
もしかしたら、何者かが自分達の命を狙っているのかも……と詮無き事を考えていた。
しかし、どうやらそれは杞憂だったらしい。
自分達を見ている生徒のほとんどが男子である事と、その瞳に妬み嫉みが混じっているのが見て取れたからだ。
「はぁ。それもそうか。隣にいるのは、美少女だもんなぁ」
「何か言った?」
雫は何一つ気付いていないらしい。
もしかしたら、彼女は鈍感なのかもしれない。
一城はそう心の中で思った。
「君達はこれから仲間と力を合わせ、良きパートナーと巡り合い、そして卒業して行くだろう。この学園で過ごす三年間は、決して無駄にはならないはずだ。私はそう信じているよ」
最後に優しげな笑顔を浮かべると、話を締めくくった。
「以上。校長からのご挨拶でした」
「今の校長だったの!?」
「そうみたいね。私も見るのは初めてだわ」
「僕、あの人に道を聞いちゃったよ」
「あなたって、馬鹿なのか大物なのか、どっちかね」
入学式の場所を聞いたあの男性が、まさか学園の校長だったとは。
人は見かけによらない。その言葉を地でいっている様な人だ。
一通り挨拶が終わると、新入生は一旦退出する。
皆、掲示板に張り出されたクラス分けを確認するのだ。
「私はっと……あった! 一年一組ね。一城は?」
「僕は……僕も一年一組だよ」
「あら。一緒じゃない。これから一年よろしくね」
「こちらこそ、よろしく」
また一緒に居られる事に、一城は少し運命めいたものを感じた。
何より、こんな綺麗な少女と一緒に居られるという事実だけで、彼の心は満たされていたのだった。
指定されたクラスに行くと、各々静かに着席していた。
まだ初対面。
誰も話をする物好きはいないと言う事だろう。
「よっ。同じクラスだな。見てたぜさっきの」
どうやら物好きがいたらしい。
一城が席に着いた瞬間、前に座っている男子生徒が、気さくに話しかけてきた。
「俺の名前は東条和也。気軽に和也でいいよ」
「僕の名前は黒鉄一城。僕も一城でいいよ」
和也と名乗った男子生徒は、紅い短髪をぼさぼさにした、子供の様な笑顔が特徴の生徒だった。
見た目から人懐っこさが滲み出ている。
「さっきのすごかったな。あれ、どうやってやったんだ?」
「そんなに大した事じゃないよ。ただ、魔法を斬っただけだよ」
「魔法を!? そんな事、可能なのか?」
「うん。魔法と言っても絶対じゃないんだ。だから、力の一番弱い部分を斬れば、簡単にできる事だよ」
「それでもすごいって。たぶんそんな事できるの、一城ぐらいだと思うぜ」
「そんな褒めても何も出ないよ」
と、その時。
入り口から一人の女性が入って来た。
スーツをぴっしり着こなして、いかにもできる女性と言った感じだ。
「皆席に着いてるな。それでは、これから説明を始めるぞ」
「まず入学おめでとう。これから君達の担任を任された、周防凪咲だ」
「君達には、魔法の初歩から学んでもらい、後にトーナメント方式で対戦をしてもらう」
「そこで優秀な成績を収めた者のみが、七大魔法祭に参加する権利を与えられる」
「もし選ばれたら、その後の成績にも加味されるし、卒業後の進路にも影響するので、皆しっかりと授業に励む様に」
「私からの説明は以上だ。何か質問は?」
一度クラス全体を見渡す凪咲。
しかし誰も手を上げて質問する者はいなかった。
「よし。とりあえず今日はこれで解散だ。各自、寄り道などしないで帰るように」
カツカツとヒールの音を響かせながら退出する凪咲。
担任が居なくなった教室は、安堵の溜息がそこかしこから聞こえてきた。
「一城~。一緒に帰らないか?」
誘われた一城は、チラと雫の方を見る。
別に約束しているわけではないが、自然と一緒にいる機会が多かったので、何となく気になったのだ。
雫は視線に気付く事なく、さっさと退出してしまった。
「あっ……」
「どうした? 早く行こうぜ」
「うん……」
何となく寂しい気持ちになった一城は、それを悟られない様に笑顔で後を付いて行った。
ステージ上に設置された机とマイクの前で、中年の男性が声を発する。
「今日は入学おめでとう。これから君達には、魔法という強大な力の使い方を学んでもらい、夏に開催される七大魔法祭に参加してもらう」
一城は聞いた事もない単語に首を傾げる。
すると、横合いから雫がフォローしてくれた。
「七大魔法祭って言うのは、魔法学園同士が力を競い合う、年に一回のお祭りの事よ」
「へぇ~。そんな催しがあるんだね」
「知らなかったの? 子供でも知ってる常識だと思ってたんだけど」
「僕はちょっと田舎育ちだから……」
「それ、どんな田舎よ」
二人でこそこそ話していると、なぜか殺気を含んだ視線が肌を刺す気がした。
一城は辺りを慎重に観察する。
もしかしたら、何者かが自分達の命を狙っているのかも……と詮無き事を考えていた。
しかし、どうやらそれは杞憂だったらしい。
自分達を見ている生徒のほとんどが男子である事と、その瞳に妬み嫉みが混じっているのが見て取れたからだ。
「はぁ。それもそうか。隣にいるのは、美少女だもんなぁ」
「何か言った?」
雫は何一つ気付いていないらしい。
もしかしたら、彼女は鈍感なのかもしれない。
一城はそう心の中で思った。
「君達はこれから仲間と力を合わせ、良きパートナーと巡り合い、そして卒業して行くだろう。この学園で過ごす三年間は、決して無駄にはならないはずだ。私はそう信じているよ」
最後に優しげな笑顔を浮かべると、話を締めくくった。
「以上。校長からのご挨拶でした」
「今の校長だったの!?」
「そうみたいね。私も見るのは初めてだわ」
「僕、あの人に道を聞いちゃったよ」
「あなたって、馬鹿なのか大物なのか、どっちかね」
入学式の場所を聞いたあの男性が、まさか学園の校長だったとは。
人は見かけによらない。その言葉を地でいっている様な人だ。
一通り挨拶が終わると、新入生は一旦退出する。
皆、掲示板に張り出されたクラス分けを確認するのだ。
「私はっと……あった! 一年一組ね。一城は?」
「僕は……僕も一年一組だよ」
「あら。一緒じゃない。これから一年よろしくね」
「こちらこそ、よろしく」
また一緒に居られる事に、一城は少し運命めいたものを感じた。
何より、こんな綺麗な少女と一緒に居られるという事実だけで、彼の心は満たされていたのだった。
指定されたクラスに行くと、各々静かに着席していた。
まだ初対面。
誰も話をする物好きはいないと言う事だろう。
「よっ。同じクラスだな。見てたぜさっきの」
どうやら物好きがいたらしい。
一城が席に着いた瞬間、前に座っている男子生徒が、気さくに話しかけてきた。
「俺の名前は東条和也。気軽に和也でいいよ」
「僕の名前は黒鉄一城。僕も一城でいいよ」
和也と名乗った男子生徒は、紅い短髪をぼさぼさにした、子供の様な笑顔が特徴の生徒だった。
見た目から人懐っこさが滲み出ている。
「さっきのすごかったな。あれ、どうやってやったんだ?」
「そんなに大した事じゃないよ。ただ、魔法を斬っただけだよ」
「魔法を!? そんな事、可能なのか?」
「うん。魔法と言っても絶対じゃないんだ。だから、力の一番弱い部分を斬れば、簡単にできる事だよ」
「それでもすごいって。たぶんそんな事できるの、一城ぐらいだと思うぜ」
「そんな褒めても何も出ないよ」
と、その時。
入り口から一人の女性が入って来た。
スーツをぴっしり着こなして、いかにもできる女性と言った感じだ。
「皆席に着いてるな。それでは、これから説明を始めるぞ」
「まず入学おめでとう。これから君達の担任を任された、周防凪咲だ」
「君達には、魔法の初歩から学んでもらい、後にトーナメント方式で対戦をしてもらう」
「そこで優秀な成績を収めた者のみが、七大魔法祭に参加する権利を与えられる」
「もし選ばれたら、その後の成績にも加味されるし、卒業後の進路にも影響するので、皆しっかりと授業に励む様に」
「私からの説明は以上だ。何か質問は?」
一度クラス全体を見渡す凪咲。
しかし誰も手を上げて質問する者はいなかった。
「よし。とりあえず今日はこれで解散だ。各自、寄り道などしないで帰るように」
カツカツとヒールの音を響かせながら退出する凪咲。
担任が居なくなった教室は、安堵の溜息がそこかしこから聞こえてきた。
「一城~。一緒に帰らないか?」
誘われた一城は、チラと雫の方を見る。
別に約束しているわけではないが、自然と一緒にいる機会が多かったので、何となく気になったのだ。
雫は視線に気付く事なく、さっさと退出してしまった。
「あっ……」
「どうした? 早く行こうぜ」
「うん……」
何となく寂しい気持ちになった一城は、それを悟られない様に笑顔で後を付いて行った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる