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碧の癒し

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 ニヤリと不敵に笑った彬は、微かに洩れた隆哉の吐息を無視して、男の背中を睨み据えた。

 ――これじゃ、キリがねぇ。

 チッと舌打ちした彬が、すぅーと大きく息を吸い込んで立ち止まる。

「こらぁー、バカ上司ィ! 俺は、いや俺達はァ、お前の『秘密』を知っているぅーッ!」

 力いっぱい叫んだ彬に、前を走っていた男がつんのめるようにして足を止めた。愕然とした表情で振り返る男を見据え、「ヘヘンッ」と中指を突き立ててやる。

 『上司』というのは一か八かの勘だったが、相手の反応からして、ハッタリは充分かませられたようだった。

「何もわざわざ『俺達は』って言い直さなくても」

 非難めいた隆哉の台詞などお構いなしで、彬は得意満面な笑顔を浮かべた。

「ほら、止まった」

 両手を広げた彬に、「ああ、凄い凄い」と呆れ気味の隆哉が等閑に手をたたく。それでも嬉しそうな顔でニッと笑った彬は、次の瞬間、猛ダッシュで男へと駆け寄った。

「返せよ!」
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