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碧の癒し

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 隆哉に案内された先。少し奥まった一本の木の前で二人を待っていたのは、こちらを向いた二人の男だった。片方は二十代半ばぐらい。黒いスーツに、少しクセのある髪が所々はねていた。もう一方の男の方は、年は同じ程だろうが白い神官姿で、穏やかな微笑をこちらへと向けていた。

「彼だよ。津ノ森つのもり冬樹とうきさん。隣が東城とうじょうゆうさん」

「ああ、お前の先生ね」

 目が合った男性に「ども」と軽く頭を下げる。それに応えて会釈した神官は、透き通るような静かな声を、隆哉へと流した。

「お友達ですか」

「いえ、彼は」

「友達! の、高橋彬です!」

 否定しようとする隆哉を両手で押し遣って、彬が宣言する。チロリと不満げに眉を上げた隆哉に、「文句あっか」と睨みをきかせる。

「霊をたいらしくて、冬樹さんにコツを教えてもらいたいって」

 張り合うだけ時間の無駄だと判断したらしい隆哉は、彬の手を払いながら呆れ半分の声で告げた。

「霊を? 視るだけですか?」

「いや、出来れば話もしたいです」
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