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緋い記憶

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 夕陽を正面に受けて歩いていた相沢隆哉は、不意に足を止めると、路地の塀に背を預けながらズリズリと腰を下ろした。無感情な瞳を、目の前の地面へと向ける。

「中々手強いね、あんたの親友」

 その視線の先には、制服姿の男がうつ伏せに横たわっている。隆哉の台詞に肩を揺らして笑った男は、顔は地面につけたまま目線を上げて隆哉を見遣った。

「だろうな。あいつはお墨付きの、頑固者だから」

 ハァハァと苦しげな息を吐き出しながら、それでも笑顔を浮かべる。

「素直に俺の事、言ってみれば?」

 その提案に唸り声をあげた隆哉は、膝に肘をついて顎を支えた。視線をゆっくりと宙に漂わせる。

「今までの『経験』から言うと、あまり名案だとは言えない。大体は気味悪がって口を噤む。それに何故かあの高橋、あいつは既に俺の事を警戒してるから。俺の顔見ただけで臨戦態勢って感じ。――なんであんな性格なの?」

「頑固な上、喧嘩っぱやいってか」

 フーッと力無く息を吐き出した隆哉に、男が問いかける。

「ショックか? 会ったばかりのあいつから、いきなり敵対視されて」
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