上 下
93 / 215
白い影

36

しおりを挟む
 感情の籠らない低い声を出した隆哉に、秀行が眉尻を上げた。グイと顔を近付けて歯を食いしばり、こちらも負けぬ程の低い声をノドの奥から絞り出す。

「巻き込むも何も、お前が発端だろう」

「俺が? どーして?」

「お前に関わるまで、こんな事はなかったんだ! なんだこれは! 何かの悪戯のつもりか?」

「悪戯?」

「ちょ…、ヒデ?」

 友人のあまりの憤慨ぶりに、訳が解らず彬が止めに入る。周りを行く生徒達が、不穏な空気に自分達を避けて通って行った。

「やめろよ」

 声を顰め言った彬に、怒りを含んだ秀行の視線が向けられる。

「邪魔をするな。お前も、何平気な顔してんだ」

「どーしたんだよ? 落ち着けって」

「うるさいッ」

 掴み掛からんばかりの勢いに、仕方なく二人の間に割って入る。二人の胸を押し遣って、なんとか引き離した。


『とらないで!』


 途端。

 彬の耳に幼い子供特有の、甘ったるい舌足らずな声が響く。

「なっ!」

 弾かれるように手を引っ込めた彬の肩を、トンと隆哉の両掌が受け止めた。目を見開いて秀行を凝視する彬の瞳に、白く小さな人影が映っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
よくよく考えると ん? となるようなお話を書いてゆくつもりです 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【実体験アリ】怖い話まとめ

スキマ
ホラー
自身の体験や友人から聞いた怖い話のまとめになります。修学旅行後の怖い体験、お墓参り、出産前に起きた不思議な出来事、最近の怖い話など。個人や地域の特定を防ぐために名前や地名などを変更して紹介しています。

100文字ホラー

九戸政景
ホラー
淡々と語られる100文字の恐怖。サッと読め、サーッと血の気が引いていく恐怖に果たしてあなたは耐えられるだろうか。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

花の檻

蒼琉璃
ホラー
東京で連続して起きる、通称『連続種死殺人事件』は人々を恐怖のどん底に落としていた。 それが明るみになったのは、桜井鳴海の死が白昼堂々渋谷のスクランブル交差点で公開処刑されたからだ。 唯一の身内を、心身とも殺された高階葵(たかしなあおい)による、異能復讐物語。 刑事鬼頭と犯罪心理学者佐伯との攻防の末にある、葵の未来とは………。 Illustrator がんそん様 Suico様 ※ホラーミステリー大賞作品。 ※グロテスク・スプラッター要素あり。 ※シリアス。 ※ホラーミステリー。 ※犯罪描写などがありますが、それらは悪として書いています。

日報受取人

智天斗
ホラー
私はある会社で働く社員。 これは、ある男の日報。それをここに書き写します。毎日18時に届く謎の日報。嘘か誠か、それすらも分からない。 ある男が体験した不思議で少し不気味な話の数々。 これを書いた本人とは会ったことはないですが、彼はきっと今もどこかで日報を書いている。 僕はこの仕事を続ける、その日報が届き続ける限り。 短い話となりますのでサクッと見れます。良ければ読んでください。 日報が届き次第、こちらに記載を予定しております。 日報の文面についてこちらで解釈し、添削を加えております。一部表現につきまして、○○などで表現する場合がございます。ご了承ください。 ほぼ毎日18時投稿予定 短編として、登場人物の体験談を掲載しておりますのでよければ見てください。 フィクションです。それを承知の上ご堪能ください。

処理中です...