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蒼い約束
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角を曲がった隆哉は、そこに人影がない事に愕然として足を止めた。
いや。本当は判っていた事なのかもしれない。心のどこかで「ああ、やっぱり」と、思っている自分がいるのだから。
「……時任。…時、任……」
呆然と呟きながら、あの場所に近付いて行く。しゃがみ込み地面に触れてやっと、彼はその姿を現した。
「どうした?」
視線だけを上げて訊いてくる俊介に、隆哉が一瞬言葉を失う。最初に「どうした」と訊かれる程、何かがあったと勘付かれる程、彬がいないという事に自分が動揺しているのだと思い知らされた気がした。
「高橋が、姿を消した」
隆哉の低い呟きに、ピクリと俊介が反応する。しかし目を伏せた俊介は意外にも、「そうか」と短く答えて苦笑を浮かべただけだった。
「――案外と、冷静だね」
皮肉とも取れる隆哉の言葉に、俊介はククッと肩を震わせると相手の口調を真似て返した。
「そっちこそ、珍しく動揺してるね」
見透かすように細められた目に、隆哉が口を噤む。フイッと真顔に戻った俊介が、沈むような声を出した。
「近いのか? その『瞬間』が」
いや。本当は判っていた事なのかもしれない。心のどこかで「ああ、やっぱり」と、思っている自分がいるのだから。
「……時任。…時、任……」
呆然と呟きながら、あの場所に近付いて行く。しゃがみ込み地面に触れてやっと、彼はその姿を現した。
「どうした?」
視線だけを上げて訊いてくる俊介に、隆哉が一瞬言葉を失う。最初に「どうした」と訊かれる程、何かがあったと勘付かれる程、彬がいないという事に自分が動揺しているのだと思い知らされた気がした。
「高橋が、姿を消した」
隆哉の低い呟きに、ピクリと俊介が反応する。しかし目を伏せた俊介は意外にも、「そうか」と短く答えて苦笑を浮かべただけだった。
「――案外と、冷静だね」
皮肉とも取れる隆哉の言葉に、俊介はククッと肩を震わせると相手の口調を真似て返した。
「そっちこそ、珍しく動揺してるね」
見透かすように細められた目に、隆哉が口を噤む。フイッと真顔に戻った俊介が、沈むような声を出した。
「近いのか? その『瞬間』が」
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