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ひかりは一年のうち何度も、向島にやってきては、わたしの家の軒先に顔を出した。
しゃがみこんで、いつも猫まんまを食べる猫たちを、にらむように見つめていた。
「このごはんは、おばちゃんが作ってるんですか?」
「そうだよ。いりことパンの耳を一緒に炊いてるの。とってもおいしいんだよ」
「おいしいっていうことは、食べたことあるんですか?」
「もちろん。でもあくまで猫にとってのごちそうで、人間が食べてもおいしくないよ」
「ちょっと、食べてみたいかも」
ひかりが今にも、出汁が染みたパンの耳に手を伸ばそうとしたので、
「やめなさい! その代わりに、ひかりちゃんように猫まんまを作ってあげるから」
わたしはとっさにひかりの小さな手をはたいた。
「おばちゃん、いたい。ひどい。いたい……えーん、ええーん」
ひかりは突然はたかれてわけがわからず、パニックになって泣き出した。
ごめんね、ごめんねと謝り、お詫びにと、人間用猫まんまを作って食べさせたが、ひかりは「これじゃない」と泣いて、食べ残した。
しゃがみこんで、いつも猫まんまを食べる猫たちを、にらむように見つめていた。
「このごはんは、おばちゃんが作ってるんですか?」
「そうだよ。いりことパンの耳を一緒に炊いてるの。とってもおいしいんだよ」
「おいしいっていうことは、食べたことあるんですか?」
「もちろん。でもあくまで猫にとってのごちそうで、人間が食べてもおいしくないよ」
「ちょっと、食べてみたいかも」
ひかりが今にも、出汁が染みたパンの耳に手を伸ばそうとしたので、
「やめなさい! その代わりに、ひかりちゃんように猫まんまを作ってあげるから」
わたしはとっさにひかりの小さな手をはたいた。
「おばちゃん、いたい。ひどい。いたい……えーん、ええーん」
ひかりは突然はたかれてわけがわからず、パニックになって泣き出した。
ごめんね、ごめんねと謝り、お詫びにと、人間用猫まんまを作って食べさせたが、ひかりは「これじゃない」と泣いて、食べ残した。
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