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碧の癒し

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「で、指輪だって判ったのはいいけどよぉ。どーすんだよ? あそこに指輪なんて落ちてなかったぜ」

 足早に歩く隆哉に歩調を合わせて歩きながら、彬は隆哉を窺い見た。

「当然だね。あれば警察が見つけてるもの」

「じゃ、警察に行くのか?」

「いや、彼女に訊く。彼女は見てる筈だから、自分から落ちた指輪を拾った人物を」

「へ?」

「彼女が死んだ後に指輪が落ちて、警察が来た時には無かったと言うんだから、拾ったのは新聞配達の青年か、駆けつけた内の誰かだろう」

 歩調を緩めた隆哉は、ぼんやりと彬に目を遣りながら独り言のように呟いた。

「きっと彼女は答えてくれない。そうしたらあんた、もう一度言える?」

「何を?」

「彼女を傷つける『言霊ことだま』。――あの指輪を拾ったのはね、たぶん彼女の恋人だよ」

「なに?」

「そうでもない限り、彼女の『悲しみ』があんなに強い訳ないもの。関係ない人が拾ったのなら、依憑を受けてる筈だし、彼女から」

 目を剥く彬から視線を逸らして、隆哉は縄の痕の残る首へと手をあてた。
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