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第14話 お味はいかが?
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ケレヴの前に置き、そしてイウォールの前にもビーフシチューの皿がゆっくりと置かれた。
香りの蒸気が鼻をかすめ、喉が思わず鳴ってしまう。
「ビーフシチューにある焼き野菜は、トマトにブロッコリー、インゲンです。ごゆっくりどうぞ」
見下ろした料理に、ケレヴとイウォールは固まった。
『おい、これ……』
『色が、ついてる……?』
思わず莉子を振り返る。
だがそこにいたのは、モノクロの女性だ。
魔法使いでもなんでもない、この現代の日本の女性である。
固まったままのイウォールだが、ケレヴはすでに手をつけていた。
『うまいぞ、これ!』
驚きの声があがる。
その声につられるようにイウォールもスプーンを取り上げ、ゆっくりと頬張った。
切れ長の彼の目が、カッと開く。
「なんだ、これは……」
息を飲むのも無理はない。
───味の深みが半端ないのである。
肉はじっくりと煮込まれ、ほろほろと崩れるのは当然ながら、パサつきがない。
スープはデミグラスの味でありながらも甘みと苦味が交互に流れてくる。
さらに旨味とコクになっているのは、たくさん刻まれたマッシュルームだ。
そして、焼き野菜と一緒に口に含むと、野菜の青臭さや甘みがアクセントになり、香ばしさが増したり、香りがふくよかになったりと、変化がある。
特にトマトの酸味がよく合い、こってりとしたビーフシチューが爽やかになるのが魅力的だ。
パンにつけて食べてみようとパンをちぎるが、一瞬で香ばしい小麦の香りが立ち上がった。
濃い味のビーフシチューにほんのり甘い香ばしいパン。
食感もさることながら、パンの香ばしさがビーフシチューの味の濃さを際立たせてくれる。
口直しにサラダを頬張ると、ドレッシングオイルの旨味と野菜の鮮度の良さといったら!
ここにワインの一杯でもあったらどうだろう……。
はるかにマッチし、この口の中での世界がまた広く深く繋がっていく───
『……イウォール、めっちゃ震えてる』
『ほんとだ……。僕、今すごい瞬間見てる気がする……』
『こんなに感動してるの珍しいもんなぁ』
『うん。だって、ほら、あのマスター・イウォールの口が笑ってるんだよ?』
『ほんとだ。……きしょっ』
トゥーマとアキラが笑いあっていると、もう完食のケレヴも横のイウォールを眺め、すこし引いた表情を浮かべた。
『なんだ、こいつ……』
『え、ケレヴでも意外なのか?』
『トゥーマだってわかるだろ? こいつ、あんまり笑うことないからな。古典的なエルフって感じだし……』
威厳の塊のようなイウォールが、ほのかに笑みを浮かべている姿は、とても奇妙なのだ。
理由がわからない3人はまじまじと見つめつづける。
『何に対して笑ってるかわかんねぇが、イウォールの得意料理もビーフシチューだしな。自分より美味いビーフシチューはないって豪語してたし。まぁ、ここのビーフシチューは、そうだな。どっちが上とかはないが、イウォールにはない美味さがあったなぁ……しっかし、感動がでかいな、イウォールは』
まだ震え続けているイウォールを3人はまじまじと鑑賞するが、4人の状況が読めない莉子は、すでに食べ終えているのをみはかり、コーヒーを届けにきた。
「お口に合いましたか? ゆっくりしてってくださいね」
莉子は空いた皿を回収しだした。
もちろん、食べ終えたばかりだがイウォールの皿も回収対象だ。
「イウォールさん、お皿、下げますね」
莉子が皿に手をかけたとき、唐突にその手が掴まれる。
「……いっ?!」
先ほどまでの厳しい顔つきではない。
むしろ、どこか尊敬の念があるぐらいの、柔らかな目つきだ。
「あ、あの、離してください」
イウォールは覚悟を決めた表情をつくる。
『……私と結婚しましょうっ!』
香りの蒸気が鼻をかすめ、喉が思わず鳴ってしまう。
「ビーフシチューにある焼き野菜は、トマトにブロッコリー、インゲンです。ごゆっくりどうぞ」
見下ろした料理に、ケレヴとイウォールは固まった。
『おい、これ……』
『色が、ついてる……?』
思わず莉子を振り返る。
だがそこにいたのは、モノクロの女性だ。
魔法使いでもなんでもない、この現代の日本の女性である。
固まったままのイウォールだが、ケレヴはすでに手をつけていた。
『うまいぞ、これ!』
驚きの声があがる。
その声につられるようにイウォールもスプーンを取り上げ、ゆっくりと頬張った。
切れ長の彼の目が、カッと開く。
「なんだ、これは……」
息を飲むのも無理はない。
───味の深みが半端ないのである。
肉はじっくりと煮込まれ、ほろほろと崩れるのは当然ながら、パサつきがない。
スープはデミグラスの味でありながらも甘みと苦味が交互に流れてくる。
さらに旨味とコクになっているのは、たくさん刻まれたマッシュルームだ。
そして、焼き野菜と一緒に口に含むと、野菜の青臭さや甘みがアクセントになり、香ばしさが増したり、香りがふくよかになったりと、変化がある。
特にトマトの酸味がよく合い、こってりとしたビーフシチューが爽やかになるのが魅力的だ。
パンにつけて食べてみようとパンをちぎるが、一瞬で香ばしい小麦の香りが立ち上がった。
濃い味のビーフシチューにほんのり甘い香ばしいパン。
食感もさることながら、パンの香ばしさがビーフシチューの味の濃さを際立たせてくれる。
口直しにサラダを頬張ると、ドレッシングオイルの旨味と野菜の鮮度の良さといったら!
ここにワインの一杯でもあったらどうだろう……。
はるかにマッチし、この口の中での世界がまた広く深く繋がっていく───
『……イウォール、めっちゃ震えてる』
『ほんとだ……。僕、今すごい瞬間見てる気がする……』
『こんなに感動してるの珍しいもんなぁ』
『うん。だって、ほら、あのマスター・イウォールの口が笑ってるんだよ?』
『ほんとだ。……きしょっ』
トゥーマとアキラが笑いあっていると、もう完食のケレヴも横のイウォールを眺め、すこし引いた表情を浮かべた。
『なんだ、こいつ……』
『え、ケレヴでも意外なのか?』
『トゥーマだってわかるだろ? こいつ、あんまり笑うことないからな。古典的なエルフって感じだし……』
威厳の塊のようなイウォールが、ほのかに笑みを浮かべている姿は、とても奇妙なのだ。
理由がわからない3人はまじまじと見つめつづける。
『何に対して笑ってるかわかんねぇが、イウォールの得意料理もビーフシチューだしな。自分より美味いビーフシチューはないって豪語してたし。まぁ、ここのビーフシチューは、そうだな。どっちが上とかはないが、イウォールにはない美味さがあったなぁ……しっかし、感動がでかいな、イウォールは』
まだ震え続けているイウォールを3人はまじまじと鑑賞するが、4人の状況が読めない莉子は、すでに食べ終えているのをみはかり、コーヒーを届けにきた。
「お口に合いましたか? ゆっくりしてってくださいね」
莉子は空いた皿を回収しだした。
もちろん、食べ終えたばかりだがイウォールの皿も回収対象だ。
「イウォールさん、お皿、下げますね」
莉子が皿に手をかけたとき、唐突にその手が掴まれる。
「……いっ?!」
先ほどまでの厳しい顔つきではない。
むしろ、どこか尊敬の念があるぐらいの、柔らかな目つきだ。
「あ、あの、離してください」
イウォールは覚悟を決めた表情をつくる。
『……私と結婚しましょうっ!』
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