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第47話 精霊との1日 後編
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すぐに動き出そうとするカーレンの手を莉子が取った。
「あの、トラップって……説明いただかないと!」
カーレンは莉子の手をそっとなでながら、大丈夫だと繰り返す。
「……エリシャが、アムラスが絶対仕掛けてくるからって……死角になるところに魔法石置いたの……魔力のある人が通ると、反応して、足止めする。リコに危険こないようにするため、だよ……」
「それなら、警察呼びましょ。危ないじゃないですか」
「……大丈夫。精霊は強い! だからリコ、3分経っても帰ってこなかったら、ケイサツってヤツ、呼んで」
「ダメですって」
「……エリシャと約束した。リコを危険にさせない。エルフの問題は、エルフ側の人で片付けなきゃ……」
テレビからは歓声が聞こえてくる。
沿道の人たちが国王に手を振って、名を呼んで歓迎しているのだ。
だが今は、その喜ばしい音ですら邪魔になる。
魔力を持った者が、カフェの敷地内にいるのだから。
莉子はテレビを消して、もう一度あたりを見回した。
だがそうしたところで、莉子に隠れている者の殺気や気配がわかるわけでもない。
莉子が電話をかけようとポケットに手を伸ばしたとき、カーレンが莉子の手を取った。
「大丈夫、行ってくる」
ハッキリと言い切ると、カーレンは颯爽とカフェを出ていく。
威風堂々とした歩き方で立ち向かうカーレンに頼もしくもなるが、それでも危険なことには違いない。
確かに本気を出せば、人を氷漬けにすることも可能なのだろう。
彼女は精霊だから、魔法を使っても問題はないようだ。
「いやいや、家の裏で氷漬けの死体ができるのは、勘弁です!」
莉子はすぐに、タイマーを3分セットしようとポケットを探ったとき、指に触れたものがある。
ジェイとミーから渡された、あの小瓶だ。
「これがあれば……」
莉子はそれを右手に握り、左手にはスマホを持つ。
番号は近くの警察署の番号をすでに打ち込んである。
莉子は今一度、想像で自分の家の周りを歩いてみる。
ぐるりと一周してみたが、この家の死角は一箇所だけだ。
裏玄関の左奥───
納品口ともなるそこは、一時的にゴミをしまう小さな倉庫もあり、道路からも公園からも見えない場所なのだ。
莉子は厨房へと入り、納品口へと向かう。
その間、耳をすまし、外の様子を聞いてみる。
「……わかんないな」
素早くドアまで走ると、ピタリとそこに耳をつけた。
のぞき窓のないドアだ。
冷たいドアが頬にべたりとはりつくが、外の音がかすかに聞こえた。
何かびちゃびちゃと濡れる音がする……
今日は晴れ……
晴れだ!
莉子はすぐにドアを開ける。
何かが起こっているのが間違いないからだ。
そこには、大きな水の塊に覆われたカーレンが……!
彼女の後ろには、黒い姿が見える。
だが、まるでスレンダーマンだ。
枝木のような細長い手足、顔は黒くわからない。
それが水の球を操り、カーレンの体をすっぽりと水の球に取り込んでいる───
もがくカーレンの姿に、莉子は右手の小瓶をぶん投げた。
「……この!」
水に触れた途端、瓶は割れ散った。
まるで小さな花火のように赤い粉が舞い上がる。
チリチリと火花が見えたと思った瞬間、手のひらほどの炎が上がった。
それは瞬く間に水を覆ってしまう。
その火の手は、スレンダーマンの手を伝い、全身に走り始める。
それで怯んだのか、カーレンが水の中からずるりと落ちた。
「カーレン!」
莉子は駆け寄るが、カーレンはむせながらも体勢を立て直すと、氷の粒を相手に撒き散らした。
すぐに炎は消えるが、カーレンの攻撃をかわせない相手は、身を翻して、煤をこぼしながら消えていった。
「なななんだったんですか、アレ……」
ぺったりと座り込んだ莉子に、びしょ濡れのカーレンが腕を伸ばす。
「……リコ、ケガない?」
「ああああたしは大丈夫です。カーレンさんこそっ」
莉子は無理やり足を立たせ、まだ咳き込むカーレンを家のなかへと連れてくる。
戸締りをしっかり確認してから、お風呂の準備に走る莉子だが、警察を呼ぼうか迷っていた。
説明をするにも、どういえばいいのかわからないからだ。
一方のカーレンはすごく落ち込んでいる。
気休めにホットミルクを手渡したが、牛乳に膜が張ったまま、口がつけられていない。
「……油断した。リコ、ごめん……ごめん」
「なにいってるんですか。どっちも助かったんですし」
「……あれ、たぶん、あれはヴァル……呪いで創られた暗殺者……」
「そんなものあるんですか。怖っ!」
しかしながら、あの小瓶がなかったら、今頃どうなっていたのか。
悲惨な想像しかできないため、莉子は考えないことにした。
「さ、お風呂の準備が整いました。カーレンさん、ゆっくりあったまってきてください。お風呂上りには、キンキンのビールでも飲みましょう。このことはあとでみんなに報告して、対応、考えましょう?」
「……リコも入ろう」
「いえいえ、カーレンさん、ゆっくり入ってください」
声をかけるが、カーレンが莉子の手首を離さない。
この風呂はファミリー用だから、大人2人くらいなら問題ないだろう。
この際、恥ずかしい……とも言ってられない。
なぜなら、カーレンの手が少し震えている。
「……じゃ、ゆっくりお風呂入りましょうか」
恥ずかしさを奥に置いて、日本に銭湯文化があってよかったと思いながら、スパッと脱いで、そそくさとお湯に浸かった莉子を倣い、カーレンも同じように湯に浸かる。
白く濁る入浴剤からは、バラのいい香りがする。
「……あったかい」
「昨日もお湯をはればよかったですね」
2人で肩を並べるように湯に浸かりながら、ぴちゃぴちゃと水面を叩く莉子に、カーレンがもう一度頭を下げた。
「……リコ、ごめん……危険な目に合わせた」
「だから、大丈夫です。終わりよければすべてよしです」
「……氷の精霊だけど、水が天敵」
「ん?」
「……精霊の相性は、生まれるときに決まる。……良い相性なのが、氷。悪い相性が、水」
「すごい偶然ですね……」
カーレンが一瞬、お湯に沈み、もう一度顔をだすと、まっすぐ前を向いたまましゃべりだす。
「……精霊の相性、いくつもパターンがある。もちろん、氷と氷、とかもある……」
「もしかして、カーレンさんの知ってる人がやったって事ですか……?」
「……ねぇ、エリシャだったらどうしよう……」
「そんなわけ、ないですよ」
「……でも、一度みんなを騙してる……」
実際のところ、エリシャが『騙した』という内容を、莉子はわかっていない。
もしかすると、トゥーマがかわいらしくした可能性もある。
真実はもっと深いのかもしれないし、あの話が事実なのかもしれない……
どれもわからないことなら、莉子は、みんなが笑ったことを『真実』だと思うことにした。
「あたしは絶対違うと思いますけど、じゃあ、カーレンさんは、エリシャさんがもしその手引きをしてたら、どうします?」
「……一緒に謝る……みんなが許してくれるまで、エリシャと一緒に謝る……!」
「それなら、あたしは許しちゃう」
カーレンは肩までお湯につけ、「ありがと」再び、お湯へと潜っていく。
莉子も真似してお湯に潜ってみたが、意外と体を丸めるのが大変で、後頭部だけ出てしまう。
「カーレンさん、もぐるの上手ですね」
「……泳ぐの得意っ」
「相性は悪いのに?」
「……魔力が入ると、ダメ……」
それになぜか2人で笑ってしまう。
いつもより狭いお風呂場から笑いが転がっていく。
莉子は思う。
裸の付き合いは、異文化交流に、欠かせないのかもしれない……!
「あの、トラップって……説明いただかないと!」
カーレンは莉子の手をそっとなでながら、大丈夫だと繰り返す。
「……エリシャが、アムラスが絶対仕掛けてくるからって……死角になるところに魔法石置いたの……魔力のある人が通ると、反応して、足止めする。リコに危険こないようにするため、だよ……」
「それなら、警察呼びましょ。危ないじゃないですか」
「……大丈夫。精霊は強い! だからリコ、3分経っても帰ってこなかったら、ケイサツってヤツ、呼んで」
「ダメですって」
「……エリシャと約束した。リコを危険にさせない。エルフの問題は、エルフ側の人で片付けなきゃ……」
テレビからは歓声が聞こえてくる。
沿道の人たちが国王に手を振って、名を呼んで歓迎しているのだ。
だが今は、その喜ばしい音ですら邪魔になる。
魔力を持った者が、カフェの敷地内にいるのだから。
莉子はテレビを消して、もう一度あたりを見回した。
だがそうしたところで、莉子に隠れている者の殺気や気配がわかるわけでもない。
莉子が電話をかけようとポケットに手を伸ばしたとき、カーレンが莉子の手を取った。
「大丈夫、行ってくる」
ハッキリと言い切ると、カーレンは颯爽とカフェを出ていく。
威風堂々とした歩き方で立ち向かうカーレンに頼もしくもなるが、それでも危険なことには違いない。
確かに本気を出せば、人を氷漬けにすることも可能なのだろう。
彼女は精霊だから、魔法を使っても問題はないようだ。
「いやいや、家の裏で氷漬けの死体ができるのは、勘弁です!」
莉子はすぐに、タイマーを3分セットしようとポケットを探ったとき、指に触れたものがある。
ジェイとミーから渡された、あの小瓶だ。
「これがあれば……」
莉子はそれを右手に握り、左手にはスマホを持つ。
番号は近くの警察署の番号をすでに打ち込んである。
莉子は今一度、想像で自分の家の周りを歩いてみる。
ぐるりと一周してみたが、この家の死角は一箇所だけだ。
裏玄関の左奥───
納品口ともなるそこは、一時的にゴミをしまう小さな倉庫もあり、道路からも公園からも見えない場所なのだ。
莉子は厨房へと入り、納品口へと向かう。
その間、耳をすまし、外の様子を聞いてみる。
「……わかんないな」
素早くドアまで走ると、ピタリとそこに耳をつけた。
のぞき窓のないドアだ。
冷たいドアが頬にべたりとはりつくが、外の音がかすかに聞こえた。
何かびちゃびちゃと濡れる音がする……
今日は晴れ……
晴れだ!
莉子はすぐにドアを開ける。
何かが起こっているのが間違いないからだ。
そこには、大きな水の塊に覆われたカーレンが……!
彼女の後ろには、黒い姿が見える。
だが、まるでスレンダーマンだ。
枝木のような細長い手足、顔は黒くわからない。
それが水の球を操り、カーレンの体をすっぽりと水の球に取り込んでいる───
もがくカーレンの姿に、莉子は右手の小瓶をぶん投げた。
「……この!」
水に触れた途端、瓶は割れ散った。
まるで小さな花火のように赤い粉が舞い上がる。
チリチリと火花が見えたと思った瞬間、手のひらほどの炎が上がった。
それは瞬く間に水を覆ってしまう。
その火の手は、スレンダーマンの手を伝い、全身に走り始める。
それで怯んだのか、カーレンが水の中からずるりと落ちた。
「カーレン!」
莉子は駆け寄るが、カーレンはむせながらも体勢を立て直すと、氷の粒を相手に撒き散らした。
すぐに炎は消えるが、カーレンの攻撃をかわせない相手は、身を翻して、煤をこぼしながら消えていった。
「なななんだったんですか、アレ……」
ぺったりと座り込んだ莉子に、びしょ濡れのカーレンが腕を伸ばす。
「……リコ、ケガない?」
「ああああたしは大丈夫です。カーレンさんこそっ」
莉子は無理やり足を立たせ、まだ咳き込むカーレンを家のなかへと連れてくる。
戸締りをしっかり確認してから、お風呂の準備に走る莉子だが、警察を呼ぼうか迷っていた。
説明をするにも、どういえばいいのかわからないからだ。
一方のカーレンはすごく落ち込んでいる。
気休めにホットミルクを手渡したが、牛乳に膜が張ったまま、口がつけられていない。
「……油断した。リコ、ごめん……ごめん」
「なにいってるんですか。どっちも助かったんですし」
「……あれ、たぶん、あれはヴァル……呪いで創られた暗殺者……」
「そんなものあるんですか。怖っ!」
しかしながら、あの小瓶がなかったら、今頃どうなっていたのか。
悲惨な想像しかできないため、莉子は考えないことにした。
「さ、お風呂の準備が整いました。カーレンさん、ゆっくりあったまってきてください。お風呂上りには、キンキンのビールでも飲みましょう。このことはあとでみんなに報告して、対応、考えましょう?」
「……リコも入ろう」
「いえいえ、カーレンさん、ゆっくり入ってください」
声をかけるが、カーレンが莉子の手首を離さない。
この風呂はファミリー用だから、大人2人くらいなら問題ないだろう。
この際、恥ずかしい……とも言ってられない。
なぜなら、カーレンの手が少し震えている。
「……じゃ、ゆっくりお風呂入りましょうか」
恥ずかしさを奥に置いて、日本に銭湯文化があってよかったと思いながら、スパッと脱いで、そそくさとお湯に浸かった莉子を倣い、カーレンも同じように湯に浸かる。
白く濁る入浴剤からは、バラのいい香りがする。
「……あったかい」
「昨日もお湯をはればよかったですね」
2人で肩を並べるように湯に浸かりながら、ぴちゃぴちゃと水面を叩く莉子に、カーレンがもう一度頭を下げた。
「……リコ、ごめん……危険な目に合わせた」
「だから、大丈夫です。終わりよければすべてよしです」
「……氷の精霊だけど、水が天敵」
「ん?」
「……精霊の相性は、生まれるときに決まる。……良い相性なのが、氷。悪い相性が、水」
「すごい偶然ですね……」
カーレンが一瞬、お湯に沈み、もう一度顔をだすと、まっすぐ前を向いたまましゃべりだす。
「……精霊の相性、いくつもパターンがある。もちろん、氷と氷、とかもある……」
「もしかして、カーレンさんの知ってる人がやったって事ですか……?」
「……ねぇ、エリシャだったらどうしよう……」
「そんなわけ、ないですよ」
「……でも、一度みんなを騙してる……」
実際のところ、エリシャが『騙した』という内容を、莉子はわかっていない。
もしかすると、トゥーマがかわいらしくした可能性もある。
真実はもっと深いのかもしれないし、あの話が事実なのかもしれない……
どれもわからないことなら、莉子は、みんなが笑ったことを『真実』だと思うことにした。
「あたしは絶対違うと思いますけど、じゃあ、カーレンさんは、エリシャさんがもしその手引きをしてたら、どうします?」
「……一緒に謝る……みんなが許してくれるまで、エリシャと一緒に謝る……!」
「それなら、あたしは許しちゃう」
カーレンは肩までお湯につけ、「ありがと」再び、お湯へと潜っていく。
莉子も真似してお湯に潜ってみたが、意外と体を丸めるのが大変で、後頭部だけ出てしまう。
「カーレンさん、もぐるの上手ですね」
「……泳ぐの得意っ」
「相性は悪いのに?」
「……魔力が入ると、ダメ……」
それになぜか2人で笑ってしまう。
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