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緋い記憶

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「どうした?」

 虚ろな視線を宙に漂わせる彬の顔を、隆哉が覗き込む。

「いや。続けてくれ」

「あんたの顔に死相が出てる事を時任に伝えた時、変わったんだ。彼の望みが」

「俊介の、望み?」

 その途端。彬の頭には、はっきりとした『答え』が浮かんだ。

 ――そーいう事、なのか? 俊介?

 誰だって死にたくはない。そうだ。お前だってまだ、死にたくなんかなかったよな。

 でも――。

 でももしそれが、『二人で』なら……?

 お前もそう思ってくれたか? 俺とならば、って。

 前髪をかき上げ、かなり暗くなってしまった道路へと顔を向ける。

 なぁ俊介。俺を、待っててくれるのか?

「それなら」

 小さく呟いた彬は、もう視る事すら叶わない親友へと、微笑みを浮かべた。

「それなら、悪くねぇよ」




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