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【転移94日目】 所持金1京5005兆3455億1901万ウェン 「皇帝アレクセイ君のご冥福を祈り、かんぱーーーーい!」
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あの後、陛下に懇願してキーン家別邸に泊まらせて貰う。
共にキャラバンの旅路を潜り抜けたキーン不動産社員の方も滞在されており、涙を流して再会を喜び合った。
もう深夜を回ったというのに全然眠気が沸かず、4人でソファーに寝転がりながら晩餐会の話題で盛り上がる。
女の好みの話になったので、《重くない女の子がいいよね。》という結論に達する。
そしてドナルドの妻、エルデフリダに話題が及ぶ。
「まあ、両親が貴族だからね。
アレが特別アレな所為もあるけど…
正直、しんどい。
若い頃は色々思う事もあったけど、子供産んでくれたし
もう別にいいよ。」
「ドニーは仕事柄出張が多いから、あんまり奥様に対してストレスが沸かないんだと思う。」
「あー、それはあるね。
どれだけストレスの掛かる相手でも顔さえ合わせなければ
結構我慢できる。
正直、家に帰りたくなかったからさ。
…おかげで、すっかり海外販路を開拓しちゃったよ。
自分で言う事じゃないんだろうけど。
私、自由都市で最高の営業マンだと思う。」
『確かに。
最初にドナルドに会った時、《楽しそうにノビノビ働く人だなぁ》って感じました。』
「出張している時が一番楽しいよ。
今も起伏のある生活に少しワクワクしているけど。」
『俺、昨日の押し売りラッシュは正直腹も立ったのですが…
自由都市に居る時よりマシかな、と。』
「ヒルダさん達と暮らすのしんどい?」
『…疲れました。』
「…そっかぁ。
じゃあ、ハニトラ踏めないね。」
『ええ、これ以上負債を増やしたくないので。』
「まあ、そんな嫌そうな顔をしないであげてよ。
国王陛下も他に打つ手がないんだって。」
『そうですかね?
俺の目には万能の専制君主として映ってるのですが。』
「うーーーん。
リンが財界の表舞台に登場するまでは、国王陛下は世界一の大富豪だったのね。
一国の元首で、かつ世界ナンバーワンの財力。
これが陛下の影響力の源泉だったんだよ。
でも、リンが現れた事によって、陛下の財力が相対化されてしまったんだ。
正直、あの人もかなり戸惑ってると思うよ。」
『今の所、俺が一番なんでしょうか?』
「えっと、リンって財産幾ら位あるの?」
『いや、わからないんです。
ほら、ステータス欄が塞がれてるって話したじゃないですか?』
「ああ、信者称号。
地味に長いですね。」
『派手に長いです。
もう2週間くらいになるでしょうか。
アレのおかげで、残高が本当に分からないんです。
確か最後に見た金額が50兆くらいで…
沸いて来るカネが日に日に重くなってるんで、多分減ってはいないと思うのですが。』
「じゃあ60兆くらい貯まってたりして!
いやあ、それだけ持ってたら間違いなくリンがナンバーワン大富豪だよ。」
『おカネを貰えるのはありがたいのですが。
ちょっと置き場に困るので、皆さん貰って頂けませんか?』
「前に預かってる工作費がまだ余ってるからねぇ。
カインはどう?」
「私も使いきれない分は自宅に保管しています。
ほら前に言ったじゃないですか。
自由都市に帰ったら、一旦リンに返納させてくれって。」
『おカネってそんなに使い道ないですね。』
「爵位買えるよ?」
『おカネ払ってまで誰かの家来になりたくないです。』
「姫君買えるよ?」
『ヒルダに殺されると思います。』
「国が買えるよ?」
『もう国債で部分的に買ってるとも言えますし。』
「人の心とかも買えちゃうんじゃない?」
『それ、逆に俺が傷付きます。』
4人で考え込む。
欲しいものって何かあるかなあ。
あ、俺。
ちょっとこういう話をするの恥ずかしいんだけどさ。
何でも話せる友達が欲しかったんだ。
…今はこの3人に囲まれてるから、幸せだ。
多分俺、こういう幸せが欲しかったんだと思う。
首長国側からの圧力は相当だけど。
ヒルダやコレットに比べれば可愛いものだ。
アイツら俺の周りをクルクル周回しながら話し掛けて来るんだぞ!?
いつもハモってるし。
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『ふわぁ。』
いつの間にか寝入っていたらしい。
目が覚めるともう正午を回っている。
キーン不動産の社員さん達は敢えて寝させてくれたらしい。
眠気覚ましにエナドリの効いたコーヒーを注いでくれる。
俺は単に眠気が覚めるだけだが、他の3人はHP/MP全状態異常から回復する。
「「「おはよう! 今日も爽やかな朝だね!」」」
…このエナドリ、奴隷商人だけには渡さないようにしなくちゃな。
4人でメシでも食いに行こうと玄関でワチャワチャやってると首長国の人が、慌ててやって来る。
「皆様の外出を制限する意図は一切御座いません!
ただ、せめて我が国の案内役をつけさせて頂けませんでしょうか!」
まあ、そりゃあそうだよな。
立場が逆なら俺だって外国の賓客にそう懇願するわ。
この人の顔に見覚えがあると思ったら、第九王子のフェルナン様である。
詩人・エッセイスト・劇作家として高名な方でその著書は国際的に愛されている。
フェルナン様は申し訳なさそうに、貴賓用馬車を指す。
『しょ、承知しました。
し、しかし…
恐れ多くも殿下に案内をお願いする訳には…』
「あ、いえ!
自分は案内役ではありませんので御安心下さい。」
そうか。
流石に王子様のガイドなんて気疲れするだけだからな。
俺は安堵の溜息を吐きながらドナルド達に馬車まで身体を持ち上げて貰う。
砂浜の様にフカフカのシートに、全周型フルスモークの防矢窓、サスペンションが余程高度なのか乗降時に振動を感じなかった。
4人で馬車の豪華な内装に圧倒されているとノッカーが鳴る。
「御者で御座います、御挨拶に上がりました」
と通話口から聞こえたので、何気なく小窓を開ける。
「うおっ!」
思わずドナルドが身体をのけぞらせたので、よく見てみると御者ファッションの国王陛下がニコニコしながら立っていた。
まさかそのまま立たせておく訳にも行かないので、慌てて車内に入って貰う。
「いやー、どうもどうも。
自分で決めたデザインなのですが、御者っていつもこんな動きにくい制服で勤務してたんですね。
急ぎ機能性の高いものにモデルチェンジさせます。
いやあ、もっと現場の意見を聞かなくては駄目ですな。」
すみません陛下、もっと国賓の意見も聞いて下さいよ。
==========================
それにしても何を着ても絵になるお方である。
若い頃はさぞかしおモテになったのだろう。
「何か早めに済ませたい御用事があれば全力で叶えますよ。」
『では旅支度を。』
そう言うと何がおかしいのか陛下は大笑する。
俺としても半分はジョークである。
『この国の銀行か何かに口座を作りたいのですが。
宜しいでしょうか?』
「おお! 大歓迎ですよ!
このジェリコには世界中の金融機関が集まっておりますから!
私が名誉理事長を務めている銀行も幾つかありますし。
というより、世界金融機関連盟の理事会。
コリンズ社長も加盟して下さるんですよね?」
『え? せ、世界?
あ、いや。
そのような話は初耳ですが。』
「あれ?
この間亡くなった、神聖教団のカーター大主教。
彼、理事会に貴方を推薦してたのですが、まだ聞いてませんでした?」
…ヒルダが殺していなければ、そのうち話が回って来たのかも知れんな。
『あ、いえ。』
「?
でも、自由都市にお住まいなら、ピット会長経由からでも
そういう話が来ていたと思うのですが。」
ピット?
確かエヴァーソン会長が紹介して下さった財界の要人にそんな名前の老人も居たか?
うん、思い出した。
凄く物静かでいつも部屋の隅っこに座っていた人だ。
『あ、いえ。
今度ランチでも、という話になっていたのですが。
正式な約束をする前に私がこちらに来てしまったので。』
「ああ、じゃあその時に打診するつもりだったのでしょう。
我々のような国際資本が集まって、国際経済の調整を行う食事会があるのですよ。
その集まりで世界金融機関連盟なるものを運営しておりまして。
ああ、失敬失敬。
てっきりもうお話だけは回っているものかと。
そうですよねー。
総本山であんな事故があったばかりですし…」
『え、ええ。
こちらこそ皆様への挨拶が行き届いてなくて恐縮です。
先日申し上げた様に私は生来の貧乏人でして。
皆様とお話し出来るような身分ではないのです。
恥ずかしながら銀行の仕組みなどすらもあまり理解しておらず。
右往左往している有様です。
ここジェリコでも銀行を使わせて頂ければ…
と考えていたのですが。』
「いえいえ!
そんなそんな。
滅相もないです。
えっと、コリンズ社長は既にどこかの御口座をお持ちですよね?」
口座?
ああ、前に作ったわ。
確かロメオ・バルトロ上級司祭に免罪符を押し売りされた時だ。
トラウマだったので忘れたかったのだが、今思いだした。
カネの無い頃だったので、大した額は預けてないと思うのだが…
『えっと…
よく覚えてないのですが…
ドナルドさん、何銀行でしたっけ?
あ、バベル銀行でしたか。』
『おおバベル銀行!
メガバンクに口座持ってるじゃないですか。
あそこは今期から息子に理事をやらせておりましてな。
交代したばかりで右も左も解っとらんようですが、ハハハ。
ほら晩餐会で挨拶させたでしょう。
五男のパトリス。
ほら、ソムリエをやらせていた。』
「ああ、あの眼鏡を掛けたお方ですか。」
『そうそう!
あー、丁度良かった。
アイツに行内を案内させましょう。
今なら産業省かな?
呼びつけておきます。』
そういうと俺の同意も取らずに陛下はバベル銀行に進路を変えた。
オイオイ、せめて俺の行き先は俺…
あ! 御者のコスプレってそういう意図か!?
陛下と目が合うと悪戯っぽく、ニヤリと笑ってる。
やはり役者が違うな。
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パトリス殿下にとってもバベル銀行ジェリコ支店は一度だけ表敬訪問しただけであり、ほぼ未知の施設である。
だが国王陛下に「おい、コリンズ社長に粗相の無いようにな。」と顎で合図され、慌てて支店長達と打ち合わせをしている。
(王族がこんな所で執務する訳ないので、普段は担当役員達がパトリス殿下の執務室に出頭して指示を仰ぐのである。)
流石は貴人である、殿下は何事も無かったかのような笑顔で支店長達を引き連れ、俺達を案内してくれる。
長い廊下を歩く際も、金融系のユーモア話で座の笑いを取る辺り、実に如才ない。
「支店長。
コリンズ様の御口座はちゃんと管理しているのかね?」
「はっ! 水晶システム登録は《リン・コリンズ様》に御名義でしかと。
こちらのVIP用水晶に触れて頂ければ、我々行員にさえ知られずに残高をチェック可能です。」
庶民用の水晶と違って、VIP用水晶は支店長風情が残高を確認出来ないそうだ。
王族とか貴族とかの懐事情を平民が知ること自体が不敬とのこと。
(俺も平民なのだが。)
後、余談だが。
VIP用水晶は通常の水晶と異なり、何と静電気が発生しにくく冬場にパチッとしないらしい。
しかも世界芸術協会の協賛で様々な透かし彫りが入っているとのこと。
覗き込んでみると、豊穣をテーマにした神話の風景が描かれている。
あまりの精緻さに思わず感嘆の溜息が漏れる。
「ささ、コリンズ様どうぞ。
ほら、支店長。
皆様に早く飲み物をお出しして!」
『ああ、いえいえ。
殿下、本当に本当にお構いなく。
あくまで私も1預金者に過ぎませんから。』
「何を仰いますか。
コリンズ様にご利用頂いているという事実だけで
当行の栄誉ですよ。
あ、シャンパン呑まれます?
葉巻も御座いますよ。
さあ、皆様。
こちらのソファにお掛け下さい。
キミ、水晶を皆様のソファーに早く移動させて。」
あまり偉い人に頭を下げられるとこちらも遣りにくいな…
俺とパトリス殿下はお互いにペコペコ頭を下げ合いながら会話を続けた。
『えっと。
後で預金をお願いしたいのですが…
じゃあ、触れてもいいんでしょうか?』
「「「どうぞどうぞ、コリンズ様!」」」
『あ、じゃあ。
失礼します。
…ん?』
「こ、コリンズ様!
何か不手際が御座いましたでしょうか!?」
『いや、あの頃こんなにおカネがあったんだ、と思って。
いやあ、懐かしいです。
ほら、殿下。』
バベル銀行には9兆ウェン弱の預金が残っていた。
厳密には8兆8167億8740万ウェンだが…
ああ、こんなにあったならキャラバンの旅でもっと有効に使えば良かった。
「きゅ、8兆8000億ッ!?
あ、あ… あ、あ。
さ、流石は世界一の大富豪と名高いコリンズ様です…
王族の私ですら、ここまでの個人資産は初めて見ました。
いやあ、圧巻としか言いようがありません。」
『ああ、殿下失礼しました。
俺もあの時期そこまでの手持ちは無かったと思うのですが…
まあいいや。
預金をお願いさせて頂く事は可能ですか?
ちょっと手が塞がれてしまって困ってるんですよ。』
「い、いや。
ええ、はい。
失礼、頭が混乱しておりまして
あ、いや… あ、いえ…」
『すみません。
もし都合が合いませんでしたら、後日アポを取って伺います。』
「いえいえいえ!
コリンズ様を何度も煩わせるなんて出来る訳ありませんよ!
支店長! 早く預金準備をしたまえ!」
そうこう言っている間に追走してきたキーン不動産の馬車から職員さん達が金庫を運んできてくれる。
『すみません。
誠に恐縮なのですが、俺にも幾らあるのか分からないんです。
あ、ここに置けばいいんですか?
じゃあ、計測はそちらに一任しますので預かっておいて頂けませんか?』
「み、ミスリル貨!?
え!?
これ全てですか!?」
『使えないなら自由都市に送らせて下さい。
溶鉱炉で処分しますので。』
「ちょ!!!
コリンズ様!!
これ幾らあるんですか!!!」
『いや、ですから俺にもさっぱり…』
「いやいやいやいや!!!
困ります! 本当に困りますよ!!
私如きの立ち合いで処理していい額じゃありません。
ち、父上!! 視察? 大至急陛下をこちらにお呼びして!!」
《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》
『あ、すみません。
今、こっちにも増えましたしたので…
合算して計測して頂けませんか?』
「ちょ!!
困ります! もう私の一存でどうこう出来るレベルの話ではない!
本当に困るんですよ!!
支店長、概算は出来るのか!?」
「うわあああああ!!!!
げ、ゲージが振り切れッ!!!
け、計測不能ッ!!!!
皆様ッ! お下がりください、発火しております!!!」
なんか巨大な体重計みたいな装置から煙が出てしまったので
全員で慌てて避難する。
消火器っぽい器具を持った職員達が「うおおおお!」と叫びながら鎮火まで奮闘する。
==========================
その後、行員の人達は人海戦術で数えてくれた。
…なんかゴメン。
『えっと、パトリス殿下。
どうしましょうか?』
「どうするもこうするも…
1京ウェンなんて金額、私ですら生まれて初めてみましたよ。」
『預金は…
受付けて貰えませんか?』
「…私の一存ではなんとも。
バベル銀行の総預金残高が50兆弱ですからな…
というより銀行の時価総額は2兆前後ですよ?
これ、もうコリンズ社長… あ、いや。
銀行名コリンズ銀行に変えときましょうか?」
『あ、いや。
あまり目立つのが好きではないので。』
俺と陛下は馬車に戻って二人きりで密談中。
流石の俺も金額が1京にも達すると今まで以上に実感が沸かない。
「…社長。
社長は実際の所、幾ら位お持ちなのですか?」
『あ、いや。
あり過ぎて分からないので数えて貰いに来たわけで…』
「コリンズ社長。
大変申し訳ないのですが…
国際経済サミット、急遽開催させて下さい。
…後々ですが、世界金融機関連盟の総裁にも就任して頂くことになると思います。」
『いやいや。
そんな、急に言われても。
話が大きくなりすぎて。』
「事態は… 一刻を争います。」
『ゴクリ。』
「我々の父祖が腐心して築き上げてきた世界秩序…
今、圧倒的な力によって崩れさろうとしております。
コリンズ社長、貴方の存在によって!」
『あ、俺。
実は解決方法を考えてるんです!
俺を殺して皆で財産を分け合うアイデアは如何でしょうか!
この世界の人口がどれだけいるのか分からないのですが
1人頭数百万ウェンは配れるんじゃないですか?
あっ、魔界の連中にもちゃんと配ってやって下さいね。』
「そんな愚策を取ってしまったら…
経済の概念が壊れ切ってしまいます。
いいですか? おカネとは単なるチップじゃない。
人間社会の信用そのものなんですよ!?
コリンズ社長程の大資本家が理由なく殺されてしまったら
そして財産が奪われてしまったら…
今後誰も産業を興さなくなってしまいます。
いや、それどころか暴力で他者の富を奪い合う無法の世になってしまいます!!」
『し、失礼しました。
そこまで思い至らず。』
「…いえ、こちらこそ年甲斐もなく取り乱してしまいました。
ピット会長も交えて、三人で世界の未来を語らせて下さい。」
『?
いやいや、そんな大事な事を3人で決めてしまうのはマズくないですか?』
「そうなんですよ。
これまでは神聖教団が入ってくれて…
かなりバランス取れてたんですけどね。
ですがあんな悲惨な事故があった以上、仕方ありません。
実質上、神聖教団の後釜に座って頂くことになりますが…
ピット会長と私、そして何よりコリンズ社長。
我々3名で世界経済の舵取りを行っていかなければなりません。
責任は重大ですよ。」
『いやいやいや!
俺なんか3か月前に王国に流れ着いただけの余所者ですよ!?
そんな重大な会議に参加できる訳ないじゃないですか!?』
「コリンズ社長!
年長者として敢えて厳しい事を言わせて頂きます。
力ある者には、それに応じて果たさねばならない社会的責任と義務があるのです!!
貴方はこの世界で一番の大富豪です!
当然、誰よりも重い責務があります!」
『あの!
力と言ってもですねえ!
俺のはただのスキル!
そうだ! 俺が凄いんじゃない!
たまたまそういうスキルが割り振られただけなんです!』
「…コリンズ社長。
その財産がスキルの賜物だとしたら尚更ですよ?
いいですか?
スキルを授けるのは神です。
なら貴方のその力は神から授かったものでしょう。
その力から目を背けるのは天意への冒涜ではありませんか!」
『いや! いやいやいや!
私はそういう宗教観持ってませんし!!!』
「馬鹿を仰るな!
貴方様は神の第一信徒であるロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒であらせられるでしょう!!!
ちゃんと地位相応の責任を果たして下さいよ!!」
あれー?
あれー?
これ、俺が悪いのか?
これ、俺が怒られるようなことか?
いや! 納得出来ないって!!
『へ、陛下。
私は、私はですよ!?
そもそもこの世界の住民じゃない!
王国の奴らに勝手に呼び出されたんだ!
スキルだってこっちが欲しいと願った訳じゃないですよ!!
だ、大体! 俺は資本家なんか大嫌いだ!!
資本主義こそ親の仇ですよ!
恨みこそあれ、どうして責任まで負わされるんですか!』
「…私だって好きに王家に生まれた訳ではない。
ピット会長にしても好きで海外植民地を継承した訳じゃない。
あのねえ、コリンズ社長。
人間は配られたカードで戦うしかないんです。
運命という巨大な輪の中では、我々個々が足掻ける範囲なんてたかだか知れてます。
それでも歯を食いしばって、自分に与えられた役割を演じるしかないんです…
さっきね。
御者の衣装を借りた時…
あの瞬間は本当に楽しかった。
ほんの一時でも解放された気がして…
でも、私は首長国王として責務を果たさねばならない。
国際秩序と世界経済の安定に命を振り絞らなければならない。
たまたま、貴方の順番が回って来たのです。」
==========================
結局、あの後王宮に連行され、陛下の私室で簡素な夕食を御馳走になった。
陛下は流石世界屈指のVIPであり、俺の知りたいことは大抵知っていたので、ソファーで音楽を聴きながら、色々と説明を受けた。
途中。
十四女のクリスティアーヌ姫が入室する。
またもやハニトラか、と身構えるも違うらしい。
「いや、この状況ではピット会長の許可なしに婚礼云々の話は出来ません。」
…じゃああの老人が許可したら、またハニトラされるのだろうか?
幼き碩学であるクリスティアーヌ姫から召喚の歴史や運用実態について教わる。
帰還方法についても調べて下さるとのことである。
「では、王国に居る御同胞と共に召喚元に帰還されるのですね。」
『はい。
無論、彼らに強制するつもりはありませんが。
帰還を希望する者にはその便宜を図ってやるのが筋かと。』
「承知しました。
では関連書籍をピックアップしておきます。」
「あ! コリンズ社長。
貴方には王宮書庫の特別閲覧権を私の権限で付与致しますので。
どうか御存分に閲覧下さい。
クリスティアーヌ、しかと案内するのだぞ!」
「はっ! 一命に代えましても!」
クリスティアーヌ姫の家庭教師を務めるフッガー博士は首長国屈指の智者と讃えられているそうで。
その方の協力も頂けることになった。
まずは初日ということで挨拶だけ交わさせて頂いたのだが、渾身叡智とも例えるべき方であった。
言うまでもなく彼の称号は【大賢者】である。
後、陛下は執務室に赴き、部下達から本日の最終報告を受ける。
何故か俺も立ち会わされたので、邪魔にならないようにソファの端っこでおとなしくしておく。
王国情勢は悲惨である。
とうとう王都近辺の師団や大貴族が叛き始めたらしい。
恐らく現在の王は地盤である西部に逃亡するしかないだろうとのこと。
陛下が俺に対して級友の保護を申し出てくれたので
「他の人民が犠牲になる形でなければお願いさせて下さい。」
というと頬を緩めた。
どうやら正答だったらしい。
帝国四諸侯。
皇帝を殺したはいいが、他の諸侯を上手く纏める事が出来ず本拠地を脅かされ始めている。
ムシのいい話だが、首長国に対して必死で和平を懇願している。
「いや、我が国の国土に居座られたまま、和平と言われても…」
陛下は絶句したまま参謀総長の意見を待つ。
「では陛下、このまま奪還作戦を続行して構いませんな?
アンリ殿下からも《総攻撃の許可を絶対に取って来るように》と命じられております。」
陛下は横目で俺をチラ見する。
《大体、戦争ってこんな感じで進行するんだよ》
とでも教えてくれているのだろうか?
「うむ! 総攻撃を許可する!
各員の奮闘を祈る!!」
「はッ!!
必ずや侵略者共を抹殺し、陛下に勝利の報を捧げてみせまする!!!」
『陛下、帝国四諸侯の人ってどうなるんですか?』
「え? 死ぬんじゃないかな?
地政学的にもそうなるって決まってるし。」
『あー、地政学的に駄目なら駄目ですね。』
「あ、コリンズ社長が助命するなら…
何とか工作してみましょうか?」
『あ、いえいえ。
私も面識は無いので。』
「向こうは相当コリンズ社長のことで参ってましたよ。」
『そうなんですか?』
「いや、アレクセイ君が《娘とコリンズ社長が結婚した》って言い触らしながら進軍してたから。
四諸侯側に味方する勢力が無くなってしまって。」
『いや! 虚言ですよ!
俺は請けるなんて一言も言ってないのに
あの皇帝が勝手に!』
「虚言であれ何であれ、帝国の各諸侯には状況的に確かめる術がありませんから。
だって、そんな。
ただでさえ世界第三位の富豪が治める国を攻めているのに、世界第一位の富豪まで敵に回せる訳ないじゃないですか。
私が帝国人だったとしても四諸侯側なんかに絶対味方出来ないです。」
その後、アレクセイの死の状況が機密情報レベルの深度で語られる。
どうやら帝国皇帝は、《俺が彼の縁談に同意し、味方として支援物資を送る》という虚報を信じて架空の合流地点に寡兵で向かったらしい。
そして、何故かそこに待ち伏せていた四諸侯の軍勢に包囲されて殺された、とのこと。
「いや、当初は情報が錯綜していたので…
コリンズ社長が火中の栗を拾ったのか?と参謀本部がざわめいておりました。
違うんですよね?」
『いや、帝国皇帝の事は…
本当に…
俺も自分の身の回りのことで精一杯でしたので。』
陛下と2人で皇帝アレクセイを追悼する。
まあ、追悼と言ってもグラスを合せただけだが。
あの陽気な男のことだ。
こういうカラッとした弔いの方が喜んでくれるだろう。
皇帝アレクセイ君のご冥福を祈り、かんぱーーーーい!
==========================
【コリンズ朝 建国戦争】
〇ヒルダ・コリンズ (元宿泊業経営)
VS
●アレクセイ・チェルネンコ (帝国皇帝)
※決まり手 偽報計
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【名前】
リン・コリンズ
【職業】
(株)エナドリ 創業オーナー
駐自由都市同盟 連邦大使
連邦政府財政顧問
【称号】
ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒
【ステータス】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
《LV》 42
《HP》 (6/6)
《MP》 (5/5)
《腕力》 3
《速度》 3
《器用》 3
《魔力》 2
《知性》 5
《精神》 8
《幸運》 1
《経験》 21兆8760億5835万1035ポイント
次のレベルまで残り6兆8455億4607万4620ポイント
【スキル】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
「複利」
※日利42%
下12桁切上
【所持金】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
1京5005兆3455億1901万ウェン
※バベル銀行の8兆8167億8740万ウェン預入証書保有
※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有
※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有
※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有
※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有
※自由都市海洋開拓債1000億ウェン分を保有
※第2次自由都市未来テック債1000億ウェン分を保有
※首長国臨時戦時国債1100億ウェン分を保有
※自由都市国庫短期証券4000億ウェン分を保有。
【試供品在庫】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
エナドリ 588605ℓ
※今回発生分の331214ℓは全て首長国政府に寄贈
※リン・コリンズの指示により原液200000ℓをドルト・エヴァーソン自由食品ホールディングス会長に譲渡。
共にキャラバンの旅路を潜り抜けたキーン不動産社員の方も滞在されており、涙を流して再会を喜び合った。
もう深夜を回ったというのに全然眠気が沸かず、4人でソファーに寝転がりながら晩餐会の話題で盛り上がる。
女の好みの話になったので、《重くない女の子がいいよね。》という結論に達する。
そしてドナルドの妻、エルデフリダに話題が及ぶ。
「まあ、両親が貴族だからね。
アレが特別アレな所為もあるけど…
正直、しんどい。
若い頃は色々思う事もあったけど、子供産んでくれたし
もう別にいいよ。」
「ドニーは仕事柄出張が多いから、あんまり奥様に対してストレスが沸かないんだと思う。」
「あー、それはあるね。
どれだけストレスの掛かる相手でも顔さえ合わせなければ
結構我慢できる。
正直、家に帰りたくなかったからさ。
…おかげで、すっかり海外販路を開拓しちゃったよ。
自分で言う事じゃないんだろうけど。
私、自由都市で最高の営業マンだと思う。」
『確かに。
最初にドナルドに会った時、《楽しそうにノビノビ働く人だなぁ》って感じました。』
「出張している時が一番楽しいよ。
今も起伏のある生活に少しワクワクしているけど。」
『俺、昨日の押し売りラッシュは正直腹も立ったのですが…
自由都市に居る時よりマシかな、と。』
「ヒルダさん達と暮らすのしんどい?」
『…疲れました。』
「…そっかぁ。
じゃあ、ハニトラ踏めないね。」
『ええ、これ以上負債を増やしたくないので。』
「まあ、そんな嫌そうな顔をしないであげてよ。
国王陛下も他に打つ手がないんだって。」
『そうですかね?
俺の目には万能の専制君主として映ってるのですが。』
「うーーーん。
リンが財界の表舞台に登場するまでは、国王陛下は世界一の大富豪だったのね。
一国の元首で、かつ世界ナンバーワンの財力。
これが陛下の影響力の源泉だったんだよ。
でも、リンが現れた事によって、陛下の財力が相対化されてしまったんだ。
正直、あの人もかなり戸惑ってると思うよ。」
『今の所、俺が一番なんでしょうか?』
「えっと、リンって財産幾ら位あるの?」
『いや、わからないんです。
ほら、ステータス欄が塞がれてるって話したじゃないですか?』
「ああ、信者称号。
地味に長いですね。」
『派手に長いです。
もう2週間くらいになるでしょうか。
アレのおかげで、残高が本当に分からないんです。
確か最後に見た金額が50兆くらいで…
沸いて来るカネが日に日に重くなってるんで、多分減ってはいないと思うのですが。』
「じゃあ60兆くらい貯まってたりして!
いやあ、それだけ持ってたら間違いなくリンがナンバーワン大富豪だよ。」
『おカネを貰えるのはありがたいのですが。
ちょっと置き場に困るので、皆さん貰って頂けませんか?』
「前に預かってる工作費がまだ余ってるからねぇ。
カインはどう?」
「私も使いきれない分は自宅に保管しています。
ほら前に言ったじゃないですか。
自由都市に帰ったら、一旦リンに返納させてくれって。」
『おカネってそんなに使い道ないですね。』
「爵位買えるよ?」
『おカネ払ってまで誰かの家来になりたくないです。』
「姫君買えるよ?」
『ヒルダに殺されると思います。』
「国が買えるよ?」
『もう国債で部分的に買ってるとも言えますし。』
「人の心とかも買えちゃうんじゃない?」
『それ、逆に俺が傷付きます。』
4人で考え込む。
欲しいものって何かあるかなあ。
あ、俺。
ちょっとこういう話をするの恥ずかしいんだけどさ。
何でも話せる友達が欲しかったんだ。
…今はこの3人に囲まれてるから、幸せだ。
多分俺、こういう幸せが欲しかったんだと思う。
首長国側からの圧力は相当だけど。
ヒルダやコレットに比べれば可愛いものだ。
アイツら俺の周りをクルクル周回しながら話し掛けて来るんだぞ!?
いつもハモってるし。
==========================
『ふわぁ。』
いつの間にか寝入っていたらしい。
目が覚めるともう正午を回っている。
キーン不動産の社員さん達は敢えて寝させてくれたらしい。
眠気覚ましにエナドリの効いたコーヒーを注いでくれる。
俺は単に眠気が覚めるだけだが、他の3人はHP/MP全状態異常から回復する。
「「「おはよう! 今日も爽やかな朝だね!」」」
…このエナドリ、奴隷商人だけには渡さないようにしなくちゃな。
4人でメシでも食いに行こうと玄関でワチャワチャやってると首長国の人が、慌ててやって来る。
「皆様の外出を制限する意図は一切御座いません!
ただ、せめて我が国の案内役をつけさせて頂けませんでしょうか!」
まあ、そりゃあそうだよな。
立場が逆なら俺だって外国の賓客にそう懇願するわ。
この人の顔に見覚えがあると思ったら、第九王子のフェルナン様である。
詩人・エッセイスト・劇作家として高名な方でその著書は国際的に愛されている。
フェルナン様は申し訳なさそうに、貴賓用馬車を指す。
『しょ、承知しました。
し、しかし…
恐れ多くも殿下に案内をお願いする訳には…』
「あ、いえ!
自分は案内役ではありませんので御安心下さい。」
そうか。
流石に王子様のガイドなんて気疲れするだけだからな。
俺は安堵の溜息を吐きながらドナルド達に馬車まで身体を持ち上げて貰う。
砂浜の様にフカフカのシートに、全周型フルスモークの防矢窓、サスペンションが余程高度なのか乗降時に振動を感じなかった。
4人で馬車の豪華な内装に圧倒されているとノッカーが鳴る。
「御者で御座います、御挨拶に上がりました」
と通話口から聞こえたので、何気なく小窓を開ける。
「うおっ!」
思わずドナルドが身体をのけぞらせたので、よく見てみると御者ファッションの国王陛下がニコニコしながら立っていた。
まさかそのまま立たせておく訳にも行かないので、慌てて車内に入って貰う。
「いやー、どうもどうも。
自分で決めたデザインなのですが、御者っていつもこんな動きにくい制服で勤務してたんですね。
急ぎ機能性の高いものにモデルチェンジさせます。
いやあ、もっと現場の意見を聞かなくては駄目ですな。」
すみません陛下、もっと国賓の意見も聞いて下さいよ。
==========================
それにしても何を着ても絵になるお方である。
若い頃はさぞかしおモテになったのだろう。
「何か早めに済ませたい御用事があれば全力で叶えますよ。」
『では旅支度を。』
そう言うと何がおかしいのか陛下は大笑する。
俺としても半分はジョークである。
『この国の銀行か何かに口座を作りたいのですが。
宜しいでしょうか?』
「おお! 大歓迎ですよ!
このジェリコには世界中の金融機関が集まっておりますから!
私が名誉理事長を務めている銀行も幾つかありますし。
というより、世界金融機関連盟の理事会。
コリンズ社長も加盟して下さるんですよね?」
『え? せ、世界?
あ、いや。
そのような話は初耳ですが。』
「あれ?
この間亡くなった、神聖教団のカーター大主教。
彼、理事会に貴方を推薦してたのですが、まだ聞いてませんでした?」
…ヒルダが殺していなければ、そのうち話が回って来たのかも知れんな。
『あ、いえ。』
「?
でも、自由都市にお住まいなら、ピット会長経由からでも
そういう話が来ていたと思うのですが。」
ピット?
確かエヴァーソン会長が紹介して下さった財界の要人にそんな名前の老人も居たか?
うん、思い出した。
凄く物静かでいつも部屋の隅っこに座っていた人だ。
『あ、いえ。
今度ランチでも、という話になっていたのですが。
正式な約束をする前に私がこちらに来てしまったので。』
「ああ、じゃあその時に打診するつもりだったのでしょう。
我々のような国際資本が集まって、国際経済の調整を行う食事会があるのですよ。
その集まりで世界金融機関連盟なるものを運営しておりまして。
ああ、失敬失敬。
てっきりもうお話だけは回っているものかと。
そうですよねー。
総本山であんな事故があったばかりですし…」
『え、ええ。
こちらこそ皆様への挨拶が行き届いてなくて恐縮です。
先日申し上げた様に私は生来の貧乏人でして。
皆様とお話し出来るような身分ではないのです。
恥ずかしながら銀行の仕組みなどすらもあまり理解しておらず。
右往左往している有様です。
ここジェリコでも銀行を使わせて頂ければ…
と考えていたのですが。』
「いえいえ!
そんなそんな。
滅相もないです。
えっと、コリンズ社長は既にどこかの御口座をお持ちですよね?」
口座?
ああ、前に作ったわ。
確かロメオ・バルトロ上級司祭に免罪符を押し売りされた時だ。
トラウマだったので忘れたかったのだが、今思いだした。
カネの無い頃だったので、大した額は預けてないと思うのだが…
『えっと…
よく覚えてないのですが…
ドナルドさん、何銀行でしたっけ?
あ、バベル銀行でしたか。』
『おおバベル銀行!
メガバンクに口座持ってるじゃないですか。
あそこは今期から息子に理事をやらせておりましてな。
交代したばかりで右も左も解っとらんようですが、ハハハ。
ほら晩餐会で挨拶させたでしょう。
五男のパトリス。
ほら、ソムリエをやらせていた。』
「ああ、あの眼鏡を掛けたお方ですか。」
『そうそう!
あー、丁度良かった。
アイツに行内を案内させましょう。
今なら産業省かな?
呼びつけておきます。』
そういうと俺の同意も取らずに陛下はバベル銀行に進路を変えた。
オイオイ、せめて俺の行き先は俺…
あ! 御者のコスプレってそういう意図か!?
陛下と目が合うと悪戯っぽく、ニヤリと笑ってる。
やはり役者が違うな。
==========================
パトリス殿下にとってもバベル銀行ジェリコ支店は一度だけ表敬訪問しただけであり、ほぼ未知の施設である。
だが国王陛下に「おい、コリンズ社長に粗相の無いようにな。」と顎で合図され、慌てて支店長達と打ち合わせをしている。
(王族がこんな所で執務する訳ないので、普段は担当役員達がパトリス殿下の執務室に出頭して指示を仰ぐのである。)
流石は貴人である、殿下は何事も無かったかのような笑顔で支店長達を引き連れ、俺達を案内してくれる。
長い廊下を歩く際も、金融系のユーモア話で座の笑いを取る辺り、実に如才ない。
「支店長。
コリンズ様の御口座はちゃんと管理しているのかね?」
「はっ! 水晶システム登録は《リン・コリンズ様》に御名義でしかと。
こちらのVIP用水晶に触れて頂ければ、我々行員にさえ知られずに残高をチェック可能です。」
庶民用の水晶と違って、VIP用水晶は支店長風情が残高を確認出来ないそうだ。
王族とか貴族とかの懐事情を平民が知ること自体が不敬とのこと。
(俺も平民なのだが。)
後、余談だが。
VIP用水晶は通常の水晶と異なり、何と静電気が発生しにくく冬場にパチッとしないらしい。
しかも世界芸術協会の協賛で様々な透かし彫りが入っているとのこと。
覗き込んでみると、豊穣をテーマにした神話の風景が描かれている。
あまりの精緻さに思わず感嘆の溜息が漏れる。
「ささ、コリンズ様どうぞ。
ほら、支店長。
皆様に早く飲み物をお出しして!」
『ああ、いえいえ。
殿下、本当に本当にお構いなく。
あくまで私も1預金者に過ぎませんから。』
「何を仰いますか。
コリンズ様にご利用頂いているという事実だけで
当行の栄誉ですよ。
あ、シャンパン呑まれます?
葉巻も御座いますよ。
さあ、皆様。
こちらのソファにお掛け下さい。
キミ、水晶を皆様のソファーに早く移動させて。」
あまり偉い人に頭を下げられるとこちらも遣りにくいな…
俺とパトリス殿下はお互いにペコペコ頭を下げ合いながら会話を続けた。
『えっと。
後で預金をお願いしたいのですが…
じゃあ、触れてもいいんでしょうか?』
「「「どうぞどうぞ、コリンズ様!」」」
『あ、じゃあ。
失礼します。
…ん?』
「こ、コリンズ様!
何か不手際が御座いましたでしょうか!?」
『いや、あの頃こんなにおカネがあったんだ、と思って。
いやあ、懐かしいです。
ほら、殿下。』
バベル銀行には9兆ウェン弱の預金が残っていた。
厳密には8兆8167億8740万ウェンだが…
ああ、こんなにあったならキャラバンの旅でもっと有効に使えば良かった。
「きゅ、8兆8000億ッ!?
あ、あ… あ、あ。
さ、流石は世界一の大富豪と名高いコリンズ様です…
王族の私ですら、ここまでの個人資産は初めて見ました。
いやあ、圧巻としか言いようがありません。」
『ああ、殿下失礼しました。
俺もあの時期そこまでの手持ちは無かったと思うのですが…
まあいいや。
預金をお願いさせて頂く事は可能ですか?
ちょっと手が塞がれてしまって困ってるんですよ。』
「い、いや。
ええ、はい。
失礼、頭が混乱しておりまして
あ、いや… あ、いえ…」
『すみません。
もし都合が合いませんでしたら、後日アポを取って伺います。』
「いえいえいえ!
コリンズ様を何度も煩わせるなんて出来る訳ありませんよ!
支店長! 早く預金準備をしたまえ!」
そうこう言っている間に追走してきたキーン不動産の馬車から職員さん達が金庫を運んできてくれる。
『すみません。
誠に恐縮なのですが、俺にも幾らあるのか分からないんです。
あ、ここに置けばいいんですか?
じゃあ、計測はそちらに一任しますので預かっておいて頂けませんか?』
「み、ミスリル貨!?
え!?
これ全てですか!?」
『使えないなら自由都市に送らせて下さい。
溶鉱炉で処分しますので。』
「ちょ!!!
コリンズ様!!
これ幾らあるんですか!!!」
『いや、ですから俺にもさっぱり…』
「いやいやいやいや!!!
困ります! 本当に困りますよ!!
私如きの立ち合いで処理していい額じゃありません。
ち、父上!! 視察? 大至急陛下をこちらにお呼びして!!」
《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》
『あ、すみません。
今、こっちにも増えましたしたので…
合算して計測して頂けませんか?』
「ちょ!!
困ります! もう私の一存でどうこう出来るレベルの話ではない!
本当に困るんですよ!!
支店長、概算は出来るのか!?」
「うわあああああ!!!!
げ、ゲージが振り切れッ!!!
け、計測不能ッ!!!!
皆様ッ! お下がりください、発火しております!!!」
なんか巨大な体重計みたいな装置から煙が出てしまったので
全員で慌てて避難する。
消火器っぽい器具を持った職員達が「うおおおお!」と叫びながら鎮火まで奮闘する。
==========================
その後、行員の人達は人海戦術で数えてくれた。
…なんかゴメン。
『えっと、パトリス殿下。
どうしましょうか?』
「どうするもこうするも…
1京ウェンなんて金額、私ですら生まれて初めてみましたよ。」
『預金は…
受付けて貰えませんか?』
「…私の一存ではなんとも。
バベル銀行の総預金残高が50兆弱ですからな…
というより銀行の時価総額は2兆前後ですよ?
これ、もうコリンズ社長… あ、いや。
銀行名コリンズ銀行に変えときましょうか?」
『あ、いや。
あまり目立つのが好きではないので。』
俺と陛下は馬車に戻って二人きりで密談中。
流石の俺も金額が1京にも達すると今まで以上に実感が沸かない。
「…社長。
社長は実際の所、幾ら位お持ちなのですか?」
『あ、いや。
あり過ぎて分からないので数えて貰いに来たわけで…』
「コリンズ社長。
大変申し訳ないのですが…
国際経済サミット、急遽開催させて下さい。
…後々ですが、世界金融機関連盟の総裁にも就任して頂くことになると思います。」
『いやいや。
そんな、急に言われても。
話が大きくなりすぎて。』
「事態は… 一刻を争います。」
『ゴクリ。』
「我々の父祖が腐心して築き上げてきた世界秩序…
今、圧倒的な力によって崩れさろうとしております。
コリンズ社長、貴方の存在によって!」
『あ、俺。
実は解決方法を考えてるんです!
俺を殺して皆で財産を分け合うアイデアは如何でしょうか!
この世界の人口がどれだけいるのか分からないのですが
1人頭数百万ウェンは配れるんじゃないですか?
あっ、魔界の連中にもちゃんと配ってやって下さいね。』
「そんな愚策を取ってしまったら…
経済の概念が壊れ切ってしまいます。
いいですか? おカネとは単なるチップじゃない。
人間社会の信用そのものなんですよ!?
コリンズ社長程の大資本家が理由なく殺されてしまったら
そして財産が奪われてしまったら…
今後誰も産業を興さなくなってしまいます。
いや、それどころか暴力で他者の富を奪い合う無法の世になってしまいます!!」
『し、失礼しました。
そこまで思い至らず。』
「…いえ、こちらこそ年甲斐もなく取り乱してしまいました。
ピット会長も交えて、三人で世界の未来を語らせて下さい。」
『?
いやいや、そんな大事な事を3人で決めてしまうのはマズくないですか?』
「そうなんですよ。
これまでは神聖教団が入ってくれて…
かなりバランス取れてたんですけどね。
ですがあんな悲惨な事故があった以上、仕方ありません。
実質上、神聖教団の後釜に座って頂くことになりますが…
ピット会長と私、そして何よりコリンズ社長。
我々3名で世界経済の舵取りを行っていかなければなりません。
責任は重大ですよ。」
『いやいやいや!
俺なんか3か月前に王国に流れ着いただけの余所者ですよ!?
そんな重大な会議に参加できる訳ないじゃないですか!?』
「コリンズ社長!
年長者として敢えて厳しい事を言わせて頂きます。
力ある者には、それに応じて果たさねばならない社会的責任と義務があるのです!!
貴方はこの世界で一番の大富豪です!
当然、誰よりも重い責務があります!」
『あの!
力と言ってもですねえ!
俺のはただのスキル!
そうだ! 俺が凄いんじゃない!
たまたまそういうスキルが割り振られただけなんです!』
「…コリンズ社長。
その財産がスキルの賜物だとしたら尚更ですよ?
いいですか?
スキルを授けるのは神です。
なら貴方のその力は神から授かったものでしょう。
その力から目を背けるのは天意への冒涜ではありませんか!」
『いや! いやいやいや!
私はそういう宗教観持ってませんし!!!』
「馬鹿を仰るな!
貴方様は神の第一信徒であるロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒であらせられるでしょう!!!
ちゃんと地位相応の責任を果たして下さいよ!!」
あれー?
あれー?
これ、俺が悪いのか?
これ、俺が怒られるようなことか?
いや! 納得出来ないって!!
『へ、陛下。
私は、私はですよ!?
そもそもこの世界の住民じゃない!
王国の奴らに勝手に呼び出されたんだ!
スキルだってこっちが欲しいと願った訳じゃないですよ!!
だ、大体! 俺は資本家なんか大嫌いだ!!
資本主義こそ親の仇ですよ!
恨みこそあれ、どうして責任まで負わされるんですか!』
「…私だって好きに王家に生まれた訳ではない。
ピット会長にしても好きで海外植民地を継承した訳じゃない。
あのねえ、コリンズ社長。
人間は配られたカードで戦うしかないんです。
運命という巨大な輪の中では、我々個々が足掻ける範囲なんてたかだか知れてます。
それでも歯を食いしばって、自分に与えられた役割を演じるしかないんです…
さっきね。
御者の衣装を借りた時…
あの瞬間は本当に楽しかった。
ほんの一時でも解放された気がして…
でも、私は首長国王として責務を果たさねばならない。
国際秩序と世界経済の安定に命を振り絞らなければならない。
たまたま、貴方の順番が回って来たのです。」
==========================
結局、あの後王宮に連行され、陛下の私室で簡素な夕食を御馳走になった。
陛下は流石世界屈指のVIPであり、俺の知りたいことは大抵知っていたので、ソファーで音楽を聴きながら、色々と説明を受けた。
途中。
十四女のクリスティアーヌ姫が入室する。
またもやハニトラか、と身構えるも違うらしい。
「いや、この状況ではピット会長の許可なしに婚礼云々の話は出来ません。」
…じゃああの老人が許可したら、またハニトラされるのだろうか?
幼き碩学であるクリスティアーヌ姫から召喚の歴史や運用実態について教わる。
帰還方法についても調べて下さるとのことである。
「では、王国に居る御同胞と共に召喚元に帰還されるのですね。」
『はい。
無論、彼らに強制するつもりはありませんが。
帰還を希望する者にはその便宜を図ってやるのが筋かと。』
「承知しました。
では関連書籍をピックアップしておきます。」
「あ! コリンズ社長。
貴方には王宮書庫の特別閲覧権を私の権限で付与致しますので。
どうか御存分に閲覧下さい。
クリスティアーヌ、しかと案内するのだぞ!」
「はっ! 一命に代えましても!」
クリスティアーヌ姫の家庭教師を務めるフッガー博士は首長国屈指の智者と讃えられているそうで。
その方の協力も頂けることになった。
まずは初日ということで挨拶だけ交わさせて頂いたのだが、渾身叡智とも例えるべき方であった。
言うまでもなく彼の称号は【大賢者】である。
後、陛下は執務室に赴き、部下達から本日の最終報告を受ける。
何故か俺も立ち会わされたので、邪魔にならないようにソファの端っこでおとなしくしておく。
王国情勢は悲惨である。
とうとう王都近辺の師団や大貴族が叛き始めたらしい。
恐らく現在の王は地盤である西部に逃亡するしかないだろうとのこと。
陛下が俺に対して級友の保護を申し出てくれたので
「他の人民が犠牲になる形でなければお願いさせて下さい。」
というと頬を緩めた。
どうやら正答だったらしい。
帝国四諸侯。
皇帝を殺したはいいが、他の諸侯を上手く纏める事が出来ず本拠地を脅かされ始めている。
ムシのいい話だが、首長国に対して必死で和平を懇願している。
「いや、我が国の国土に居座られたまま、和平と言われても…」
陛下は絶句したまま参謀総長の意見を待つ。
「では陛下、このまま奪還作戦を続行して構いませんな?
アンリ殿下からも《総攻撃の許可を絶対に取って来るように》と命じられております。」
陛下は横目で俺をチラ見する。
《大体、戦争ってこんな感じで進行するんだよ》
とでも教えてくれているのだろうか?
「うむ! 総攻撃を許可する!
各員の奮闘を祈る!!」
「はッ!!
必ずや侵略者共を抹殺し、陛下に勝利の報を捧げてみせまする!!!」
『陛下、帝国四諸侯の人ってどうなるんですか?』
「え? 死ぬんじゃないかな?
地政学的にもそうなるって決まってるし。」
『あー、地政学的に駄目なら駄目ですね。』
「あ、コリンズ社長が助命するなら…
何とか工作してみましょうか?」
『あ、いえいえ。
私も面識は無いので。』
「向こうは相当コリンズ社長のことで参ってましたよ。」
『そうなんですか?』
「いや、アレクセイ君が《娘とコリンズ社長が結婚した》って言い触らしながら進軍してたから。
四諸侯側に味方する勢力が無くなってしまって。」
『いや! 虚言ですよ!
俺は請けるなんて一言も言ってないのに
あの皇帝が勝手に!』
「虚言であれ何であれ、帝国の各諸侯には状況的に確かめる術がありませんから。
だって、そんな。
ただでさえ世界第三位の富豪が治める国を攻めているのに、世界第一位の富豪まで敵に回せる訳ないじゃないですか。
私が帝国人だったとしても四諸侯側なんかに絶対味方出来ないです。」
その後、アレクセイの死の状況が機密情報レベルの深度で語られる。
どうやら帝国皇帝は、《俺が彼の縁談に同意し、味方として支援物資を送る》という虚報を信じて架空の合流地点に寡兵で向かったらしい。
そして、何故かそこに待ち伏せていた四諸侯の軍勢に包囲されて殺された、とのこと。
「いや、当初は情報が錯綜していたので…
コリンズ社長が火中の栗を拾ったのか?と参謀本部がざわめいておりました。
違うんですよね?」
『いや、帝国皇帝の事は…
本当に…
俺も自分の身の回りのことで精一杯でしたので。』
陛下と2人で皇帝アレクセイを追悼する。
まあ、追悼と言ってもグラスを合せただけだが。
あの陽気な男のことだ。
こういうカラッとした弔いの方が喜んでくれるだろう。
皇帝アレクセイ君のご冥福を祈り、かんぱーーーーい!
==========================
【コリンズ朝 建国戦争】
〇ヒルダ・コリンズ (元宿泊業経営)
VS
●アレクセイ・チェルネンコ (帝国皇帝)
※決まり手 偽報計
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【名前】
リン・コリンズ
【職業】
(株)エナドリ 創業オーナー
駐自由都市同盟 連邦大使
連邦政府財政顧問
【称号】
ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒
【ステータス】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
《LV》 42
《HP》 (6/6)
《MP》 (5/5)
《腕力》 3
《速度》 3
《器用》 3
《魔力》 2
《知性》 5
《精神》 8
《幸運》 1
《経験》 21兆8760億5835万1035ポイント
次のレベルまで残り6兆8455億4607万4620ポイント
【スキル】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
「複利」
※日利42%
下12桁切上
【所持金】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
1京5005兆3455億1901万ウェン
※バベル銀行の8兆8167億8740万ウェン預入証書保有
※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有
※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有
※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有
※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有
※自由都市海洋開拓債1000億ウェン分を保有
※第2次自由都市未来テック債1000億ウェン分を保有
※首長国臨時戦時国債1100億ウェン分を保有
※自由都市国庫短期証券4000億ウェン分を保有。
【試供品在庫】 (リン・コリンズからは視認不能状態)
エナドリ 588605ℓ
※今回発生分の331214ℓは全て首長国政府に寄贈
※リン・コリンズの指示により原液200000ℓをドルト・エヴァーソン自由食品ホールディングス会長に譲渡。
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アルファポリスオンリーを解除しました。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
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「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
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五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
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そんな中、この五歳児が得たスキルは
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もはや文字ですら無かった
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本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
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またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
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