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呪いの鎧武者
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「そう。お前が最初に言っただろ? 『どうして祠じゃなく学園を建てたのか』ってさ。これがその答え。学園じゃなきゃ駄目だったんだ。鎧武者にとっては、祠なんて有難くもなんともない。彼は守りたいんだから、子供達をさ。五つの封印は鎧武者を閉じ込める為のものじゃない。俺達と鎧武者を守る為の封印だ」
「じゃあ、呪いの噂は――先輩の曾爺さんの事故って……」
「勿論、鎧武者の所為じゃない。言うまでもなく佐藤もな。彼がそんな事をする筈がない。感謝してもいいぐらいだからな、曾爺さんには」
「………そう、だな」
あまりに意外なお宝に、俺の思考は働かず言葉も出なかった。
しかし松岡は至極ご機嫌で、ズボンのポケットに両手を突っ込み肩を震わせた。
「ホント、おもしれぇ学園だな、此処は」
そう言って資料室へと戻った彼は、どんでん返しと書棚を元へと戻した。当然その後の、本を戻すという作業は俺一人がやったが。
「でも、なんで此処に隠し部屋があるって判ったんだ?」
「ああ、『変な感覚』って言ってただろう? あれって、部屋の大きさの事だったんだ。それで下の階の廊下を調べてみた。そしたら、下の階では窓六枚分ある筈の奥行が、この部屋では五枚分しかなかった。つまり一枚分、俺の歩幅でいうなら一歩半分、奥行が短かったんだ。だからこの部屋には窓が無い。窓を作ったら、一発でバレちまうからな。それさえ判れば入口を見つけるなんて簡単だったぜ。間取りから考えて、そのどちらかの書棚の後ろしかないと思ったよ」
「へぇ……」
やっぱりすごいと感心した俺だが、それを口に出すのはや止めにした。俺の表情から、バレてしまっているのに違いないだろうが……。
電気を消し資料室を出る時になって、松岡は振り返り感慨深げに言った。
「この部屋、勿体ないよなぁ。山下」
鍵を掛けた扉に手を置いて、彼はゆっくりと扉を撫でた。
「いつまでいるんだろうな、あいつは此処に」
「そりゃ、この学園が無くなるまでだろ。俺達が卒業しても、また新入生が入って来る。中々忙しいんだぜ、あいつは」
俺の台詞に振り返った松岡は、珍しくふわりとした笑みを浮かべた。
「そっか」
それだけ答えて、暗い廊下を歩き出す。
顔は見えなくても、廊下に響く軽い足取りは、彼がまだ笑っている事を俺に伝えていた。
「じゃあ、呪いの噂は――先輩の曾爺さんの事故って……」
「勿論、鎧武者の所為じゃない。言うまでもなく佐藤もな。彼がそんな事をする筈がない。感謝してもいいぐらいだからな、曾爺さんには」
「………そう、だな」
あまりに意外なお宝に、俺の思考は働かず言葉も出なかった。
しかし松岡は至極ご機嫌で、ズボンのポケットに両手を突っ込み肩を震わせた。
「ホント、おもしれぇ学園だな、此処は」
そう言って資料室へと戻った彼は、どんでん返しと書棚を元へと戻した。当然その後の、本を戻すという作業は俺一人がやったが。
「でも、なんで此処に隠し部屋があるって判ったんだ?」
「ああ、『変な感覚』って言ってただろう? あれって、部屋の大きさの事だったんだ。それで下の階の廊下を調べてみた。そしたら、下の階では窓六枚分ある筈の奥行が、この部屋では五枚分しかなかった。つまり一枚分、俺の歩幅でいうなら一歩半分、奥行が短かったんだ。だからこの部屋には窓が無い。窓を作ったら、一発でバレちまうからな。それさえ判れば入口を見つけるなんて簡単だったぜ。間取りから考えて、そのどちらかの書棚の後ろしかないと思ったよ」
「へぇ……」
やっぱりすごいと感心した俺だが、それを口に出すのはや止めにした。俺の表情から、バレてしまっているのに違いないだろうが……。
電気を消し資料室を出る時になって、松岡は振り返り感慨深げに言った。
「この部屋、勿体ないよなぁ。山下」
鍵を掛けた扉に手を置いて、彼はゆっくりと扉を撫でた。
「いつまでいるんだろうな、あいつは此処に」
「そりゃ、この学園が無くなるまでだろ。俺達が卒業しても、また新入生が入って来る。中々忙しいんだぜ、あいつは」
俺の台詞に振り返った松岡は、珍しくふわりとした笑みを浮かべた。
「そっか」
それだけ答えて、暗い廊下を歩き出す。
顔は見えなくても、廊下に響く軽い足取りは、彼がまだ笑っている事を俺に伝えていた。
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