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【降臨11日目】 所持金116万9667円 「明日から本気を出しますので、そのつもりでお願いします。」

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寺之庄煕規はボンボンである。
どれくらいのボンボンかというと、毎年正月にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートを家族で楽しむことを習慣にしているくらいのボンボンである。
出逢った時の彼は謙遜して過少に申告していたが、断じて小金持ちレベルではない。


貧民の俺から見れば、このレベルの勝ち確人間は無邪気に人生を謳歌するべきだと思うのだが…
彼には彼の悩みがあるらしい。


「どれだけ頑張っても…
全て親ガチャの賜物とされてしまい、誰からも評価されない。
それが心底辛い。」


夜中に涙ながらに自分語りをされた。
冷静に考えれば深夜3時を過ぎてまで延々と話し掛けられるのは迷惑行為なのだが、寺之庄煕規のイケメン・イケボ補正が強力過ぎて本来感じるべき不快感が沸いてくれなかった。
寧ろ、彼と話していると自分がシティドラマの登場人物にでもなった錯覚に陥り、悪い気がしない。
(そもそも泊めて貰っている身としては文句も言えんわな。)

ちなみにこの男には美人な婚約者がおり、写真を見せて貰った所、あまりの正統派清純美女っぷりに心底驚愕した程である。
(地元の一之宮のお嬢様らしい。)
俺はてっきり弓長さんと付き合っているのかと思っていたが、キョトンとした顔で「真姫は友達だよ?」と返答されてしまった。

なるほど、このレベルのイケメンになると何をどうやっても女に困らないので、サブヒロインと友情を育む余裕があるのだろう。



「でも、トイチ君もモテてるでしょ?
君が殴った女の子、彼女さんって報道されたし。」



…あのなあ。
貴方のフィアンセと鷹見夜色では女としての格が20段階くらい乖離しているのだが…
まあいいや。
俺と寺之庄煕規にはそれ以上の乖離があるからな。



「いやいや、何を言ってるの。
トイチ君の方が僕なんかより遥かに上だって。」



『そ、そうですか?
自分がヒロノリさんに勝っている要素なんて、何一つ思い浮かばないのですけど。』



「いやいや!
トイチ君は世界的有名人じゃない。
出演した動画2つもバズるなんて現代社会の勝利者じゃないか。
名前で検索したらヒットしまくるし。」



『全てが俺への誹謗中傷なんですが、それは…』



「僕ねぇ。
君が羨ましいんだよ。」



『ヒロノリさんが俺をですか?
またまた、御冗談を。
こっちは住所も口座もスマホも無いんですよ?
オマケに動画を見たガイジン共から敵視されてますし。』



「漫画の主人公みたいで格好いい。」



『あ、いや。
俺だってその手の漫画は好きですけど、自分がこの境遇だと地味に辛いというか。』



「でも、非日常感あってカッコいい。

あのね。
僕も退屈な日常を変えようと思って
動画投稿にチャレンジしてみたいんだ。

…見てみる?」



『え?
マジっすか?
興味あります。』



見せて貰った寺之庄煕規の動画チャンネルはジャンクフードルポ集。
もう30動画ほど上がっている。
ラーメン屋を中心に脂物を熱く語っている。
素人動画をイメージしていたが、見てみると寺之庄の丁寧な語り口もあり、非常にスムーズに視聴する事が出来た。
特に《もんじゃ焼き居酒屋》や《道民ルールのジンギスカン屋》は、店主との軽妙な掛け合いもあって面白い。



『あ、サムネとかもしっかりしてますね。』



「うん、無駄に予算掛けてみました。」



『いや、ヒロノリさん凄いじゃないですか。
開設半年なのに、チャンネル登録者数も8000人いますし。』



「うーーん。」



『駄目なんですか?』



「凡人。
それが僕の偽らざる自己評価。
このチャンネルもそう。
まさしく平凡。
本音を言うと、ラーメンってあんまり好きじゃないし。

だから、君みたいに滅茶苦茶な人生に憧れてるんだ。
でも生まれついての小心者でね。
レールから外れた行動に中々踏み込めない。」



『あ、いえ。
ヒロノリさんは大学を卒業されたら御実家を継ぐ為に入社されるんですよね?
じゃあ、今の生き方が正解なのでは?』



「うーーーーん。
親の言いなりで会社継いで…
親の決めた相手と結婚して…
それって男の人生って言えるのかなって悩んでて…」



『いや、あんな美人さんを用意してくれるご両親って
神様みたいなものだと思いますよ。
さっきの画像、どこかのアイドルかと思いましたもの。』



「悪い子じゃないんだけどね…」




『なんか問題あるんですか?』




「籍を入れちゃったら…
もう後戻り出来ないみたいで怖いよ。

トイチ君みたいに、色々自由にやってみたい。」



『ああ、確かに。
後戻りは出来ないですよね。』



ヒルダとコレットの笑顔がフラッシュバックする。
こちらが養子という立場もあり、あの母娘包囲網は本当にキツかった。
ひたすら息苦しかった。
常に監視され続ける圧迫感。
正直、思い出したくない。



「ねえ、ちょっと変な質問になっちゃうんだけど…
キョンを殺してたのって…  
トイチ君?」



『…まあ、否定はしません。』



「やっぱりトイチ君なんだ。
ヤバいよ。
動物愛護団体も騒ぎ始めているみたいだし。

あれって何か意味があるの?」



『意味はあります。
遊び半分の殺生ではない事を信じて欲しいです。』



「外来種の駆除とか?」



『まあ、そんな所です。』



「…僕もそういう人生を歩みたかった。」



正気か?



「さっきも言ったけど。
これから、君が何か面白いことするなら。
僕も何か手伝わせてくれないかな?

面白ムーブを間近で見たいんだよ!
あわよくば、僕もそういう破天荒な人生を歩みたい。」



『いや、それは流石にマズいですよ。
俺、警察を完全に怒らせちゃったみたいなんで
ヒロノリさんにとばっちりが行っちゃいますよ!』



「そういう映画の主人公みたいな台詞…
言ってみたい。」



『…映画の序盤みたいにヤバい状況にあるって事ですよ。』



「でも最後には勝つんでしょ、映画みたいに。」



『でしょうね。
順当に勝っちゃうと思います。』



「それだよ!
そういう余裕たっぷりの小粋なセリフ回しに憧れるんだよ!
トイチ劇場を近くで見たいんだよ!
そして僕も舞台に上がりたい!」



『まあ、ヒロノリさんには色々世話になってますし…
面白いかどうかは分かりませんが、立ち合うぐらいでしたら…
どうぞ。』



「やったぜ!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




信じられないかも知れないが、徹夜でそんな話をしていた。
一睡もしていなかったので、朝から昼過ぎまで熟睡してしまった。


「ゴメン。
深夜のテンションで迷惑掛けちゃった。」



寺之庄は俺に真摯に詫びながらも、スマホからエモやんや真姫さんに手早く連絡を行っている。
リア充ってマメだよな、と。
自分がそうなれない事を本能的に悟る。



『あ、いえ。
泊めて貰ってる身分ですし、動画チャンネルの裏話とか面白かったです。』



中途半端な時間に起きたので頭が働かない。
点けて貰ったTVをボーっと眺める。
(今時TVを持っているなんて流石は金持ちである。)

90インチの超大型TV。
「いやあ、引っ越しの時は苦労したよ。」
という話を詳しく聞いてみると、苦労したのは当然引っ越し作業員であり寺之庄煕規は見ていただけである



「ねえ、トイチ君。
今日はどんな面白ムーブするの?」



『ははは、毎日奇行に走っている訳ではありませんよ。
今日は乞食をやってみます。』



「おお、凄い!
何かよくわからないけど、凄いから凄い!」




  「次のニュースです。
  新宿歌舞伎町で会社役員の広川博一さん51歳が殴打され死亡した事件ですが
  別容疑で逮捕されていた男の犯行である事が判明しました。
  逮捕されたのは楢崎龍虎容疑者。
  取調に対し楢崎容疑者は
  《軽くバチコーンしただけバイ。 こんなん九州じゃ挨拶ですけん。》
  などと訳のわからない供述を繰り返しており
  付近で同様の傷害事件も多発していることから
  厳しく余罪を追及していく方針とのことです。」




『前からやってみたかったんですけど。
路上で詩を売ってる人とかたまに居るじゃないですか?
あの要領でカネとか借りれないかな、と思って。』



「え?
おカネ?
僕で良かったら貸すよ?
現金はあんまり手元にないけど。」




どうせ500万くらい持ってそう。
アホらしいのでツッコまない。



『ははは、ご提案感謝します。
ただ、路上に座って通行人の人と話すのはやってみたかったんですよ。
度胸試しっていうか…』




  「続いてのニュース。
  昨夜未明、新宿区の西東京総合福祉病院において、不法侵入事件が発生しました。
  逮捕されたのは不動産会社経営の平原猛人容疑者。
  面会時間外にも関わらず受付の看護師に対して入院患者との面会を強要し
  胸倉を掴むなどの暴行を加えたという事です。
  平原容疑者は以前からこの入院患者とトラブルを起こしており
  《自宅や家族を勝手に撮影された》
  と近隣住民に対して漏らしていたとのことです。
  なお、平原容疑者は鈍器のような物を所持しており
  新宿署はその用途について厳しく追及していく模様です。」




「あ、あの。
僕も見学していい?」



『え? 本当に来るんですか?
まあ、隣で見ているくらいなら。』



「やったぜ!」



それにしても。
俺は思わずTV画面に食い入る。



「ん?
トイチ君、TV気に入った?」



『いやあ、こんな大画面でアニメとか見たら迫力あるんだろうな
って思って。』



「アニメも普通に見るよ。
真姫達と宅飲みする時に、深夜アニメをBGM代わりにしたりね。」



『へえ、ヒロノリさん達ってリア充だからアニメとか見ないと思ってました。』



「え?
アニメくらい皆見てるよ。
別にリアとか非リアとか関係ないと思うよ?
ウチのゼミの教授とかも深夜アニメ大好きだし。」



『…じゃあ、異世界アニメも見られるんですか?』



「そりゃあ、見るよ。
最近は異世界モノばっかりだしね。
《俺だけが入れる隠しダンジョン》
みたいな名作もあるから馬鹿に出来ないよ。
真姫も5話を観て感動して泣いてたし。」



『へえ。
弓長さんって、典型的な陽キャお姉さんじゃないですか?
深夜アニメなんて絶対見ないと思ってました。』



「あのねえトイチ君。
ジャパニメーションは我が国が世界に誇る最高芸術だよ?
陽キャも陰キャもないの。
見てない人を探す方が難しいんじゃないかな?
昔はアニメ差別とかあったらしいけど。

もう令和なんだからさ。
そろそろ意識をアップデートして行こう!」


うーーーむ。
やっぱりみんな異世界アニメを見ているらしいな。
これだけ異世界概念が共有されていたら、そりゃあ俺の異世界転移も悟られるよな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【意識修正】

×異世界アニメやなろう小説なんてオタクだけがこっそり読んでいるもの。
レベルやステータスという概念は狭い内輪の限定文化


〇警官や大学教授ですらも異世界アニメやなろう小説を視聴している。
何なら今のZ世代よりも遥かに読み込んでいる。
そもそもレベルやステータス等の概念を一般知識として広めたのが、今の大人世代。
俺の千倍以上詳しい。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『↑ こういうことですね?』


「そういうこと。
僕らはオタク迫害やその反動で起こったオタクブームの後で生まれた世代らしいから。
上の世代の人達に、そちら方面で勝つのはほぼ不可能だと思うよ。
…戦中派VS団塊の、従軍経験の有無が死生観を劇的に分けるみたいな雰囲気じゃないかな。」


『あー、そりゃ勝てませんわ。
あの人ら、思い入れが半端なくてキモかったですもの。
たかが漫画にマジになり過ぎなんですよ。
ドン引きしましたよ。

取り調べの時なんか50過ぎのお巡りさんに
《最近の若者はガンダムも知らんのか?》
って怒られました。

もうね、いい歳こいたオッサンがアホかと。』



「ふふふ、あの世代の人達すぐにムキになるよね。」




『オールドタイプの人達はああいうアニメ好きですよね。
って言い返してやったら発狂してましたw
俺が有罪になったらあの発言の所為ですね。』



「知ってるじゃないww」



しばらく2人で親世代を肴にブランチ。
途中でやって来た真姫さんがシーフード炒飯を作ってくれた。



「で、トイチ君。
乞食…
ってホントにやるの?」


『厳密に言えば、乞食というより路上ビジネスですね。
ほら、地べたに座って詩集を売ったり弾き語りしてる人達がいるでしょ?
あの要領です。』



「うおー! 何か凄い!
ちょっとわくわくしてきた。」



『ゼロからのスタートって
やっぱりこの辺かな、と思って。』



「一緒に行くよ?
僕も一緒に行くよ?
邪魔しないから側で見学させて!」



『ああ、勿論。
どうぞどうぞ。』



今回。
降臨してから数日。
たまたまヒルダという知人に再会し、後藤・江本というチートキャラの厚遇を得ることが出来た。
ヒルダは兎も角これは無上の僥倖なのだが…
俺が本来やりたかったリスタートとは大きく異なっている。

最初はある程度、不特定多数と薄く広く接触したいのだ。
(能力の性質上、知った者はみんな必死に囲い込んで来るとは予想しているが。)
異世界では、転移数日目には胡桃亭・ニコニコ金融・キーン不動産の3法人と一蓮托生の関係になってしまった。
ベターの選択肢ではあったと思うのだが、以降の取得情報全てにあの3法人のバイアスが掛かり過ぎて、大魔王という最高権力者にしては、世界を見る目にかなり偏りが生じてしまっていた。
それが大きな反省点。
後藤や飯田や寺之庄は知徳兼備の尊敬すべき友人であるが、彼らの好意のみに依存してしまえば、結局地球でも異世界の轍を踏んでしまうだろう。
なので。
カネがないうちに、もう少しだけ世界を広げておきたい。



『じゃあ、出発しますか。』




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

102万2784円
  ↓
102万2604円

※表参道駅から新橋駅への電車賃として180円を支払い。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「で、なんで新橋?」



『この新橋って駅。
何となく会社が密集しているイメージがあって。
銀座にも近いですし…

それに。
昔、友人がSL広場の話をしてくれたんです。
この機関車の周辺で弾き語りしている連中が多いって。
それでいつかは行ってみようと思いました。』



アイツの無駄話って、結構俺の人生に影響与えてるよな。
なあ、荒木。



俺は寺之庄の自宅から借りた段ボール箱を引きちぎって、その裏面に大型マジックで文字を書き始める。
金持ちの家にあったマジックだけあって、インクの伸びが良く実に書き易い。



「え、トイチ君!
これって!」



『ええ、まずは路上から始めます。』



「それって実質的に…」




   「…じゃあ、次はオマエの番だ。」

   『お、俺の番ですか?』

   「こっちばっかりペラペラ話すのは不公平だろう?」

   『俺は商売人です。
   大きな商いをする為に元金を増やしたいと考えておりました。』

   「ああ、駆け出しさんね。
   テナントは持ってない?」

   『はい、宿屋暮らしです。』

   「業種は?」




『コンサルタントです!』




俺が異世界に行って初めて名乗ったビジネス。
我が最愛の師ダグラスとの掛け替えのない想い出。
思わず零れた涙を拭きながら、念入りに続きを書き進める。


《経営コンサルタント
御社の現預金を100倍にします。》



…リスクの大きさは重々承知。
だが、それでも。
不特定多数との折衝経験なくして地球での勝利はあり得ない。
俺は成長しなくてはならないのだ。
それも複利などに負けない速度で。


「トイチ君、写メ
一緒に撮って貰っていい?
絶対に勝手に使わないから。」


『え?
いや、ヒロノリさんなら幾らでも歓迎ですよ。』


「トイチ君はすぐにブレイクして、僕なんかの手の届かない存在になるだろうから。
せめて想い出だけでもね。」


『大袈裟ですよ(笑)』


「本音では大袈裟とも何とも思ってないんだろ?」


『まあ、嫌でも何かの形で突出はすると思います。
なるべく穏当な形になれば幸いですね。

ただ、ヤバいと感じたらすぐに俺からフェードアウトして下さい。
どう転ぶかは予想もつかないので。』


「僕、タイタニックは中から見届けたいタイプなんだよ(笑)」


『ちゃんと逃げてー(笑)』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



14時50分、新橋駅前SL広場。
弾き語りのお兄さんがマイクをセットする光景を見ながら、俺も露店の設営を終えた。
と、言っても余った段ボールに座ってるだけだが。
寺之庄がニコニコしながら俺の脇に陣取る。


14時55分、コンサル開業。
道行く人々がジロジロとこっちを見ている。
弾き語りのお兄さんが《純愛ボンバー》なるアップテンポの曲を歌い始める。
この時点で誰も話し掛けて来ないが、注目度は隣の爆音を既に越えている。
お兄さんを取り巻くファンも5秒に1回くらいのペースで俺をチラ見して来る。


15時17分。
ファーストコンタクト。
若い背広の男。
靴のくたびれ具合から見るに、事業者ではなく労働者。



「売上100倍って誇大広告じゃない?
景品表示法違反じゃない?」



『すみません。
私は顧客単価が高いので。
喜んで支払って下さるクライアント様とだけ取引をさせて頂いております。』



「え? それって本当に商売なの?
ははは。
客とか来ないでしょ?
俺、経済学部出てるんだけど、アドバイスしてあげようか?」



『結構です。』



それからも男は話し掛けて来たが、俺が拒絶し続けたので諦めて去っていった。
ポール以下の経済学部はいらない。

ツンツンと遠慮がちにつつきながら寺之庄が話し掛けて来る。


「今の人が不合格だったのは…
おカネ持って無さそうだったから?」


『明らかに薄給労働者でした。
ただ、理由はそちらではなくて。
終始、挑発的な姿勢だったので。
営業マンという話でしたが、日頃会社や取引先からああいう扱いをされているから
そうなるのだろうな、とは察するのですが…
こちらが我慢する筋合いもありませんので。』



「うん、それは僕も思った。
あの人、営業成績もそんなに良くないんだろうね。」



『俺1人のリソースは限られているので、ある程度相手は選びたいんです。』



そもそも、俺は馬鹿が嫌いだ。
興味を持った対象から情報1つ引き出せない無能に貴重なパートナー枠は譲れない。

その点。
ドナルドやカイン、飯田や後藤、そしてこの寺之庄は初対面時から好感度の高い受け答えをしてくれた。
俺如きと上手くやれる人間は社会を上手く渡っているに決まっているのだ。
俺程度を上手く転がせない人間が社会でちゃんとやって行けている訳がないのだ。

「人間の優劣を判別するのに1秒も必要ない。」

今ならコレット・コリンズの言葉にも素直に頷ける。
俺も妻母に倣い上客を選んで行く。



15時31分ハズレ。
15時39分ハズレ。
15時55分ハズレ。
15時55分ハズレ。
16時04分ハズレ。



その全員が労働者。
あまり良い扱いをされていない事は嫌でも伝わって来た。



16時07分。
これまでの遣り取りをずーーっと観察していたパーカーの男が近寄って来る。


「こんにちわー。」


明るく通る声色。
チームスポーツで本格的に揉まれた人間特有の発声。
表情、ちゃんと自己肯定感が備わっている。


『こんにちは、はじめまして。
トイチと申します。』


「御丁寧にありがとうございます。
私は三宅と申します。
大した仕事はしてないのですが、一応事業者です。」


『三宅さん、宜しくお願い致します。
差し支えなければ、お掛けになって下さい。』


俺はわざと粗く千切ってある段ボールを隣に敷く。


「いやあ、御丁寧にありがとうございます!
ここはBGMも掛かっているし、特等席ですね!」


『さっき《純愛ボンバー》って曲を演奏していたのですけれど
パワフルで素晴らしい曲でした。』


「ああ、その曲は聞き逃したかもです。」


『今日の彼の一曲目なんですよ。』


「ふふっ、それで聞き逃しちゃったんだ。
残念(笑)」


心底どうでもいいのだろう。
三宅は歌声の方向を半秒だけ見たフリをして、すぐに俺に目を戻した。


「売り上げを100倍にする方法を御教示頂きたいのですが…
コンサル料は幾らほどになりますでしょうか?
こちら名刺です。
事業内容を裏に色々記載しているのですが
実態は単なるトレーダーだと思って下さい。」


『ああ、すみません。
説明不足でしたね。
私は現金を増やすしか能のない人間でして。
売り上げ増大に関するアドバイスは難しいと思います。
特にトレーダー、株やFXですよね?
未経験なんです。
だから、そちらで三宅さんに語れる点は全くありません。』


三宅は何も答えず「ふふっ」と笑う。
敵意は感じない。
無論、感じさせる奴が馬鹿なのだが。



「最初、看板を拝見した時。
FXで増やしてやるからカネを貸せって話かと思ったんです。
違うみたいで、ちょっと嬉しいです。」



『興味はあったのですが、FXとか先物とか…
この先、手を出す事はないと思います。
勉強くらいはすると思いますが、一通りで済ませるでしょう。』



「…レバレッジを掛けずに100倍にする方法とかあるんですかね?」



『ジンバブエにでも行かない限り無いと思います。
経済法則に反しているので。』



俺の回答が余程気に入ったのか、三宅は身体を揺らしながら数秒笑っていた。



「ですよね。
私も色々考えたことがあるのですが…
一代で成り上がろうと思えば、どうしても賭けに出ざるを得ない面がありまして。
100倍なんて、余程のリスクを負うか、或いは余程の時間を掛けるか…
目標年数とかあるのですか?」


『16か月目には越えます。』


俺は傍らの清麿箱を三宅の目の前に置く。
三宅は箱など見ずに俺の目を観察し続けている。



「…。」
『…。』



「月利35%で回すってことですか?」



『ああ、スミマセン。
実は私、日利でしかおカネを回した事がなくて
月利で言われても…』



「日利1%を480日連続で達成するのは意外に難しいと思いますよ?
現物先物ですか?」



コイツ滅茶苦茶計算早いな。
バケモンか?
いや、トレーダーで喰って行こうとすれば、これくらいの計数能力は必要なのかも知れんが。



『いや、本当に投資用語すらも正確にはわかってないんですよ。
ただ、この箱に入れてくれた資金の101%を即日でお支払いするだけの話なので。』



「トイチさん。
チップを弾みますので、ギミックだけ教えて頂けませんか?

いや、疑ったり怒ってる訳じゃないんです。
疑問はその場で解決しないと気が済まない性質なだけで。」



『原理はありません。
なので、私は結果に対してのみ評価をお願いしております。』



「即日か…
今夜は眠れない夜になりそうです。」



『あ、いえ。
配当は17時過ぎという決まりがありますので。
いつもその辺の時間にお支払いして、皆でメシを食って解散する事が多かったです。』


三宅は一瞬だけ手首に目をやる。


1615



『いいえ、3分前くらいまでなら応対してますよ。』



「今からのんびり飲み物でも買って来ます。
トイチさんは何を飲まれますか?」



『お茶系ならなんでも。』



「隣の方は何を飲まれますか?」



『遠市先生と同じものならなんでも。』



三宅は嬉しそうに微笑むと大きな財布を清麿箱に入れ、どこかに去ってしまった。



『ヒロノリさん、先生だなんて困ります。』



「ふふっ、こういうサクラっぽい役、一度やってみたかったんだよ。」



『お金の絡まない場面でなら幾らでもやっていですから。
絡む場面では自粛して下さいよ。』



「はーい♪」




17時まではやや時間がある。
少なくともそれまで三宅は戻って来てくれないだろう。
何故なら、彼は自分自身に対して勝負を仕掛けているからである。
己の直感に従うか、否か。
あれくらい壊れて/まともでなければトレードで生計を立てる事は出来ないのだろうか。
なら俺には向いてないな。



16時19分ハズレ。

好奇心が評価されるのは小学生までである。
その対価を支払えない者は単なる雑音に過ぎない。


16時26分ハズレ。

小なりとも業務中である。
雑談相手が欲しいなら俺以外の誰かを指名して欲しい。



16時34分ハズレ。

マルチ商法は犯罪であってビジネスではない。



16時52分ハズレ。

喧嘩腰でしか話せない人間と取引はしない。
そうか財布に札束ぎっちり凄いね。
俺以外ならきっと歓迎してくれると思うぞ?



『さて…
始めますか。』



「…始めるって、配当?
え? 本当に1%払うってこと?
それは手数料とか差し引いて?」


『シッ。
聴覚に集中させて下さい。

ヒロノリさん、俺の真正面に座って下さい。
ブラインドで。』



「?
了解。」



《20万5253円の配当が支払われました。》



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

??????
  ↓
??????  


※配当20万5253円を取得


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



箱の中に出現したのは20万5253円。
そこから俺の見込み配当金額である3万0683円を引くと、17万4570円…


『ヒロノリさん。
17万4570円が全体の3%だとすると、総額って幾らになります?』



「さっきの三宅さんなら一瞬で計算するんだろうけどね。
ちょっと待って、スマホで調べるよ。

…。
間違ってたらゴメンね。
581万9000円の3%であれば17万4570円になると思う。
多分合ってると思うけど…
ミスってたらゴメン。」



『いや、どうせ財布見てないし。
もうその数字でいいです。
三宅さんにしたって、この場面で厳密な数字には興味ないでしょう。』



そんな会話をしているとコンビニの袋を持った三宅が見えた。



「ただいまー。」


『おかえりなさい。』


「ウーロン茶とジャスミン茶、黒豆茶。」


『じゃあ黒豆茶で。
ヒロノリさん、同じものでいいですね?』



  「ありがとうございまーす。」



『三宅さん。
先に財布をお返しします。
後、こちらが配当金の5万8190円です。』



「ちょっと待って…
私の財布、開けた形跡が無いのですけど…
保護テープ貼り直した? 訳ないよね。」



三宅がこちらに見せて来た財布の開閉部には、薄いセロハンが貼ってある。
恐らく抜き取り防止か何かのグッズなのだろう。



『そりゃあ、他人様の財布なんて普通は開けないでしょう。
あ、そこの配当金も忘れないようにして下さいね。』



「…どうして正確に総額を把握出来た?
重量感知?  赤外線?」



『ああ、合致してましたか。
良かった良かった。
じゅあ、我々はこれで。』



「ちょっと待って下さいよ!」



『え?』



「あ、いや。
待って下さい。」



『はい、少しだけなら。』



「この保護テープ…
南米でしか出回ってないんです。
先月からブラジルの製造元がようやく通販を始めて。
試しに買って色々試しているんです。
ほら、一度剥がすとくっつかないでしょ?
原理がシンプルなだけに意外に突破が難しい。

女の本性を暴けた以外に効果は実証されなかったんですが…」



『へえ、世の中には色々なグッズがあるんですね。』



「結果だけを見てくれ、と?」



『そんなところです。』



「…。」



『じゃあ、我々はこれで。』



「待って下さい!
…ポンジスキームでない事は体感で分かるんです。
話の組み立て方からして…  明らかに異質!」



『はい、異質なのかも知れません。』



「あの!
トイチ先生!

お名刺を頂戴出来ませんか?」



『あー、名刺持ってなくて
ちなみにスマホも持ってません。』



「スマホないって…
え? ガラケー?」



『ガラケーもないですね。』



「どうやって連絡を…」



『そりゃあ、昭和時代みたいに
お互い頑張るしか。』



「…不躾ですが、お住まいを教えて頂くことは」



『決まった住所がなくて…
昨日はこちらの寺之庄さんのお宅に泊めて頂きました。』



「ルームシェアか何か?」



『いえ、昨日だけです。
一昨日は留置場に泊めて貰いました。』



「え? いや…
え? 留置!?
あ? 住所がお不定でおられる?」



『そんな所です。』



「不躾ですが!
今夜の宿がまだでしたら
私に用意させて頂けませんか!?
自宅は…
半分ヤリ部屋的に使っているのですが、未使用の布団があります。

勿論、抵抗があると思うので!
民泊用の物件を都内に6部屋所有しております!
そちらも提供可能です!
浅草駅まで徒歩2分の人気物件も保有しておりますよ!
英語圏の旅行サイトで毎月ランキング上位の物件です!
観光地が苦手でしたら三軒茶屋の隠れ家物件もあります!
駅まで徒歩1分のテナントビル最上階物件です。」



『あ、いえ。
実は私は東京の人間ではなくて、土地勘が無いので…
浅草というのは、えっと有名なお寺がある所ですよね?』



「す、すみません。
一方的に熱くなってしまいまして。
大変失礼しました!」



『あー、いえいえ。
全然不快には思ってないので。
こちらこそ、心よい返事が出来ずに申し訳ありません。』



  「遠市先生。
  口を挟んで宜しいでしょうか?」



『あ、はい。』



   「今から向かう居酒屋。
   差し支えなければ、三宅さんも御同席して貰っては?」




『ええ、お2人が御迷惑でなければ。』



他に答えようも無かったので、そう答える。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

102万2784円+X
  ↓
122万8037円+X
  ↓
116万9847円


※配当20万5253円を取得
※三宅に5万8190円の配当を支払い、元本Xを返却。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




居酒屋の座敷に上がった瞬間。
三宅が深く土下座して来る。


「申し訳御座いません!
私の本名は三宅ではなく、安宅と申します!」


『アタカ…
ああ水軍の。』


「はい!
曾祖父の代に愛媛県から東京に移住したと聞いております。」


『…私も父が瀬戸内沿いの漁村の生まれで
中学卒業と同時に上京… 
ああ厳密には神奈川県なのですが、上って来ました。』


三宅改め安宅は免許と保険証の両方を提示して、再度詫びる。
フェイクではない方の名刺もちゃんと受け取ってやった。


『いえいえ。
不審な人間にいきなり本名を名乗るのは抵抗もあるでしょう。
当然の御判断だと思います。』


「お心遣いありがとうございます。」


その後、1時間ほど談笑して寺之庄と安宅が連絡先交換を行う事で話はついた。

安宅一冬の美点は自分が癖のある人間であると熟知していることである。
なので、まずは自身の強い傾斜を詫びる所から本格的な人間関係を始める。
自己開示も積極的である。
これは双方の為のフィルタリングなのだろう。
それを許容出来ない人間は勝手に去るし、何より許容してくれない人間をその場で切れる。
素晴らしい。
安宅より更に癖の強い俺は、本来その対人戦略を採用するべきである。
奇人の更生が実質上不可能な事はポール・ポールソンが身をもって教えてくれたのだから。


『じゃあ、2人共。
明日から本気を出しますので、そのつもりでお願いします。』


結局。
今日も寺之庄のマンションに泊めて貰うことにした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

116万9847円
  ↓
116万9667円

※新橋駅から表参道駅への電車賃として180円を支払い。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



君は何を言っているんだ?

そりゃあ、本気くらいは出すよ。
いつまでも燻っていたら、置き捨てた者や散っていった者に申し訳が立たないじゃないか。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





【名前】

遠市 †まぢ闇† 厘



【職業】

詐欺師→自称コンサルタント



【称号】

サイコキラー



【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)

《LV》  3
《HP》  ?
《MP》  満タン
《力》  女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 ?
《精神》 女しか殴れない屑
《幸運》 的盧

《経験》 30 (仮定)

※キョンの経験値を1と仮定
※ロードキルの有効性確認済



【スキル】

「複利」 

※日利3%

新札・新貨幣しか支払われない可能性高し、要検証。



【所持金】

116万9667円

※但し警視庁が用意した旧札100万円は封印、タイミングを見て破棄するものとする。



【所持品】

jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ 
寺之庄コインケース
奇跡箱          
コンサル看板 



【約束】

 古屋正興     「異世界に飛ばす」
 飯田清麿     「結婚式への出席。」
〇         「同年代の友達を作る」
 後藤響      「今度居酒屋に付き合う(但しワリカン)」
 江本昴流     「後藤響を護る。」
×弓長真姫     「二度と女性を殴らない」
〇寺之庄煕規    「今度都内でメシでも行く」
×森芙美香     「我ら三人、生まれ(拒否)」
 中矢遼介     「ホストになったら遼介派に加入する」
 堀田源      「トイレコインの使い方を皆に教える。」
 山田典弘     「一緒にイケてる動画を撮る」
 楢崎龍虎     「いつかまた、上で会う!」
 警視庁有志一同  「オマエだけは絶対に逃さん!」
 安宅一冬     「浅草寺周辺を一緒に散策する。」


×鷹見夜色     「俺が護る」

 ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹を喰わせてやる。」
          「王国の酒を飲ませてやる。」





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