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碧の癒し

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 当然、と自信あり気に頷いた彬の顔を、虚ろな瞳が見つめる。

「それも勘?」

「いんや。今回のはちゃんと考えがあってだぜ。だって、死ぬ前に拒絶するような何かが起こったんなら、ここで死ぬのやめるだろ。ここじゃなくても首は吊れるし、他にメリットがあるんなら別だけど、この場所で死ぬ理由がねぇもん」

 肩を竦め、あっさりと答える。それに「んー」と唸った隆哉は首を傾げながら枝の真下に立ち、クルリとこちらに向き直った。

「なら。この視界の範囲で何かを感じたって事になる。死んでからなら、ここから動けなかった訳だし」

 言いながら一同を見渡した隆哉は、スーッと体の力を抜くように瞼を閉じた。その口からゆっくりと、低い声が流れだす。

「彼女が答えない以上、なるべく彼女に近付いて推測してみるしかないな。順を追って考えてみよう。――まず。周りからは死を選ぶ程の悩み事があるようには見えなかった彼女だけど、逆を言えば『周りに気取られたくない程の何かを思いつめてここまでやってきた』という事にもなる。アルコールを飲んではいないし、突発的な行動ではないだろう。

そして、首を吊ったのは周りが――勿論この神社の人々もみんなが寝静まっている深夜未明。辺りは静かだ。それから空が段々と白んできて。――何を感じる?」
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