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【転移112日目】 所持金1585京3688兆7250億9294万ウェン 「冥王星やら海王星やらに行きたい訳ではない。」
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エルフ族は極めて傲岸で偏屈、人間種を蔑むこと甚だしく魔族に対しては《滅ぼすべき害悪》と公言しているらしかった。
俺もかなり身構えていたのだが、全員妙に人当たりが良い。
ゲルの脇を固めているゴブリン達にも笑顔でハグを求めていた。
勿論、売れ残っていたエルフ債を俺が購入したことが原因なのだろうが…
それにしても聞いていた印象と随分異なるな。
『…あの、貴種族の慣例で魔族とは交流しないと伺っております。
無理をなさらなくて結構ですからね?』
「いえいえいえ!!
誤解! それは大いなる誤解ですよ!
我々エルフ族は魔族の皆様とも友誼を結びたいと思っておりました!
ここ数年は魔王コリンズ様の話題で持ち切りでした位です!」
…俺がこの世界に来たのってつい3ヶ月前なんだけどな。
こっそり左右をチラ見するも、四天王達が「もうそういう事にしておきましょう」というアイコンタクトを送ってくる。
『ああ、そうだったのですね。
それは恐縮です。』
その後もエルフ達は宝石やら秘薬やら種族の美女やらをどうにかして献上しようとしてくる。
前者2つは兎も角、美女は本当に勘弁してくれ。
帰還直前に話をこじらせたくないんだ。
「魔王様…
その、例の件は考えて頂けましたでしょうか?」
『れ、例の件と申しますと?
どの件でしょうか?』
エルフからの書簡には様々な(図々しい)要求が羅列されており、彼らがどれを指しているのかわからない。
「ほら!
属国ですよ属国。
我々を魔界の保護国にして頂ける話はどうなったでしょうか?」
『え! あれ外交儀礼的な文言では無かったのですか?』
「いやだなあ、魔王様。
本気ですよぉ!
エルフ的には全会一致で可決されてますよぉ。
…何とか傘下に入れて頂く事は出来ませんでしょうか?
我ら種族一同、忠勤の限りを尽くしますので。」
『あ、いや。
そんな… 一方的に可決されましても。』
要は…
魔界が王国・共和国の侵略に苦しんでいたように、エルフ族も合衆国からの圧迫に相当苦しんでいる。
俺が魔王になった瞬間に魔界への圧迫が消えた事実は早くも全世界に知れ渡っており、エルフ族も何とかこの流れに乗りたいのであろう。
…ゴメン。
俺、地球に帰るって言い続けてるんだけど。
皆、それは知ってるんだよな?
==========================
その後、しばらくエルフ族のプレゼンが続いた。
秘宝珍品の類を無理やり手渡されそうになったが、周囲が自然にブロックしてくれる。
自由都市の首脳部(ついでに魔族有志)も立ち会っているので、急ぎ意見調整。
《合衆国にエルフ族領への侵攻を取りやめるように強く申し入れる。》
との無難な回答を出す事になった。
当然、エルフ族は食い下がる。
「いや! そこを何とか!
もう一声、もう一声頂けませんか!
あ、そうだ!
今ここでエルフ族長である私が魔王様の臣下になるという案は如何でしょうか!」
『いえいえ。
それはもう保護国と同義じゃないですか。
この場で決められることじゃないですよ。』
…そうなんだ。
普通は他国の保護国化なんて慎重に時間を掛けてその是非を国家挙げて討議すべき案件であり、簡単に決めて良いことではない。
だからこそ形振り構わず俺の身柄を拉致し、強引に魔王号を押し付けた魔界の連中の蛮勇は…
残念ながら正しい判断であった。
彼らは博打に勝ったのだ。
エルフ族は2匹目のドジョウを狙っているが、どうなんだろう。
俺も含めた全員がピット会長を見る。
流石に現職の神様だけあって、似た場面も経験しているのだろう。
「では、コリンズさん。
こうしましょう。
《合衆国がエルフ領から撤退しない限り、今後の公債購入はなし。
現在保有分も手放さざるを得ない。》
まずはこの旨を合衆国側に打診するのです。
ああ、勿論私も歩調を合わせます。」
『宜しいのですか?』
「だってコリンズさんの目標を達成する為にはエルフ族の協力が必要なんでしょう?
それ位は許されるんじゃないですか?
コリンズさんのおカネですし。」
『…申し訳ありません。』
「いえいえ。
自由都市の安全保障上、領域国家の巨大化は防ぐに越した事はありませんからね。
恐らく、この提案を合衆国側は呑むでしょう。」
エルフ側はここら辺を落し所と想定していたのだろう。
その後はとくに食い下がる事もなく、実務的な話題に移れた。
==========================
あくまでエルフの解説だが。
魔法とは召喚行為そのものらしい。
この世界とは別の世界からエネルギーを召喚する能力。
それが魔法(というよりスキル全般)であるとのこと。
例えばドナルドの水魔法。
彼はいつも何もない所から水を出現させているのだが、これは異世界から水という物質を召喚しているらしい。
王都で出逢ったアランの火魔法も同様。
異なる世界から火を持って来ている。
ではグリーブの肉体強化スキルはどうか?
これも原理は同じ、身体を強化するだけのエネルギーをどこかから持って来ている。
この異世界は、ずっとこの様に他の世界からエネルギーを拝借して発展してきた。
(但し、触媒として使用している金属が消滅しているので、もしかすると触媒が元の世界に送られているのかも知れない。)
太古は火や水を呼び出す程度の力しか無かったのだがスキルや魔法の研究が発達したことにより、他の世界の生物を呼びだせるようになった。
最初は小動物、次いで家畜、モンスターと徐々にエスカレートしていき、遂に地球から人間を呼び出せるようになった。
これが俺達が王国に呼び出された現象の真相らしい。
『原理は理解出来ました。
それで族長、俺は元の世界に帰れそうですか?』
「理論上は可能ですが、莫大な触媒が必要になりますよ。
それもミスリルで!!」
OK。
こんなモン、幾らでも増やせる。
聞けば数兆ウェン分のミスリル貨があれば逆召喚の発動が可能との見解だったので、拍子抜けする。
その程度で良いのなら、話は早い。
(まあ、元々1兆の見積もりだったしな。)
後は級友の到着を待つのみである。
それも精々数日の話なので、エルフ族にはしばらく逗留して貰う。
彼らはゲルを嫌がっている気配がするのだが、ホテルではなく俺のゲルの近くに陣取る事を希望した。
気持ちは解る。
俺だって勝手の分からない街に放り出されたくない。
その後も、エルフ達から召喚術のレクチャーを受ける。
俺の歓心を買う為のなのか、種族の中でも選りすぐりの碩学を連れて来てくれたとのこと。
正直助かる。
エルフ族の女達(ラノベのイメージそのまま)は、ヒルダとコレットがニコニコしながら別建物で接待をする為に連れて行く。
エルフ美女達がやや怯えていたので、きっと殺気を隠し切れていなかったのだろう。
美女達には気の毒だが、あの母娘を隔離できたのは助かる。
俺は四天王達と帰還の具体的な手続きについて打ち合わせを行う。
思ったよりエルフ族が使えそうなのは、本当にありがたい。
内心、帰還を諦める場面も多かったが…
これは意外に帰れるかも知れないぞ。
「ですが、魔王様。
召喚と逆召喚では難易度が全く異なります。」
エルフ達が俺の気分に水を差す。
曰く、「魚を釣るのは簡単だが、泳いでいた位置にそのまま戻すのは至難の業でしょう? それと同じ事なのです。」とのこと。
…確かに。
ただ、太陽系には確実に送り返す事が可能らしい。
「はい、その点は太鼓判を押せます!
魔王様の故郷も惑星なんですよね?
でしたら恒星圏には確実にお送り出来ます!」
…俺は地球に帰りたい訳であって、冥王星やら海王星やらに行きたい訳ではない。
==========================
叡智の民であるエルフは高度なリハビリ術も保有しており、凄腕のマッサージ師を連れて来てくれた。
ただ残念ながら、それが妙齢の美女だった(向こうはサービスのつもり)ので、俺がその施術を受ける事はなさそうである。
『ポールさん。
ハーレムとまでは言わずとも、せめて他の女子と口くらいは利かせて欲しいんですけどね。
そっちはどうです?』
「メンバーを増やすな、とは言われてるね。
自然にジワジワ増えちゃうんだけどさ。」
『あれからまだ増えてるんですか!?』
「シモーヌちゃんの話はしたっけ?」
『いや、その新キャラ初耳ですよ!』
「冒険者の子で、前から面識はあったんだけどね。
まあ色々あって、ハーレム用のゲルに住まわせてる。」
…この男は着実に男としての本懐を遂げているな。
==========================
【ポールソンハーレム】
レニーちゃん (ポールズバー店員)
メアリちゃん (ポールズバー店員)
エミリーちゃん (営業部長)
ナナリーさん (ハーレムの世話係)
ビッキーちゃん (ポールズバー最年少店員)
ノーラちゃん (ポールズバー店員)
ソーニャちゃん (潜伏中の貴族令嬢)
シモーヌちゃん (冒険者)
※これ以上は増やさないと約束中
==========================
「ねえ、リン君…
やっぱり帰るの?」
『まあ、一応は。』
「…そう。」
『いい大人が泣かないで下さいよ。』
「哀しいんだから仕方ないだろう。」
この男は喜怒哀楽がハッキリしている。
だからモテるんだろうなぁ。
俺、もうこの生活がしんどくて仕方ないんだよな。
特に四六時中、母娘に監視され続けているのは本当に辛い。
まるで囚人である。
貧乏は嫌だけど…
今思えば自由だったなぁ。
《542京3631兆ウェンの配当が支払われました。》
『ねえ、皆さん。
そろそろミスリル要らないんじゃないですか?
会長はどう思われます?』
「…後、もう一声。」
『この前からそればっかりじゃないですか。』
「コリンズさんが帰られる前に、今後数千年分の資源を備蓄しておきたいのです。
ちゃんと謝礼支払いますから。」
『謝礼と言われましても。』
もう帰るんだから、ここで貰っても仕方ないよな。
「コリンズさんの故郷、地球でしたか。
そこで価値のある物を持ち帰れるように取り計らいますから。」
何だろう?
地球で価値のあるもの。
【複利】を除けば…
やはり妥当に純金か?
でもあれって換金が難しい筈だぞ。
確か身分証が必要なんだよな。
未成年でも売れるんだろうか?
金塊はチェック厳しいって聞いたから。
ネックレス状にして全身にグルグル巻いて行くか…
『…あ、そうだ。
俺がちゃんと帰れるようにヒルダ達から守って下さいよ。』
「うーん、それ以外で何か謝礼を払わせて下さいよ。」
役に立たねえ神様だ。
俺の失望した表情を見てピット会長なりに負い目を感じたのか、黄金の鎖帷子をプレゼントすると約束してくれる。
知恵の輪のように、少量ずつ手で外せる仕組みにしてくれるそうだ。
無事に帰れたら…
冥王星でも海王星でも宇宙空間でも太陽のど真ん中でもなく、地球の日本にちゃんと帰れたら…
そして複利が手元に残っていたら…
次は慎重に宿を選ぼう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【名前】
リン・コリンズ
【職業】
魔王
神聖教団大主教
(株)エナドリ 創業オーナー
世界冒険者ギルド 永世名誉理事
【称号】
魔王
【ステータス】
《LV》 52
《HP》 (6/6)
《MP》 (6/6)
《腕力》 3
《速度》 3
《器用》 3
《魔力》 2
《知性》 8
《精神》 10
《幸運》 1
《経験》2京1938兆0608億4247万6307ポイント
次のレベルまで残り5335兆0525億8147万5108ポイント
【スキル】
「複利」
※日利52%
下12桁切上
【所持金】
所持金1585京3688兆7250億9294万ウェン
※バベル銀行の8兆8167億8740万ウェン預入証書保有
※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有
※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有
※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有
※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有
※自由都市海洋開拓債1000億ウェン分を保有
※第2次自由都市未来テック債1000億ウェン分を保有
※首長国臨時戦時国債1100億ウェン分を保有
※自由都市国庫短期証券4000億ウェン分を保有。
【配給薬品在庫】
エナドリ1206867ℓ
※神聖教団救済部会へ700000ℓをエリクサーとして納品
俺もかなり身構えていたのだが、全員妙に人当たりが良い。
ゲルの脇を固めているゴブリン達にも笑顔でハグを求めていた。
勿論、売れ残っていたエルフ債を俺が購入したことが原因なのだろうが…
それにしても聞いていた印象と随分異なるな。
『…あの、貴種族の慣例で魔族とは交流しないと伺っております。
無理をなさらなくて結構ですからね?』
「いえいえいえ!!
誤解! それは大いなる誤解ですよ!
我々エルフ族は魔族の皆様とも友誼を結びたいと思っておりました!
ここ数年は魔王コリンズ様の話題で持ち切りでした位です!」
…俺がこの世界に来たのってつい3ヶ月前なんだけどな。
こっそり左右をチラ見するも、四天王達が「もうそういう事にしておきましょう」というアイコンタクトを送ってくる。
『ああ、そうだったのですね。
それは恐縮です。』
その後もエルフ達は宝石やら秘薬やら種族の美女やらをどうにかして献上しようとしてくる。
前者2つは兎も角、美女は本当に勘弁してくれ。
帰還直前に話をこじらせたくないんだ。
「魔王様…
その、例の件は考えて頂けましたでしょうか?」
『れ、例の件と申しますと?
どの件でしょうか?』
エルフからの書簡には様々な(図々しい)要求が羅列されており、彼らがどれを指しているのかわからない。
「ほら!
属国ですよ属国。
我々を魔界の保護国にして頂ける話はどうなったでしょうか?」
『え! あれ外交儀礼的な文言では無かったのですか?』
「いやだなあ、魔王様。
本気ですよぉ!
エルフ的には全会一致で可決されてますよぉ。
…何とか傘下に入れて頂く事は出来ませんでしょうか?
我ら種族一同、忠勤の限りを尽くしますので。」
『あ、いや。
そんな… 一方的に可決されましても。』
要は…
魔界が王国・共和国の侵略に苦しんでいたように、エルフ族も合衆国からの圧迫に相当苦しんでいる。
俺が魔王になった瞬間に魔界への圧迫が消えた事実は早くも全世界に知れ渡っており、エルフ族も何とかこの流れに乗りたいのであろう。
…ゴメン。
俺、地球に帰るって言い続けてるんだけど。
皆、それは知ってるんだよな?
==========================
その後、しばらくエルフ族のプレゼンが続いた。
秘宝珍品の類を無理やり手渡されそうになったが、周囲が自然にブロックしてくれる。
自由都市の首脳部(ついでに魔族有志)も立ち会っているので、急ぎ意見調整。
《合衆国にエルフ族領への侵攻を取りやめるように強く申し入れる。》
との無難な回答を出す事になった。
当然、エルフ族は食い下がる。
「いや! そこを何とか!
もう一声、もう一声頂けませんか!
あ、そうだ!
今ここでエルフ族長である私が魔王様の臣下になるという案は如何でしょうか!」
『いえいえ。
それはもう保護国と同義じゃないですか。
この場で決められることじゃないですよ。』
…そうなんだ。
普通は他国の保護国化なんて慎重に時間を掛けてその是非を国家挙げて討議すべき案件であり、簡単に決めて良いことではない。
だからこそ形振り構わず俺の身柄を拉致し、強引に魔王号を押し付けた魔界の連中の蛮勇は…
残念ながら正しい判断であった。
彼らは博打に勝ったのだ。
エルフ族は2匹目のドジョウを狙っているが、どうなんだろう。
俺も含めた全員がピット会長を見る。
流石に現職の神様だけあって、似た場面も経験しているのだろう。
「では、コリンズさん。
こうしましょう。
《合衆国がエルフ領から撤退しない限り、今後の公債購入はなし。
現在保有分も手放さざるを得ない。》
まずはこの旨を合衆国側に打診するのです。
ああ、勿論私も歩調を合わせます。」
『宜しいのですか?』
「だってコリンズさんの目標を達成する為にはエルフ族の協力が必要なんでしょう?
それ位は許されるんじゃないですか?
コリンズさんのおカネですし。」
『…申し訳ありません。』
「いえいえ。
自由都市の安全保障上、領域国家の巨大化は防ぐに越した事はありませんからね。
恐らく、この提案を合衆国側は呑むでしょう。」
エルフ側はここら辺を落し所と想定していたのだろう。
その後はとくに食い下がる事もなく、実務的な話題に移れた。
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あくまでエルフの解説だが。
魔法とは召喚行為そのものらしい。
この世界とは別の世界からエネルギーを召喚する能力。
それが魔法(というよりスキル全般)であるとのこと。
例えばドナルドの水魔法。
彼はいつも何もない所から水を出現させているのだが、これは異世界から水という物質を召喚しているらしい。
王都で出逢ったアランの火魔法も同様。
異なる世界から火を持って来ている。
ではグリーブの肉体強化スキルはどうか?
これも原理は同じ、身体を強化するだけのエネルギーをどこかから持って来ている。
この異世界は、ずっとこの様に他の世界からエネルギーを拝借して発展してきた。
(但し、触媒として使用している金属が消滅しているので、もしかすると触媒が元の世界に送られているのかも知れない。)
太古は火や水を呼び出す程度の力しか無かったのだがスキルや魔法の研究が発達したことにより、他の世界の生物を呼びだせるようになった。
最初は小動物、次いで家畜、モンスターと徐々にエスカレートしていき、遂に地球から人間を呼び出せるようになった。
これが俺達が王国に呼び出された現象の真相らしい。
『原理は理解出来ました。
それで族長、俺は元の世界に帰れそうですか?』
「理論上は可能ですが、莫大な触媒が必要になりますよ。
それもミスリルで!!」
OK。
こんなモン、幾らでも増やせる。
聞けば数兆ウェン分のミスリル貨があれば逆召喚の発動が可能との見解だったので、拍子抜けする。
その程度で良いのなら、話は早い。
(まあ、元々1兆の見積もりだったしな。)
後は級友の到着を待つのみである。
それも精々数日の話なので、エルフ族にはしばらく逗留して貰う。
彼らはゲルを嫌がっている気配がするのだが、ホテルではなく俺のゲルの近くに陣取る事を希望した。
気持ちは解る。
俺だって勝手の分からない街に放り出されたくない。
その後も、エルフ達から召喚術のレクチャーを受ける。
俺の歓心を買う為のなのか、種族の中でも選りすぐりの碩学を連れて来てくれたとのこと。
正直助かる。
エルフ族の女達(ラノベのイメージそのまま)は、ヒルダとコレットがニコニコしながら別建物で接待をする為に連れて行く。
エルフ美女達がやや怯えていたので、きっと殺気を隠し切れていなかったのだろう。
美女達には気の毒だが、あの母娘を隔離できたのは助かる。
俺は四天王達と帰還の具体的な手続きについて打ち合わせを行う。
思ったよりエルフ族が使えそうなのは、本当にありがたい。
内心、帰還を諦める場面も多かったが…
これは意外に帰れるかも知れないぞ。
「ですが、魔王様。
召喚と逆召喚では難易度が全く異なります。」
エルフ達が俺の気分に水を差す。
曰く、「魚を釣るのは簡単だが、泳いでいた位置にそのまま戻すのは至難の業でしょう? それと同じ事なのです。」とのこと。
…確かに。
ただ、太陽系には確実に送り返す事が可能らしい。
「はい、その点は太鼓判を押せます!
魔王様の故郷も惑星なんですよね?
でしたら恒星圏には確実にお送り出来ます!」
…俺は地球に帰りたい訳であって、冥王星やら海王星やらに行きたい訳ではない。
==========================
叡智の民であるエルフは高度なリハビリ術も保有しており、凄腕のマッサージ師を連れて来てくれた。
ただ残念ながら、それが妙齢の美女だった(向こうはサービスのつもり)ので、俺がその施術を受ける事はなさそうである。
『ポールさん。
ハーレムとまでは言わずとも、せめて他の女子と口くらいは利かせて欲しいんですけどね。
そっちはどうです?』
「メンバーを増やすな、とは言われてるね。
自然にジワジワ増えちゃうんだけどさ。」
『あれからまだ増えてるんですか!?』
「シモーヌちゃんの話はしたっけ?」
『いや、その新キャラ初耳ですよ!』
「冒険者の子で、前から面識はあったんだけどね。
まあ色々あって、ハーレム用のゲルに住まわせてる。」
…この男は着実に男としての本懐を遂げているな。
==========================
【ポールソンハーレム】
レニーちゃん (ポールズバー店員)
メアリちゃん (ポールズバー店員)
エミリーちゃん (営業部長)
ナナリーさん (ハーレムの世話係)
ビッキーちゃん (ポールズバー最年少店員)
ノーラちゃん (ポールズバー店員)
ソーニャちゃん (潜伏中の貴族令嬢)
シモーヌちゃん (冒険者)
※これ以上は増やさないと約束中
==========================
「ねえ、リン君…
やっぱり帰るの?」
『まあ、一応は。』
「…そう。」
『いい大人が泣かないで下さいよ。』
「哀しいんだから仕方ないだろう。」
この男は喜怒哀楽がハッキリしている。
だからモテるんだろうなぁ。
俺、もうこの生活がしんどくて仕方ないんだよな。
特に四六時中、母娘に監視され続けているのは本当に辛い。
まるで囚人である。
貧乏は嫌だけど…
今思えば自由だったなぁ。
《542京3631兆ウェンの配当が支払われました。》
『ねえ、皆さん。
そろそろミスリル要らないんじゃないですか?
会長はどう思われます?』
「…後、もう一声。」
『この前からそればっかりじゃないですか。』
「コリンズさんが帰られる前に、今後数千年分の資源を備蓄しておきたいのです。
ちゃんと謝礼支払いますから。」
『謝礼と言われましても。』
もう帰るんだから、ここで貰っても仕方ないよな。
「コリンズさんの故郷、地球でしたか。
そこで価値のある物を持ち帰れるように取り計らいますから。」
何だろう?
地球で価値のあるもの。
【複利】を除けば…
やはり妥当に純金か?
でもあれって換金が難しい筈だぞ。
確か身分証が必要なんだよな。
未成年でも売れるんだろうか?
金塊はチェック厳しいって聞いたから。
ネックレス状にして全身にグルグル巻いて行くか…
『…あ、そうだ。
俺がちゃんと帰れるようにヒルダ達から守って下さいよ。』
「うーん、それ以外で何か謝礼を払わせて下さいよ。」
役に立たねえ神様だ。
俺の失望した表情を見てピット会長なりに負い目を感じたのか、黄金の鎖帷子をプレゼントすると約束してくれる。
知恵の輪のように、少量ずつ手で外せる仕組みにしてくれるそうだ。
無事に帰れたら…
冥王星でも海王星でも宇宙空間でも太陽のど真ん中でもなく、地球の日本にちゃんと帰れたら…
そして複利が手元に残っていたら…
次は慎重に宿を選ぼう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【名前】
リン・コリンズ
【職業】
魔王
神聖教団大主教
(株)エナドリ 創業オーナー
世界冒険者ギルド 永世名誉理事
【称号】
魔王
【ステータス】
《LV》 52
《HP》 (6/6)
《MP》 (6/6)
《腕力》 3
《速度》 3
《器用》 3
《魔力》 2
《知性》 8
《精神》 10
《幸運》 1
《経験》2京1938兆0608億4247万6307ポイント
次のレベルまで残り5335兆0525億8147万5108ポイント
【スキル】
「複利」
※日利52%
下12桁切上
【所持金】
所持金1585京3688兆7250億9294万ウェン
※バベル銀行の8兆8167億8740万ウェン預入証書保有
※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有
※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有
※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有
※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有
※自由都市海洋開拓債1000億ウェン分を保有
※第2次自由都市未来テック債1000億ウェン分を保有
※首長国臨時戦時国債1100億ウェン分を保有
※自由都市国庫短期証券4000億ウェン分を保有。
【配給薬品在庫】
エナドリ1206867ℓ
※神聖教団救済部会へ700000ℓをエリクサーとして納品
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お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
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最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
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【完結】おじいちゃんは元勇者
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