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蒼い約束

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 淡々とした口調の中に、とてつもない重圧を感じる。先程から身動きもせずにジッと自分を見つめている彬も、息をつめて様子を窺っていた。

 この選択が、そんなに難しい事とは思えない。この二人が何故こんなにも慎重になっているのかすら、秀行には理解出来なかった。

「いいか、ヒデ」

 彬がフイッと目を逸らせ、低く言葉を吐き出す。その顔は今まで見たどの顔よりも真剣で、少し秀行を不安にさせた。

「お前がいい加減な気持ちであの子と一緒に生きるなら、お前はこれから先、大事な奴等を亡くし続ける事になる。これはマジで一生の選択になるんだぜ。今あの子を選ぶなら、これから先どんなに好きな奴や愛する奴が現れたとしても、あの子をないがしろにしちゃいけねぇ。大事な『特別な友達』として意識してやるんだ。どんな瞬間にもだぜ? これは『絶対条件』だ。――そんな事を、お前は一生やっていけるのかよ?」

 顔を逸らせ硬い表情のまま、彬が問いかける。

 ようやく二人が何を言いたいのかを理解した秀行は、キュッと唇を引き結び、瞼を伏せた。
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