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白い影

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 早い足取りの隆哉に、「それなら」と彬は人差し指を立てて提案した。

「一緒に帰んねぇ? 俊介の依憑は関係なくさ」

 彬の言葉に、ピタリと隆哉の足が止まる。ゆっくり顔を彬へと廻らせ、虚ろな瞳で見下ろした。

「確か昨日。迷惑だとか消え失せろだとかの台詞を、その口から聞いた憶えがあるんだけど。俺の記憶では」

「さぁ? 俺の記憶にはねぇなぁ」

 ベッと舌を出し、にへらと笑った彬に文句を言うつもりもないらしく、隆哉は再び歩き出した。

「どっちにしても、今日は駄目。俺、寄る所があるから」

「寄るトコ? じゃ、そこに行く途中まででもいいからさ、一緒に帰ろうぜ」

「…………」

 一瞬、目の端で彬を捉えた隆哉は、無言のまま少しだけ歩くスピードを落とした。

「それで? 用は何?」

 低く放たれた隆哉の問いに、「むー」と唸り声を発した彬は、彼の前に回り込んでその無表情な顔を指差した。

「なになに。友達と帰んのに、用事がいるワケ?」

 責めるように呆れた声を出す。すると相手は、仕方ないとでも言うように足を止めた。
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