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【短編おまけ】常盤色の厄日
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「高橋、そろそろ……。その子達の母親も心配する頃だよ」
そうか? とこちらを見た彬が、「よッ!」と一際高くボールを蹴り上げた。
落ちてきたボールを両手で受け留めて、子供達へとボールを差し出す。
「仲良くしてたら、また教えてやるから」
言って、グシャグシャと二人の頭を撫でた。
「ほんと?」
「いつ? あした?」
夕陽の光と相まって、子供達の瞳が輝いていた。
「ま、とにかく今度だ」
ニンマリ笑った彬は子供達と指切りをして、「コケんなよ! 道路に飛び出すなよ!」と声を張り上げ、走って行く子供達を見送る。
「俺等も帰るか」
子供達が見えなくなると隆哉を見遣って、彬が笑った。
「で? サッカー部に入る決心はついたのかよ?」
歩き出しながら問うた彬に、「んー」と隆哉が視線を逸らせる。
「お前な……」
往生際が悪いぞ、と軽く睨んで、彬はサッカーの魅力をこれでもか! とばかりに隆哉へと語ってやった。
「んで――もし全国大会行けたらさ。いや、絶対行くけど……」
自転車で通り過ぎる他校の男子学生と擦れ違いながら隣を見ると、隆哉の姿がない。
振り返れば隆哉は足を止め、今の男子学生の遠ざかる背中を見つめている。
そうか? とこちらを見た彬が、「よッ!」と一際高くボールを蹴り上げた。
落ちてきたボールを両手で受け留めて、子供達へとボールを差し出す。
「仲良くしてたら、また教えてやるから」
言って、グシャグシャと二人の頭を撫でた。
「ほんと?」
「いつ? あした?」
夕陽の光と相まって、子供達の瞳が輝いていた。
「ま、とにかく今度だ」
ニンマリ笑った彬は子供達と指切りをして、「コケんなよ! 道路に飛び出すなよ!」と声を張り上げ、走って行く子供達を見送る。
「俺等も帰るか」
子供達が見えなくなると隆哉を見遣って、彬が笑った。
「で? サッカー部に入る決心はついたのかよ?」
歩き出しながら問うた彬に、「んー」と隆哉が視線を逸らせる。
「お前な……」
往生際が悪いぞ、と軽く睨んで、彬はサッカーの魅力をこれでもか! とばかりに隆哉へと語ってやった。
「んで――もし全国大会行けたらさ。いや、絶対行くけど……」
自転車で通り過ぎる他校の男子学生と擦れ違いながら隣を見ると、隆哉の姿がない。
振り返れば隆哉は足を止め、今の男子学生の遠ざかる背中を見つめている。
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