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緋い記憶

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「えっ」

 言葉の意図を探るように目の前の男を見据える。心臓が震えて、上手く言葉が出てこなかった。

「――どういう……意味、だ?」

「自分で確かめろ」

 低くそれだけ言った隆哉は、彬の腕は掴んだままで歩き出した。

 真っ直ぐ前だけを見て歩く男は、戸惑う彬を引き摺るようにして歩く。腕を掴んだその手からは、「逃がさないぞ」という強い意思だけが滲み出ていた。







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