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白い影

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 コツ、コツ、と指先で机を小突きながら、フーッと大きな溜め息を吐く。探るような視線を彬に向けた秀行は、やはり昨日一緒に行くべきだったかなと心密かに後悔していた。

 どう考えても、相沢に何かを吹き込まれたとしか思えない。

 昨日も相沢に手を掴まれただけで、誰だかの声が聴こえたなどと、訳の解らない事を言って騒いでいたのだ。それに加えて今朝からのこの態度。

 ――取り敢えず。高橋が相沢みたいになったら嫌だなぁ。

 虚ろな瞳で彬を見つめながら、そんな事をぼんやりと考える。

 あんな、死んだ魚みたいな目で俺を見て、「濡れた女の人を背負ってるね」などと言われた日には、きっと笑顔で対処なんて出来ないだろう。「目を覚ませ!」と一発おみまいするか、すぐにその場で友情が決裂するか。

 そのどちらかに違いない。

  「仕方がない」と溜め息一つ吐ついた秀行は、本格的に彬がおかしくなった原因を探る事にした。

「本当に死んだ女友達なんていないんだ。学校の違う幼馴染の女ならいるが、あいつは生きてるし」
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