15 / 115
黒い幻影
14
しおりを挟む
階段を上がりきった俺達は、屋上へと続くドアの前で腰を下ろした。バスタオルを敷いてその上に子犬を寝かせてやる。前足の上に頭を乗せて目を閉じる子犬を撫でてやりながら、松岡は俺を上目遣いで見つめた。
「で? 何を思い出したって?」
「ああ、うん」
俺はもう七年も前になる小学生の時の記憶を、ゆっくりと呼び起こしながら話し始めた。
「俺が小学三年の時だったんだけど、すっげぇや嫌な奴がクラスに一人いたんだ。そいつは確か、弁護士の息子で――兎に角、凄く頭のいい奴でさ。でもなんか、俺とは相性悪かったんだよな。毎日ケンカばっかしてたし、とてもじゃないけど『友達』って感じじゃなかった。『お前なんか大嫌いだ』っていつも思ってたし。――でさ。その頃俺、インコ飼ってて」
「インコ?」
「そう。黄色くて、目ぇ見えないヤツだったんだけど。目が赤くて綺麗で……。怖がりなヤツで、外に出してもビビッてずっと俺の肩にしがみ付いてるようなヤツだった。そのくせ、俺が呼んだら声を頼りに飛んで来たりしてさ。俺、すっげぇ可愛がってたんだ。――でも、そいつ。俺の不注意で殺しちまって……。それもさ、俺の背中の下敷きになって死んじまったんだぜ? 有りえねぇだろ?」
ハハッと自嘲の笑いが洩れる。少し沈黙して、俺は話を続けた。
「でもさすがにその時、泣いたんだ、俺。これ以上ないってくらいにさ……」
そんな頃もあったんだな、と今更思う。今ならきっと、一粒の涙も出ない。現に俺は、思い出しもしなかった。
――只。動物を飼うのだけは、なんだか避けていたけど……。
俺の話を黙って聞いていた松岡は、言葉を途切らせた俺をチロリと見ると、再び視線を子犬へと戻した。
「――それで?」
「で? 何を思い出したって?」
「ああ、うん」
俺はもう七年も前になる小学生の時の記憶を、ゆっくりと呼び起こしながら話し始めた。
「俺が小学三年の時だったんだけど、すっげぇや嫌な奴がクラスに一人いたんだ。そいつは確か、弁護士の息子で――兎に角、凄く頭のいい奴でさ。でもなんか、俺とは相性悪かったんだよな。毎日ケンカばっかしてたし、とてもじゃないけど『友達』って感じじゃなかった。『お前なんか大嫌いだ』っていつも思ってたし。――でさ。その頃俺、インコ飼ってて」
「インコ?」
「そう。黄色くて、目ぇ見えないヤツだったんだけど。目が赤くて綺麗で……。怖がりなヤツで、外に出してもビビッてずっと俺の肩にしがみ付いてるようなヤツだった。そのくせ、俺が呼んだら声を頼りに飛んで来たりしてさ。俺、すっげぇ可愛がってたんだ。――でも、そいつ。俺の不注意で殺しちまって……。それもさ、俺の背中の下敷きになって死んじまったんだぜ? 有りえねぇだろ?」
ハハッと自嘲の笑いが洩れる。少し沈黙して、俺は話を続けた。
「でもさすがにその時、泣いたんだ、俺。これ以上ないってくらいにさ……」
そんな頃もあったんだな、と今更思う。今ならきっと、一粒の涙も出ない。現に俺は、思い出しもしなかった。
――只。動物を飼うのだけは、なんだか避けていたけど……。
俺の話を黙って聞いていた松岡は、言葉を途切らせた俺をチロリと見ると、再び視線を子犬へと戻した。
「――それで?」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
冤罪! 全身拘束刑に処せられた女
ジャン・幸田
ミステリー
刑務所が廃止された時代。懲役刑は変化していた! 刑の執行は強制的にロボットにされる事であった! 犯罪者は人類に奉仕する機械労働者階級にされることになっていた!
そんなある時、山村愛莉はライバルにはめられ、ガイノイドと呼ばれるロボットにされる全身拘束刑に処せられてしまった! いわば奴隷階級に落とされたのだ! 彼女の罪状は「国家機密漏洩罪」! しかも、首謀者にされた。
機械の身体に融合された彼女は、自称「とある政治家の手下」のチャラ男にしかみえない長崎淳司の手引きによって自分を陥れた者たちの魂胆を探るべく、ガイノイド「エリー」として潜入したのだが、果たして真実に辿りつけるのか? 再会した後輩の真由美とともに危険な冒険が始まる!
サイエンスホラーミステリー! 身体を改造された少女は事件を解決し冤罪を晴らして元の生活に戻れるのだろうか?
*追加加筆していく予定です。そのため時期によって内容は違っているかもしれません、よろしくお願いしますね!
*他の投稿小説サイトでも公開しておりますが、基本的に内容は同じです。
*現実世界を連想するような国名などが出ますがフィクションです。パラレルワールドの出来事という設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる