31 / 98
第2章
ロングレンジフェス 2
しおりを挟む
アイたちはカタン出張所内の宿泊部屋で目が覚めた。それぞれ立ち上がり身体の調子を確かめる。
「お前ら、頑張れよ!」
アサノはアイとおキクの肩をポンと叩くと、軽く激励を送る。それからサカシタとともに、前回帰還時の登録地点に転移していった。
「登録地点に転移しますか?」
アイのピアスがキラリと煌めき、セーレーが確認してきた。とはいえ、街外れの森である。大した意味は無い気もする。
アイたち3人は、お互い顔を見合わせた。
「あの」
そのときフランが、おずおずと手を挙げる。
「アイたちに出会ってなければ、行こうと思ってたところがあるの」
「どこ?」
アイが興味深そうに食い付いた。
「ここの東にあるヤータ市で、冒険者を対象にしたお祭りが開催されるんです」
「お祭り?」
その言葉の響きに、アイの瞳が輝きを放つ。
「仲間を探すために行くつもりだったから…もう意味はないのだけど」
フランはアイとおキクの顔を交互に見た。
「もし良かったら、行ってみませんか?」
「行くー!」
アイが考える間もなく即断する。
「私もいいよ。なんだか面白そう」
おキクも特に悩むことなく頷いた。
「だったらアイとおキクも、冒険者に登録した方がいいと思うの!」
ふたりの返事を確認すると、フランが瞳を輝かせて提案を持ちかけた。
「冒険者…って、登録が必要なの?」
アイが少し戸惑った顔になる。
「魔物襲来以降に出来た制度だけど、登録しておけば活躍に応じて国から報酬が出るんです。軍隊以外の戦力を集める手段になってるみたい」
「なるほど」
フランの解説におキクが頷くと、白い仔猫に目を向けた。
「ミーコ、私たちが登録しても大丈夫なのかな?」
「サトーからは特に禁止されてはいません。ただ参考までに、アサノとサカシタは書類上は軍隊に所属しています」
ミーコはひょいと飛び上がると、おキクの肩にちょこんと座る。
「兵役は課されていませんが、軍の作戦には参加の義務があります。おキクたちが冒険者に登録した場合、アサノたちとの合流は難しくなります」
「別にいいんじゃない?」
アイが笑顔で軽く答えた。
「元々アサノさんたちとは、実力差があり過ぎるから足を引っ張るだけだよ。私たちは私たちで地道にガンバろう」
「それもそうね」
おキクも大きく頷いて、アイに賛同する。
「それでは…登録地点への転移は無しということで問題ないですね」
セーレーが独り言のように呟いた。
~~~
冒険者の詰所に入ると、そこはとても広いロビーであった。アルコールを含むドリンク類や軽食の販売もあり、フードコートのような空間である。
そして建物の2階と3階の部屋は全て、冒険者用の宿泊施設として提供されていた。
受付は3つあり「登録・宿泊係」「報奨金係」「飲料・軽食係」である。登録宿泊係にはスタッフは1名だけであったが、あとの係には数名のスタッフが配置されていた。
フランはアイとおキクを連れて、登録受付のカウンターへと向かった。
「あら、あなた」
フランに気付いたスタッフが、向こうから話しかけてきた。三つ編み眼鏡の女性である。胸章には「エリサ」とあった。良くも悪くもフランは目立っていたため、覚えていたのだ。
「ちゃんと仲間を見つけられたのね」
「…え?」
エリサの発言に、フランが不思議そうな顔をする。
「あら、ごめんなさい。長くここで働いてるとね、冒険者の方がどんな用事で来たのか、何となく分かるようになるの。それなのにあなた…誰にも声をかけずに去って行くから、少し不思議に思っていたのよ」
エリサが安心したように、満面の笑みを零した。
その優しい笑顔につられてフランも笑うと、力一杯に頷いた。
「そうなんです!だから私の新しい仲間を登録しにきました!」
「お前ら、頑張れよ!」
アサノはアイとおキクの肩をポンと叩くと、軽く激励を送る。それからサカシタとともに、前回帰還時の登録地点に転移していった。
「登録地点に転移しますか?」
アイのピアスがキラリと煌めき、セーレーが確認してきた。とはいえ、街外れの森である。大した意味は無い気もする。
アイたち3人は、お互い顔を見合わせた。
「あの」
そのときフランが、おずおずと手を挙げる。
「アイたちに出会ってなければ、行こうと思ってたところがあるの」
「どこ?」
アイが興味深そうに食い付いた。
「ここの東にあるヤータ市で、冒険者を対象にしたお祭りが開催されるんです」
「お祭り?」
その言葉の響きに、アイの瞳が輝きを放つ。
「仲間を探すために行くつもりだったから…もう意味はないのだけど」
フランはアイとおキクの顔を交互に見た。
「もし良かったら、行ってみませんか?」
「行くー!」
アイが考える間もなく即断する。
「私もいいよ。なんだか面白そう」
おキクも特に悩むことなく頷いた。
「だったらアイとおキクも、冒険者に登録した方がいいと思うの!」
ふたりの返事を確認すると、フランが瞳を輝かせて提案を持ちかけた。
「冒険者…って、登録が必要なの?」
アイが少し戸惑った顔になる。
「魔物襲来以降に出来た制度だけど、登録しておけば活躍に応じて国から報酬が出るんです。軍隊以外の戦力を集める手段になってるみたい」
「なるほど」
フランの解説におキクが頷くと、白い仔猫に目を向けた。
「ミーコ、私たちが登録しても大丈夫なのかな?」
「サトーからは特に禁止されてはいません。ただ参考までに、アサノとサカシタは書類上は軍隊に所属しています」
ミーコはひょいと飛び上がると、おキクの肩にちょこんと座る。
「兵役は課されていませんが、軍の作戦には参加の義務があります。おキクたちが冒険者に登録した場合、アサノたちとの合流は難しくなります」
「別にいいんじゃない?」
アイが笑顔で軽く答えた。
「元々アサノさんたちとは、実力差があり過ぎるから足を引っ張るだけだよ。私たちは私たちで地道にガンバろう」
「それもそうね」
おキクも大きく頷いて、アイに賛同する。
「それでは…登録地点への転移は無しということで問題ないですね」
セーレーが独り言のように呟いた。
~~~
冒険者の詰所に入ると、そこはとても広いロビーであった。アルコールを含むドリンク類や軽食の販売もあり、フードコートのような空間である。
そして建物の2階と3階の部屋は全て、冒険者用の宿泊施設として提供されていた。
受付は3つあり「登録・宿泊係」「報奨金係」「飲料・軽食係」である。登録宿泊係にはスタッフは1名だけであったが、あとの係には数名のスタッフが配置されていた。
フランはアイとおキクを連れて、登録受付のカウンターへと向かった。
「あら、あなた」
フランに気付いたスタッフが、向こうから話しかけてきた。三つ編み眼鏡の女性である。胸章には「エリサ」とあった。良くも悪くもフランは目立っていたため、覚えていたのだ。
「ちゃんと仲間を見つけられたのね」
「…え?」
エリサの発言に、フランが不思議そうな顔をする。
「あら、ごめんなさい。長くここで働いてるとね、冒険者の方がどんな用事で来たのか、何となく分かるようになるの。それなのにあなた…誰にも声をかけずに去って行くから、少し不思議に思っていたのよ」
エリサが安心したように、満面の笑みを零した。
その優しい笑顔につられてフランも笑うと、力一杯に頷いた。
「そうなんです!だから私の新しい仲間を登録しにきました!」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる