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【清掃日誌53】 盗賊
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「ポールさん、今日は提案があるっス!」
『…却下で。』
「まだ何も言ってないじゃないッスか!」
『どうせ俺が反対するような話なんだろ?
言っとくけど、俺は女の子が危険な真似をするのは全部反対だから。』
「今、男女平等が流行してるんスよ!
芝居だって絵巻物だって、そういう内容ばっかりじゃないっスか!」
『ああ、それ産団連のプロパガンダだから。』
「え!?」
『重労働や危険作業に女性を従事させる為の世論工作だよ。
…昔は女性の鉱山労働や冒険者登録なんて禁止されていたのに。
今じゃすっかり定着してしまった。』
「マジッスか?」
『疑うならクレアに聞いてみな。
アイツ、そういう話に詳しいから。』
クレアは昔から女子の労働環境について思い悩んでいたし、自腹を切って社会実験も行っていた。
なので、女子労働の実態には一番詳しい。
「で、でも女の子的には働ける職種が増えるって助かるんスよ。」
『選択肢が増える事は悪くないと思うよ?
でも、何も危険作業に携わらなくても。』
「優位性を活用したいんスよ!
美人な子が劇団に入ったり、パパ活するみたいなもんです!
アタシが腕っぷしを使わなきゃ、ブスの生まれ損じゃないッスか!」
『俺はレニーの顔、嫌いじゃないけどな。』
「地元でブスブス言われて育って来たんスよ!」
『田舎は教育が行き届いてないから、多様な価値基準で他者を評価出来る人材が少ないんじゃないか?
いずれにせよ、俺はレニーを高く評価してる。
勿論、異性としても。』
「…ぐぬぬ、多幸感洪水に脳味噌が押し流されちまってゴネる気がなくなったっス。」
『ちなみに、何を要求しようとしてたんだ?』
「いや、怒らないで聞いて下さいね?
今、冒険者ギルドで盗賊追捕フェアが開催されてて…」
『怒るわッ!!!』
「ひょえっ。」
実は彼女達の言い分は理解出来る。
ただ、理解的な顔をしない事も年齢相応の仕事の一つだ。
=========================
『クレアからも厳しく注意してやってくれないか?』
「盗賊追捕自体は責められる事ではなくってよ?
憲法上は全ての国民に義務付けられているのだから。」
『あのなあ。
それは男の話だろ?
憲法にしたって、今みたいに職業婦人の概念が存在しなかった時代に制定されたものだ。
女性を危険に晒すなんて、社会通念上許される訳がない。』
「あら、歴史を紐解けば犯罪者逮捕に協力した女性の例は枚挙に暇が無いのよ?」
『その子達、旦那や息子と上手く行ってたのか?
未婚の者なら、ちゃんとした縁談に恵まれたのか?』
「…。」
『俺が言ってるのはそういう事だ。
女性にリスクを負わせるべきではない。
これは単に身体的な危険の話だけをしてるんじゃあない。
社会的な不利益も被らないように配慮するべきなんだよ。』
「貴方と一緒に居る時点で、既にリスクは負い終わってるけどね。」
…否めないな。
「まあ、いいわ。
私からも少しだけ貴方に賛同する論陣を張ってあげる。
勘違いしないでね?
日頃の宜でそうしてあげるだけよ?
貴方の陰徳へのご褒美として、恵んであげるだけ。
でも私、あの2人に賛成だから。
だってそうでしょ?
男の人だってそうしてるんだから、女にもガンガン淘汰圧を掛けて、弱いのや馬鹿なのは殺し尽くさなきゃならないのよ。
人類社会の更なる進歩の為にもね。」
…人間に痛みが無いなら、それが最適解なのだけどな。
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ドラン翁や地区長の集めた情報によれば、付近の独占的大農場であるアーランド農場において賃金の遅配が発生した事が盗賊騒動の主因らしい。
労働者達が州都に遅配を告訴したが、一方的に却下されてしまった。
理由は明白。
州議会は大地主ばかりで構成されているからである。
窮した労働者達は農場の穀物を奪って山中に逃走。
これに激怒した農場主は労働者達に賞金を掛けた。
これが盗賊団の正体である。
勿論、実情を知る人は概ね同情的なのだが、真実はソドムタウンにまで届かない。
メディアはいつだって広告費を支払う者の味方なのだ。
「ふーん。
ポールさんは盗賊討伐に反対なんだね?
じゃあ追捕クエストは中断する。」
エミリーはあっさりと盗賊追捕を放棄した。
最初からどちらでも良かったのだろう。
大抵の賞金稼ぎは、こういう軽いノリで人を斬る。
だから怖い。
「私は何をすればいの?
盗賊の味方もしちゃ駄目なんだよね?」
エミリーはいつもの微笑みを作ってはいるが、瞳の奥には軽い憎悪が浮かんでいる。
そりゃあそうだろう。
この女の腕なら1日に10人は確実に殺せる。
1人につき5万ウェンの賞金が掛かっているので、剣さえ振るえればすぐに小金持ちになれるのだ。
誰よりも才能に恵まれているのに、無能の俺が男であるというだけの理由で活用の邪魔をしている。
恋人でも夫でもない癖に。
「…アレも止めろ、コレも止めろ。
アンタ、私の何なの?」
初めて会った日の彼女のセリフをふと思い出す。
お互い、よく我慢していられるよな。
さて。
…頭ごなしに否定するからには対案も必要か。
『エミリー。
今から俺のやり方を見せるよ。
その上で、これからの事を決めて欲しい。』
「…うん、わかった。」
こんな女共の事はどうでもいいのだ。
ただ、俺を育ててくれた自由都市への答えを出しておきたい。
その上で、これからの事を決めて欲しい。
ドナルド・キーン、アンタに言ってるんだぜ?
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『頼むジミー、オマエも来てくれ。』
「出陣でゴザルか?」
『似たようなものかもな。』
厩にて、セルゲイ公爵から贈られたメンシェヴィキ号の前に立つ。
アネクドート同様、かなりの名馬である。
あくまで俺の勘だが、皇帝若しくはそれに準ずる人物からの下賜馬では無かったのだろうか?
尉官の乗騎にしてはあまりに立派過ぎる。
つまり、俺が乗っていると悪目立ちする。
「改めての感想でゴザルが。
見事な軍馬ですな。
これは封建国家の貴族が乗る馬格でゴザルよ。
…或いは大資本家が愛人に見せびらかすアクセサリー用ですな。」
『もっと安い馬を買おうか?』
「馬に見合った公職を得る方が早いのでは?
乗騎も役職も、成し遂げた仕事に応じて割り振られるのが、社会の本来ある姿なのですから。」
『…かもな。』
2人で周辺を軽く流す。
馬を繋ぐ度にチラチラ見られるので、不要な下馬は行わない事に決めた。
…想像以上に賞金稼ぎが多いな。
街道の沿いに何グループか、手配書を握りしめたチンピラの集団がいた。
みな、俺達の装備を見て露骨に嫌そうな顔をする。
商売敵だと思われたのだろうか?
「殺伐として参りましたな。」
『それほど地方はカネが回ってないんだろうな。』
「で?
どこに向かっているのでゴザルか?」
『盗賊の家族に話を聞いてみるよ。』
「どうやってコンタクトを取るのでゴザルか?
誰が盗賊の身内かもわからないのに。」
『わかるよ。
村々を回って、皆の表情を見ていれば
嫌でもわかる。
だって身内が盗賊扱いされているんだぜ?
それも極めて不当な理由で。
オマエだって見ればすぐにわかるよ。』
その会話から1時間もしない間に、ジミーの表情が変わる。
「ポール殿の仰る通りでゴザッタな。
一目でわかりました。
あそこにいる主婦の集まり。」
『ああ、恐らくは賞金を懸けられた者の母親か妻だろう。
痛ましいものだな。
なあ、ジミー。
盗賊問題は俺のやり方で解決する。
許しがたいかも知れないが、何も言わずに立ち会ってくれないか?』
「…ただ貴方の安全だけを図らせて下さい。」
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『皆さん、こんにちは。』
下馬して声を掛けた俺を主婦達は怯えた目で見る。
賞金稼ぎか治安局員とでも思われたのだろう。
この物々しい軍馬を見れば俺でもそういう警戒心を抱いたであろう。
『時間が無いので用件だけを申し上げます。
俺は《アーランド農園強盗事件》の解決の為に動いております。』
「「「…ッ!」」」
主婦たちが息を呑む。
『但し、盗賊として糾弾されるべきなのは給与遅配を行った側も同様であると考えております!』
ずっと言語化出来ずにいたドナルド・キーンへの、いや資本主義社会への不満点。
そして何より俺自身への不当な厚遇。
ようやく出すべき答えが見えて来た。
『ここに居る私の友人は学生時代に法学を専攻しておりまして、民法全般にも熟達しております。
頼み込んでここまで同行して頂きました。』
「…ブラウンと申します。
学生時代に法官資格を取得しております。」
主婦達の目にやや期待が宿る。
それはそうだろう。
法が適正に運用されていないからこそ、彼らは塗炭の苦しみを味わっているのだから。
『ブラウン常務。
給与の遅配は罪でしょうか?』
「労働基準法違反に該当します。
告発が真と認められた場合、事業者には1000万ウェン以下の罰金が科せられます。
また、遅延損害金も発生します。」
主婦たちが驚いた顔でざわめきながら口々に質問してくる。
そもそも地方の人間は教育を与えられていないから、自国の法すら知らないのである。
地方で進学出来るのは、それこそ地主だけだ。
「但し!
法治国家は自力救済禁止を原則とします。
給与の遅配があったからと言って!
法的根拠もなく私人が他者の財物を窃取するのは紛れもない犯罪です。」
50人は居るだろうか?
期待を持ちかけた賞金首の家族達が俯いて静まり返る。
『常務。
自力救済を行った者を救済する事は出来ませんか?』
「許す許さぬを判断していいのは司法機関のみです。
我々が是非を論ずること自体がナンセンスです。
ですので!
まずは司法機関に違法部分を訴えるべきでしょう。」
全ては予想通りだった。
この地の住民は州政府や地回り役人に哀願泣訴する事はあっても、正規のルートで司法機関に訴え出る事を1度もしなかった。
怠っていたのではない。
彼らは労働監督官や経済審問官の存在を知らなかったのである。
そもそも貧民の子は教育を受ける機会が乏しい。
文盲者も多い。
金持ちしか知らない法律、金持ちしか雇えない法律家。
何故か金持ちにだけは適用されない罰則規定。
この歪んだ現実が、法を貧民を圧殺する装置に変えてしまっているのである。
『ブラウン常務。
ソドムタウンでは争議が発生すると大抵の場合は法律家に相談するのでしたな。
最近は無料相談を請けている法律事務所も多いとか?』
ジミーの同窓のオリバー君(何度も俺の開いた飲み会に来てくれている。)が法律事務所を開業しており労働争議にも詳しいので、解決への仲介を頼むことを提案する。
「ポールソン専務も御存じでしょうが
オリバー・ピッツバーグ氏は事業者を顧客とした法律家ですよ?」
『一応、声をかけてみて下さい。
向こうが勝手にビジネスチャンスを見出すかも知れない。』
いや、彼はこちら側に付くよ。
それはジミーも俺もよく分かっている。
法律事務所の過当競争にオリバー君は相当苦しんでいるからだ。
パスタにアンチョビトッピングを加えようか我慢しようか葛藤するくらいには懐具合が苦しい。
だから、彼は必ず力を貸してくれる。
それに、以前からキーン派閥に入りたがっていたしな。
=========================
「それだけッスか?」
『それだけだよ。』
「あんな大きな馬に乗って行ったから
てっきり地主の館に殴り込みに行ってるのかと。
アタシら、万が一ポールさんが殺された時に備えて
敵討ちの準備をしてたとこッス。」
『暴力は良くない。』
「スンマセンッス。」
「でも、君達が暴力をチラつかせている事で、無用な暴力を避けられている側面もある。
いや、もっと率直に言おう。
君達の暴力によって俺は保護されている。
その事実から目を逸らすつもりはない。」
エミリーとレニーが、このテントに来て最初にやった事。
これ見よがしに逆茂木を立てて、ヒグマやレッドウルフの首を掲げた杭で周囲を囲った。
法律的には問題はないが、ビジュアル的に強烈である。
加えて、衛兵達が巡回する時刻に合わせて、わざと獣が苦悶の悲鳴を上げるような残忍な手法での屠殺を繰り返した。
(何人かの衛兵がノイローゼになってしまったらしい。)
その所為か、この付近がパトロール順路から外されてしまった。
この女達が蛮性を剥き出しにして以来、行商人も地回りヤクザも一切近づかなくなった。
俺から挨拶しても足早に逃げ出してしまう程である。
認めよう。
暴力は全てを解決する。
でなければ誰が盗賊などになるものか。
『感謝の言葉も述べておくよ。
俺が賢しげに非暴力を謳っていられるのも、結局君達の暴力に庇護されているからだ。
護衛料でも払おうか?』
「知らないんスか?
護衛料に限らず、パーティー内でサービス料の遣り取りをしちゃ駄目なんスよ。
揉め事の種になるから。」
確かにな。
そんな事を許せば、後輩イジメや喧嘩の原因になってしまうだろう。
『皆も聞いて欲しい。
大抵の場合、盗賊なんて存在しない。
もしも罰さなければならない盗賊が存在するとすれば。
税金だの地代だのの名目でカネを盗み続けている奴らだ。』
クレア・モローが溜息を吐く。
俺に見える位置で吐いたという事は、そこまで怒っていないのだろう。
「あのねー。
それ、中等学校くらいの年齢で言う事よ?」
『悪いな。
その年頃はモンスター模型を作るのに夢中だったよ。
クレアは違うのか?』
「そんなオタク臭い学生時代は過ごさなかったわね。
きっと中等学校くらいの年齢で言う事でも言ってたんじゃない?」
『それはそれは。』
「要は公平な法運用を目指したいのね?」
『そんな所だろうな。』
「時間、掛かるわよ?」
『そりゃあそうだろう。
迅速に片付いたら、そっちの方がおかしい。』
現実社会は絵巻物ではない。
ドラマも大立ち回りも不要だ。
俺はメッセンジャーにオリバー君宛の手紙を託すと、数日はゴロゴロして返事を待った。
途中、変わった事と言えばニックがやって来たくらいで、それ以外はエミリー&レニーが獲ってきた獲物をドランさんが干し肉にする作業を手伝っていた。
「…兄貴、久し振り。
ブラウンさんもお世話になっております。」
「ストラウド君、お疲れ様です。
どうかお気遣いなく。」
『ニック、ゴメンな
全然連絡出来てなくて。』
「いや、大まかな事はブラウンさんからの手紙で把握してあるんだ。」
引き合わせた日からずっと2人は連絡を取り合っていたらしい。
特に俺が戦場へ行き、そして消息を絶ってからは、極めて緊密に往還を交わしていたようだ。
「2人にまず詫びさせてくれ。
アーランド農園事件で4人を斬った。
兄貴が反農園側で動いていると知ってからは、すぐに取りやめたが…
言い訳にもならないな。
勿論、兄貴が咎めるなら取得した賞金を返還しても構わない。」
『いや、ニックの行動は合法だ。
憲法上も盗賊の追捕は推奨されている。
何の問題も無い。』
「でも兄貴に言わせればアーランド議員が盗賊なんだろう?」
『そこまで厳しい表現をするつもりはないが。
給与の遅配は明白な法律違反だ。』
「…。」
『治安局も酷いよな。
労働者が過失で法律に違反したらすぐに逮捕する癖に
議員や資本家が何をしてもヘラヘラ笑って媚びるだけだ。』
「…ゴメンな。
兄貴がそこまで考えてくれているなんて思わなくて。」
『約束しただろ?
労働者が食えるようにするって。』
「…。」
『俺さぁ。
まずは出来る範囲で実践して行きたいんだ。
ニックに口だけ野郎って軽蔑されたくないから。』
「…兄貴。
賞金稼ぎも、人間を斬りたくない奴の方が多数派なんだ。
…ここらで狩り易いモンスターが居れば
そっちを勧めてもいいか?
表のオラついたお姉さん達には随分脅されたけど。」
《アタシらの縄張りを荒らしたら
目玉抉って拷問してからヒグマの餌にしてやるッス
家族も楽に死ねるとは思わないことッス!》
と恫喝して回っている不心得者が近所に居るらしい。
一体誰だかまでは知らないが、後で厳しく注意しておこう。
結局、エミリー&レニーが主張する縄張り(滅茶苦茶身勝手な猟区主張だった。)を撤回させてから、近隣モンスターの駆除方法を聞き出し、それをクレアにイラスト化して貰って皆に配布した。
5人だけアーランド農園騒動から手を引く事を宣言してくれた賞金稼ぎが居たので、その者達には特に懇切に接した。
「アタシ、ポールさんにはとことんシノギを潰されてるッス。」
『ゴメンな。』
「ま、いいんじゃないっスか?
色々企んでるポールさんを見るのは楽しいし。
エミリーはどう?」
「ムカついてまーす♪」
「あー、そのうちポールさんエミリーに刺されますわ。」
『俺もそんな気がする。』
「ポールVSエミリー戦が発生したら中立を守る契約になってますんで。
そこは恨まないで下さいね。」
『レニーが俺を殺そうとする時も?』
「一応、あの女も中立を守る契約になってます。」
『仲良きことは美しきかな。』
「どうせ他にも心当たりがあるんでしょ?」
『?』
「ポールさんに恨みを持ってる女ッスよ。
言っておきますけど、アンタって100回刺されても文句言えない人っスからね?」
『元嫁、妹、某デフリダ…
その辺には刺されても不思議ではない。』
「おやおや、随分人気者じゃないっスか?
今、アタシの殺意ゲージが1ポイント上昇したッス。」
…どうしろと。
「安心して頂戴。
私は優しいから100ポイントまでは我慢してあげるから。」
クレア・モローも俺を殺す奴リストに追加、と。
=========================
こうしてニックもテントの住民になった。
と言っても彼は自分の野営用テントを持参して来たので、睡眠時以外はそちらで過ごしていた。
「何で男同士で同じマットに寝てるんスかー!
異常! 異常っスよ!?
マザコンの上にホモか、テメー!!!」
彼の野営用テントはそこそこ使い込んだ形跡があったので、自己申告以上の修羅場を潜っている事は予想がついた。
助かったのは、ニックが近隣の皮革業者と話を付けてくれたことである。
これでエミリー&レニーの現金収入が大幅に上がった。
臓物を乾燥させたものを売る話も一瞬出たのだが、ドラン翁に反対されて断念した。
プロでも臓物の扱いを失敗する事があるらしい。
俺は特に狩猟も皮の下処理も出来なかったので、見よう見まねで残渣処理を行った。
穴も掘ったし、内臓も焼いた。
特にスキルを取り戻したいとも思わなかった。
男が精勤すればチートなど無くても、喰っていくくらいは出来るのだ。
この地域を管轄する冒険者ギルドに備品を買いに行った際。
荒れ地の開墾依頼が多い事に気付いた。
恐らく街中でも同様の依頼書は貼ってあったのだろうが、都会っ子の俺の目には映っていなかったのだろう。
馬で軽く街道を流しても、やはり地方は荒れ地が多い。
気象的に人が手を入れないとすぐに植物が大地を覆うらしい。
こんな土地にクズまで生えたら、もう終わりである。
なので、慢性的に人手は不足しているにも関わらず、小作の給料が恐ろしく安い為、誰も農作業に従事したがらない。
大地主たちは「オマエラの代わりなんて幾らでも居る」と豪語して給与をまともに払わない。
幾らでもは居ないので労働者が必要数集まらず、農地は徐々に荒れる。
こういうアホらしいサイクルである。
『セット!』
「兄貴?」
『【清掃(クリーンアップ)】!!』
当然、何も起こらない。
「やっぱりスキルが使えなくなっちゃたのかい?」
『アイテムボックスと引き換えにな。』
「アイテムボックス!?
芝居とかに出て来る、超絶レアスキルじゃないか!?」
『女共が使うなって五月蠅いから縄帯で封印してある。
ボックス化する為に内臓を捨てたんだけどさ。
アイツら、それが気に入らないみたいでずっと怒ってるんだよ。』
「俺も怒るわッ!!!」
『…ゴメンって。』
「内臓捨ててどうするんだよ!!!」
『いや、あんまり使ってない内臓だから…
まあ、これくらいは大丈夫かな、と。』
「それ、絶対に姉さんには言うなよ!?」
『言わないよ。』
「気配すら感じさせるなよ?
でも、一晩でいいから抱いてやってくれ。」
『流石に服を脱いだら、俺の身体が異常なこと解ると思うよ?
ほら。』
「うおっ!!!
身体に取っ手付けてる奴初めて見た!!」
『持つところないと不便なんだよ。
開けて見せようか?』
「それ、やっぱり開くのか?」
『開ける時、結構流血が酷くて服が駄目になっちゃうんだ。』
「絶対に開けるなよ!!
一生鎖でロックしておけ!
後、姉さんを一晩抱いてやってくれ。
…たったの一度でいいんだ。」
「…鎖巻いた奴に抱かれたら、ナナリーさん大怪我しちゃうよ。」
世の中って中々上手くいかないよね。
話を戻そう。
スキルさえあれば荒れ地を農地に変える事も、恐らくは可能だったのだろうが
もう俺はスキルを使えない。
今、思えばちゃんとした使い方をしておくべきだったね。
反省反省。
半生を反省。
『ニック。』
「ん?」
『もしもスキルがまた使える様になったら。
荒れ地を農地に変えてみたいな。
一体どれだけの触媒が必要なのかは想像もつかないけど。』
「そっか。」
『出来るだけ貧しい地域で実践してみたい。
いや、そうするべきだったんだ。
俺は、自らが奇跡を授かった意義からあまりに目を背け過ぎていた。』
「兄貴。」
『ん?』
「もしもスキルがまた使える様になったら。
兄貴が望むがままに使え。
それがきっと正解なんだよ。」
=========================
アーランド農園強盗事件は嘘の様に迅速に解決した。
ピッツバーグ法律事務所による告発を受けて、治安局が軽い実態調査を行ったところ、アホみたいに余罪が噴出したからである。
冷静に考えれば当たり前なのだ。
給与の遅配を行った上に、自分が雇用していた労働者に賞金を懸けるような感性の持ち主がまともに生きている訳がないではないか。
脱税と… 公文書偽造、そして州議員の職権を悪用した自身への露骨な利益誘導。
信じ難いことに、それらの犯罪行為を隠蔽しようとする気配すら無かった。
「属州の地主はみんなやってますよ?
我々の伝統的な権利じゃないですか?」
取り調べを受けたアーランド議員は悪びれずにそう言ったらしい。
世論は特にアーランド議員を糾弾しない。
彼が地方州の人間だからである。
田舎者ならそれ位するだろう、ソドムタウンの住民はみなそう考えている。
非難の矛先は政治局や治安局に向いている。
田舎者の教育を怠り、我が国の国際社会における信頼を脅かした罪はあまりに重いからである。
当局も失態を自覚しているのであろう。
政治局と治安局の局長が連名で自らの2か月分の俸給を返上する声明を発表。
また、治安局の中でも地方州を統括する役職の、主席按察官が更迭された。
「何とお礼を申し上げて良いのか。」
息子の賞金手配が解除された母親から礼を述べられる。
『…当然の事をしたまでです。』
他に言いようも無かったので、そう答える。
国家が果たすべき当然の義務が履行されていない場合。
それを知った国民には、正当な職務遂行を促す義務がある。
特に高等教育を受けてしまった俺には、責務がある。
=========================
「兄貴。
俺が斬った者の遺族に、何か手当をするべきかな?」
『この辺の店で買い物をしてやればいいんじゃない?』
「そんな事じゃ罪滅ぼしにはならないよ。」
『ニックは罪を犯していないのだから、贖罪のしようがない。
もしも納得出来ないのなら。
これからは人死にが減るような生き方をすればいいんじゃないかな?
ニックは頭も切れるし腕も立つ。
そんな逸材が人命を大切にするような生き方をしたら
救われる者は多いと思うよ。』
「…。」
翌日。
ニック・ストラウドの馬具や武装が粗末な物に新調されていた。
周囲から慕われるだけあって仁義を通すのが早い。
一方で、散財した癖に食料品は決して買わなかった思慮の深さも評価出来る。
=========================
「お爺様からの伝言よ。」
『モロー会長から?』
「《君は何がしたいのか?》
だって。
ああ、勘違いしないでね。
お爺様もお父様も怒っている訳ではないの。
ただね?
理解出来ない存在は、それだけで脅威なのよ。」
『会長にも頭取にも何度か説明申し上げたのだがな。』
「不正が許せないんでしょ?」
『ああ、そういう趣旨の説明を以前させて貰った。
その時は御二方とも頷いてはくれていた。
…俺は子供なんだよ。』
「そうね。
昔の貴方は子供だったから
どこにでも居る幼稚な皮肉屋で済んでいたわ。」
返す言葉もないな。
「ねえ、自覚ある?
実践されるなら、その皮肉は叛逆なのよ?」
『否めないな。』
「ねえ、ポール・ポールソン。
貴方は何を成したいの?」
『清掃(クリーンアップ)。』
クレアはいつもの何を考えているか分からない冷たい目で俺を見つめている。
仕方ないだろう?
世の中があまりに穢れ過ぎているのだ。
その中でも我が祖国、自由都市は酷い。
自由と堕落を履き違えている。
特に、資本を法律に優越させてしまうこの風潮。
正気の沙汰ではない。
何でもかんでもカネカネカネ。
全ての是非が資産の多寡で決定されるから、人々は公益よりも蓄財を優先する。
まるでカネを神の様に拝み、貧民を蔑み金持ちに諂うこの悪弊。
今、正さねばこの国は必ずやその腐った精神によって自戒するだろう。
金銭は社会を運営する為の1インフラであり、支配者でも何でもないのに。
現在の我が国は建国時の崇高な理念を忘れ、国名の由来となった自由主義が拝金主義に追いやられてしまっている。
今の我が国であれば、それが例え相手が悪魔であってもカネさえ持っていれば嬉々として服従してしまうだろう。
「いつか貴方の首を絞めるわよ、と警告したい所だけど。
破滅願望の強い貴方には逆効果ね。」
『俺は何者の破滅も望んじゃいない。
ただ、犯した罪に対して罰が厳密に執行されないような歪んだ社会は
遠くない未来に滅亡する、と言っているだけなんだよ。』
「…可哀想な人。」
その歪んだ社会の中で俺は恩恵を受ける側に立ち続けて来た。
何の自覚も無いまま。
ヤクザ者の父、亡命貴族の母。
正しくない手段で蓄えられた資産を受け継ぎ、敵国の名跡によって敬われて来た。
これが、生まれ落ちてからずっと俺が俺を許せなかった理由である。
最近ようやく、これを言語化出来るようになった。
つまり結局、盗賊は俺だったのだ。
『…却下で。』
「まだ何も言ってないじゃないッスか!」
『どうせ俺が反対するような話なんだろ?
言っとくけど、俺は女の子が危険な真似をするのは全部反対だから。』
「今、男女平等が流行してるんスよ!
芝居だって絵巻物だって、そういう内容ばっかりじゃないっスか!」
『ああ、それ産団連のプロパガンダだから。』
「え!?」
『重労働や危険作業に女性を従事させる為の世論工作だよ。
…昔は女性の鉱山労働や冒険者登録なんて禁止されていたのに。
今じゃすっかり定着してしまった。』
「マジッスか?」
『疑うならクレアに聞いてみな。
アイツ、そういう話に詳しいから。』
クレアは昔から女子の労働環境について思い悩んでいたし、自腹を切って社会実験も行っていた。
なので、女子労働の実態には一番詳しい。
「で、でも女の子的には働ける職種が増えるって助かるんスよ。」
『選択肢が増える事は悪くないと思うよ?
でも、何も危険作業に携わらなくても。』
「優位性を活用したいんスよ!
美人な子が劇団に入ったり、パパ活するみたいなもんです!
アタシが腕っぷしを使わなきゃ、ブスの生まれ損じゃないッスか!」
『俺はレニーの顔、嫌いじゃないけどな。』
「地元でブスブス言われて育って来たんスよ!」
『田舎は教育が行き届いてないから、多様な価値基準で他者を評価出来る人材が少ないんじゃないか?
いずれにせよ、俺はレニーを高く評価してる。
勿論、異性としても。』
「…ぐぬぬ、多幸感洪水に脳味噌が押し流されちまってゴネる気がなくなったっス。」
『ちなみに、何を要求しようとしてたんだ?』
「いや、怒らないで聞いて下さいね?
今、冒険者ギルドで盗賊追捕フェアが開催されてて…」
『怒るわッ!!!』
「ひょえっ。」
実は彼女達の言い分は理解出来る。
ただ、理解的な顔をしない事も年齢相応の仕事の一つだ。
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『クレアからも厳しく注意してやってくれないか?』
「盗賊追捕自体は責められる事ではなくってよ?
憲法上は全ての国民に義務付けられているのだから。」
『あのなあ。
それは男の話だろ?
憲法にしたって、今みたいに職業婦人の概念が存在しなかった時代に制定されたものだ。
女性を危険に晒すなんて、社会通念上許される訳がない。』
「あら、歴史を紐解けば犯罪者逮捕に協力した女性の例は枚挙に暇が無いのよ?」
『その子達、旦那や息子と上手く行ってたのか?
未婚の者なら、ちゃんとした縁談に恵まれたのか?』
「…。」
『俺が言ってるのはそういう事だ。
女性にリスクを負わせるべきではない。
これは単に身体的な危険の話だけをしてるんじゃあない。
社会的な不利益も被らないように配慮するべきなんだよ。』
「貴方と一緒に居る時点で、既にリスクは負い終わってるけどね。」
…否めないな。
「まあ、いいわ。
私からも少しだけ貴方に賛同する論陣を張ってあげる。
勘違いしないでね?
日頃の宜でそうしてあげるだけよ?
貴方の陰徳へのご褒美として、恵んであげるだけ。
でも私、あの2人に賛成だから。
だってそうでしょ?
男の人だってそうしてるんだから、女にもガンガン淘汰圧を掛けて、弱いのや馬鹿なのは殺し尽くさなきゃならないのよ。
人類社会の更なる進歩の為にもね。」
…人間に痛みが無いなら、それが最適解なのだけどな。
=========================
ドラン翁や地区長の集めた情報によれば、付近の独占的大農場であるアーランド農場において賃金の遅配が発生した事が盗賊騒動の主因らしい。
労働者達が州都に遅配を告訴したが、一方的に却下されてしまった。
理由は明白。
州議会は大地主ばかりで構成されているからである。
窮した労働者達は農場の穀物を奪って山中に逃走。
これに激怒した農場主は労働者達に賞金を掛けた。
これが盗賊団の正体である。
勿論、実情を知る人は概ね同情的なのだが、真実はソドムタウンにまで届かない。
メディアはいつだって広告費を支払う者の味方なのだ。
「ふーん。
ポールさんは盗賊討伐に反対なんだね?
じゃあ追捕クエストは中断する。」
エミリーはあっさりと盗賊追捕を放棄した。
最初からどちらでも良かったのだろう。
大抵の賞金稼ぎは、こういう軽いノリで人を斬る。
だから怖い。
「私は何をすればいの?
盗賊の味方もしちゃ駄目なんだよね?」
エミリーはいつもの微笑みを作ってはいるが、瞳の奥には軽い憎悪が浮かんでいる。
そりゃあそうだろう。
この女の腕なら1日に10人は確実に殺せる。
1人につき5万ウェンの賞金が掛かっているので、剣さえ振るえればすぐに小金持ちになれるのだ。
誰よりも才能に恵まれているのに、無能の俺が男であるというだけの理由で活用の邪魔をしている。
恋人でも夫でもない癖に。
「…アレも止めろ、コレも止めろ。
アンタ、私の何なの?」
初めて会った日の彼女のセリフをふと思い出す。
お互い、よく我慢していられるよな。
さて。
…頭ごなしに否定するからには対案も必要か。
『エミリー。
今から俺のやり方を見せるよ。
その上で、これからの事を決めて欲しい。』
「…うん、わかった。」
こんな女共の事はどうでもいいのだ。
ただ、俺を育ててくれた自由都市への答えを出しておきたい。
その上で、これからの事を決めて欲しい。
ドナルド・キーン、アンタに言ってるんだぜ?
=========================
『頼むジミー、オマエも来てくれ。』
「出陣でゴザルか?」
『似たようなものかもな。』
厩にて、セルゲイ公爵から贈られたメンシェヴィキ号の前に立つ。
アネクドート同様、かなりの名馬である。
あくまで俺の勘だが、皇帝若しくはそれに準ずる人物からの下賜馬では無かったのだろうか?
尉官の乗騎にしてはあまりに立派過ぎる。
つまり、俺が乗っていると悪目立ちする。
「改めての感想でゴザルが。
見事な軍馬ですな。
これは封建国家の貴族が乗る馬格でゴザルよ。
…或いは大資本家が愛人に見せびらかすアクセサリー用ですな。」
『もっと安い馬を買おうか?』
「馬に見合った公職を得る方が早いのでは?
乗騎も役職も、成し遂げた仕事に応じて割り振られるのが、社会の本来ある姿なのですから。」
『…かもな。』
2人で周辺を軽く流す。
馬を繋ぐ度にチラチラ見られるので、不要な下馬は行わない事に決めた。
…想像以上に賞金稼ぎが多いな。
街道の沿いに何グループか、手配書を握りしめたチンピラの集団がいた。
みな、俺達の装備を見て露骨に嫌そうな顔をする。
商売敵だと思われたのだろうか?
「殺伐として参りましたな。」
『それほど地方はカネが回ってないんだろうな。』
「で?
どこに向かっているのでゴザルか?」
『盗賊の家族に話を聞いてみるよ。』
「どうやってコンタクトを取るのでゴザルか?
誰が盗賊の身内かもわからないのに。」
『わかるよ。
村々を回って、皆の表情を見ていれば
嫌でもわかる。
だって身内が盗賊扱いされているんだぜ?
それも極めて不当な理由で。
オマエだって見ればすぐにわかるよ。』
その会話から1時間もしない間に、ジミーの表情が変わる。
「ポール殿の仰る通りでゴザッタな。
一目でわかりました。
あそこにいる主婦の集まり。」
『ああ、恐らくは賞金を懸けられた者の母親か妻だろう。
痛ましいものだな。
なあ、ジミー。
盗賊問題は俺のやり方で解決する。
許しがたいかも知れないが、何も言わずに立ち会ってくれないか?』
「…ただ貴方の安全だけを図らせて下さい。」
=========================
『皆さん、こんにちは。』
下馬して声を掛けた俺を主婦達は怯えた目で見る。
賞金稼ぎか治安局員とでも思われたのだろう。
この物々しい軍馬を見れば俺でもそういう警戒心を抱いたであろう。
『時間が無いので用件だけを申し上げます。
俺は《アーランド農園強盗事件》の解決の為に動いております。』
「「「…ッ!」」」
主婦たちが息を呑む。
『但し、盗賊として糾弾されるべきなのは給与遅配を行った側も同様であると考えております!』
ずっと言語化出来ずにいたドナルド・キーンへの、いや資本主義社会への不満点。
そして何より俺自身への不当な厚遇。
ようやく出すべき答えが見えて来た。
『ここに居る私の友人は学生時代に法学を専攻しておりまして、民法全般にも熟達しております。
頼み込んでここまで同行して頂きました。』
「…ブラウンと申します。
学生時代に法官資格を取得しております。」
主婦達の目にやや期待が宿る。
それはそうだろう。
法が適正に運用されていないからこそ、彼らは塗炭の苦しみを味わっているのだから。
『ブラウン常務。
給与の遅配は罪でしょうか?』
「労働基準法違反に該当します。
告発が真と認められた場合、事業者には1000万ウェン以下の罰金が科せられます。
また、遅延損害金も発生します。」
主婦たちが驚いた顔でざわめきながら口々に質問してくる。
そもそも地方の人間は教育を与えられていないから、自国の法すら知らないのである。
地方で進学出来るのは、それこそ地主だけだ。
「但し!
法治国家は自力救済禁止を原則とします。
給与の遅配があったからと言って!
法的根拠もなく私人が他者の財物を窃取するのは紛れもない犯罪です。」
50人は居るだろうか?
期待を持ちかけた賞金首の家族達が俯いて静まり返る。
『常務。
自力救済を行った者を救済する事は出来ませんか?』
「許す許さぬを判断していいのは司法機関のみです。
我々が是非を論ずること自体がナンセンスです。
ですので!
まずは司法機関に違法部分を訴えるべきでしょう。」
全ては予想通りだった。
この地の住民は州政府や地回り役人に哀願泣訴する事はあっても、正規のルートで司法機関に訴え出る事を1度もしなかった。
怠っていたのではない。
彼らは労働監督官や経済審問官の存在を知らなかったのである。
そもそも貧民の子は教育を受ける機会が乏しい。
文盲者も多い。
金持ちしか知らない法律、金持ちしか雇えない法律家。
何故か金持ちにだけは適用されない罰則規定。
この歪んだ現実が、法を貧民を圧殺する装置に変えてしまっているのである。
『ブラウン常務。
ソドムタウンでは争議が発生すると大抵の場合は法律家に相談するのでしたな。
最近は無料相談を請けている法律事務所も多いとか?』
ジミーの同窓のオリバー君(何度も俺の開いた飲み会に来てくれている。)が法律事務所を開業しており労働争議にも詳しいので、解決への仲介を頼むことを提案する。
「ポールソン専務も御存じでしょうが
オリバー・ピッツバーグ氏は事業者を顧客とした法律家ですよ?」
『一応、声をかけてみて下さい。
向こうが勝手にビジネスチャンスを見出すかも知れない。』
いや、彼はこちら側に付くよ。
それはジミーも俺もよく分かっている。
法律事務所の過当競争にオリバー君は相当苦しんでいるからだ。
パスタにアンチョビトッピングを加えようか我慢しようか葛藤するくらいには懐具合が苦しい。
だから、彼は必ず力を貸してくれる。
それに、以前からキーン派閥に入りたがっていたしな。
=========================
「それだけッスか?」
『それだけだよ。』
「あんな大きな馬に乗って行ったから
てっきり地主の館に殴り込みに行ってるのかと。
アタシら、万が一ポールさんが殺された時に備えて
敵討ちの準備をしてたとこッス。」
『暴力は良くない。』
「スンマセンッス。」
「でも、君達が暴力をチラつかせている事で、無用な暴力を避けられている側面もある。
いや、もっと率直に言おう。
君達の暴力によって俺は保護されている。
その事実から目を逸らすつもりはない。」
エミリーとレニーが、このテントに来て最初にやった事。
これ見よがしに逆茂木を立てて、ヒグマやレッドウルフの首を掲げた杭で周囲を囲った。
法律的には問題はないが、ビジュアル的に強烈である。
加えて、衛兵達が巡回する時刻に合わせて、わざと獣が苦悶の悲鳴を上げるような残忍な手法での屠殺を繰り返した。
(何人かの衛兵がノイローゼになってしまったらしい。)
その所為か、この付近がパトロール順路から外されてしまった。
この女達が蛮性を剥き出しにして以来、行商人も地回りヤクザも一切近づかなくなった。
俺から挨拶しても足早に逃げ出してしまう程である。
認めよう。
暴力は全てを解決する。
でなければ誰が盗賊などになるものか。
『感謝の言葉も述べておくよ。
俺が賢しげに非暴力を謳っていられるのも、結局君達の暴力に庇護されているからだ。
護衛料でも払おうか?』
「知らないんスか?
護衛料に限らず、パーティー内でサービス料の遣り取りをしちゃ駄目なんスよ。
揉め事の種になるから。」
確かにな。
そんな事を許せば、後輩イジメや喧嘩の原因になってしまうだろう。
『皆も聞いて欲しい。
大抵の場合、盗賊なんて存在しない。
もしも罰さなければならない盗賊が存在するとすれば。
税金だの地代だのの名目でカネを盗み続けている奴らだ。』
クレア・モローが溜息を吐く。
俺に見える位置で吐いたという事は、そこまで怒っていないのだろう。
「あのねー。
それ、中等学校くらいの年齢で言う事よ?」
『悪いな。
その年頃はモンスター模型を作るのに夢中だったよ。
クレアは違うのか?』
「そんなオタク臭い学生時代は過ごさなかったわね。
きっと中等学校くらいの年齢で言う事でも言ってたんじゃない?」
『それはそれは。』
「要は公平な法運用を目指したいのね?」
『そんな所だろうな。』
「時間、掛かるわよ?」
『そりゃあそうだろう。
迅速に片付いたら、そっちの方がおかしい。』
現実社会は絵巻物ではない。
ドラマも大立ち回りも不要だ。
俺はメッセンジャーにオリバー君宛の手紙を託すと、数日はゴロゴロして返事を待った。
途中、変わった事と言えばニックがやって来たくらいで、それ以外はエミリー&レニーが獲ってきた獲物をドランさんが干し肉にする作業を手伝っていた。
「…兄貴、久し振り。
ブラウンさんもお世話になっております。」
「ストラウド君、お疲れ様です。
どうかお気遣いなく。」
『ニック、ゴメンな
全然連絡出来てなくて。』
「いや、大まかな事はブラウンさんからの手紙で把握してあるんだ。」
引き合わせた日からずっと2人は連絡を取り合っていたらしい。
特に俺が戦場へ行き、そして消息を絶ってからは、極めて緊密に往還を交わしていたようだ。
「2人にまず詫びさせてくれ。
アーランド農園事件で4人を斬った。
兄貴が反農園側で動いていると知ってからは、すぐに取りやめたが…
言い訳にもならないな。
勿論、兄貴が咎めるなら取得した賞金を返還しても構わない。」
『いや、ニックの行動は合法だ。
憲法上も盗賊の追捕は推奨されている。
何の問題も無い。』
「でも兄貴に言わせればアーランド議員が盗賊なんだろう?」
『そこまで厳しい表現をするつもりはないが。
給与の遅配は明白な法律違反だ。』
「…。」
『治安局も酷いよな。
労働者が過失で法律に違反したらすぐに逮捕する癖に
議員や資本家が何をしてもヘラヘラ笑って媚びるだけだ。』
「…ゴメンな。
兄貴がそこまで考えてくれているなんて思わなくて。」
『約束しただろ?
労働者が食えるようにするって。』
「…。」
『俺さぁ。
まずは出来る範囲で実践して行きたいんだ。
ニックに口だけ野郎って軽蔑されたくないから。』
「…兄貴。
賞金稼ぎも、人間を斬りたくない奴の方が多数派なんだ。
…ここらで狩り易いモンスターが居れば
そっちを勧めてもいいか?
表のオラついたお姉さん達には随分脅されたけど。」
《アタシらの縄張りを荒らしたら
目玉抉って拷問してからヒグマの餌にしてやるッス
家族も楽に死ねるとは思わないことッス!》
と恫喝して回っている不心得者が近所に居るらしい。
一体誰だかまでは知らないが、後で厳しく注意しておこう。
結局、エミリー&レニーが主張する縄張り(滅茶苦茶身勝手な猟区主張だった。)を撤回させてから、近隣モンスターの駆除方法を聞き出し、それをクレアにイラスト化して貰って皆に配布した。
5人だけアーランド農園騒動から手を引く事を宣言してくれた賞金稼ぎが居たので、その者達には特に懇切に接した。
「アタシ、ポールさんにはとことんシノギを潰されてるッス。」
『ゴメンな。』
「ま、いいんじゃないっスか?
色々企んでるポールさんを見るのは楽しいし。
エミリーはどう?」
「ムカついてまーす♪」
「あー、そのうちポールさんエミリーに刺されますわ。」
『俺もそんな気がする。』
「ポールVSエミリー戦が発生したら中立を守る契約になってますんで。
そこは恨まないで下さいね。」
『レニーが俺を殺そうとする時も?』
「一応、あの女も中立を守る契約になってます。」
『仲良きことは美しきかな。』
「どうせ他にも心当たりがあるんでしょ?」
『?』
「ポールさんに恨みを持ってる女ッスよ。
言っておきますけど、アンタって100回刺されても文句言えない人っスからね?」
『元嫁、妹、某デフリダ…
その辺には刺されても不思議ではない。』
「おやおや、随分人気者じゃないっスか?
今、アタシの殺意ゲージが1ポイント上昇したッス。」
…どうしろと。
「安心して頂戴。
私は優しいから100ポイントまでは我慢してあげるから。」
クレア・モローも俺を殺す奴リストに追加、と。
=========================
こうしてニックもテントの住民になった。
と言っても彼は自分の野営用テントを持参して来たので、睡眠時以外はそちらで過ごしていた。
「何で男同士で同じマットに寝てるんスかー!
異常! 異常っスよ!?
マザコンの上にホモか、テメー!!!」
彼の野営用テントはそこそこ使い込んだ形跡があったので、自己申告以上の修羅場を潜っている事は予想がついた。
助かったのは、ニックが近隣の皮革業者と話を付けてくれたことである。
これでエミリー&レニーの現金収入が大幅に上がった。
臓物を乾燥させたものを売る話も一瞬出たのだが、ドラン翁に反対されて断念した。
プロでも臓物の扱いを失敗する事があるらしい。
俺は特に狩猟も皮の下処理も出来なかったので、見よう見まねで残渣処理を行った。
穴も掘ったし、内臓も焼いた。
特にスキルを取り戻したいとも思わなかった。
男が精勤すればチートなど無くても、喰っていくくらいは出来るのだ。
この地域を管轄する冒険者ギルドに備品を買いに行った際。
荒れ地の開墾依頼が多い事に気付いた。
恐らく街中でも同様の依頼書は貼ってあったのだろうが、都会っ子の俺の目には映っていなかったのだろう。
馬で軽く街道を流しても、やはり地方は荒れ地が多い。
気象的に人が手を入れないとすぐに植物が大地を覆うらしい。
こんな土地にクズまで生えたら、もう終わりである。
なので、慢性的に人手は不足しているにも関わらず、小作の給料が恐ろしく安い為、誰も農作業に従事したがらない。
大地主たちは「オマエラの代わりなんて幾らでも居る」と豪語して給与をまともに払わない。
幾らでもは居ないので労働者が必要数集まらず、農地は徐々に荒れる。
こういうアホらしいサイクルである。
『セット!』
「兄貴?」
『【清掃(クリーンアップ)】!!』
当然、何も起こらない。
「やっぱりスキルが使えなくなっちゃたのかい?」
『アイテムボックスと引き換えにな。』
「アイテムボックス!?
芝居とかに出て来る、超絶レアスキルじゃないか!?」
『女共が使うなって五月蠅いから縄帯で封印してある。
ボックス化する為に内臓を捨てたんだけどさ。
アイツら、それが気に入らないみたいでずっと怒ってるんだよ。』
「俺も怒るわッ!!!」
『…ゴメンって。』
「内臓捨ててどうするんだよ!!!」
『いや、あんまり使ってない内臓だから…
まあ、これくらいは大丈夫かな、と。』
「それ、絶対に姉さんには言うなよ!?」
『言わないよ。』
「気配すら感じさせるなよ?
でも、一晩でいいから抱いてやってくれ。」
『流石に服を脱いだら、俺の身体が異常なこと解ると思うよ?
ほら。』
「うおっ!!!
身体に取っ手付けてる奴初めて見た!!」
『持つところないと不便なんだよ。
開けて見せようか?』
「それ、やっぱり開くのか?」
『開ける時、結構流血が酷くて服が駄目になっちゃうんだ。』
「絶対に開けるなよ!!
一生鎖でロックしておけ!
後、姉さんを一晩抱いてやってくれ。
…たったの一度でいいんだ。」
「…鎖巻いた奴に抱かれたら、ナナリーさん大怪我しちゃうよ。」
世の中って中々上手くいかないよね。
話を戻そう。
スキルさえあれば荒れ地を農地に変える事も、恐らくは可能だったのだろうが
もう俺はスキルを使えない。
今、思えばちゃんとした使い方をしておくべきだったね。
反省反省。
半生を反省。
『ニック。』
「ん?」
『もしもスキルがまた使える様になったら。
荒れ地を農地に変えてみたいな。
一体どれだけの触媒が必要なのかは想像もつかないけど。』
「そっか。」
『出来るだけ貧しい地域で実践してみたい。
いや、そうするべきだったんだ。
俺は、自らが奇跡を授かった意義からあまりに目を背け過ぎていた。』
「兄貴。」
『ん?』
「もしもスキルがまた使える様になったら。
兄貴が望むがままに使え。
それがきっと正解なんだよ。」
=========================
アーランド農園強盗事件は嘘の様に迅速に解決した。
ピッツバーグ法律事務所による告発を受けて、治安局が軽い実態調査を行ったところ、アホみたいに余罪が噴出したからである。
冷静に考えれば当たり前なのだ。
給与の遅配を行った上に、自分が雇用していた労働者に賞金を懸けるような感性の持ち主がまともに生きている訳がないではないか。
脱税と… 公文書偽造、そして州議員の職権を悪用した自身への露骨な利益誘導。
信じ難いことに、それらの犯罪行為を隠蔽しようとする気配すら無かった。
「属州の地主はみんなやってますよ?
我々の伝統的な権利じゃないですか?」
取り調べを受けたアーランド議員は悪びれずにそう言ったらしい。
世論は特にアーランド議員を糾弾しない。
彼が地方州の人間だからである。
田舎者ならそれ位するだろう、ソドムタウンの住民はみなそう考えている。
非難の矛先は政治局や治安局に向いている。
田舎者の教育を怠り、我が国の国際社会における信頼を脅かした罪はあまりに重いからである。
当局も失態を自覚しているのであろう。
政治局と治安局の局長が連名で自らの2か月分の俸給を返上する声明を発表。
また、治安局の中でも地方州を統括する役職の、主席按察官が更迭された。
「何とお礼を申し上げて良いのか。」
息子の賞金手配が解除された母親から礼を述べられる。
『…当然の事をしたまでです。』
他に言いようも無かったので、そう答える。
国家が果たすべき当然の義務が履行されていない場合。
それを知った国民には、正当な職務遂行を促す義務がある。
特に高等教育を受けてしまった俺には、責務がある。
=========================
「兄貴。
俺が斬った者の遺族に、何か手当をするべきかな?」
『この辺の店で買い物をしてやればいいんじゃない?』
「そんな事じゃ罪滅ぼしにはならないよ。」
『ニックは罪を犯していないのだから、贖罪のしようがない。
もしも納得出来ないのなら。
これからは人死にが減るような生き方をすればいいんじゃないかな?
ニックは頭も切れるし腕も立つ。
そんな逸材が人命を大切にするような生き方をしたら
救われる者は多いと思うよ。』
「…。」
翌日。
ニック・ストラウドの馬具や武装が粗末な物に新調されていた。
周囲から慕われるだけあって仁義を通すのが早い。
一方で、散財した癖に食料品は決して買わなかった思慮の深さも評価出来る。
=========================
「お爺様からの伝言よ。」
『モロー会長から?』
「《君は何がしたいのか?》
だって。
ああ、勘違いしないでね。
お爺様もお父様も怒っている訳ではないの。
ただね?
理解出来ない存在は、それだけで脅威なのよ。」
『会長にも頭取にも何度か説明申し上げたのだがな。』
「不正が許せないんでしょ?」
『ああ、そういう趣旨の説明を以前させて貰った。
その時は御二方とも頷いてはくれていた。
…俺は子供なんだよ。』
「そうね。
昔の貴方は子供だったから
どこにでも居る幼稚な皮肉屋で済んでいたわ。」
返す言葉もないな。
「ねえ、自覚ある?
実践されるなら、その皮肉は叛逆なのよ?」
『否めないな。』
「ねえ、ポール・ポールソン。
貴方は何を成したいの?」
『清掃(クリーンアップ)。』
クレアはいつもの何を考えているか分からない冷たい目で俺を見つめている。
仕方ないだろう?
世の中があまりに穢れ過ぎているのだ。
その中でも我が祖国、自由都市は酷い。
自由と堕落を履き違えている。
特に、資本を法律に優越させてしまうこの風潮。
正気の沙汰ではない。
何でもかんでもカネカネカネ。
全ての是非が資産の多寡で決定されるから、人々は公益よりも蓄財を優先する。
まるでカネを神の様に拝み、貧民を蔑み金持ちに諂うこの悪弊。
今、正さねばこの国は必ずやその腐った精神によって自戒するだろう。
金銭は社会を運営する為の1インフラであり、支配者でも何でもないのに。
現在の我が国は建国時の崇高な理念を忘れ、国名の由来となった自由主義が拝金主義に追いやられてしまっている。
今の我が国であれば、それが例え相手が悪魔であってもカネさえ持っていれば嬉々として服従してしまうだろう。
「いつか貴方の首を絞めるわよ、と警告したい所だけど。
破滅願望の強い貴方には逆効果ね。」
『俺は何者の破滅も望んじゃいない。
ただ、犯した罪に対して罰が厳密に執行されないような歪んだ社会は
遠くない未来に滅亡する、と言っているだけなんだよ。』
「…可哀想な人。」
その歪んだ社会の中で俺は恩恵を受ける側に立ち続けて来た。
何の自覚も無いまま。
ヤクザ者の父、亡命貴族の母。
正しくない手段で蓄えられた資産を受け継ぎ、敵国の名跡によって敬われて来た。
これが、生まれ落ちてからずっと俺が俺を許せなかった理由である。
最近ようやく、これを言語化出来るようになった。
つまり結局、盗賊は俺だったのだ。
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剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
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もはや文字ですら無かった
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本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
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リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
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