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碧の癒し

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「お前と違ってなぁ! 生きたくても死んじまった奴等はいっくらでもいんだよッ! お前はそんな奴等の事、少しは考えた事あんのかッ! いや、もうこの際考えなくてもいいけどよぉ! せめてお前の周り! 周りの奴等の事ぐらいは考えてやれよッ!

 なんの断りもなく死なれて、厭な気分だけを残されて、んで勝手に死んだ張本人は『悲しみ』だけを抱いてるだって? ハッ、笑かすなよ? 自分の意志で死んだんだったらなぁ、せめて笑っとけ、バーカ! いらねぇ命ならなぁ、くれてやれよッ、生きたい奴等によぉッ!」

 怒りの為に、声が震えだす。

 苛立ちを言葉に込めて吐き出す度に、俊介の顔が頭に浮かんだ。それは笑っていたり、呆れていたり、口惜しげだったり……。

 その顔は彬を、どうしようもなく泣きたい気分にさせた。

 なんで。死にたい奴が勝手に死んで、この世に未練を残すんだ。だったら俊介やヒデに憑いてる女の子はどーなるんだ。死にたくないのに、やりてぇ事だっていっぱいあったのに。無理矢理、命絶たれて……。

 ――あいつとは、『約束』だってしてたんだッ!
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